自炊とダイエット 家で作った主菜を週5回より多く食べる人の野菜97.8gと体脂肪

家で作った主菜を週5回より多く食べる人は、週3回未満の人より野菜と果物が多く、体脂肪の多い人の割合が低かった。ただし多くは一時点の調査で、因果は確かめられていない。誰が作るか、なぜその献立か、何を作るかまで論文で分け、忙しい平日の台所に置ける工夫を考える。

家で作った主菜を週に5回より多く食べる人は、週3回未満の人より、1日に食べる野菜が97.8g多かった。英国の29〜64歳の成人11,396人を調べた研究の数字である。[9] その差が、体脂肪の多い人の割合の差とも並んでいた。[9]

この数字を見ると「やはり自炊は痩せる」と言い切りたくなる。だが、毎晩台所に立てる人は、帰宅の時刻も、同居する家族も、食べ物への関心も、そうでない人と違うかもしれない。観察研究をまとめた系統的レビューは、家で料理をするかどうかを左右する要因を、性別や使える時間、仕事、親しい人間関係、文化にまで広げて描いている。[4]

ここでは料理の習い方ではなく、家の食事を「どれだけの頻度で食べているか」「誰が作るか」「なぜその献立か」「何を作るか」に分け、体重までの距離を測る。料理を習う研究は「料理教室とダイエットの科学 調理の自信がついても体重とは別に考えたい理由」に譲り、外で食べる側の話は「外食・中食とダイエットの科学 週何回より先に確かめたい、体重との関係」に任せる。

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「家で作る」はどこからどこまでか

観察研究38件をまとめたMillsらの系統的レビューは、まず言葉の定義から始めている。広く受け入れられた定義が無いため、家で温かい料理や冷たい料理を用意するのに必要な動作、つまり材料を組み合わせ、混ぜ、多くの場合は加熱することを「家庭での調理」と定めた。[4] 13,341件の文献から選ばれた38件は、主に一時点の調査、いわゆる横断研究だった。[4] 対象は人間開発指数が高い、または非常に高い国の参加者に限られ、介入研究はすでに別のレビューで扱われたとして除かれている。[4] つまり、このレビューが描くのは「料理を習ったらどうなるか」ではなく、「ふだん家で料理をしている人はどんな人か」という姿である。

この定義に照らすと、買ってきた総菜を皿に移すだけの夜は数えにくい。一方で、冷ややっこに刻んだねぎとしょうがをのせる夜は、火を使わなくても材料を組み合わせているので入る。研究ごとに線の引き方がずれるのは避けにくく、レビューの著者らも、証拠の弱さの一因に、研究者ごとの決定要因や結果の捉え方の違いを挙げている。[4]

レビューが整理した決定要因は、変えられない要因から個人、地域、文化の層まで広がっていた。主なものとして、女性であること、使える時間が多いこと、仕事に就いていること、親しい人との関係、文化や民族的な背景が並ぶ。[4] 料理の腕前は、その一部にすぎない。著者らは、家で料理をするかどうかを決める要因は、調理技術を持っているかどうかより複雑だと結論づけた。[4]

体重や健康への良い影響について、このレビューは慎重だ。想定される結果の多くは個人の食事の利点に集中しており、料理と食事、健康の間の好ましい関連は、さらに確認が要るとされた。[4] 家庭料理は体に良いという前提は多くの食事指導が置いてきたものだが、それを支える証拠は、まだ一時点の調査に偏っている。[4]

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週5回と週3回未満、1万1千人の食卓の差

冒頭の数字は、Millsらが英国の地域住民コホートの開始時データを分析したものだ。この研究が尋ねたのは、家で作った主菜を食べる頻度であって、本人が台所に立つ回数ではない。それまでの研究の多くは作る側を見ていたと著者らは書き、あえて食べる側を数えた。[9] 家族が作った夕食を食べる人も、この尋ね方なら週5回の側に数えられうる。コホートとは、同じ集団を長く追う研究の枠組みをいう。29〜64歳の11,396人が家で作った主菜を食べる頻度を答え、130項目の食物摂取頻度質問票で食事を調べられた。[9] 食事の質は、地中海食スコア、高血圧予防のための食事法であるDASHのスコア、果物と野菜の量、血液中のビタミンCで評価された。[9]

自己申告に頼らなかった項目もある。BMI(体重を身長の2乗で割った体格の指数)と体脂肪率は研究者が測った。[9] そのうえで、家の主菜を週5回より多く食べる人は、週3回未満の人に比べ、1日の果物が62.3g、野菜が97.8g多かった。99%信頼区間は果物が43.2〜81.5g、野菜が84.4〜111.2gである。[9] 血液中のビタミンCも高く、二つの食事スコアへの当てはまりもよかった。[9]

