雑穀なら血糖が上がりにくく、体重も減るのか。ミレットのクスクス、かゆ、飲料と、ソルガムの加工食品を調べた試験から、食品の形による違いをたどる。満腹感と食事量、血糖と体脂肪を分けて、白米の代わりとして選ぶときに確かめたい条件と、日常の食事への取り入れ方を考える。
「雑穀なら血糖が上がりにくい」。そんな期待で主食を選ぶ前に、料理の形にも目を向けたい。ミレットのクスクスとかゆを白米と比べた試験では、同じ穀物でも調理した形によって血糖反応と満腹感の順位が違っていた。[14] 買い物かごに入れる雑穀の袋にも、中身には穀物の名前と調理方法が書かれている。その小さな文字を飛ばして「雑穀」の大きな文字だけで選ぶと、研究が比べた食品から離れてしまう。
ミレットを使った食品には、白米より食後の血糖反応が低かった試験がある。しかし、同じミレットでも飲料にすると比較対象との差が出なかった試験がある。食材名が同じでも、食べたものまで同じとは限らない。[14][2]
白米との交代を考えるなら、「何の穀物を、どんな食品にして、何と比べたか」まで知りたい。体重を目的に選ぶときには、血糖の研究と体脂肪の研究をさらに分けて見ることになる。好ましい血糖反応を示す食品が見つかることと、その食品で減量できることには、確かめるべき距離がある。[3][7][14]

ミレットの種類と調理法までが、研究の対象である
成人のミレット摂取を扱った系統的レビューは、無作為化比較試験、無作為化クロスオーバー試験、非無作為化試験を集めている。クロスオーバーとは、同じ参加者が順に違う食品を食べ、本人の中で反応を比べる設計だ。このレビューで扱った食品は、ひとつの雑穀ご飯にそろっていない。[7]
糖尿病の参加者が食べたのは、シコクビエやアワ、ソルガムなどを含む混合穀物のロティ、アワのドーサ、加熱処理したヒエ類の食品などだった。ロティやドーサという料理名まで書かれているのは、穀物の粉や加工のしかたを含む食品の試験だからである。レビューは、穀物の種類と調理法の両方が血糖反応に影響すると結論づけている。[7]
混合穀物のロティでは、血糖の長めの期間の状態をみる糖化ヘモグロビンと、LDLコレステロールに改善が報告されている。この食品にはシコクビエ、アワ、ソルガムに加え、オーツ麦やトウモロコシも使われていた。血糖と脂質を評価した対象は、2型糖尿病の参加者である。[7]
ソルガムの系統的レビューは、2020年5月までに発表された介入研究を検索し、条件を満たした16件を取り上げた。評価対象は血糖と血中脂質、酸化ストレスの指標、体重管理に関係する項目だった。血糖反応、酸化ストレス、満腹感、体重管理には好ましい結果が示されている。脂質も調べる目的に含まれていたことと、結論で好ましい結果として挙げられた指標とは分けて読みたい。[19]
全粒穀物全般の話は、既存記事「全粒穀物とダイエット、白米を玄米に替える前に知りたい体重と満腹感の研究」に譲る。ここでの焦点は、ミレットやソルガムを食べた人の反応が、食品の形によってどのように違ったかにある。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
白米との比較で、満腹感と血糖は同じ順位にならなかった
標準体重の米国の成人14人を対象にしたクロスオーバー試験では、パールミレットの食品を白米などと比べた。食品は、市販と自家製のミレットクスクス、ミレットの濃いかゆ、小麦クスクス、白米である。食べる条件は、利用可能な炭水化物の量を合わせていた。[14]
この試験では、ミレットを使った食品と小麦クスクスのいずれも、白米より全体の血糖反応が低かった。つまり、ミレットだけが白米と違ったわけではなく、比較に入っていた小麦の食品にも差があった。比較の基準を白米に置いたとき、穀物と料理の両方に選択肢があった。[14]
興味深いのは、ミレット同士にも差があった点だ。自家製クスクスは、市販ミレットクスクスや小麦クスクスより全体の血糖反応が高かった。ただし血糖の頂点には差がなく、反応が長引く形が示唆された。ピークの高さだけを見ていると、研究が捉えた違いの一部を取りこぼす。[14]
一方、自家製ミレットクスクスは、白米、ミレットのかゆ、市販ミレットクスクスより空腹感が低く、満腹感が高かった。「血糖反応が低い順に満腹になる」という単純な並びにはならなかったのである。食後の血糖を重視するのか、食べた後の空腹を重視するのかで、この結果の読みどころも変わる。[14]
