リノール酸は太る油なのか オメガ6の仮説と共役リノール酸の体脂肪試験

リノール酸を含む油を避ければ痩せるのか。オメガ6と肥満を結ぶ仮説、摂取量と糖尿病を追った観察研究、共役リノール酸の人での試験を区別する。体重・体脂肪・筋肉で結果が違う理由を測定の違いから整理し、サプリの安全性と、食卓の油を自己判断で変える前に確かめたい点を考える。

買い物袋から油のボトルを取り出し、台所に並べる。検索画面には「リノール酸」、別のページには「共役リノール酸」。似た名前を見比べているうちに、普段の料理に使う油の話と、減量用サプリの話の境目がぼやけてくる。食事を変えたい気持ちが強いほど、名前の近さを効果の近さと受け取りやすい。

まず分けるのは、通常のリノール酸と、分子の構造が異なる共役リノール酸だ。後者はCLAとも呼ばれ、食品に含まれるものとサプリに使われるものでも構成が異なる。CLAで体脂肪が変化した試験を、料理の油を減らす根拠にそのまま使うことはできない。[19]

オメガ6と肥満の関係を論じるレビューはある。しかし、肥満の仕組みの仮説、食事を追った観察、人に成分を与えた試験では、答えている問いが違う。油を犯人に決める前に、その違いをほどいていく。[4][10][13]

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リノール酸と共役リノール酸は、名前の途中で分かれる

リノール酸はオメガ6に属する脂肪酸であり、植物油の摂取と肥満の関係を考えるレビューで取り上げられている。一方、共役リノール酸は、リノール酸に由来する、構造の位置や立体的な配置が違う脂肪酸の仲間を指す。同じ名前の一部を持っていても、同じ成分として扱うと研究の読み方がずれる。[4][19]

共役リノール酸のレビューによれば、人が食品から摂る主な供給源は牛や羊の肉、牛乳やチーズなどである。食品で主となる型と、市販の成分調製物に含まれる型の構成には違いがある。したがって、食品に少量含まれる成分の話、特定の型を混ぜた成分を投与する話、植物油に含まれる通常のリノール酸の話は分けて読む必要がある。[19]

ここでいう「型」は、成分の呼び名を細かくする以上の意味がある。どの型を使ったかによって、体脂肪や代謝への作用を考える前提が変わる。レビューでは動物で体脂肪を減らす作用が報告された型について、インスリン抵抗性や肝臓などへの脂肪蓄積にも言及している。インスリン抵抗性は、血糖を調節するホルモンへの体の反応が鈍くなることを指す。このレビューが挙げる脂肪の蓄積先には、肝臓だけでなく脾臓も含まれる。[19]

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オメガ6が肥満に関わるという仮説は、どこまで進んだか

Naughtonらのレビューは、リノール酸の多い植物油の摂取が増えた食生活の変化と、肥満などの増加の関係を論じている。リノール酸はアラキドン酸に変換され、炎症、脂肪細胞の形成、体内の情報伝達系の調節に関わり得る。ここで提示されているのは、過剰な摂取が肥満の発生に関与するかもしれないという仮説だ。[4]

このレビューが背景に置くのは、英語圏の先進国で広がり、東洋や発展途上国にも採用されつつある西洋型の食生活への移行である。入手しやすく価格の低い、リノール酸の多い植物油の摂取増加が、その変化の特徴として挙げられた。焦点は油の名前だけでなく、食生活が変わる過程に置かれている。[4]

Simopoulosのレビューは、オメガ6とオメガ3の比率にも注目する。赤血球の膜にある脂肪酸と、その後の肥満リスクの関係を取り上げ、摂取量だけでなく両者のバランスを重視している。レビューは、赤血球膜のオメガ6やオメガ6とオメガ3の比率が高いほど肥満リスクが高く、赤血球膜のオメガ3が高い場合にはリスクが低いという前向き研究の結果を紹介している。[1]

比率という言葉は、数字がひとつなので扱いやすそうに見える。しかし同じ比率でも、片方を増やしたのか、もう片方を減らしたのかで食事の変更は違ってくる。このレビュー自身が絶対量と比率の両方に言及している。比率だけで食事を評価し、摂取量や測定場所を読み落とすのは慎重さを欠く。[1]

