「食べない」を練習する訓練 お菓子の画像で手を止めるゲームの減量試験

お菓子の画像に反応せず、手を止める抑制制御訓練は、食べる量や体重を変えるのか。実験室の短期効果と、過体重・肥満の人を対象にした試験の違い、スマートフォンでの訓練、効果の持続を論文で確かめる。課題が上達することと、日常の減量につながることを分けて考える。

画面にお菓子が現れたら、ボタンを押す手を止める。抑制制御訓練で繰り返すのは、こうした画像と動作の組み合わせだ。食べ物の画像が出たときに、押しかけたボタンを押さずにいる。優勢になった反応を差し控える力を、決まった課題で繰り返し使う方法である。[3][18]

題名のゲームは、課題にゲーム要素を加えた形式を指す。減量試験ではゲーム要素のない形式も比較されており、訓練全体をゲームと呼べるわけではない。[18]

画像への反応を練習することで、実際に選ぶものや食べる量が変わるのかが研究の狙いだ。実験室での短い行動変化には好結果がある一方、減量のために日常で使えるかという段階では答えが揃っていない。[7][10]

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ボタンを押さない訓練と、食べ物を遠ざける訓練

ゴー・ノーゴー課題は、合図に応じて反応する場合と、反応を控える場合を分ける課題である。食べ物に特化した訓練では、甘い物などの刺激と、反応しない合図を繰り返し組み合わせる。肥満のある子どもを対象にした試験でも、甘い食べ物を反応しない合図と結びつける条件と、食べ物以外の刺激を用いる条件が比べられている。[1]

同じ認知訓練でも、接近回避訓練は動作が違う。食べ物の画像から離れるように操作し、近づこうとする自動的な傾向の変化を狙う。肥満の成人を対象にした試験では、不健康な食べ物の画像に対してジョイスティックを押し、好ましい画像には引く動作を練習した。比べる群では、どちらの画像にも押す動作と引く動作を行った。[19]

この違いは、アプリを読むときにも役立つ。「脳を鍛える」「食欲を整える」という説明だけでは、何を繰り返すのかが分からない。反応を止める課題、近づく動きを変える課題、注意を向ける先を変える課題は、まとめて認知訓練と呼ばれても同一の介入ではない。認知訓練の系統的レビューでも、訓練の種類を分けて食行動への影響を検討している。[15]

食べ物への広告の影響や、家の棚に何を置くかという話とは焦点が違う。ここで問うのは、食べ物の刺激に接したときの本人の反応を、課題によって変えられるかである。将来の場面を思い描く訓練も認知訓練の一種だが、本記事では、手の反応を止めることと、接近する動きを変えることに絞る。[15][19]

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実験室では短い変化があったが、減量の数字とは違う

2016年のメタ分析は、実験室で行われた抑制制御訓練を扱う14本の論文から、18個の効果量をまとめた。訓練を受けた人は比較群より、食べ物やアルコールを選ぶ量、または消費する量が少なく、標準化平均差は0.36、95%信頼区間は0.24〜0.47だった。[7]

標準化平均差は、異なる物差しで測った結果を共通の尺度に置き直した値である。この0.36を、体重の減少率や、お菓子を減らせる割合として読むことはできない。食べ物とアルコールの研究を含む、短期行動の指標である。[7]

また、研究間のばらつきを示す指標は71%だった。ゴー・ノーゴー課題や、途中で反応を止めるストップシグナル課題など、運動反応を扱う訓練は、眼の動きを扱う訓練より効果が大きかった。食事を制限しようとしている参加者では、食べる量への効果が大きい傾向もあった。課題の種類と参加者の食事制限の状態が、結果を分ける要素として挙がった。[7]

興味深いのは、食べ物の合図と「止める」を組み合わせた試行の総数より、実際に抑制に成功した割合が行動への効果と結びついていた点だ。ただし、これはメタ分析内での関係である。個人が成功率を上げれば、その分だけ食事量も減るという保証にはならない。[7]

同じ分析では、食べ物への価値づけを低くする効果は統計的に有意でなかった。手の動き、選ぶ行動、好きという評価を、それぞれ測っている研究だからこそ、変わったものと変わらなかったものを分けて読むことができる。[7]

