催眠療法とダイエットの科学 食べ方の改善と体重が減ることの間にある距離

催眠療法を加えれば、食事や運動だけより体重は減るのか。栄養教育と組み合わせた試験、自己催眠の音声を使った試験、結論が分かれたメタ分析を比べる。食べたい衝動や満腹感の改善と、追加の減量効果を分けながら、研究の対象や期間、日常での期待の置き方を確かめる。

催眠と自己催眠を栄養教育に加えた試験では、食べる衝動の指標に改善が見られても、体重の差は統計学的に明確とならなかった。対象は、肥満があり食べる衝動の強い成人である。[8] 気持ちへの働きかけが、食卓と体重計に同じ答えを返すとは限らない。

催眠による減量の研究には、従来の支援だけより体重が減った報告もある。[2] ただし、栄養教育や生活習慣への支援と組み合わせた試験が中心だ。[8][11] 食べたい衝動や満腹感の改善と、追加の減量効果を分けて読むと、催眠療法に期待できる役割が見えてくる。

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催眠だけの力を調べた研究か、支援に加えた研究か

催眠や自己催眠を扱った総説は、食べ方、動機づけ、食べ物への反応を扱う補助的な方法として、その可能性を整理している。食事や身体活動、ほかの心理療法と組み合わせる場合の有望性を述べる一方、長期に有効か、通常の診療へ取り入れられるかについては、追加研究を求めている。[12] 期待の中心は生活を丸ごと置き換えることより、生活を変える取り組みへの支援にある。

たとえば重度の肥満がある人を対象にした無作為化比較試験では、参加者全員が個別の食事指導、運動と行動に関する助言を受けた。そこへ自己催眠を教える介入を加えるかどうかを比べている。[11] 無作為化とは、介入を受ける群と比較する群への割り当てを偶然に委ねる方法である。この研究の問いは、食事や運動をやめても催眠で減量できるか、ではなく、共通の支援に追加する価値があるか、となる。

肥満があり、食べる衝動を抑えにくい成人を対象にした別の試験でも、両群は同じ栄養教育を受けた。催眠群だけが、催眠と自己催眠の練習を追加している。[8] 比較の土台をそろえて初めて、追加部分にどれほど意味があったかを考えられる。催眠群の体重が減ったという結果だけを見て、その減少分をすべて催眠に割り当てると、両群が受けた食事への支援が消えてしまう。

認知行動療法は、考え方と行動を扱う心理的な支援である。これに催眠を加えた研究もあるが、催眠を含む心理支援全体の評価と、催眠だけの減量効果は別の問いになる。[14][19] 本特集の認知行動療法の記事では支援の土台を扱う。ここでは、その土台へ催眠を上乗せしたときに何が変わったかへ焦点を絞る。

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食べる衝動は改善しても、体重差は明確とは限らない

この違いをよく示すのが、食べる衝動の強い肥満の成人を対象にした無作為化比較試験である。体格指数であるBMIが30〜40で、質問票の脱抑制得点が高い人が対象となった。ここでいう脱抑制は、食べることへの抑えが外れやすい傾向を質問票で捉えたものだ。82人が割り当てられ、主な解析には少なくとも介入へ参加した80人が含まれた。[8]

両群とも栄養教育の教室を8回受け、催眠群ではさらに8回の催眠と自己催眠の訓練を受けた。8か月後、開始時点の値を調整した脱抑制得点は催眠群で低く、群間差は4.2点、95%信頼区間は2.8〜5.5点だった。脱抑制が正常範囲になった割合も、催眠群67.7%、対照群11.1%と報告されている。[8] この対象では、食べ方に関する評価で追加の改善が見られたわけだ。

一方、体重の群間差は催眠群に有利な1.8kgだったが、95%信頼区間は−0.1〜3.7kg、有意確率は0.052である。[8] 信頼区間は、推定した差の不確かさを表す幅だ。この幅には差がないことを表すゼロが含まれる。したがって、食べ方の得点が改善したことと、体重が確実に多く減ったことを同じ強さで述べることはできない。

食べたい衝動の変化を小さく扱う理由もない。買い置きのお菓子へ手が伸びる場面と、食後の満足を感じる場面は、体重の結果を待つあいだにも続く。試験では空腹への感じやすさに関する得点でも催眠群に有利な差があった。[8] ただし、それを「空腹がなくなる」「食べなくても平気になる」と言い換えると、測った内容を超える。

