β遮断薬を飲む人の体重と運動の目安 心拍が上がりにくい体で汗をかく

β遮断薬の服用中に体重が増えたり、運動しても心拍が上がらなかったりすると、減量を諦めたくなる。糖尿病と高血圧の人の体重比較、甲状腺機能亢進症の消費エネルギー測定、運動試験を手がかりに、薬の種類と病気で違う結果を整理する。自己判断で薬を変えず、主治医と運動の目安を確かめるための読み物である。

β遮断薬を飲みながら走った男性の試験では、心拍数が低くなっても走るタイムに有意な差がなかった。[18] 運動用の時計に以前の数字が出ないと、負荷を足すべきか迷う。服薬中の体では、脈の変化と運動の成績を別々に見たい。

ところがβ遮断薬の運動試験には、心拍数が低くなっても最大酸素摂取量や走る成績に有意な差がなかった報告がある。心拍の表示を、そのまま運動能力の採点表にはできないという手がかりだ。[18]

体重の問題もひとくくりにはできない。糖尿病と高血圧のある人を対象に、同じβ遮断薬の仲間を比べた研究でも体重変化に差があった。[11] 汗や脈の数字を取り戻すために薬を抜くという発想から離れ、何を治療し、何を測っているかから考えたい。

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体重が増えたという結果は、どの薬で得られたか

体重の直接的な根拠になるのが、GEMINI試験の事前に計画された二次解析である。2型糖尿病と高血圧のある1,106人について、カルベジロールとメトプロロール酒石酸塩の治療後の体重変化を5か月で比較した。開始時の平均体重は、それぞれ97.5kgと96.6kgだった。薬を飲んでいない一般の減量希望者を調べた研究とは、出発点が違う。[11]

メトプロロール群の平均増加は1.19kgで統計学的に有意だった。カルベジロール群は0.17kgで、有意な増加とは判定されなかった。カルベジロールからメトプロロールを引いた群間差は−1.02kg、95%信頼区間は−1.43〜−0.60kgだった。信頼区間は、差の推定に伴う不確かさを読むための幅である。単に「薬で太った」とするより、何と比較した変化なのかを残すほうが、この結果の輪郭が伝わる。[11]

GEMINIで比較したのは、同じ2型糖尿病と高血圧を持つ人に使われた薬の違いだった。解析の結論では、インスリン療法を受けていない人で体重増加が最も顕著だったことも記されている。参加者の治療背景まで含めて、メトプロロール酒石酸塩の体重増加を評価した研究である。[11]

この解析は体重とほかの検査値の関係も調べている。体重変化と、血糖管理を表すHbA1c、インスリン抵抗性の指標、血圧の変化には、有意な関連が認められなかった。したがって体重の増減だけから、治療による血糖や血圧の変化まで読み取れない。[11] 家で測る体重と診察室で確認する検査値は、一緒に検討する材料であって、互いの代役にはならない。

体重の試験には、開始時の肥満度によって分けた比較もある。肥満度を表すBMIが30kg/m2を超える集団での群間差は−0.90kg、95%信頼区間は−1.5〜−0.3kgだった。40kg/m2を超える集団では−1.84kg、信頼区間は−2.9〜−0.8kgだった。いずれもカルベジロールからメトプロロールを引いた差である。[11] BMIで集団を分けたときにも、両薬の差が示された。

この研究の中心となる評価項目は体重で、血糖管理にはHbA1c、インスリン抵抗性にはHOMA-IRという別の指標を使った。体重と代謝を複数の指標から調べた設計である。体重の群間差が認められた一方で、各人の体重変化とこれらの検査値の変化には有意な関連がなかった点が、この解析の特徴だ。[11]

β遮断薬は体重だけを目的に使う薬ではない。レビューでは、収縮機能が低下した心不全、心筋梗塞後、不整脈の予防や治療など、循環器の病気での使用と利益が整理されている。[20] 体重の困りごとは主治医に伝える価値があるが、それだけを理由に治療の意味を打ち消さず、自己判断で開始・中止・増減・変更をしないことが出発点になる。

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安静時の消費量は、脈と同じ幅で下がるのか

「脈が落ちたぶん、消費カロリーも大幅に落ちたのではないか」。そう考えると食事をさらに削りたくなるかもしれない。しかし、心拍と安静時のエネルギー消費を同時に測った試験では、それぞれの変化の大きさはそろっていなかった。[4]

