テレビの時間とダイエットの科学 消せば痩せると思う前に考えたい時間の使い道

テレビを見すぎると太る、ならば消せば痩せるのか。成人のレビューと子どものメタ分析、家庭で視聴を減らす試験を分けて確かめる。食事量の実験で結果が分かれる理由や、産後の体重との関連も紹介し、画面の時間を食事・活動・休息のどこから見直すかを具体的に考える。

リモコンには電源ボタンがある。けれども、その横に減量ボタンはない。テレビを消したあと、散歩に出ることもあれば、同じソファでスマホの動画を開くこともある。「見ない時間」をつくるだけでは、その先の過ごし方まで決まらない。

テレビを長く見る人ほど太っているという話と、テレビを減らした人が痩せるという話には距離がある。成人の研究をまとめたレビューでは、座って過ごす行動と肥満の関連は限定的で、関連があっても効果の大きさは概して小さいと整理されている。一方、子どもの研究では、長い視聴時間と肥満の関連が繰り返し報告されてきた。[18][8]

ここで考えたいのは、大人の暮らしの中で画面の時間をどう扱うかだ。食卓、くつろぎ、運動へ出かける予定を分けて眺める。すでに扱った「スマホと食事量の関係は食後まで続く」や「座りっぱなしを中断すると痩せるのか」と重なる細かな仕組みより、視聴時間を減らすという方針そのものに、どこまで体重の根拠があるかを確かめたい。

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成人の研究は「長く座るほど必ず太る」と言っていない

Biddleらは、成人のスクリーンタイムなどの座位行動と肥満を扱った系統的レビューを、さらに10本まとめて検討した。系統的レビューとは、一定の条件で研究を集めて吟味する方法である。この検討では、成人の座位行動と肥満の関連を全体として強く支持する証拠は得られず、有意な関連を示す研究でも、その大きさは多くの場合小さかった。[18]

ただし、行動の種類や対象年齢によって、関連の一貫性には違いがあった。主にテレビを見るスクリーンタイム、高齢者の研究、成人になる前の座位行動と成人後の肥満の関係では、比較的一貫した関連があった。座るという姿勢をひとまとめにするより、どんな状況で何をしている時間なのかを区別する意味がある。[18]

このレビューは、成人の座位行動と肥満の関連を示す証拠は限られ、存在する関連も因果的とは考えにくいと評価している。テレビの時間だけで体重が決まる、と受け取るには無理がある。読者が知りたいのは「見ている人の特徴」だろうか、それとも「自分が減らしたときの変化」だろうか。後者に答えるには、実際に視聴を減らす介入研究が重要になる。[18]

成人6,419人を対象としたメキシコの調査でも、画面の時間、睡眠、身体活動と体格に関連があった。標準体重の参加者と比べ、肥満の区分IIでは、あらゆる画面の前で過ごす時間が平均で1日0.60時間長かった。95%信頼区間は0.36〜0.84時間である。この範囲は、集団間の平均差についての推定の幅を示している。[14]

しかも、この調査では関連がすべての体格区分で一貫していたわけではなかった。ある時点の生活と体格を比較する観察研究なので、画面が体重を増やしたのか、体格や生活上の事情が画面を見る時間に影響したのかを決められない。画面の長さを、暮らし全体を見直す手がかりとして扱うのが妥当だ。[14]

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子どもの数字を、大人の減量予測に使わない

子どもの研究には、視聴時間と体重に関する大きな数字が並ぶ。Zhangらのメタ分析は、複数の研究の結果を統計的にまとめたもので、横断研究14本、合計106,169人を含んでいる。テレビを見る時間が最も長い群は、最も短い群に比べ、肥満のオッズが1.47倍だった。95%信頼区間は1.33〜1.62である。[8]

オッズは、ある状態に該当する可能性と該当しない可能性の比を表す。体重そのものの倍率と、肥満に該当するオッズの倍率は区別して読む。研究では、テレビが1日1時間長いことに対応して、肥満のオッズが13%高いという関連も示された。ただし横断研究の集計なので、時間を減らせば同じ割合で肥満が減ると逆算するのは飛躍である。[8]

