ホットフラッシュは痩せると軽くなるのか 更年期のほてりと体脂肪、減量の試験が示したこと

更年期のほてりと寝汗は、体脂肪が多いほど増えるのか減るのか。観察研究の答えは、増える向き、関係なし、年齢の高い女性での逆向きに割れている。過体重の女性で減量がほてりの煩わしさを改善した6か月の試験と、睡眠や心臓との関係から、体重を減らす前に知りたい数字を読む。

資料を配り終えて席に戻ったところで、首から上だけが急に熱くなる。冷房は効いていて、階段を駆け上がってきたわけでもない。額と首筋に汗がにじみ、ハンカチで押さえているうちに波は引いて、あとには湿ったブラウスの冷たさだけが残る。夜は夜で、枕の湿り気で目が覚め、掛け布団をはいでは、しばらくしてまた引き寄せる。

更年期のほてり(ホットフラッシュ)と寝汗は、医学では血管運動症状とまとめて呼ばれる[18]。ほてりに悩む人が体重の話を始めると、正反対の2つの説に出会う。体の脂肪は女性ホルモンをつくるので、ふっくらした人のほうがほてりは軽いという説と、体温の調節の仕組みから見て、脂肪が多いほどほてりは増えるという説である[2]。

読み比べるのは、体脂肪とほてりの関係を測った観察研究と、減量でほてりが変わるかを確かめた2つの試験である。観察研究の答えは、脂肪が多いほど症状を報告する人が多いという向き、関係なし、逆向きの3つに割れており、年齢と測り方の違いに気をつけながら読んでいく。更年期に体重が増える仕組みは「更年期の体重増加とダイエット 昔と同じ食事でもお腹が変わる理由を論文で読む」に、ホルモン補充療法と体組成の研究は「更年期のホルモン補充療法でおなかの脂肪は減るのか 体重計に映らない中身と、研究ごとに割れた答え」に譲る。ほてりの治療を受けるかどうか、どの治療にするかは医師と決めることで、この記事の守備範囲の外に置く。

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脂肪はほてりを防ぐのか、増やすのか

古いほうの説には「痩せ型仮説」という名前がついている[2]。体の脂肪の中では、男性ホルモン(アンドロゲン)が女性ホルモン(エストロゲン)に変えられる。だから脂肪が多い人ほど女性ホルモンが保たれ、ほてりは少なくなるはずだ、という筋道である[2][6]。痩せている人ほどほてりやすいという予想に「痩せ型」の名がついているわけで、体重を減らしたい人の耳には、少し意地の悪い名前に響く。

新しいほうは、体温を調節する仕組みからほてりを説明するモデルで、こちらは体の脂肪が多いほどほてりが増えると予想する[2][6]。同じ脂肪について、2つの説は正反対の向きを言い当てようとしている。

この2つは、データで見分けられる。痩せ型仮説が正しいなら、脂肪とほてりの関係は女性ホルモンの量を通して生じているはずだ。そうであれば、血中のエストラジオール(エストロゲンの主な形)などのホルモンの値を統計の式に入れたとたん、脂肪とほてりの関係は弱まるか、消えるだろう。次の節で見る米国の研究は、まさにこの確かめ方をとった。結果は、ホルモンの値を入れても関係は弱まらなかった[2][6]。

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1,776人の体組成と、461人のおなかの断面

確かめの舞台になったのは、米国の地域に住む多様な人種の女性を、閉経への移行期を通して追う観察研究である[6]。対象は47〜59歳で、子宮と少なくとも1つの卵巣がある1,776人[6]。2002〜2004年の6回目の年次の調査で、体に弱い電流を流して脂肪の割合を見積もる方法(生体電気インピーダンス法)で体組成を測り、ほてりと寝汗の有無を尋ね、血中のホルモンの値も測った[6]。

体脂肪率が、集団のばらつきの目安(標準偏差)1つ分高いごとに、血管運動症状を報告する見込み(オッズ)は1.27倍になっていた(95%信頼区間1.14〜1.42)[6]。95%信頼区間は、真の値がおそらく入る幅のことで、この幅が1をまたいでいなければ、偶然だけでは説明しにくい差と読む。年齢と調査の場所をそろえた式でも、さらに多くの条件をそろえた式でも関係は残り、ホルモンの値を入れても弱まらなかった[6]。著者らは、体温調節のモデルを支える結果だと結論している[6]。

同じ研究に付随して心臓を調べた調査では、45〜58歳の461人のおなかを、CT(X線で体の断面を撮る検査)で撮った[2]。おなかの脂肪の総量が標準偏差1つ分多いごとに、直近2週間にほてりがあった見込みは1.28倍(95%信頼区間1.06〜1.55)で、皮膚のすぐ下にある皮下脂肪では1.30倍(1.07〜1.58)だった[2]。一方、内臓の周りにつく内臓脂肪は、ほてりと結びついていなかった[2]。ほてりとの関係で目立ったのは、内臓脂肪ではなく皮下脂肪のほうである[2]。ここでもホルモンの値を入れて関係は弱まらず、著者らは、体の脂肪はかつて考えられていたほどには、ほてりから女性を守らないのかもしれないと書いた[2]。

