DASH食とダイエットの科学 減塩だけでは読めない体重と血圧の変化を知る

減塩の食事法として知られるDASH食は、体重にも役立つのか。成人の比較試験をまとめた平均差と、血圧の変化、食事量を抑えた試験の条件を読む。結果が一致しない研究や長期成績も確かめながら、野菜を足すだけで終わらない食卓の見直し方と、期待してよい範囲を考える。

健診の紙には血圧、洗面所には体重計。夕食のしょうゆを控えた日、どちらの数字が変わることを期待しているだろう。味を薄くしたのだから体重も下がってほしい、という気持ちは自然だ。しかし、食事を変える目的が違えば、確かめる成績も違う。

DASH食は血圧の管理を助けるために設計された食事法である。慢性疾患のある人を対象にした試験の統合では、血圧とともに体重にも改善が報告されている。[2] ただし、これを「塩分を減らせば脂肪が落ちる」と読み替えることはできない。資料にある試験は、食品の組み合わせや摂取エネルギーも含む食事全体を比較しているからだ。[1][4]

今回は、減量に使うならどこまで期待できるのかを読む。地中海食との比較や植物性中心の食事の全体像は、それぞれ隣の記事に譲る。ここで見たいのは、血圧を意識した食卓が体重管理にもつながる条件と、同じDASHという名前でも成績が変わる理由である。

DASH食は調味料だけを変える食事ではない

DASHは、高血圧を抑えるための食事アプローチを意味する名称である。[2] 名称に血圧が入っているため、減塩の別名と受け取られやすい。だが、非アルコール性脂肪性肝疾患のある成人を対象にした試験で使われたDASH食は、果物、野菜、全粒穀物、低脂肪乳製品を多くし、飽和脂肪、コレステロール、精製穀物を少なくする組み立てだった。[4] 調味料の量だけを比べた試験ではない。

全粒穀物とは、穀粒全体を使う穀物を指す。この試験では、それを含む複数の食品群を組み合わせた食事が評価されている。[4] したがって、ある食品を買っただけで試験の食事を再現したことにはならない。野菜を食べたという事実と、食事全体をDASH型に組み替えたという事実は別に考えたい。

たとえば、残業帰りに買う夕食を想像する。いつもの弁当にサラダを加える選択と、弁当を含めて食事全体の組み合わせを見直す選択がある。両者を同じ介入として扱うことはできない。これはサラダを否定する話ではなく、何を変更したかをはっきりさせる話だ。研究が調べた食品の構成と、家庭で実際にした変更の距離を確かめる必要がある。[4]

同じ試験では、DASH群も比較群も摂取エネルギーを抑える設計だった。炭水化物は52〜55%、たんぱく質は16〜18%、総脂肪は30%という構成で、食事の量を抑える条件を双方に設けていた。[4] これらは試験で用いた条件であり、読者全員の献立にそのまま指定する数値ではない。糖質を徹底して排除した食事の結果として紹介するのも不正確である。

食卓を見直すときには、「何を足したか」に加えて「何を置き換えたか」を言葉にしてみるとよい。果物を追加した、主食の種類を変えた、乳製品を選び直した。変更の中身が見えれば、研究との照合もできる。ここで紹介する日常の場面は考え方の例であり、その献立自体の減量効果が試験で測定されたという意味ではない。

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体重の平均差は、誰との差なのか

成人の無作為化比較試験をまとめた系統的レビューとメタ分析では、13報が採用された。無作為化比較試験とは、参加者を偶然の割り当てで群に分けて比べる研究である。メタ分析は、複数の研究の結果を統計的にまとめる方法だ。この分析で体重の評価に使われたのは10報であり、DASH食は比較食より8〜24週間で平均1.42kg多く体重が減っていた。[1]

重要なのは「比較食より」という部分である。1.42kgはDASH群の開始前からの減少量をそのまま示した数字ではない。別の食事をした群との変化の差である。[1] 研究の数字を体重計の目標に移す前に、比較の相手と期間を確認する。誰かの実測値を、明日の自分の予定表に書き込むわけにはいかない。

この平均差の95%信頼区間は、マイナス2.03〜マイナス0.82kgだった。[1] 信頼区間は、平均効果の推定にどの程度の不確かさがあるかを示す範囲である。参加者の大多数が必ずこの範囲だけ痩せる、という個人の予測幅ではない。平均差とその推定の幅を一緒に読むことで、小数点の細かさを効果の確実さと取り違えずに済む。

同じ分析では、体重だけでなく、BMIと腹囲も評価された。BMIは身長との関係から体格を見る指標であり、体重そのものとは異なる。比較群との差はBMIでマイナス0.42kg/m²、腹囲でマイナス1.05cmだった。ただし、BMIを扱ったのは6報、腹囲を扱ったのは2報で、評価期間もそれぞれ8〜52週間と24週間である。[1] 指標を並べても、同じ厚さの証拠がそろったわけではない。

