植物と動物のたんぱく質を6か月以上補給して比べた18試験では、体重も脂肪も筋力も差が出なかった。一方、食事を丸ごと菜食に替えた16週の試験では体重が落ちた。源の違いと食事全体の違いを分け、筋肉の合成、付け合わせ、幼い時期の研究まで確かめる。
体重を落としたいとき、たんぱく質は豆や大豆から取るのがよいのか、それとも肉や魚、卵や乳から取るのがよいのか。どちらかに決めないと前へ進めない気がして、献立の本を二冊並べたまま夕方を迎えたことはないだろうか。
植物の側には「体に優しい」「脂肪が少ない」という評判が、動物の側には「筋肉になりやすい」「腹持ちがよい」という評判がついて回る。どちらの評判も、ある条件では当たり、別の条件では外れる。外れ方を知らないまま源だけを入れ替えると、動かない体重計の前で、どちらの評判を信じたかを悔やむことになる。
研究者はこの問いを、粉末のたんぱく質を半年以上飲み比べる試験、食事を丸ごと用意して数週間で入れ替える試験、一皿の主菜だけを差し替える実験と、いくつもの大きさで確かめてきた。結果は試験の大きさごとに違う顔を見せる。その違い方こそが、台所で迷う人の手がかりになる。[1][8][7]
半年以上の18試験では、源の違いは体に出なかった
植物と動物のたんぱく質を長い期間で比べた試験を集めたのが、Yimamらの系統的レビューとメタ分析だ。対象は18歳以上の成人で、植物のたんぱく質を濃縮・分離した製品と、動物のたんぱく質を、少なくとも6か月補給して比べた無作為化比較試験に限った。条件に合ったのは18試験、参加者は合わせて1,893人だった。[1]
結果は驚くほど平らだった。除脂肪量(脂肪以外の体の重さ)、脂肪量、体重のどれにも、統計的に意味のある差は出なかった。上半身と下半身の筋力、歩く速さ、椅子から立ち上がる検査、立って歩いて戻るまでの時間の検査、高齢者の体の働きを点数にする検査でも同じである。血中の脂質、血圧、空腹時の血糖とインスリン、インスリンの効きにくさを示す指標にも差はなかった。[1]
補給された植物のたんぱく質は、多くが大豆のたんぱく質だった。ここは読み違えやすい。この分析の植物の側は、豆腐や納豆の食卓というより、ほぼ大豆のたんぱく質を濃縮・分離した製品である。食品に一緒に含まれる食物繊維や脂質、組み合わせる主食の違いまでは、この比較に入っていない。[1]
効果の大きさは、標準化平均差という単位のない尺度で統合された。試験ごとに測り方の違う値を同じ物差しにそろえる方法で、次の試験で出そうな値の幅を示す予測区間も添えてある。著者らは試験のあいだのばらつきを踏まえ、いまのところ源の違いによる差を示すはっきりした証拠はないと結論し、その条件として「十分な量のたんぱく質を取り続ける限り」という但し書きを付けた。源の話より先に、量の話が来るということだ。[1]
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
減量中の食事で、量と源を同時に動かした小さな試験
源と量を一つの試験で動かしたのが、中年の成人18人を対象にしたAldrichらの試験である。5か月のうち、初めの8週は食事を管理して出し、続く12週は自由に食べてもらった。エネルギーを抑えた食事のまま、3つの組に分けている。炭水化物55%・たんぱく質15%・脂質30%の対照の組、たんぱく質を30%に増やした組、そして増やした15%の分をホエイ(乳清)のたんぱく質にした組だ。[2]

写真: Sanjay Acharya / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
体重と体脂肪の減り方の合計に、組のあいだの統計的な差はなかった。ホエイの組は対照の組より体重がよく減る傾向(P=0.08)と、体脂肪がよく減る傾向(P=0.09)を見せたが、差と言える水準には届いていない。脚と、腰から太ももにかけての部位の脂肪は、ホエイの組で対照の組より多く減り、収縮期血圧(上の血圧)の下がり方も大きかった。[2]
