更年期のホルモン補充療法でおなかの脂肪は減るのか 体重計に映らない中身と、研究ごとに割れた答え

更年期のホルモン補充療法で、体重やおなかの脂肪はどう変わるのか。体重は同じでも腹部の脂肪と筋肉などの量が入れ替わった試験、薬の組み合わせで脂肪のつく場所が分かれた試験、1年追って差がなかった研究を並べ、乳がんや子宮の病気の数字とあわせて読む。

閉経後の女性16人が、ホルモン補充療法と偽薬(有効成分のない薬)を12週間ずつ、順番を入れ替えて受けた試験がある。体重の変化は補充療法の期間が−24.6g、偽薬の期間が−164gで、統計的な差はなかった[14]。ところが、おなかの脂肪は補充療法の期間に185g減り、偽薬の期間には253g増えていた[14]。

体重計の数字だけを見ていたら、偽薬のほうが優秀に見えたはずだ。体の中では、別の動きが起きていた。ただし、これは16人の短い試験で、早い時期の閉経後の女性136人を1年追った別の研究では、補充療法を使った人と使わなかった人で、おなかの脂肪に差は見られなかった[1]。研究の答えは、そろっていない。

ホルモン補充療法は、更年期の症状の治療や、慢性の病気の予防の目的で使われてきた医療である[15]。ここでは使うかどうかを勧めるのではなく、使った人の体組成(脂肪と、筋肉や骨などの脂肪以外の量の内訳)を測った研究から、言えることと言えないことを分けていく。更年期に体重が増える仕組みそのものは「更年期の体重増加とダイエット 昔と同じ食事でもお腹が変わる理由を論文で読む」の記事に譲る。

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体重は同じまま、中身が入れ替わった12週間

試験の前に、更年期に体の中で何が起きるかを確かめておく。2003年の総説によれば、更年期への移行期は卵巣の働きが衰え、女性ホルモンの産生が減る時期である[15]。以前の研究は、この時期の体脂肪の増加と分布の変化が、心臓や血管の病気、代謝症候群へのなりやすさにつながることを示唆している[15]。閉経前後や閉経後の女性は、閉経前の女性より除脂肪量が少ないようで、卵巣のホルモンの変化が筋肉の量の減少を早め、筋肉の働きと体の動きの力を下げる可能性がある[15]。

冒頭の試験を細かく見る。対象は健康な閉経後の女性16人で、平均年齢は55歳だった[14]。補充療法として、エストロゲンの一種のエストラジオールに、黄体ホルモン剤を周期的に組み合わせた[14]。12週間ずつの2つの期間の間に3か月の休薬を挟み、補充療法と偽薬の順番を入れ替える「交差試験」で比べている[14]。同じ人が両方を経験するので、人による違いの影響を小さくできる。変化は、同じ人の補充療法の期間と偽薬の期間を対にして比べた[14]。

体の内訳は、X線を使う測定装置で、開始時と、それぞれの期間の10週目に測った[14]。結果は次のとおりだ。体重の変化に差はなかった(−24.6gと−164g)[14]。体重に占める脂肪の割合は、補充療法の期間に0.5%下がり、偽薬の期間に1.24%上がった[14]。除脂肪量(脂肪以外の筋肉や骨などの量)は、補充療法の期間に347g増え、偽薬の期間に996g減った[14]。

脂肪の総量は補充療法の期間に400g減り、偽薬の期間に836g増えたが、この差は統計的に確かとまではいえなかった(p=0.06)[14]。骨の中のミネラルの量は、補充療法の期間に28.9g増え、偽薬の期間に4.4g減った[14]。そして、おなかの脂肪の差(−185gと+253g)は統計的に意味のある水準だった[14]。

著者らは、更年期には年齢による変化を超えて脂肪が増え、除脂肪量が減ると説明し、その背景に卵巣のホルモンの減少があるかもしれないと述べている[14]。そのうえで、補充療法は体重の全体を変えずに、更年期に伴う脂肪の増加と除脂肪量の減少を逆向きにすることと結びついていたとまとめた[14]。除脂肪量の増加は筋肉の合成によるものだろうと推し量っている[14]。

この試験から読み取れるのは、体重という一つの数字の下で、脂肪と筋肉などが逆向きに動きうるということだ。偽薬の12週間に除脂肪量が約1kg減っていた点も目を引く。ただ、測った期間は10週目までで、16人の結果である。「補充療法でおなかが引き締まる」と一般化するには、あまりに小さな窓からの眺めだ。