体重、BMI、腹囲がいずれも改善したという要旨を見て、体脂肪が同じ割合で減ったと補うことはできない。少なくとも、この要旨の数値は体脂肪の減少量を直接示していない。[1] 家庭の体重計で見た変化と、研究で評価した指標を区別する姿勢が必要だ。細かい体組成の測り方は別の記事で扱い、ここでは数字の種類を取り違えないことに集中したい。

効果は過体重・肥満の参加者で大きく、普段の食事を比較相手にした場合にも大きかった。さらに、低エネルギーのDASH食は、別の低エネルギー食と比較しても体重減少が大きかったと報告されている。[1] 食事の名前だけでなく、開始時の状態、変更の幅、食事量を抑えたかどうかが結果を読む手がかりになる。

普段の夕食がすでに野菜や全粒穀物を取り入れた構成なのか、それとも変更する余地が大きいのか。同じ新しい献立でも、出発点からの距離は違う。この分析の比較相手による違いを踏まえれば、他人の成功談をそのまま借りるより、自分の現在の食卓を書き出して考える方が、研究の条件に即した読み方になる。[1]

血圧の改善を、減量の証明にしない

慢性疾患のある人を対象にした54件の臨床試験を統合したメタ分析では、DASH食と比較群との差は、体重でマイナス1.59kg、BMIでマイナス0.64kg/m²、腹囲でマイナス1.93cmだった。[2] 体重管理に使える可能性を支える結果だが、健康な成人全員の平均と読み替えるべきではない。対象は慢性疾患のある人である。

測定結果として上の値に120、下の値に74が表示されている電子血圧計の写真。
測定結果として上の値に120、下の値に74が表示されている電子血圧計の写真。
写真: Jacek Halicki / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

血圧は、収縮期でマイナス3.94mmHg、拡張期でマイナス2.44mmHgだった。収縮期は血圧表示の上の値、拡張期は下の値として読む数字だ。[2] 体重と血圧の両方で有意な差が出ているが、その並びから「体重が落ちたから血圧が下がった」と仕組みまで断定することはできない。要旨はそれぞれの評価項目の群間差を示している。[2]

また、このメタ分析で全項目が同じように改善したわけではない。総コレステロールの群間差はマイナス5.12mg/dl、LDLコレステロールはマイナス3.53mg/dlで、いずれも有意な低下だった。LDLはコレステロールの測定項目の1つである。一方、HDLコレステロールの差はプラス0.30mg/dl、中性脂肪はマイナス4.22mg/dlで、どちらも有意ではなかった。血糖、インスリン、炎症の指標にも有意な効果は認められなかった。[2] コレステロールにも複数の測定項目がある。健診の紙のどこかが改善したことを、紙全体の改善と受け取らない方がよい。

有意な差がないという結果は、まったく効果がないと確定したこととも異なる。この資料から、その項目への効果を確かなものとして語れない、という線を引くのである。[2] 好ましい数字だけ抜き出すと、食事法の守備範囲が実際より広く見えてしまう。体重のために始めた食事であっても、検査項目を全部動かす万能策として説明しない。

観察研究にも別の手がかりがある。DASH食への適合度と高血圧のリスクをまとめたレビューでは、追跡するコホート研究の統合で、適合度が高い人は低い人に比べてハザード比0.81、95%信頼区間0.73〜0.90だった。[17] ハザード比は追跡中の発生の速さを比較する指標で、これは食事の特徴と高血圧リスクの関連を表す。

参加者を食事群に無作為に割り当てた結果ではないため、DASH食が単独で原因となってリスクを下げた、とまでは言えない。さらに、この分析では将来の研究で見られる効果のばらつきを示す予測区間が0.61〜1.08で、差がないことを示す1を含んでいた。[17] 平均の関連は好ましくても、あらゆる集団で同じ結果が出るとの保証はない。観察の結果と介入試験の結果を、同じ札を付けて扱わないことが大切だ。

健診の説明を聞いた帰りに、減塩と減量を同じ買い物の目標にすることはあり得る。ただし、この資料の群間差を、塩分だけを変えた効果として抜き出すことはできない。食品の構成と食事量を含む介入が評価されているためである。[4] 家庭で試すときも、薄味にしたこと、食材を選び直したこと、食事全体を見直したことを区別して振り返りたい。体重が変わった場合に、その原因を調味料だけに決めつけないための整理だ。血圧の管理を助けるという当初の目的と、減量の成績が報告されたという事実は、両方を残して読むことができる。[2]

数字で読むDASH食と体重

8〜24週間の体重差はマイナス1.42kg。成人の試験統合で、比較食との差を表す。[1]

その95%信頼区間はマイナス2.03〜マイナス0.82kg。個人の減量予測ではない。[1]

慢性疾患の試験統合では体重差マイナス1.59kg。対象の違いにも目を向けたい。[2]

同じ統合の収縮期血圧差はマイナス3.94mmHg。体重とは別の評価項目である。[2]

普段の食事との比較で6か月の体重差はマイナス3.6kg。長期の維持を保証する数字ではない。[20]

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