ライ麦パンの満腹感は減量につながるか 小麦との置き換え試験で見えたずれ

ライ麦パンに替えると、満腹感は続き、食べる量や体重も減るのか。朝食の比較試験と減量試験をたどると、それぞれの答えは一致しない。パンの形や朝食全体の条件、減量で差が出た試験と出なかった試験を分け、普段のパンを置き換えるときに確かめたいことを整理する。

満腹感が16%高くても、その数字が体重の減り幅を表すわけではない。健康な成人23人が全粒ライ麦と精製小麦のクリスプブレッドを食べ比べた試験で、この差が出たのは食後に本人が感じた満腹感だった。腹持ち、次に食べる量、その先の体重は、ライ麦の研究でも別々の指標として測られている。[20]

たとえば全粒ライ麦のクリスプブレッドを比べた朝食試験では、空腹感が弱くなっても昼食量は変わらない条件と、昼食量も減る条件があった。クリスプブレッドとは薄く乾燥させたパンで、普段の柔らかいパンと同じ形ではない。ライ麦という原料名だけで、売り場のパンすべてに結果を当てはめるのは早い。[19]

ここで扱うのは、主食全般の優劣よりも、ライ麦に置き換えたときにどこまで変化がつながるかである。小麦より満腹になったという手応えを、減量成功の約束に変えずに使う。その距離を知ると、パンを選ぶ目が少し具体的になる。[1][6][19]

ライ麦の朝食で、空腹感はどう変わったか

朝食のパンを比べる研究では、食べた直後だけでなく、時間を追って空腹感や満腹感を答えてもらう。主観的な食欲とは、本人が感じて評価した食欲のことである。体重計の値とは測定の対象が違うが、昼食までの過ごしやすさを考えるうえでは身近な指標だ。[17][20]

ライ麦のクリスプブレッドに、クリームチーズとトマト、卵をのせたもの。
ライ麦のクリスプブレッドに、クリームチーズとトマト、卵をのせたもの。
写真: Kolforn (Kolforn) I’d appreciate if you could mail me (Kolforn@gmail.com) if you want to use this picture out of the Wikimedia project scope. This file is licensed under the Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0 International license. You are free: to share – to copy, distribute and transmit the work to remix – to adapt the work Under the following conditions: attribution – You must give appropriate credit, provide a link to the license, and indicate if changes were made. You may do so in any reasonable manner, but not in any way that suggests the licensor endorses you or your use. share alike – If you remix, transform, or build upon the material, you must distribute your contributions under the same or compatible license as the original.https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0CC BY-SA 4.0 Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0 truetrue / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

2009年の無作為化比較試験は、それぞれ16人を対象とする部分に分かれていた。無作為化とは、比較する条件の割り当てを偶然に任せる方法である。この研究では同じ人が異なる朝食を経験し、エネルギー量をそろえたライ麦パンと小麦パンを比較した。ライ麦は製粉で得る部分を変え、外側のふすまを使うパンなどを調べている。[17]

ライ麦の朝食では、小麦の朝食に比べて昼食前の食欲が抑えられた。午後にも空腹感や食べたい気持ちが低くなる結果がみられ、ふすまを使った朝食は、製粉部分を比べる試験で強い満腹感を示した。一方、食物繊維を5gと8gに変えた比較では、ライ麦の条件同士で食欲に有意な差は出なかった。多ければ多いほど腹持ちが伸びる、という一直線の関係まで示したわけではない。[17]

2015年には、健康な成人23人が全粒ライ麦と精製小麦のクリスプブレッドを食べ比べた。全粒とは穀粒全体を使うこと、精製とは外側などを除いて使うことである。ここでの比較は、穀物の種類だけでなく、使われる部分も異なる。食後の満腹感はライ麦で16%高く、空腹感は発酵していないライ麦で11%、発酵したライ麦で12%低かった。[20]

参加者は27〜70歳で、食欲は朝食後4時間まで評価された。血糖とインスリンは食後230分まで測定している。インスリンは血糖の調節に関わるホルモンだ。発酵していないライ麦では、この時間全体のインスリン反応が、発酵したライ麦より13%、精製小麦より17%低かった。満腹感を測る質問への回答と、採血で捉える反応の両方を調べた試験だった。[20]

さらに、この試験では食後血糖の反応に有意な差がなかった一方、満腹感には違いがあった。血糖とは血液中のブドウ糖の値である。食欲の評価と血糖測定では、違う側面を捉えている。血糖やインスリンの話をパンの良し悪しの判定にまとめず、今回は食欲の変化を中心に読むのがよい。[20]

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同じライ麦でも、パンと粥では条件が違う

ライ麦の研究には、パンだけでなく粥も登場する。粒を煮たものと、粉にしたものを煮たものでは、同じ原料でも食品の構造が異なる。袋にライ麦と書いてあるかどうかだけでは、研究で使った食品との距離が残る。[9]