研究者は、胃の中の食品が送り出される速さも測定したが、今回の食品間では有意な差がなかった。満腹感が違ったからといって、その理由を胃の動きだけで説明してはいない。この試験の結論を生活に近づけるなら、クスクスとかゆを同じ料理として扱わず、実際に食べる形を選ぶことになる。[14]
自宅で白米の代わりを探す場面では、単にご飯に粒を足すのか、主食をクスクスに替えるのかを区別したい。研究で白米と比較されたのは後者を含む具体的な料理である。市販品と自家製のクスクスも別々の食品として比べられ、どちらも白米より血糖反応は低かった。[14]
飲みやすいミレットが、低い血糖反応を示すとは限らない
飲料を調べた試験では、血糖と体格が正常範囲の成人14人が、押出加工した全粒パールミレット粉の飲料などを順に飲んだ。押出加工は、この試験で食品を作るために使われた処理である。比較にはマルトデキストリンの飲料と、血糖反応を評価するためのブドウ糖液が含まれた。[2]
ミレット飲料は、味の受け入れやすさも調べており、イチゴ風味の飲料が最もよく受け入れられた。しかし、その飲料は高いグリセミック指数に分類された。グリセミック指数とは、食後の血糖反応を評価する指標である。「全粒」という原料の説明だけでは、出来上がった飲料のこの結果までは予想できなかった。[2]
摂取後の血糖とインスリンの反応、主観的な食欲、さらにその後の食事摂取量は、マルトデキストリン飲料と同程度だった。おいしく飲めることと、比較相手より血糖や食欲を抑えることは、それぞれ調べるべき結果である。飲料は飲料として試した結果を受け取るほうが、穀物への期待を必要以上に膨らませずに済む。[2]
飲料試験の比較相手は、白米ではなくマルトデキストリンの飲料だった。クスクスの試験では、固形の食品同士で血糖反応を比べている。片方は飲料の配合、もう片方は主食の調理法という、食品づくりの異なる場面を扱った比較である。[2][14]
ソルガムの健康作用を整理したレビューも、加工方法と食品としての特性を重視している。食物繊維、消化の遅いでんぷん、消化されにくいでんぷんなどの成分を含むが、それらの特徴を保った食品づくりが課題だとする。原料の成分表だけで完成品の食後反応を代弁させない姿勢は、飲料を選ぶときにも通じる。[9]
飲料試験では、同じ人が違う試験日に別の飲料を飲む設計を採用し、ブドウ糖液を飲む機会も設けていた。単にミレット飲料を飲んだ人へ感想を聞いた調査より、飲料間の反応を確かめる条件を整えた比較である。参加者は血糖も体格も正常範囲で、飲料を摂取してから2時間の反応と、その後24時間の食事摂取量が評価された。[2]
クスクスの試験でも、血糖の連続測定、食欲の尺度、呼気を使った胃の排出速度の検査を組み合わせていた。異なる測り方を使ったからこそ、食後に満腹と感じることと、胃の中から食品が出ていくことを切り分けられた。同じ「腹持ち」という言葉で説明したくなる場面でも、研究で測った項目はひとつにまとまっていない。[14]
そのため、普段の食事で「今日は空腹を感じにくかった」と思っても、それだけで自分の血糖が下がったと判断しない。食べた感覚は料理を選ぶ手掛かりにし、血糖の判断は測定値を使う。この分け方は、満腹感の違いと血糖反応の違いが別々に現れた食品比較に沿った受け止め方である。[14]
食品を選ぶ読者にとっては、飲料の便利さと、クスクスのように食事として食べる使い方を比べる余地がある。研究の結果だけで毎回の料理を指定するより、今の主食と交代できる形があるかを探すほうが具体的だ。味や作りやすさを自分で確かめる際にも、試験で使われた食品の形を手掛かりにできる。[2][14]
数字で読むミレットとソルガムの試験
約35%:健康な男性10人のマフィン試験で、ソルガムは小麦より血糖の上昇面積が小さかったという報告である。[1]
5.7→5.3mmol/L:耐糖能に問題がある人がアワを12週間摂取した前後の、平均空腹時血糖の変化である。[4]
10.2→9.4mmol/L:同じアワの試験で測った、平均2時間血糖値の変化だった。[4]
55未満:ソルガムのパスタ、ウプマ、ポハで示されたグリセミック指数の値である。[15]
24人・8週間:小麦より体脂肪率が低下したソルガム試験は、過体重男性のエネルギー制限下で行われた。[3]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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