子どもの睡眠時間と肥満 3歳で10時間以下だった子に2年後の肥満が多かった

子どもの睡眠時間と肥満の関係を、生後6か月の赤ちゃんから15歳までを追った研究で確かめる。短い眠りと長すぎる眠り、寝る時刻の決まり、週末の寝坊、太りやすい体質との重なりを分けて読み、分かったことと、眠りを延ばす試験としてはまだ試されていないことを、親を責めずに整理する。

土曜の朝、子ども部屋のカーテンは10時を過ぎても閉まったままだ。平日は7時前に起こしているのだから、今日くらいは寝かせておく。洗濯機の音を気にしながら廊下を静かに歩き、朝ごはんの皿は一枚だけ後に回す。多くの家にある、ごく普通の週末の始まりである。

研究の世界では、こうした週末の朝も測る対象になる。子どもの手首に活動量計を1週間付けてもらい、平日と週末の眠りの長さとずれを、体格や朝の血液の値と並べた研究がある。眠りを親の記憶ではなく機械で数えた研究だ[5]。生後6か月の赤ちゃんの眠りを母親の答える質問票で測った研究もあれば、9歳の寝る時刻の決まりを聞き取り、その子が15歳になった時の体格を確かめた研究もある[1][2]。

睡眠が短い子は太りやすいのか。答えは年齢ごとに少しずつ違う形で出てくる。しかも、その多くは眠りと体格を並べて追った観察研究で、その読み方の注意は後の節でまとめて扱う。

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3歳で眠りが10時間以下だった子の、5歳の体格

中国・嘉興の出生コホート研究は、3歳の子ども48,922人の睡眠と体格の記録を集め、5歳まで追いかけた。睡眠時間は10時間以下、11〜12時間、13時間以上の3つに分けられ、太り過ぎと肥満の判定には中国の基準が使われている。比べる基準は11〜12時間の子である[4]。

まず3歳の時点で比べると、太り過ぎに当たる子の割合を群どうしで割った有病率比は、10時間以下の子で1.13、13時間以上の子で1.16だった。肥満の有病率比は、10時間以下の子と13時間以上の子のどちらも1.25だった。短い側も長い側も、基準の帯より少し多いという形である[4]。

5歳までの追跡に移ると、形が変わる。10時間以下の子の太り過ぎのリスク比は1.48(95%信頼区間1.26〜1.74)、肥満のリスク比は1.77(1.30〜2.40)だった。一方、13時間以上の子は太り過ぎ1.13(0.96〜1.34)、肥満1.19(0.85〜1.66)で、どちらも信頼区間が1をまたぎ、はっきりした差とは言えなかった[4]。

それでも、睡眠時間を区切らずに連続した値として曲線で描くと、短い側と長い側の両方で太り過ぎや肥満が多いU字の形が、3歳の時点でも追跡でも支持された。研究者は、短すぎる眠りも長すぎる眠りも幼児の太り過ぎと結びつくと結論し、眠りの長さを整えることは変えられる手立てになりうる、と可能性の言い方で添えている[4]。

4万8千人を超える規模は、偶然の揺れを小さくしてくれる。そのうえで、短い側の差が追跡でもはっきり残ったのに対し、長い側の差は追跡で幅の中に埋もれた。短い眠りと長い眠りを同じ重さで並べないことも、この研究の読み方の一つである。

幼児だけの話でもない。2006〜2011年に出た研究を集めた小児看護のレビューでは、選ばれた25研究のすべてが、短い睡眠と子どもの太り過ぎ・肥満の間に有意な結びつきを示していた。対象の年齢も調べ方もさまざまだった[6]。このレビューが数えたのは同じ向きの結果を出した研究の数であり、体重がどれだけ違うかという効果の大きさまでは束ねていない。

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赤ちゃんの眠りと、1年目のBMI

もっと早い時期を調べた研究がある。ある出生コホートの赤ちゃん179人について、生後6か月と12か月に体の大きさを決まった方法で測り、母親が乳児用の睡眠質問票に答えた。妊娠期間、性別、出生体重、母乳だけで育てた期間、妊娠中の喫煙、母親のBMIや学歴などを考慮したうえで、眠りとBMIの関係を調べている[1]。

結果は、睡眠が1時間長いごとにBMIが0.15kg/m²低いというものだった(95%信頼区間−0.28〜−0.01)。寝つくまでの時間が1分長いごとには、BMIが0.01kg/m²高かった。夜中に目を覚ます回数は、BMIと関連しなかった[1]。1時間あたり0.15kg/m²は小さな差で、この数字一つで赤ちゃんの将来を占うことはできない。それでも、生まれて1年のうちから眠りの長さと体格が結びついているという観察は、ほかの年齢の研究と向きがそろう。

中国の双子の出生コホートは、別の角度から乳児の眠りを見た。186組の双子について、生後6か月の睡眠を保護者が研究補助者の助けを借りて質問票に答え、6、12、18、24か月の体の測定値を健診の記録から集めた[19]。

生後6か月の時点では、睡眠が足りない子と足りている子の間に、身長、体重、BMI、太り過ぎの割合、体脂肪量の差は無かった。ところが、6〜12か月と6〜18か月の体重の増え方を見ると、睡眠が足りない子のほうが増え過ぎに傾いていた。他の条件を調整すると、6〜18か月の体重の増え過ぎのオッズ比は、睡眠が足りていた子と比べて3.47だった(95%信頼区間1.23〜9.78)。この関係は、二卵性より一卵性の双子ではっきりしていた[19]。

