赤身肉・加工肉と体重の科学 肉を減らす前に見たい脂身と献立、研究で違う答え

肉を減らせば体重は落ちるのか。赤身肉と加工肉、脂身の多い肉を分け、観察研究と介入試験の結果を比較する。未加工の赤肉を調べたメタ分析や減量後の牛肉摂取の試験から、肉の量だけで献立を決められない理由と、食事を見直す際に確かめたい点を具体的に考える。

買い物かごの肉のパックを戻して、代わりの主菜が決まらない。ダイエットのために何かを引くとき、引いたあとの皿は案外見落とされる。肉を減らすという言葉には、脂身を控えることも、加工した肉を選び直すことも、肉料理そのものをやめることも入ってしまう。

研究の「赤肉」は脂の少ない部位だけを指す言葉ではなく、哺乳類の骨格筋に由来する肉という分類だ。[19] 未加工の赤肉の介入研究では体重への有意な影響が見られなかったのに対し、赤肉・加工肉を扱う観察研究には肥満との関連を示す報告がある。[6][12] この違いを「研究者によって意見が違う」で片づけると、食卓で使える手掛かりまで失う。何の肉を、どんな食事の中で、どのように比べたかを確かめたい。

赤身肉と赤肉は、同じ意味で使われていない

日本語で「赤身肉」と聞くと、脂の白い部分を除いた肉を思い浮かべやすい。一方、研究で扱う赤肉は、哺乳類の骨格筋に由来する肉を指す分類である。鶏などの家禽の肉とは区別され、脂が少ないか多いかだけで分けた言葉とは意味が異なる。[19] 赤肉の研究だから、すべて脂の少ない部位だけを調べたと思い込むと、出発点からずれる。

キッチンに置かれた、調理する前の牛肉と豚肉の切り分けられた部位。
キッチンに置かれた、調理する前の牛肉と豚肉の切り分けられた部位。
写真: Vyacheslav Argenberg / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons

実際に、中国の成人を追った研究は、同じ生鮮の赤肉を脂身の多いものと少ないものに分け、腹囲との関係を調べている。[2] つまり、赤肉という大きな箱の中に、脂身による違いがさらにある。肉売り場の「赤身」と論文の分類札は、必ずしも同じ場所に貼られていない。

さらに、未加工の赤肉の介入研究と、赤肉・加工肉の摂取を合わせて見る観察研究では、調べている対象が違う。[6][12] 未加工の牛肉を組み込む試験はその食事条件で、加工肉を含む観察研究は普段の摂取の関連として読む。

ここで献立を振り返るなら、「肉を食べた日」とだけ数えるより、食べた肉の種類、脂身の様子、加工されていたか、何と一緒に食べたかを言葉にしてみる方が、研究との対応が見えやすい。研究で分けた食品の分類に、自分の食事も対応させるための整理である。[2][6][12]

肉にはたんぱく質だけでなく、鉄や亜鉛、ビタミンなどの栄養素が含まれることもレビューで述べられている。[18] したがって、減らす判断には量の引き算と、食事の中で担っていた役割をどう補うかという献立の問題がある。たんぱく質を食事にどう配分するかは「たんぱく質は三食に分けるべきか」の記事に譲り、ここでは肉の分類と体重の比較に焦点を置く。

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観察研究の統合でも、答えはそろわない

系統的レビューは、関連する研究を一定の手順で集めて吟味する方法である。メタ分析は、そのうち統合できる結果を数値としてまとめる。いずれも見出しの肩書きだけで結論を決めず、何を集めたかを見るところから始まる。

赤肉・加工肉と肥満を調べた2014年の系統的レビューでは21研究を検討し、18研究をメタ分析に用いた。肥満についての統合解析に含まれた対象は113,477人で、摂取量の多い群では少ない群に比べ、肥満のオッズ比が1.37、95%信頼区間は1.14〜1.64だった。[12] オッズ比は集団同士の比較指標であり、肉を食べた人の体重がその倍率で増えたという数字ではない。

同じ論文では、赤肉の摂取量が多い群の方が少ない群より腹囲が平均2.79 cm大きく、95%信頼区間は1.86〜3.70 cmと報告された。[12] 日常の食べ方が異なる集団の差であり、著者らは研究間のばらつきも大きいと述べている。[12]

この2014年の報告は研究全体で1,135,661人を含むが、肥満のオッズ比を統合した解析は113,477人である。結果ごとに解析対象が異なる点にも注意したい。[12]

体格指数にも摂取量による差が報告されている。摂取量の最多群と最少群の平均差は、赤肉で1.37、95%信頼区間0.90〜1.84、加工肉で1.32、95%信頼区間0.64〜2.00だった。[12] 赤肉と加工肉を分けても体格指数の高い傾向が見られたが、この値は体重のkg表示とは単位が違う。腹囲、体格指数、肥満のオッズ比は、それぞれ別の結果として読む。