Fangらが18歳未満を対象にした研究16本を統合したところ、スクリーンタイムが1日2時間未満の群に比べ、2時間以上の群の過体重・肥満のオッズ比は1.67、95%信頼区間は1.48〜1.88だった。この数字も、子どもの体格と画面の時間の関連を調べたものだ。比較に使われた時間区分と対象年齢を組にして読むと、この数字が答えている問いがはっきりする。[2]

さらに、思春期の研究44本をまとめたHaghjooらは、最長時間群と最短時間群の比較でオッズ比1.273、95%信頼区間1.166〜1.390を報告した。一方、研究間のばらつきは大きく、著者らは時間とリスクの用量反応を示す証拠がないと結論している。長時間群で関連があることと、何時間減らせばどれだけ変わるかが分かることは別である。[4]

思春期の集計では、研究結果のばらつきを表す指標が82.1%と高く、地域や研究が行われた場が、その違いの要因の候補に挙がっていた。ひとつの統合値があっても、その背後には条件の異なる研究がある。日本で暮らす大人の視聴を考えるときは、統合値の精密さだけでなく、自分と研究対象の距離も確かめたい。[4]

同じ「画面と肥満」の研究でも、テレビだけか、複数の画面を合計するか、子どものどの年齢を扱うかが異なる。横断研究中心のテレビの集計では時間に応じた関連が示され、思春期の広い集計では明確な用量反応の証拠が得られなかった。この違いを残したまま読むほうが、数字を平均して大人向けの目標時間をつくるより正確だ。[8][4]

家庭で画面を減らす試験は、体重差を示したか

観察研究で関連があるなら、家庭で視聴を減らせば体重は変わるのか。Maddisonらの無作為化比較試験は、過体重・肥満のある9〜12歳の子ども251人と保護者を対象に、この問いを調べた。無作為化比較試験とは、介入を受ける群と比較する群を無作為に分け、条件の違いによる影響を調べる方法である。[20]

介入群の家庭には、親子への対面での説明、視聴時間を管理する機器、画面以外の活動を促す教材、ウェブでの支援、毎月のニュースレターなどが用意された。家庭で実行するための道具と支援を組み合わせた介入だった。[20]

それでも24週時点では、画面の時間にも体格にも有意な群間差はなかった。主な評価指標は、成長期の体格を扱うBMI zスコアだった。BMIは身長と体重から求める体格の指標で、zスコアはその値を標準化して扱う指標である。変化の群間差は−0.016、95%信頼区間は−0.084〜0.051だった。マイナスの値だけを抜き出して「減量に成功」と書くのは適切でない。[20]

この結果の読みどころは、画面時間そのものにも有意な差がつかなかった点だ。道具や支援を提供しても、狙った行動の変化まで届くかが課題として残った。介入という計画が用意されたこと、実際の行動が変わったこと、体格が変わったことを順に確かめる必要がある。[20]

家庭への介入は20週間にわたり、127人が介入群、124人が対照群に割り付けられた。対照群には追跡が完了してから介入用の教材を渡している。支援を受ける時期を分け、24週時点の変化を比較する設計だった。[20]

この試験では、中程度の強さの身体活動が増える傾向も報告されたが、推定差は1日24.3分、95%信頼区間は−0.94〜49.51分と、差がない可能性を含む範囲だった。これを確実な活動増加として数えたり、取り組む人の運動目標に転用したりはできない。体格だけでなく、途中にある活動の変化も不確かさとともに読むことが大切だ。[20]

身近な場面に置けば、テレビを見ないと決めた日も、別の端末で続きを見れば、予定表の上だけ時間が減る。自分の取り組みを点検するなら、テレビと別の端末を合わせて眺める。「消したか」だけで採点せず、画面から離れた時間が暮らしの中に実在したかを見たい。

数字で読むテレビと体重

成人のレビュー10本を検討した総説では、座位行動と肥満の関連は限定的と評価された。[18]

子ども106,169人を含む横断研究の集計では、テレビ最長群と最短群の肥満オッズ比は1.47だった。[8]

思春期の44研究の集計では、長時間群の過体重・肥満オッズ比は1.273で、明確な用量反応の証拠はなかった。[4]

家庭での介入試験251人では、24週時点のBMI zスコアの変化に有意な群間差はなかった。[20]

成人48人の食事実験では、テレビや読書などの4条件で摂取エネルギーに有意差がなかった。[12]

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