体格との関係では、週5回より多い人は週3回未満の人に比べて、過体重のBMIにあたる確率が28%低く(99%信頼区間8〜43%)、体脂肪率が高い範囲にあたる確率が24%低かった(同5〜40%)。[9] 一方、血糖の長期の指標であるHbA1c、コレステロール、高血圧との関連は、ほかの要因で調整した分析では有意にならなかった。[9] 体型と食事の質には差が見え、血液検査の一部には差が見えない。それがこの研究の答えだった。

著者ら自身が、家庭料理を食べることに食事と健康への因果的な効果があるかどうかは、将来に向かって追跡する研究で確かめるべきだと書いている。[9] 週5回の人が細めなのは、家で食べるからかもしれない。細めの人の暮らしが、家で食べやすい形をしているからかもしれない。一時点の写真には、どちらが先かは写らない。

18〜23歳の若者を調べた研究も、同じ向きの関連を報告した。男性764人、女性946人のうち多数派は、調理にあたる行動を週1回すらしていなかった。[20] 頻繁に調理する若者はファストフードの利用が少なく、脂質、カルシウム、果物、野菜、全粒穀物の食事目標を満たす確率が高かった。[20] ここで測られたのは食事目標との関連であり、体重の変化を追ったものとは違う。

同じ研究は、誰が台所に立たないかも示した。男性であること、アフリカ系米国人であること、大学の寮に住んでいることが、調理の頻度の低さと有意に関連していた。[20] 寮の部屋に台所が無ければ、料理の腕を問う前に勝負はついている。調理の技能や道具が足りていると感じにくいことは、人種や、学生かどうかの状況と関連した。[20] 自炊の頻度は、本人の意思だけで決まる数字ではない。

腕前より先に、暮らしの形が効いている

ブラジルの大学生823人を調べた横断研究は、調理の力と体格の関係を細かく見た。参加者の70.8%が女性、年齢の中央値は23歳で、43.6%が過体重か肥満だった。[1] 二つの変数だけを比べる分析では、料理全般への自信、そして果物・野菜・調味料を使いこなす自信が低いことが、過体重や肥満と結びついていた。[1] ここでいう自信は、心理学で自己効力感と呼ばれるものである。

ところが、複数の要因を同時に入れたロジスティック回帰では、目立つ顔ぶれが変わる。誰かと同居していることと外食をすることは、過体重・肥満の確率の高さと関連した。[1] 反対に、食事の用意の責任を分け合っていることと、果物・野菜・調味料を使う自信が高いことは、確率の低さと関連した。[1] 同居しているだけでは有利にならず、台所の役目を分け合うことのほうが低い確率と並んでいた。家族がいても、作るのが毎晩同じ1人なら事情は違ってくる。

時間の壁も具体的だ。この若者の研究で、調理の障害として最も多く挙がったのは時間の不足で、36%がそう答えた。[20] 週3日は21時過ぎに帰る人に、毎晩の一汁三菜を求めても、研究の数字より先に暮らしが断ってくる。レビューが使える時間の多さや仕事の状況を決定要因に挙げたことと、話はつながる。[4]

では、調理の技術を伸ばせば体型も変わるのか。健康な成人を対象にした15件の研究をまとめた2026年の系統的レビューは、調理技術と調理頻度の向上が、食事の質、とくに果物と野菜の摂取と調理の自信の改善に結びつくことを示した。[11] しかし、BMIなどの栄養状態との関連は見つからなかった。[11] 研究の多くは無作為化や対照群を欠き、偏りの危険が深刻と判定され、証拠の確実性は低い、または非常に低いとされている。[11] 食卓は変わっても、体重計までは届いていない。現時点で言えるのはそこまでである。

数字で読む自炊と体型

  • 11,396人:英国の29〜64歳の成人。家の主菜を食べる頻度と、研究者が測ったBMI・体脂肪率を照合した。[9]
  • 野菜97.8g、果物62.3g:週5回より多く家の主菜を食べる人が、週3回未満の人より1日に多く食べていた量。[9]
  • 28%と24%:同じ比較で、過体重のBMIと高い体脂肪率にあたる確率が低かった割合。一時点の関連である。[9]
  • 36%:18〜23歳の若者で、調理の障害に時間の不足を挙げた人の割合。[20]
  • 15件:調理技術を伸ばす研究を集めたレビューの対象数。栄養状態との関連は見つからなかった。[11]

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