閉経の前から追った研究もある。韓国で定期的な健診を受けた42〜52歳の閉経前の女性を対象に、4,672人を一時点で調べ、血管運動症状のなかった2,590人を中央値で4.2年追った[5]。BMI(体重を身長の2乗で割った体格の指標)、腹囲、体脂肪率のどれも、一時点の分析では症状がある割合の高さと、追跡では新しく症状が出る危険の高さと結びついていた[5]。

この研究は、代謝の状態でも人を分けている。代謝症候群の構成要素が1つもなく、インスリンの効きにくさを示す指標(HOMA-IR)も2.5に届かない人を「代謝的に健康」とした[5]。体脂肪率35%以上の人を基準の人と比べると、追跡の間に症状が新しく出る危険は、代謝的に健康な人で1.34倍(95%信頼区間1.00〜1.79)、健康でない人で3.61倍(1.81〜7.20)だった[5]。健康な人の信頼区間は下限がちょうど1で、確かな差と言い切れるかどうかの境目にある。なお、BMIと腹囲で見た場合は、代謝の状態によって関係の強さは変わらなかった[5]。

関係なし、そして逆向きという答え

ここまでなら、脂肪が多いほどほてるという話で決着しそうに見える。ところが、同じ問いに別の答えを出した研究がある。

米国ボルティモアとその周辺に住む45〜54歳の女性631人を5年間追った研究では、毎年の受診で身長と体重を測り、ほてりの強さと頻度を詳しく尋ねた[8]。開始時に45.2%がほてりを報告し、32.0%がBMI30以上の肥満だった[8]。結果は、開始時のBMIも、その後のBMIや体重の変化も、ほてりと統計的に意味のある関係を示さなかった[8]。BMI30以上と25未満を比べたオッズは、開始時で0.92(95%信頼区間0.58〜1.15)、追跡の分析で0.81(0.56〜1.17)である[8]。著者らは、喫煙の習慣など別の要因のほうが、中年期のほてりの起こりやすさを決めるうえで重要だと考えている[8]。

逆向きの結果もある。1,776人の分析と同じ、米国の女性を追う研究の参加者から、ほてりのある54〜63歳の女性52人を選び、4日間、胸の皮膚の電気の通りやすさからほてりを記録する機器を着けてもらい、同時に日記もつけてもらった研究だ[1]。本人の感覚とは別に、機器が捉えた反応として「生理的なほてり」を数えている[1]。BMIが高いほど(オッズ0.97、95%信頼区間0.94〜0.99)、腹囲が大きいほど(0.98、0.97〜0.99)、記録されたほてりは少なかった[1]。この逆向きの関係は、対象の中でも年齢の高い女性ほどはっきりしていた[1]。

健康な閉経後早期の女性145人の研究も、似た方向を指す[20]。最後の月経から1〜11年がたった43〜65歳で、喫煙せず、心臓病・高血圧・糖尿病のない人たちである。平均BMIは25.0、平均腹囲は79.1cmで、28日間の日記でほてりと寝汗の回数を数えた[20]。BMI、腹囲、腹囲を身長で割った値が大きいほど、1日全体と日中の症状は少なかった[20]。夜の症状とは、関係が見られなかった[20]。

並べてみると、年齢と時期が分かれ目に見えてくる。閉経前や移行期の女性を含む研究では、脂肪が多いほど症状を報告する人が多かった[5][6]。54〜63歳のほてりのある女性では、脂肪が多いほど記録されたほてりは少なく、その傾向は年齢が高いほど強かった[1]。エストラジオールと、性ホルモンと結びつくたんぱく質(SHBG)の値は、この年齢による違いを小さくしたものの、消しはしなかった[1]。著者らは、ほてりに脂肪が果たす役割を考えるとき、年齢が関係を変えることを考えに入れなければならないとしている[1]。

測り方の違いも重なる。大きな研究が数えたのは本人の報告で、52人の研究で逆向きの関係が出たのは機器が記録したほてりだった[1][6]。「ほてり」という1つの言葉の中に、本人が感じた不快の記憶と、皮膚が示した反応という、別々のものが入っている。

数字で読むほてりと体脂肪

1.27倍:体脂肪率が標準偏差1つ分高いごとの、症状を報告する見込み。47〜59歳の1,776人。[6]

1.30倍と、関係なし:おなかの皮下脂肪と内臓脂肪で分かれた、ほてりとの結びつき。461人のCT。[2]

3.61倍:体脂肪率35%以上で代謝的に健康でない閉経前の女性に、症状が新しく出る危険。健康な人では1.34倍。[5]

0.97:54〜63歳のほてりのある女性で、BMIが高いほど機器のほてりが少ない向きを示したオッズ。[1]

0.81:BMI30以上と25未満を5年追って比べたオッズ。信頼区間は1をまたいだ。[8]

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宮川涼 Founder

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