2019年のメタ分析・系統的レビューは、認知訓練に関する66の独立した実験を検討した。抑制訓練などは食行動に有意な影響を示したが、接近回避訓練は全体として有意な影響を示さなかった。食べ物に特化した抑制訓練の減量効果には予備的な支持があったものの、多くは標準体重の人の短期結果だった。減量を必要とする人への応用は、その先の検証課題として残ったのである。[15]

成人の試験では、続けた回数だけで体重は動かなかった

過体重または肥満の成人100人を対象にした無作為化比較試験は、この隔たりを直接調べている。食べ物に特化した抑制訓練を行う52人と、一般的な抑制訓練を行う48人に分け、週4回、4週間実施した。体重と摂取エネルギーは開始時、4週、12週に測定された。[3]

結果は、訓練後も12週の追跡時も、全体として体重と摂取エネルギーに変化がなかった。食べ物への抑制反応に関わる脳波の指標も測ったが、そこにも全体の変化は認められなかった。「何度も実施した」という事実だけでは、減量の成果を説明できなかった試験だ。[3]

この研究の比較相手は、何もしない群ではなく、一般的な抑制訓練を行う群である。したがって、単純にアプリを使う人と使わない人の比較として紹介すると設計を取り違える。食べ物に合わせた課題なら一般的な課題より役立つはずだ、という期待を考えるうえで意味のある比較である。[3]

別の無作為化比較試験では、地域から集めた過体重・肥満の成人179人、平均年齢27.7歳に、個別化した食べ物の画像を使う反応抑制・注意訓練を行った。比較群は食べ物以外の画像を使った訓練で、訓練後に加え、3、6、12か月後まで評価している。[14]

低カロリー食品のおいしさの評価は、訓練群で比較群より上がった。その効果量は0.27だった。しかし、体脂肪の減少や、高カロリー食品のおいしさ・金銭的価値の評価の低下、報酬に関わる脳領域の反応低下は確認されなかった。好ましい食品への評価が動いても、体脂肪まで連動して動くとは限らない。[14]

著者らは、過去の試験より学習が弱かったこと、その背景として画像の種類がより多様だった可能性を挙げている。著者らが挙げた、学習の弱さについての仮説だ。画面の工夫は研究の論点になるが、その工夫の宣伝と、体脂肪を測った結果は別々に確かめたい。[14]

この成人100人の試験では、全体の平均とは別に、開始時の脳波の違いと、その後の体重・摂取量との関係も分析している。食べ物に対する脳波指標の差が小さい人は一般的な訓練で、差が大きい人は食べ物に特化した訓練で、より大きな改善を示す可能性があった。つまり、誰にどの課題が合うかという探索も行われていたのである。[3]

この探索で使われたのは、食欲の自己評価ではなく、脳波の指標だった。脳波を用いた参加者内の関係と、全体として訓練後に変化があったかは別の問いだ。全体の結果が動かなかった事実を、特定の人には効くかもしれないという話で覆い隠すことも、個人差の可能性を無視することも避けたい。[3]

レビューが短期の食行動に手応えを認めていても、体重への評価を別にしているのには意味がある。訓練後に食品を選ばせる実験なら、訓練した反応に近い行動を測れる。一方、減量への研究を検討するには、体重そのものを追った試験が要る。2019年のレビューも、食行動はメタ分析、減量は系統的レビューとして整理しており、同じ厚さの証拠が揃っていたわけではなかった。[15]

読者が注目したいのは、試験の名前より結果の欄である。「無作為化比較試験」とあっても、測ったものが体重なのか、食品の評価なのかで、自分の疑問への近さは変わる。成人の反応抑制・注意訓練は、好みの評価と体脂肪の両方を測ったため、それらが同じ方向に動かなかったことまで見えた。良くなった項目だけを切り取らず、同時に測った項目も読むと、期待の置き所を絞れる。[14]

数字で読む抑制制御訓練

0.36:実験室研究のメタ分析における、食べ物・アルコールの選択や消費への標準化平均差。体重の減少量ではない。[7]

100人:食べ物に特化した課題と一般的な課題を比べた成人試験。体重と摂取エネルギーに全体の変化はなかった。[3]

179人:反応抑制・注意訓練を調べた成人試験。低カロリー食品への評価は改善したが、体脂肪は減らなかった。[14]

3か月:子どものアプリ試験で、甘い物の摂取減少が維持された追跡期間。減量の有意な変化はなかった。[1]

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宮川涼 Founder

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