インスリンを始めると体重が増える理由 糖尿病の治療と付き合う食事と運動

インスリン治療後の体重増加は、どのくらい起こり、何を意味するのか。2型糖尿病の追跡研究と比較試験から、治療前に減った体重、血糖改善、食事や運動の支援、併用薬による違いを確かめる。体重だけで治療を評価せず、自己判断で薬を変えないための受診時の問いも整理する。

血糖の数字は良くなったのに、体重が増えた。治療がうまくいっているのか、それとも食べ方を間違えたのか。診察で喜んでよい数字と、自宅で気になる数字が食い違うとき、どちらを見ればよいのだろう。

インスリン治療を始めた後の体重には、薬を始める前の経過まで映り込む。2型糖尿病の観察研究では、開始前に体重が減り、血糖管理の指標が悪化していた人ほど、その後の大きな体重増加が目立った。増えた分をすべて食べ過ぎの結果と見なすと、この経過を取り落とす。[10]

ただし、体重を気にしなくてよいという話でもない。治療の利益を守りながら、体重の変化をどう扱うかが論点になる。インスリンと体重を扱うレビューは、増加への不安が治療の開始や強化を遅らせる問題を指摘している。薬の中止・減量・変更は自己判断で行わず、主治医と検討することが出発点だ。[1][2]

先端や薬液の入る部分投与量の表示窓などに記号を付けたインスリンペン 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

体重の話は、注射を始める前から続いている

オランダの診療記録を使った後ろ向きコホート研究は、インスリンを始めた2型糖尿病の人7,967人を特定し、条件を合わせた比較対象との5,213組を調べた。後ろ向きというのは、すでに残っている記録をたどる方法である。開始前後を追うと、体重は注射を始めた日から突然動き出したわけではなかった。[9]

開始前の年にも平均体重は増えており、直前の年間変化は0.46kgだった。開始後の最初の年の変化は平均0.31kgで、ばらつきを示す値は3.9kgと大きい。これは「インスリンの影響はない」という結果ではない。開始前の変化などを調整した解析では、開始は体重増加と独立に関連した。実測の平均変化と、条件を調整した関連を分けて読む研究なのだ。[9]

ここで診察に持っていきたいのは、注射開始後だけの体重表ではなく、その前からの曲線である。同じ現在の体重でも、直前まで減っていた人と、緩やかに増えていた人では背景が違う。この研究で開始前の体重変化は、その後の変化を説明する比較的強い要因だった。開始前の履歴も解析に含めた点が、この研究の特徴である。[9]

別の後ろ向き研究は、開始後の最初の年に5kg以上増えた場合を「過度の体重増加」と定義し、5,086人を解析した。該当したのは全体の10.0%である。開始前に体重が減り、同時にHbA1cが上がっていた群では20.3%だった。HbA1cは血糖管理を評価する検査の指標で、ここでは体重と並べて経過を見た。[10]

研究が決めた5kgという区切りは、研究上の定義であり、個人の受診の目安は主治医に確認したい。大切なのは、同じ増え方でも治療前の履歴で意味が変わり得ることだ。痩せたときの数字を無条件に成功と扱わず、血糖の悪化を伴っていなかったかまで見る。その視点が、体重の増加を責める言葉から、診察で検討できる情報へ変える。[10]

比較対象の選び方にも特徴がある。診療記録研究では、一人ずつ条件を合わせた比較対象を置き、開始前5年から開始後5年までの平均体重の変化を推定した。比較対象では、この期間の各年に平均体重が減っていた。インスリンを始めた人の前後だけを見るのとは異なり、治療を始めなかった比較対象の経過も解析に含めている。[9]

大きな体重増加を調べた別の研究では、早い段階で関連したのは開始前2年間の体重とHbA1cの変化だった。解析には開始前、開始時、開始後の候補要因を含め、経過の図示とロジスティック回帰分析を用いた。増加した人の共通点を、開始日の検査だけで探した研究とは問いの置き方が異なる。[10]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

食べる量が同じでも、収支の条件は変わり得る

インスリン治療と体重を扱ったレビューでは、増加の説明として、体内で物質を作り蓄える同化作用、食欲の増加、尿に出る糖の減少が挙げられている。体重を「食べた量」だけで説明せず、治療によってエネルギーの出入りの条件も動くと考えるための整理である。[4]