Simopoulosが挙げる経路には、脂肪細胞ができる過程、脂肪組織の褐色化、脂質の調節、脳・腸・脂肪組織のつながりがある。Naughtonらは、リノール酸から生じるアラキドン酸と、食欲などに関わる体内の情報伝達系にも注目した。両者は、脂肪酸と肥満の関係を体内の複数の経路から論じている。[1][4]

摂取量を追った人の研究は、単純な悪者説に収まらない

中国の成人15,100人を中央値14年追跡した研究は、リノール酸とαリノレン酸の摂取量と、2型糖尿病の発症の関係を調べた。αリノレン酸も脂肪酸の名前だが、リノール酸とは区別されている。追跡したのは中国健康栄養調査の参加者であり、研究期間中の2型糖尿病の発症が結果の指標となった。[10]

過体重または肥満の参加者で、摂取量が多い群と少ない群を比較すると、女性のリノール酸摂取では糖尿病の相対リスクが0.56、95%信頼区間が0.36〜0.89だった。男性では0.71、信頼区間が0.41〜1.16だった。女性では統計的に有意な関連が認められた。男性の区間には、差がない場合に相当する1が含まれる。[10]

αリノレン酸については、過体重または肥満の男性で相対リスク0.55、95%信頼区間0.32〜0.93、女性では0.53、0.34〜0.85という関連が報告された。リノール酸とαリノレン酸では男女の結果が異なり、脂肪酸の種類と性別が解析の重要な条件となった。[10]

同じ論文では、肥満モデルのマウスに脂肪酸を加えた食事を与え、腸内細菌や炎症の変化も調べている。マウスには脂肪酸を加えた高脂肪食を15週間与えた。αリノレン酸を与えた雄と、リノール酸を与えた雌で、血中の細菌由来物質に関わる状態や全身・脂肪組織の炎症が軽減したと報告されている。動物実験でも性別によって反応が異なった。[10]

個人差に目を向けた別の研究もある。フランスの集団を合わせた3,069人の解析では、脂肪酸の代謝に関係するFADS1という遺伝子の違いと、腹囲や体格指数などの関連が、リノール酸摂取量によって異なっていた。体格指数はBMIとも呼ばれ、体格を表す指標である。研究では食事からの摂取量、遺伝子型、血中脂質、体格に関わる値を測定し、フランスの3集団の結果を統合した。[16]

比較には、対象集団の摂取量の中央値が使われた。リノール酸とともに調べたαリノレン酸は、1日0.80g未満とそれ以上で分けられている。αリノレン酸の摂取量による、遺伝子と血中脂質・体格の関連の変化は認められなかった。[16]

この解析では、リノール酸の摂取量を1日9.5g未満とそれ以上に分けている。低摂取群では、特定の遺伝子の変異を持つ数が増えるごとに、腹囲が1.58cm小さいという関連があり、高摂取群では同じ関連は見られなかった。同じ低摂取群では、遺伝子の変異を持つ数が増えるごとにBMIも0.46低いという関連があった。腹囲とBMIの両方で、リノール酸摂取量による関連の違いが示された。[16]

また、同研究は腹囲だけでなく血中脂質も扱っている。リノール酸の高摂取群に限って、同じ遺伝子の変異と低いHDLコレステロールとの関連が認められた。HDLコレステロールは血中脂質の指標のひとつである。高摂取群でのHDLコレステロールの差は、遺伝子の変異に対して−0.05mmol/Lと報告された。著者も遺伝子と栄養の相互作用について、確認が必要な結果として位置づけている。[16]

数字で読むリノール酸と人の研究

15,100人:脂肪酸の摂取量と糖尿病発症を追った成人の人数である。[10]

14年:その追跡期間の中央値であり、減量プログラムの期間ではない。[10]

3,069人:遺伝子と食事、腹囲などの関係を解析した対象の合計である。[16]

60人:共役リノール酸の量を分けて体脂肪を比べた試験の参加者である。[13]

47人:その試験を最後まで終えた人数であり、開始時の人数とは分けて読む。[13]

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宮川涼 Founder

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