支援の目標を考えるなら、何を楽にしたいかを先に言葉にしておきたい。体重の減少を求めているのか、食べる衝動への対応を求めているのか。同じ試験でも、前者と後者に返ってくる答えは違っていた。[8] 体重計は食卓での苦労まで表示してくれないが、食卓で楽になった感覚だけで体重差を証明することもできない。

減量を後押しした試験と、差が出なかった試験

追加の体重減少を報告した研究も確認しよう。マレーシアの大学の職員と学生を対象とした研究では、BMIが25以上の参加者を催眠追加群53人と対照群54人に割り当てた。著者らは研究を準実験研究と位置づけている。全員が食事、運動、行動に関する健康教育を受け、追加群は月に1回、合計3回の催眠療法を受けた。[2]

12週間の試験を完了したのは104人で、平均年齢は26.28歳、女性が82.2%だった。体重の減少率は催眠追加群4.61%、対照群3.04%で、追加群に有利な差は1.57ポイント、報告された群間差の95%信頼区間は−2.59〜−0.54だった。[2] この条件では追加の減量を示す結果である。ただし、体脂肪率と腹囲は、両群とも開始時から有意には変化しなかった。[2]

ここで体重の減少率を、そのまま体脂肪の減少率として扱わないことが大切だ。研究は別々の指標を測り、別々の結果を報告している。また、この参加者は比較的若く、女性が多い。立川で暮らす働き盛りの大人や、閉経を迎える年代の人に、同じ減少率を約束する数字として使うことはできない。示されたのは特定の対象と支援の組み合わせにおける結果である。[2]

対照的に、重度の肥満がある人の試験では、自己催眠を加えても体重変化に明確な差は見られなかった。BMIが35〜50で、器質的疾患や精神疾患の併存がない人を介入群60人、対照群60人に割り当てた研究である。共通の生活習慣支援に加えて、介入群には食前の自己制御を高めるための自己催眠を3回の催眠セッションで教えた。[11]

1年後の体重減少は、介入群6.5kg、対照群5.6kgだった。調整した群間差の推定値は−0.45kg、95%信頼区間は−3.78〜2.88kgで、差は有意でなかった。[11] 催眠を加えた群の平均値のほうが大きく減っていても、それだけで追加効果が確立したとは判断しない。この試験では両群とも減量しており、食事や運動への共通支援を背景に結果を考える。

他方、介入群では満腹感や生活の質に改善が見られた。[11] 減量の追加効果が明確でないから、測られた別の変化まで消えるわけではない。体重、食べ方、生活の質を別々の欄に置く。そうすると「全部効く」か「全部無意味」かの二択から離れられる。

この違いを身近な選択へ移すなら、催眠を含む支援の説明に出会った場面を想像するとよい。「体重が減る」という紹介の先に、誰が、何を一緒に行ったかという情報があるだろうか。大学の職員と学生への健康教育と、重度の肥満がある人への個別の食事支援は、同じ出発点ではない。対象も共通支援も違う試験の平均値を横並びにして、減った数字が大きい方法を選ぶことには無理がある。[2][11]

また、目指す変化が体脂肪なのか、体重なのかも確認したい。体重に差が出た研究であっても、腹囲や体脂肪率の有意な変化までは示していない。[2] 気持ち、食べ方、体格をひとつの「成功」に束ねず、それぞれ何が測られたかを見ていく。そうした読み方なら、期待を持つことと、結果を急がず見極めることを両立できる。

数字で読む催眠と減量

12週間で体重−4.61%対−3.04%:健康教育に催眠を加えた群と、健康教育だけの群の比較である。[2]

8か月後の脱抑制得点差4.2点:食べる衝動の強い肥満の成人における、催眠群に有利な差である。[8]

体重差1.8kg、95%信頼区間−0.1〜3.7kg:同じ試験でも、体重差の推定にはゼロを含む幅があった。[8]

1年で−6.5kg対−5.6kg:重度の肥満がある人の試験では、自己催眠追加による有意な体重差はなかった。[11]

3週間の音声試験を46人が完了:自己催眠音声による有意な減量は認められなかった。[9]

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