希少糖アルロースは体脂肪を減らすのか。砂糖の7割の甘さでエネルギーがほとんどない糖について、食後の血糖を下げた試験と下げなかった試験、体脂肪を測った121人の試験、12本の試験をまとめた分析、おなかの不調が出る量を確かめ、甘味料としての置き場所を考える。
アルロースの甘さは砂糖のおよそ7割で、エネルギーは砂糖の0.3%しかない。[9] 甘さを大きく削らずに熱量だけを減らせるのなら、砂糖を置き換えるだけで体脂肪まで落ちるのではないか。期待はそこへ向かう。
ところが、アルロースの試験12本をまとめた2026年のメタ分析は、食後の血糖とインスリンの上がり方を抑えた一方で、体組成には有意な効果を見いださなかった。[19] 体脂肪を減らしたと報告した試験もあるが、著者ら自身が予備的な研究と位置づけている。[17]
血糖の試験は何本あり、体脂肪の試験は何本あるのか。それぞれの差はどれほどか。人で調べた試験の数と大きさを確かめると、期待の置き場所が少しずつずれて見えてくる。甘い飲み物を人工甘味料に置き換えたときの体重の話は「甘い飲み物と人工甘味料のダイエット科学 体重を変える置き換えの条件を読む」に譲り、ここではアルロースという一つの糖に絞る。

果糖と1か所だけ形の違う、ほとんどエネルギーにならない糖
アルロースは、論文ではD-プシコースという名前でも出てくる。果糖と同じ6つの炭素からなる糖で、3番目の炭素につく部分の向きだけが果糖と違う。自然界にはごくわずかしかない、いわゆる希少糖の一つだ。[1][4][9]
甘さは砂糖のおよそ70%、エネルギーは砂糖の0.3%とされ、砂糖の代わりに向く甘味料として注目されてきた。食品の加工では、ゲルの固まり方を良くしたり、よい風味を生んだりする性質も報告されている。果糖を原料に、酵素で形を変えてつくる方法が研究されてきた。同じレビューは、血糖の上昇を抑える働き、活性酸素を取り除く働き、神経を守る働きといった性質も挙げているが、性質を一覧にしたもので、人で体重を比べた結果ではない。[9] 2023年のメタ分析は、アルロースを熱量がほぼゼロ、1gあたり0.4kcal未満の食品の材料と説明し、食後の血糖の上昇を抑える働き、食後の脂肪の蓄積を抑える働き、老化を抑える性質など、多くの働きを持つと紹介している。[4]
体重への期待には、動物での結果という出発点がある。動物の研究では、アルロースが体重と脂肪組織の重さを減らしたと報告され、肥満を抑える甘味料として期待されてきた。その仕組みの一つとして、動物の研究では消費エネルギーの増加が示唆されている。[1]
ただし、動物で見えた変化が人でも同じ大きさで起きるとは限らない。人で仕組みを調べた研究はまだ少なく、人の試験では、体脂肪より食後の血糖を調べたものが目立つ。[1][4][19]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
いちばん多く調べられたのは、食後の血糖
人の試験の中心にあるのは、食事や糖の飲み物と一緒にアルロースをとり、その後の血糖の上がり方を比べる試験である。試験では、食後の血糖の曲線の下の面積で上がり方を比べる。面積が小さいほど、食後の血糖の上がり方がゆるやかだったことを示す。[4][6]
健康な人を対象にした試験をまとめた2023年のメタ分析では、アルロースを5gとった群でも10gとった群でも、食後の血糖の曲線の下の面積が、とらなかった群より有意に小さかった。著者らは、アルロースが健康な人の食後の血糖の上がり方を抑えると結論し、健康な人にも糖尿病の人にも役立つ血糖の管理の道具になりうる、砂糖を減らす食品づくりにも使えると書いている。ただ、この分析が扱ったのは1回の食事の後の血糖であり、体重や体脂肪ではない。[4]
量を変えて比べた単盲検の無作為化試験もある。20〜39歳の健康な男女20人が、マルトデキストリン75gを含む飲み物を、アルロースなし、2.5g、5g、7.5gと一緒に飲んだ。1週間以上の間隔をあけて、それぞれの組み合わせを試している。5g以上で、血糖とインスリンの上がり方が量に応じて抑えられた。[13]
同じ試験で、アルロース7.5gだけを飲んだときには、血糖にもインスリンにも影響がなかった。アルロースそのものは血糖を上げず、一緒にとった炭水化物による上がり方を抑えた、という読み方になる。[13]