18人を3組に分けた試験なので、1組は数人にとどまる。部位ごとの脂肪の差は気になる結果だが、それだけで「乳のたんぱく質は脚から痩せる」と読むのは早い。題名のとおり、源を変えても量を変えても、減量中の体重全体の減り方は大きく動かなかった試験として受け取りたい。乳清のたんぱく質を補う試験を広く見たい人は、「ホエイプロテインで体は変わるか 補給試験で見分ける脂肪と筋肉への上乗せ」の記事に譲る。[2]
筋肉を作る速さは、エンドウ豆でも乳でも同じだった
50〜70歳の27人を対象にしたKorzepaらの単盲検の無作為化試験は、体重1kgあたり1日1.0gのたんぱく質を、乳のホエイを足した動物中心の食事か、エンドウ豆のたんぱく質を足した植物中心の食事で10日間とってもらった。その間、片脚だけ膝を伸ばす筋力トレーニングを1日おきに行い、鍛えた脚と鍛えていない脚の筋肉を、重水を飲む方法と筋肉の一部を採る検査で比べている。[6]
1日あたりの筋線維のたんぱく質の合成の速さは、どちらの食事でも鍛えた脚のほうが高かった。動物中心の組で鍛えた脚が1.44%、鍛えていない脚が1.29%、植物中心の組で順に1.50%、1.34%で、同じ脚どうしで比べた食事の組の差はなかった。筋力、筋肉の形、代謝の速さ、腎臓の働き、体全体の窒素の出入りは、10日では食事でも運動でも変わっていない。植物中心の組だけで、HDL以外のコレステロールが3.89から3.37 mmol/Lへ下がった。[6]
著者らが結論で前に出したのは、源ではなく運動のほうだった。普通にたんぱく質を含む食事をとっている中高年では、筋肉を使うことが合成を高め、源はそこに影響しなかった。10日という短さと27人という人数は、この結果を読むときの物差しとして手元に置いておく。[6]
では、植物のたんぱく質に弱点はないのか。吸収の面では別の測り方がある。動物のたんぱく質は一般に植物よりも効率よく吸収され、エンドウ豆のたんぱく質はメチオニンが少なく、筋肉の健康に関わる分岐鎖アミノ酸も少ない、とJägerらは試験の前提に書いている。体を動かす習慣のある男性15人がエンドウ豆のたんぱく質20gを、乳酸菌の仲間の微生物か偽薬と一緒に2週間とった交差試験では、微生物と一緒のときに血中のメチオニンや分岐鎖アミノ酸などの最高濃度と、時間をかけて積み上げた量が増えた。[16]
吸収の差と、半年以上の試験で体組成に差が出なかった結果は、食い違うようで食い違わない。前者は一回分を口にした後の血液の数時間を見ており、後者は足りる量を取り続けた体の数か月を見ている。測る時間の長さが違えば、見える差の大きさも変わる。[16][1]
数字で読む植物と動物のたんぱく質
18試験・1,893人:6か月以上、植物と動物のたんぱく質の補給を比べた無作為化試験の数と参加者の合計。体組成にも筋力にも統計的な差はなかった。[1]
−6.5kg:過体重の人が16週菜食にした組の体重の変化を、対照の組と比べた差。95%信頼区間は−8.9〜−4.1kgで、たんぱく質だけでなく食事全体を替えた結果だ。[14]
1.50%と1.34%:植物中心の食事をとった中高年の、1日あたりの筋線維のたんぱく質の合成の速さ。順に鍛えた脚、鍛えていない脚で、動物中心の食事との差はなかった。[6]
13〜16%:ポテトを付け合わせた食事で、ご飯を付け合わせた食事より少なかった総エネルギー摂取。主菜が肉団子でも植物の代わりの団子でも同じ比べ方をしている。[7]
9.67:乳児期の動物のたんぱく質の摂取が最も多い3分の1の子の、残りの子に対する8歳での過体重のオッズ比(調整後)。95%信頼区間は2.56〜36.53で、120人を追った予備的な研究の値である。[20]
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
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