2011年の研究は、パンを比べる24人の試験と、粥を比べる20人の試験を行った。同じ人が異なる朝食を経験するクロスオーバー方式で、エネルギー量をそろえた精製小麦パンを基準にした。ライ麦の朝食はいずれも午前と午後の満腹感が高かったが、粒の形を残すことの効果は食品によって違った。[9]

パンでは、粒を残したものと粉にしたものの間で食欲に差がなかった。一方、粥では、粒を残した条件のほうが粉にした条件より午後の満腹感が高く、空腹感が弱かった。粥の条件間では食物繊維の量と組成も同等だったため、研究者は構造の違いが関係する可能性を挙げている。[9]

ここから実用的に読み取れるのは、粒が見えるパンなら必ず優れる、という買い方ではない。食品の形の影響が粥では現れ、パンでは現れなかったという具体的な結果である。見た目の粒の多さを、そのまま腹持ちの順位表に変えないほうが試験に忠実だ。[9]

柔らかいパンでも、配合を変える研究がある。2018年の23人の無作為化クロスオーバー試験では、ライ麦とサワードウの量を変えたパンを比較した。サワードウは発酵種のことである。試験用パンのライ麦は粉の重量の35〜48%、発酵種は生地重量の9〜51%だった。この範囲で、試験用パン同士の食欲には差が出なかった。[14]

一部のパンは精製小麦の対照パンより空腹感が低く、満腹感が高かったものの、発酵種を増やせば食欲や次の食事量が改善するという結果は支持されなかった。ライ麦の配合範囲が狭かったことも研究の限界として挙げられている。試験で変えた配合の範囲も、結果を読む際の条件になる。[14]

店頭での選択では、原材料欄と、普段続けられる食感を合わせて考えるのが現実的だ。研究に近い食品を知ることと、苦手なパンを我慢して食べることは別の作業になる。柔らかいパンの比較結果も踏まえるなら、ライ麦という名前や発酵の印象だけを決め手にせず、自分が実際に食べる形まで含めて考えたい。[9][14]

満腹になっても、次の食事が減るとは限らない

2014年のクリスプブレッドの研究は、条件の違う朝食試験を並べている。対象はそれぞれ20人と21人で、平均年齢は39歳だった。どちらも同じ人がライ麦と小麦の朝食を経験し、その後の食欲と、自由に食べられる昼食での摂取量を調べた。[19]

最初の試験では、ライ麦で空腹感と食べたい気持ちが低くなったが、満腹感と昼食のエネルギー摂取量に差はなかった。もう一方の試験では、満腹感が高く、空腹感と食べたい気持ちが低くなり、昼食の摂取量も少なかった。後者では朝食の量が小さく、試験用パンが朝食全体のエネルギーに占める割合が高かった。[19]

これは、ライ麦の働きが朝食全体の中で変わり得ることを示す。ただし、朝食を小さくすれば必ず昼食も減るという推奨量の研究ではない。試験間ではパンの量や朝食の構成が異なり、それぞれの影響を切り離せない。日常では、パン以外の料理や飲み物を含めて何を食べたかまでが、置き換えの条件になる。[19]

2016年の21人の試験も、気持ちと食事量のずれを示した。健康な男女が全粒ライ麦の粥と精製小麦パンを含む朝食などを食べ比べたところ、ライ麦55gを使う粥では昼食前の空腹感が20%低く、食べたい気持ちが22%低く、満腹感が29%高かった。それでも自由に食べる夕食の摂取量には差がなかった。[2]

この研究では、ライ麦の一部をイヌリンという食物繊維や小麦グルテンに置き換える条件も設けたが、ライ麦だけの粥を超える満腹感の上積みはなかった。材料を追加するほど結果がよくなるとは限らない。朝食の満腹感という成果はあったまま、夕食量の成果は確認できないのである。[2]

食欲の評価と食事量を別々に見ると、置き換えを試す目的もはっきりする。昼食前の空腹がつらい人にとっては、朝食の満腹感が変わるかが関心になる。一方、体重の変化を期待する人には、その感覚だけでは判断材料が足りない。朝食試験で扱うのは、食べた後の限られた時間と特定の食事条件である。夕食まで含めた生活や、その先の体重変化へ話を進めるときは、食事量や体重を直接測った結果に持ち替えて考えたい。[2][19]

数字で読むライ麦の置き換え

16%:全粒ライ麦クリスプブレッドで高かった満腹感の評価。健康な成人23人の比較である。[20]

20%:ライ麦55gの粥で低かった昼食前の空腹感。夕食の摂取量には差がなかった。[2]

3週間:ライ麦粥の朝食による午前の満腹感の違いが続いた試験期間。午後までは続かなかった。[13]

1.08kg:2021年の減量試験で、ライ麦群が小麦群より多く減らした体重の平均差である。[6]

3.2kgと2.9kg:2026年の減量試験のライ麦群と小麦群の減量幅。群間差は有意ではなかった。[1]

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