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薬の組み合わせで、脂肪のつく場所が分かれた

もう少し長く、人数の多い試験もある。中国の健康な閉経後の女性123人を、3つの補充療法の組み合わせに無作為に割り付けた試験だ[4]。組み合わせは、エストロゲンの量と、併用する黄体ホルモンの種類が違った[4]。1年続けたのは102人で、体の内訳はX線を使う測定装置で測った[4]。

3つの組み合わせの一つでは、除脂肪量が平均619g増え、体のすべての部位で脂肪が減った[4]。一方、残る2つの組み合わせの群では、脂肪のつき方が腰や太ももの周りから、おなかの周りへと移った[4]。その目安となる比(おなか周りの脂肪の割合と、腰回りの脂肪の割合の比)は、それぞれ0.06と0.03上がった[4]。先の一つの群では、この比に意味のある変化はなかった(0.02)[4]。

この試験には補充療法を使わない比較の群がない。分かるのは、組み合わせによって脂肪のつき方の変化が違ったということで、使わなかった場合と比べた効果ではない。どの組み合わせを使うかは、症状や体の状態をふまえて医師が決めるもので、脂肪の分布だけで選ぶ話にはならない。

別の研究は、閉経後の女性109人を2年追った[9]。ホルモン剤のチボロンを量を変えて使う2つの群(29人と42人)と、エストラジオールと黄体ホルモン剤を組み合わせる38人である[9]。治療の間に除脂肪量が増え、おなか周りの脂肪とその指標が下がった[9]。同時に、骨密度はすべての部位で上がり、骨密度の増え方は除脂肪量の増え方と正の相関を示した[9]。開始時点では、骨密度は年齢と閉経からの年数が長いほど低く、除脂肪量と脂肪量が多いほど高かった[9]。太ももの付け根全体の骨密度との相関は、除脂肪量で0.42、脂肪量で0.26で、除脂肪量との結びつきが最も強かった[9]。

ここにも使わない人の群はない。それでも、2年という期間の治療の間に同じ向きの変化が出た点は、短い交差試験の結果と同じ方向を指している。

自分で選んで使った人を1年追うと

逆の結果を示した研究がある。ふだんから活動的な、閉経して間もない女性136人を1年追った研究だ[1]。参加者は閉経から平均14.2か月、平均51.1歳で、補充療法を使うかどうかを自分で選んだ[1]。無作為に割り付けていない点が、ここまでの試験と違う。

X線を使う測定装置で脂肪と除脂肪量と骨を、専用の機器で上半身と下半身の筋力と脚のパワーを測り、6か月分の活動を思い出して答える質問票で消費エネルギーも見積もった[1]。1年後、おなか周りの脂肪、脂肪の総量、除脂肪量、筋力、脚のパワーのどれにも、補充療法を使った群と使わなかった群で有意な差はなかった[1]。違いが出たのは骨で、補充療法の群では背骨と股関節の骨密度が保たれ、太ももの骨の付け根の一部では増えた[1]。著者らは、少なくとも更年期の初めの数年では、補充療法は筋力や除脂肪量を増やしも保ちもせず、体の脂肪やおなかの脂肪の増加を和らげることもない、と結論した[1]。

2003年の総説は、こうした食い違いをそのまま認めている[15]。補充療法が更年期に伴う体組成の変化を打ち消すと明確に示す研究がある一方、使った人と使わなかった人で差を示せない研究もある[15]。健康な閉経後の女性では、補充療法は体組成と筋肉の働きに好ましい影響を持つように見えるが、研究ごとの効果のばらつきはかなり大きく、筋肉への働きの仕組みもまだはっきりしないとまとめている[15]。断面で比べた研究では補充療法と筋肉の働きの関係に食い違いがある一方、実験的な試験は更年期の筋力の低下が補充療法で防げる可能性を示している、とも書いている[15]。

試験の形も違えば、対象も違う。交差試験の16人、組み合わせを比べた123人、自分で選んだ136人。期間は12週から2年まで、使った薬も同じではない。「補充療法はおなかの脂肪を減らす」とも「減らさない」とも、今の時点で一言にまとめるのは早い。

数字で読む補充療法と体組成

−185gと+253g:交差試験で、補充療法の期間と偽薬の期間に変化したおなかの脂肪。[14]

−24.6gと−164g:同じ試験の体重の変化で、差はなかった。[14]

+619g:ある組み合わせの補充療法を1年続けた群で増えた除脂肪量。[4]

136人:補充療法を自分で選んだ人と選ばなかった人を1年追い、おなかの脂肪に差がなかった研究の人数。[1]

16%と12%:減量の薬を使った閉経後の女性の12か月の減量率で、補充療法あり・なしの値。[2]

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