その中身を測った小さな比較研究がある。2型糖尿病の26人を、インスリンだけの群とメトホルミンを併用する群に分け、開始時と12か月後に基礎代謝、摂取エネルギー、尿に出る糖を測った。メトホルミンは併用された糖尿病治療薬の一般名である。両群とも血糖管理は改善したが、体重の増加は併用群で3.8kg、単独群で7.5kgだった。[6]

基礎代謝とは、安静時の生命活動に使われるエネルギーである。この研究では、両群の基礎代謝も尿に出る糖も、開始時と12か月後の比較で同程度だった。一見すると、エネルギーを失う量が変わるという説明と合わないように見える。しかし解析では、体重変化と血糖変化はそれぞれ基礎代謝の独立した関連要因であり、逆方向の変化が打ち消し合うと説明された。[6]

著者らは、血糖改善に伴って基礎代謝と尿への糖の排出が減ることが、体重増加を促すと解釈した。また併用群では摂取エネルギーが減り、単独群では変わらなかった。ここから読み取れるのは、体重増加の経路が単純な「食欲に負けた」だけには収まらないことだ。食事量が変わらないという本人の感覚も、摂取量と代謝を分けて検討する材料になる。[6]

この比較では、メトホルミン併用群で必要なインスリン量も47%少なかった。摂取エネルギーは併用群で1日1.12MJ減少し、単独群では変わらなかったという測定結果だ。体重に加えて、食事から入るエネルギーと治療量を同時に追っている。[6]

増え方の平均は、治療を受けた集団で変わる

国をまたぐ前向きの観察研究では、インスリン開始後の2型糖尿病の人を診療記録から追った。対象として適格だった2,999人のうち、2,272人を4年間追跡できた。開始時の平均HbA1cは9.5%、糖尿病の罹病期間は平均10.6年だった。治療開始時点ですでに病歴の長い人も含む結果だ。[20]

4年後の体重変化は平均プラス2.7kgで、ばらつきを示す標準偏差は7.5kgだった。変化の多くは最初の年に起きた。HbA1cは平均2.0ポイント低下し、治療の組み立ても経過中に変わっていた。体重の平均だけを持ち出すと、血糖管理がどう変化したかと、集団内の幅を落としてしまう。[20]

この国際研究は3大陸の12か国から参加者を集めている。開始時のBMIは平均29.3で、初めに選ばれた治療は基礎インスリンが52%、混合製剤が23%、食事時と基礎の組み合わせが14%だった。異なる治療の経過を、診療現場で追った研究である。[20]

開始時の体格については、192人をBMIで分けて最初の年を追った研究もある。BMIは身長に対する体重の指標である。体格の異なる群で体重増加率は約3%と近く、群間に有意な違いはなかった。もともと体重が多い人だけの問題、と区切る根拠にはならない結果だ。[17]

国際的な研究では、開始時のインスリン量は平均で1日20.2単位、経過後は45.8単位だった。元の治療の組み立てを続けていた人は55%である。治療を始めたときの処方が、そのまま固定されるとは限らないことも分かる。用量の変化だけを体重の説明に使わず、何を目指して治療を調整してきたかも主治医と共有したい。[20]

低血糖を経験した人の割合は、追跡中の各年で20%未満と報告された。各年に低血糖を経験した人がどれほどいたかを示す値である。体重とHbA1cに加え、低血糖も追跡項目になっていた。治療の経過を、効果と日常の負担の両側から捉えている。[20]

また、開始時の体格を比べた研究では、インスリン必要量の増加率も体格の群間で近かった。増加率は標準体重の群で22%、体重が多い両群で23%だった。メトホルミンを併用した40人では、必要量の増加率が非併用者の26%に対して11%と有意に小さかった。体格による群分けと併用の有無を、それぞれ調べている。[17]

数字で読むインスリン治療後の体重

0.31kg:診療記録研究での開始後の最初の年の平均変化。個人差が大きかった。[9]

10.0%:別の開始時コホートで、最初の年に5kg以上増えた人の割合。[10]

26人:エネルギーの出入りと体重を同時に測った比較研究の対象人数。[6]

4年:国際的な診療記録研究が開始後の経過を追った期間。[20]

約3%:開始時の体格で分けた研究で見られた、各群の体重増加率の目安。[17]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

author avatar
宮川涼 Founder

1

2

関連記事

ご体験予約