一方、2021年の観察研究の系統的レビュー・メタ分析では、赤肉と過体重について3研究をまとめた効果指標は1.19、95%信頼区間0.97〜1.46で、有意な関連を示さなかった。肥満について7研究を統合した値も1.16、95%信頼区間0.93〜1.44と、有意な関連は見られなかった。[3] 信頼区間は推定の不確かさを示す幅であり、ここでは差がない場合の値も含んでいる。

ただし、後者の肥満に関する解析でも研究間のばらつきは大きかった。[3] 統合値を読む際には、関連の有無と、肉を減らす介入の効果を分けて考える。[3][12]

比較する対象には、赤肉だけか加工肉も含むか、過体重か肥満か、腹囲かという違いがある。[3][12] 対象を混ぜたまま「肉の研究は肯定か否定か」と採点するより、自分が知りたい問いに近い研究を探す方が役立つ。今回は体重をどう変えるかという問いなので、普段の関連を見た研究のあとに、食事を実際に割り付けた試験を重ねて読む。

脂身を分けると、腹囲との関連も違う

中国の健康・栄養調査を使った縦断研究では、18〜75歳の成人16,822人を対象に、1993〜2011年のデータから赤肉摂取と腹部肥満の関係を検討した。[2] 肉の摂取量は24時間の食事の思い出し調査3回で評価した。腹部肥満の定義は、男性で腹囲85 cm以上、女性で80 cm以上である。[2] 縦断研究は、同じ対象の食生活と体の変化を時間の流れに沿って追う観察研究だ。

男性では、脂身の多い生鮮赤肉の摂取が最も多い群は、食べない群に比べ腹囲が0.59 cm大きく、95%信頼区間は0.24〜0.95 cmだった。脂身の少ない生鮮赤肉では0.14 cm、95%信頼区間は−0.39〜0.66 cmで、明確な差を示していなかった。[2] 同じ肉のカテゴリーでも、脂身を区別すると結果の形が変わる。

開始時点の腹囲も考慮した男性の腹部肥満のオッズ比は、脂身の多い肉で1.22、95%信頼区間1.03〜1.44、脂身の少ない肉で0.95、95%信頼区間0.75〜1.22だった。女性でも脂身の多い肉と腹部肥満との正の関連が報告されたが、腹囲を含めた結果の現れ方には性差があった。[2] 男性の数値を、そのまま女性の見込みとして使わないことも大切である。

米国の中年女性237人を20か月追った前向きコホート研究でも、非常に脂身の少ない肉と、それ以外の肉を分けている。食事は7日間の秤量記録、身体活動は加速度計で評価された。[4] 食べた記憶だけに頼らず、食事と活動の双方を把握しようとした調査である。

この研究では、それ以外の肉の開始時点の摂取が1,000 kcal当たり1オンス分多いことは、追跡中の体重が1.19 kg多く増えることと関連した。一方、非常に脂身の少ない肉の摂取は体重変化を予測しなかった。[4] 非常に脂身の少ない肉を除く肉の摂取が少ない群では、多い群に比べ、5ポンド以上の体重増加の相対リスクが0.36、95%信頼区間0.17〜0.76だった。年齢、開始時体重、エネルギー摂取、身体活動など、検討したすべての交絡因子を調整した結果である。[4]

両研究は、肉の量だけでなく脂身による分類を見る意味を示している。[2][4] ただし、それぞれ中国の成人と米国の中年女性という集団で、測ったものも腹囲と体重で異なる。観察された変化量を、肉を減らした際の減量予測に逆算することはできない。脂身の多い肉料理が日常的かを確かめる手掛かりとして使いたい。

また、女性の追跡研究の摂取量は、食事全体の1,000 kcal当たりの肉の量として表されている。[4] 単純な1日当たりの肉の重量とは異なり、食事全体に対してどれほど肉を食べていたかを捉えようとした指標である。同じ肉の重量でも、ほかに何をどれだけ食べるかという背景を離れて読めない。食事全体の中での位置づけを考えることは、研究の数字を日常へ持ち帰るときにも残しておきたい視点だ。[4]

数字で読む肉と体重

24研究:未加工の赤肉に関する介入研究の統合では、体重への有意な効果は見られなかった。[6]

1.37:赤肉・加工肉の摂取が多い群の肥満のオッズ比。観察研究の統合値で、95%信頼区間は1.14〜1.64。[12]

0.59 cm:中国人男性で、脂身の多い生鮮赤肉の最多摂取群と非摂取群の腹囲の差。95%信頼区間は0.24〜0.95 cm。[2]

25 gと150 g:減量後の維持試験で比較された牛肉の1日量。体重変化に群間差はなかった。[7]

12週間:その維持食を比較した期間。長年の体重維持の結論には広げられない。[7]

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