今の体重が同じでも、その後の増え方に違いが出ることがある。数字だけ見れば大きなオッズ比だが、信頼区間は1.23から9.78まで広い。双子の研究ならではの手がかりを持つ一方、186組という人数では推定の幅が広くなる。

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太りやすい体質と、眠りの長さの重なり

北京の子どもと若者の代謝の研究は、眠りと遺伝の重なりに目を向けた。6〜18歳の3,211人を最初に調べ、10年後に848人を追跡している。思春期の段階や生活の行動を考慮しても、最初の時点で睡眠が短いことは、その時点と10年後の両方で、太り過ぎ・肥満の多さと結びついていた[3]。

研究者は、大人のBMIに関わることが分かっている12の遺伝子の場所から、太りやすさの遺伝の点数を作った。とくにレプチンという血液中のホルモンに関わる遺伝子だけで作った点数は、1日8時間以下しか眠らない子では太り過ぎ・肥満とはっきり結びついていたが、10時間以上眠る子ではその結びつきが消えていた。10年後の追跡でも似た結果だった[3]。

遺伝の点数と眠りの組み合わせがBMIと結びつく道すじを分けてみると、直接の結びつきは控えめで、間接の結びつきは主に血中のレプチンの高さを介していた。介していた部分の割合は52.6%で、その形は10年後も変わらなかった。研究者は、遺伝的に太りやすい傾向がある子ほど、十分な眠りが早い時期の予防として大切になるとまとめている[3]。

遺伝の点数は家で測れるものではない。それでも、同じ遺伝の傾向を持っていても、眠りの長さによって体格への表れ方が違ったという観察は、体質を動かせない運命としてだけ読まない理由になる。

寝る時刻の決まりがなかった9歳と、15歳のBMI

米国の20都市で生まれた子どもを追う全国の出生コホートでは、2,196人の記録が使われた。5歳と9歳の時に、母親が子どもの寝る時刻の決まりがあるか、何時か、守れているか、ふだん何時間眠るかを答え、15歳になった本人が自分の身長と体重を答えた。そこからBMIのzスコア(同じ年齢・性別の中での位置を標準偏差で表した値)を出している[2]。

子どもたちは、寝る時刻と眠りの習慣の組み合わせで4つの群に分かれた。5歳で寝る時刻の決まりがなかった群、9歳で決まりがなかった群、5歳と9歳ともに寝る時刻が年齢の目安すれすれだった群、5歳と9歳ともに年齢に合った寝る時刻と眠りの習慣があった群である。比べる基準は最後の群に置かれた[2]。

9歳で決まりがなかった群は、基準の群より15歳のBMIのzスコアが0.38標準偏差高かった(95%信頼区間0.13〜0.63)。研究者は、この群の値が太り過ぎの目安とされる水準(BMIのzスコア1.02、85パーセンタイル)を上回っていたと記している。3歳のBMIや家庭の社会的な条件を考慮しても、この結びつきは残った[2]。

15歳の体格は本人の申告で、測定ではない。研究者自身は、子どもの眠りの習慣に働きかける試みが、のちの眠りと体重を良くするかを今後の課題に挙げている[2]。寝る時刻を守りにくい事情は家ごとにあり、数字は、家の努力を採点する表ではない。

中国南西部で肥満の子ども236人を調べた研究も、寝る時刻に触れている。重い肥満の60人と軽い肥満の176人を比べると、週の昼寝の回数が多いことは重い肥満と結びつき、調整オッズ比は1.773だった。反対に、平日の夜の就寝時刻は重い肥満を減らす側の因子として挙がり、調整オッズ比は0.571(95%信頼区間0.339〜0.938)だった[15]。ただ、何時を境にどちら向きが良いのかまでは、要約の範囲では読み取れない。初診の時の質問票による一回の調査でもある。

数字で読む子どもの睡眠と体重

0.15kg/m²:生後6か月と12か月の赤ちゃん179人で、睡眠が1時間長いごとに低かったBMIの幅。95%信頼区間は−0.28〜−0.01だった。[1]

3.47:生後6か月に睡眠が足りなかった双子の乳児が、6〜18か月に体重が増え過ぎることのオッズ比。睡眠が足りていた乳児と比べた調整後の値で、95%信頼区間は1.23〜9.78と幅が広い。[19]

1.77:3歳で睡眠が10時間以下だった子の、5歳までの肥満のリスク比。11〜12時間眠った子と比べた値である。[4]

52.6%:北京の研究で、レプチンに関わる遺伝の点数と睡眠の長さの組み合わせがBMIに結びつく関係について、血中のレプチンの高さを介していた部分の割合。[3]

0.38標準偏差:9歳で寝る時刻の決まりがなかった群の、15歳のBMIのzスコアの差。年齢に合った寝る時刻の決まりがあった群と比べた値である。[2]

8時間:手首の活動量計で測った4〜10歳の308人の、一晩の平均睡眠。体重の区分にかかわらず同じ程度だった。[5]

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宮川涼 Founder

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