自己効力感とダイエットの科学 できる気持ちと減量の結果を分けて考える

ダイエットには自信が必要だと思っていないだろうか。自己効力感を高める介入の効果、運動との関連、減量を予測できなかった研究を比較する。楽しさや計画との関係も確かめながら、自信の低い日に自分を責めず、実行できる行動を選ぶための手がかりを立川のスタジオから届ける。

肥満治療を受ける成人109人で、食行動に関する「できる」という感覚を測っても、出席や減量との相関は見つからなかった。[8] 自信があれば結果もついてくる、という見込みに立ち止まらせる数字だ。申し込みの時点で意欲が高くても、それだけで通える日や体重の変化までは決まらない。

一方、運動への自己効力感と、その後の活動量との関連を報告した研究もある。[19] 自信が役に立つ場面はある。それでも「痩せられないのは自分を信じていないから」と言われると、研究よりもずっと遠くまで話が進んでしまう。

ここで確かめたいのは、どの行動についての自信を、いつ測り、何と比べたかである。体重を変える力を気持ちだけに背負わせず、実際に動ける条件を見つけるために、自己効力感の研究を読みたい。

ジャブラニツァ山でのハイキングの様子を写した二〇二〇年一月の写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

自己効力感は「自分は立派だ」という評価と違う

自己効力感とは、ある活動を自分がうまく実行できるという信念や確信である。運動の研究を扱ったレビューでは、運動を始め、維持する行動を予測する要因として位置づけられている。[6] この定義の大切なところは、「ある活動」という限定にある。人間としての価値を測る言葉とは使いどころが違う。

たとえば「運動は体によさそうだ」と思うことと、「仕事のある日に運動へ行けそうだ」と思うことは分けて考えられる。前者は結果への期待、後者は実行への見通しに近い。膝の手術前の運動試験でも、運動への自己効力感と、運動の結果への期待は別々の指標として測られている。[3] よさを知ることと、自分にできそうだと思うことを同じ欄に書き込まないのが出発点になる。

自分の言葉に置き換えるなら、「私はダイエットが苦手だ」で止めず、何が難しいのかを具体化する。食事を整えることか、運動する場所へ向かうことか、予定が崩れたあとに再開することか。これは行動を特定するための整理である。食行動を扱う研究と運動を扱う研究では、測っている自己効力感も結果も異なる。[6][8]

本特集の目標設定や習慣形成の記事は、行動を決める方法や繰り返しを主題としている。ここでは計画の立て方全般に広げず、「その計画を自分が実行できると感じるか」に焦点を絞る。運動をやめる理由や、減量を長く保つ人の特徴は、隣接する記事に譲りたい。

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高める介入は効くが、平均の変化は小さい

自己効力感を育てる働きかけをまとめた系統的レビュー・メタ分析がある。対象は、健康な成人の生活活動や余暇の身体活動を増やすために、自己効力感を明示的に扱った介入研究である。集められたのは27研究、計5,501人だった。[5]

介入と自己効力感の変化の関係は、平均の効果量である d が0.16で、統計的には有意だが小さかった。[5] 効果量は異なる測定尺度の結果を比べるための指標であり、体重の減少量とは単位が異なる。ここで動いたのは自己効力感の測定値で、体脂肪の量とは分けて読む。[5]

使われた技法の分析では、過去の自分や他者の実行に関するフィードバックを含む介入で、自己効力感がより高かった。他者の経験を通じて学ぶ働きかけも、高い自己効力感と関連した。[5] たとえば指導を受ける場で、「よくできた」とだけ言われるより、前に実行した内容が何だったかを振り返る、という発想につなげられる。ただし、この日常例そのものの効果量を試験が示したわけではない。

意外なのは、説得、段階的な達成、障壁の特定を含む介入が、この分析では低い自己効力感と関連した点である。[5] 「小さく始めれば必ず自信がつく」と言い切ると、この結果を取りこぼす。技法ごとに参加者を無作為に割り付けて直接比較した結果として読むこともできない。研究間に大きなばらつきがあり、それを調べるための分析だったからである。[5]

フィードバックの内容を考えるときにも、他人との順位づけと、実行の様子を知ることは区別したい。このレビューが扱ったのは過去の自分や他者の実行に関する情報であり、体型を競わせる支援の優劣を示したものとは読めない。[5] 周囲の人を見て「私も同じように動けるかもしれない」と思う場面と、「あの人ほどできない」と感じる場面は、生活の中ではどちらもありうる。参考にする相手がいるときは、結果の見た目だけでなく、どんな動きをどう実行しているかを尋ねる材料にしたい。