対象は、甲状腺の働きが過剰になった明らかな原発性甲状腺機能亢進症の患者19人である。前向きの介入試験として、プロプラノロールを単回投与する前後と、比較のための対照来院時に安静時エネルギー消費を測定した。測り方は間接熱量測定で、呼吸に基づいて消費量を調べる方法である。[4]

安静時の消費は、平均1,639kcal/24hから1,594kcal/24hへわずかに低下した。一方、心拍数は服用90分後に平均81回/分から67回/分へ下がった。対照来院時の消費量には有意な変化がなく、皮膚温は服用後も変わらなかった。著者らは、心拍の明らかな低下に対して、消費量の減少は小さいと評価している。[4]

心拍数と甲状腺ホルモンの濃度にも関連が認められた。遊離T3、遊離T4のそれぞれと心拍数に有意な相関があり、治療前の内分泌の状態も測定していた。皮膚温はあらかじめ決めた11か所で記録し、来院ごとに観察した。心拍、安静時の消費、皮膚温を同じ試験の中で追った結果である。[4]

研究では、熱を作る褐色脂肪組織についても検討している。著者らは、甲状腺機能亢進症で高くなった安静時消費への、この組織の大きな寄与を支持しないとした。消費の小さな低下には心臓のエネルギー消費の減少が関わる可能性を挙げているが、これは著者らが挙げた機序の候補である。[4]

心拍数、きつさ、運動能力を分けて見る

運動中に測る数字にも、それぞれ役割がある。心拍数のほか、運動で取り込める酸素量、続けられた時間、走る成績、本人が感じるきつさが試験で使われている。同じ薬の評価でも、何を運動能力の指標としたかで読める内容が変わる。[5][18]

健康なボランティアにネビボロール、アテノロール、プラセボを順番を替えて使った二重盲検クロスオーバー試験では、安静時の血圧低下が同程度になる用量で比較した。ネビボロールのほうが運動中の心拍や収縮期血圧の上昇を抑える程度が小さく、アテノロールと異なり、最大運動能力と持久的な運動能力を有意に低下させず、主観的なきつさも有意に増やさなかった。[5]

健康な人の比較で使われたのは、ネビボロールとアテノロールである。安静時の血圧への作用をそろえた比較でも、運動中の循環への作用や持久的な運動能力は違っていた。著者らは最大運動能力については血行動態、持久力については運動中の代謝の違いを検討している。[5]

反対方向の手がかりになるのが、高血圧のある男性長距離走者15人の二重盲検クロスオーバー試験である。アテノロールとドキサゾシンを比較すると、アテノロールでは安静時も運動時も心拍数と心拍出量が低下した。心拍出量は心臓から送り出す血液の量を表す指標である。それでも最大酸素摂取量と、一定距離を走るタイムには、両薬の効果の有意な差がなかった。[18]

男性走者の平均年齢は43歳で、ばらつきを表す標準偏差は10歳だった。各治療の前後に最大トレッドミル検査と2マイル走を行い、走るタイムと酸素摂取量を測定した。血圧が同じ程度に下がるように調整した条件で、両薬の運動成績への効果に有意差がなかったという結果である。[18]

薬による変化を比べる試験の中には、同じ参加者が異なる治療を順番に受ける設計がある。クロスオーバーという名称はこの比較の形を指す。走者の研究では、最大努力の検査だけでなく、異なる運動負荷で酸素摂取量や循環を調べていた。[18] 普段の活動で感じる変化と、検査で限界まで動いた成績とを、同じものとして読まないための手がかりになる。

一方、健康な人の薬剤比較では、持久的な運動中のグリセロールと遊離脂肪酸の産生が、ネビボロールで抑えられる程度はより小さかった。著者らは、それが持久力の保持を説明する可能性を示している。[5] 遊離脂肪酸などの産生と、同時に測った持久力とを組み合わせて、薬ごとの運動反応を検討している。[5]

数字で読むβ遮断薬と体重・運動

1,106人:糖尿病と高血圧のある人を対象にした、体重変化の二次解析の人数である。[11]

5か月:同じ解析で体重変化を比較した期間で、長年の変化を表す数字とは区別する。[11]

19人:甲状腺機能亢進症で、単回投与前後の安静時消費を調べた人数である。[4]

15人:心拍数と走る成績の変化を分けて読める、男性走者の比較試験の人数である。[18]

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宮川涼 Founder

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