境界型の糖尿病の人を含む26人では、5gのアルロースをお茶に入れて標準的な食事と一緒にとると、食後30分と60分の血糖が有意に低く、曲線の下の面積も小さかった。この効果は、主に境界型の糖尿病の人で見られたという。[2]

効かなかった試験と、8%という大きさ
一方、効果を確かめられなかった試験もある。健康な成人27人を割り付け、25人のデータを分析した試験では、75gのブドウ糖の飲み物に、果糖かアルロースを0g、5g、10g加え、6通りを1週間以上あけて試した。血液は飲む30分前から120分後まで6回とり、ほかの血糖の指標も調べたが、少量の果糖やアルロースは、食後の血糖の上がり方を有意には変えなかった。[3]
この試験は、1食10g以下の少量の果糖やアルロースが、糖をグリコーゲンとして蓄える働きを促して食後の血糖を下げるという考えを確かめるために組まれていた。けれども、同じ人の中での測定値のばらつきが予想より大きく、差を見つける力が足りなかった。著者らは、より多くの健康な人を集めた試験が要るとしている。[3]
2型糖尿病の人24人で同じ形の試験をすると、結果は変わった。10gのアルロースは、何も加えないときに比べ、食後の血糖の上がり方を8%減らした。曲線の下の面積は717.4と777.5(mmol×分/L)で、量が多いほど減り方が大きいという関係も有意だった。血糖の平均や最大の値といった副次的な指標でも、5gと10gでいくつかの低下が見られた。果糖では、どの量でも効果がなかった。[6]
ただ、アルロースと果糖の差は統計的には有意でも、あらかじめ決めた±20%という同等とみなす幅の中に収まっていた。著者らは、アルロースは2型糖尿病の人の食後の血糖を控えめに下げたと表現し、その改善が長く続くかを確かめる長期の無作為化試験が必要だと述べている。[6]
健康な人では差を見つけられず、2型糖尿病の人では8%。1回の食事で見える差の大きさは、誰が、何と一緒にとったかで変わる。[3][6]
体脂肪を測った121人の試験
体脂肪そのものを測った試験として目立つのが、韓国の121人を対象にした無作為化二重盲検試験である。参加者は20〜40歳で、BMIが23以上だった。比較用の群は甘味料のスクラロースを1回0.012g、1日2回とり、アルロースの群は1回4gを1日2回とる群と、1回7gを1日2回とる群に分かれた。[17]
体組成のほか、食事からとった栄養、CTによるおなかの断面の脂肪、血液中の脂質が調べられた。アルロースをとった群では、体脂肪率と体脂肪量が有意に下がった。1回7gの群では、BMIと、CTで測ったおなかの脂肪の面積、皮膚の下の脂肪の面積が、比較用の群より有意に減った。[17]
食事からとった栄養、血液中の脂質、肝臓と腎臓の働きの指標、主な炎症の指標には、群の間で有意な差がなかった。食事からとった栄養に群の差がないまま体脂肪に差が出た、という報告である。[17]
それでも、著者らはこの試験を「予備的な研究」と呼び、体脂肪を減らす効果は、X線を使った体組成の測定でさらに確かめる必要があると結んでいる。比較の相手がスクラロースという別の甘味料だった点も押さえておきたい。この試験が比べたのは、砂糖とアルロースではなく、2つの甘味料の違いである。論文の冒頭に載る概要には、体脂肪が何kg、何%減ったかという差の大きさも示されていない。有意だったという判定と、どれほどの差だったかは、別々に確かめる必要がある。[17]
数字で読むアルロース
7割と0.3%:砂糖と比べた甘さとエネルギー。[9]
12本:2026年のメタ分析に入ったアルロースの試験の数。食後の血糖は下がり、体組成は変わらなかった。[19]
8%:2型糖尿病の人で、10gのアルロースが食後の血糖の上がり幅を減らした割合。[6]
5g以上:マルトデキストリンと一緒にとったとき、血糖の上がり方が量に応じて抑えられ始めた量。[13]
体重1kgあたり0.4g:1回にとる量の上限として提案された値。0.5gで重い下痢が出た。[12]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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