この数字から選びたいのは、気合を高める言葉を重ねるより、実行した事実を確かめる姿勢だ。続けられた曜日、参加できた状況、終えたあとに感じたこと。そうした話を具体的に扱える支援かどうかは、運動の相談先を考えるときの問いになる。自信を高める技法の平均効果が小さかった以上、自信の変化だけを支援の成績表にしない見方も大切である。[5]

運動との関連を、そのまま減量の約束にしない

運動をしていなかった女性58人を対象に、8週間の有酸素運動プログラムへの参加を調べた研究では、自己効力感が全体の運動量の有意な予測因子だった。プログラム終了から3か月後にも、自己効力感と運動の規則性の相関は r=0.28、活動時間との相関は r=0.32だった。[19] 相関係数は一緒に変わる程度を表し、ここでの関連は控えめである。

この研究の回帰分析で、自己効力感が全体の運動量について説明したばらつきは R²=0.125だった。[19] 参加者ごとの違いを自己効力感だけですべて説明したわけではない。指導者の影響も、プログラムへの出席のばらつきに寄与していた。[19] 本人の内側だけを見ていると、通う場の働きかけを見落とすことになる。

対照的に、大学の体重管理施設で外来治療を求めた肥満の成人109人では、20項目の食行動に関する自己効力感質問票の評価が、出席にも減量にも相関しなかった。[8] 質問票は測定上の安定した構造を示したが、短期の肥満治療の結果を予測できなかったのである。[8] 測り方が整っていることと、将来の成績を当てられることは別の問題だ。

運動研究で関連があり、肥満治療研究で関連が見つからない。この違いを「どちらかが間違い」と処理するより、行動の領域と結果が違うと読むほうがよい。運動への参加、食行動、出席、体重はそれぞれ異なる指標である。[8][19] 自己効力感に着目する価値はあっても、自信を上げれば何kg減る、という換算表はこの比較からは作れない。

出席に限った回帰分析では、指導者の影響が説明するばらつきは R²=0.116、自己効力感は R²=0.093だった。[19] 出席と全体の運動量で、関連する要因の組み合わせが違っていたことになる。参加の把握には出席データと活動記録が使われており、教室に来た回数と生活全体で動いた量を分けている。[19]

予測という言葉も、個人の運命を決める響きで受け取らないほうがよい。女性の運動研究で示されたのは、参加者全体のデータからみた関連である。自己効力感が高いと答えた人が全員参加し、低いと答えた人が全員欠席する、という境界線は示されていない。[19] 同じように、肥満治療で相関が見つからなかったことから、自信を持つことに意味がないとも断定できない。その対象、その質問票、その短期の結果について、予測を裏づけなかったと読むのが適切だ。[8]

相談の場で「私は続ける自信がない」と伝えた場合を考える。それを聞いた側には、励ますほかにも尋ねられることがある。行くまでの準備が難しいのか、動作を覚えることが不安なのか、人前で動くことに戸惑うのか。これは研究の質問票に代わる測定ではなく、具体的な困りごとを共有する会話の例である。運動への自己効力感を評価し、適切な運動の処方や経過の確認に生かす視点は、活動量の少ない成人への支援を扱ったレビューでも論じられている。[6]

研究を生活に持ち帰るなら、運動へ行けたことと体重の変化を別々に眺める。参加できた日の手順は手元に残せる事実だが、それだけで次の体重を約束する材料にはならない。逆に、体重が思うように変わらないとき、実行した行動までなかったことにする理由もない。自信と減量が相関しなかった研究は、自己評価を体重計だけに任せないための重要な留保になる。[8]

数字で読む自己効力感

27研究・5,501人:成人の身体活動を対象に、自己効力感を扱った介入を統合した規模である。[5]

効果量 d=0.16:介入による自己効力感の変化は有意だが小さい。減量の単位ではない。[5]

109人:肥満の成人で、食行動の自己効力感が出席や減量と相関しなかった研究の人数である。[8]

135人・22日間:膝の変形性関節症がある高齢者で、朝の自己効力感と当日の活動との関連を追った研究である。[14]

448人:自己効力感と楽しさを一緒に分析すると、楽しさのほうがその後の活動量を強く予測した研究の対象者数である。[15]

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