肝硬変の体重管理は筋肉から 握力の低い人で死亡の危険が2.2倍だったメタ分析

肝硬変まで進んだ人では、体重の数字より筋肉の量と力が問われる。サルコペニアと死亡のメタ分析、太って見える患者の体組成、合併症が出る前の時期の割れた結果、たんぱく質の源やBCAAの試験、移植後の筋肉の経過から、主治医の管理下で体重を考えるときに何が測られてきたかを確かめる。

「肝臓が悪いなら、まず痩せなさい」。健診の結果を見た家族や知人から、こんな言葉をかけられた人は少なくないはずだ。肝臓と脂肪の話は世間で何度も繰り返され、痩せることはほとんど肝臓の薬のように語られている。脂肪肝の段階で体重と肝臓の脂肪がどう動くかは、この特集の「脂肪肝は減量で戻るのか 体重と肝臓の脂肪、線維化で違う改善の確かめ方」の記事が扱った。

ところが、肝硬変まで進んだ人を調べた論文を集めると、主役が入れ替わる。問われているのは体重計の目盛りより、筋肉の量と力だ。筋肉が減り、力も落ちていく状態をサルコペニアと呼ぶ。15研究をまとめたメタ分析では、握力で判定したサルコペニアのある肝硬変の人は、そうでない人に比べて死亡のハザード比が2.21だった[1]。

「痩せる」という一語は、脂肪が減ることと筋肉が減ることを区別しない。肝硬変の体では、その区別が先々の経過と結びついている。体重を落とすかどうか、どこまで落とすかを決めるのは主治医である。読者が持ち帰れるのは、その判断の材料としてどんな物差しが使われてきたかという知識のほうだ。体重計の数字は、その物差しの一本にすぎない。

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太って見える肝硬変が増えている

Santangeliらのレビューは、ここ数十年の肥満の広がりとともに、代謝の異常が肝臓病の最大の原因になったと述べる。そのため肝硬変の人の典型的な姿は大きく変わり、過体重や肥満に見える人が劇的に増えたという[17]。

このレビューが描く暮らしは、ねじれている。体を動かす量が少なく、エネルギーは多すぎるのに、たんぱく質と微量栄養素は足りない。そうした生活の中で、筋肉が少なく脂肪が多い「サルコペニア肥満」と呼ばれる複雑な状態になりやすく、それが肝硬変の人の病気の重さや死亡に悪く響くと整理されている[17]。食べ過ぎていて、しかも栄養が足りない。皿の上の量と体の中の材料が、別々の帳簿で動いているような状態である。

サルコペニア肥満の一般的な見方は、この特集の「サルコペニア肥満とは何か 筋肉が少なく脂肪が多い体で、何を測り何を保つか」の記事に譲る。肝硬変に固有なのは、病気そのものが筋肉を削る仕組みを持っている点だ。Goyalらのレビューは、筋肉を減らす要因として、血液中のアンモニアの多さ、全身の炎症、ホルモンの乱れ、低栄養、飢餓の状態に早く入ってしまうこと、腸と肝臓と筋肉のつながりの変化、そして体を動かさないことを並べている[9]。並んでいるのは食事の量だけでは片づかない要因が多く、体重計の数字を減らす工夫だけでは、どれにも手が届かない。

体の中を実際に画像で見た研究もある。急に悪化して入院した肝硬変の人519人について、腰の骨の高さで撮ったCT画像から、筋肉の少なさ、皮下脂肪の少なさ、内臓脂肪の多さなどを判定した後ろ向きの研究だ[7]。年齢の中央値は64.0歳で、女性が51.6%とやや多かった。女性で最も多かった単独の異常は内臓脂肪の多さで38.4%、男性でも内臓脂肪の多さが最も多く74.9%に達した[7]。

男性で最も多い重なり方は、筋肉が少なく、同時に皮下脂肪も少ない型で15.1%だった。女性では3つの異常を抱えた人の生存率が33.3%と最も低かった[7]。入院するほど悪化した人の中に、お腹の奥に脂肪を抱えた人がこれほどいる。肝硬変を「痩せていく病気」としてだけ思い浮かべていると、この姿は見落とされる。

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筋肉の少なさは、どの物差しで測っても危険と結びついたか

サルコペニアの測り方は一つではない。CTで筋肉の断面積を測る方法、握力を測る方法、超音波、DXAと呼ばれるX線の吸収で体の組成を見る方法がある。Xieらのメタ分析は15研究を集め、測り方ごとにサルコペニアと死亡の結びつきを比べた[1]。

結果を測り方別に並べると、CTによる判定全体で死亡のハザード比は2.06、95%信頼区間は1.65〜2.57だった。ハザード比は、時間を追う中で出来事の起こりやすさを、サルコペニアのある人とない人で比べた値だ。CTのうち、骨格筋指数(SMI)で判定した研究では1.88、大腰筋の面積や厚さの指標で判定した研究では3.19だった[1]。DXAでは2.38で、信頼区間は1.47〜3.84である[1]。

握力も同じ方向を指した。ハザード比は2.21、信頼区間は1.61〜3.05で、握力の低下と死亡の危険の関連は統計的に明確だった[1]。一方、超音波では2.11と数字は近いものの、信頼区間が0.75〜5.96と広く、統計的に明確な差には届かなかった[1]。病院の廊下にあるような握力計が、大がかりな画像検査と同じ向きの答えを出している。

ただし研究者は、根拠が最も一貫しているのはCT、とくに骨格筋指数だとし、握力や超音波、DXAを調べた研究はまだ少なく、測り方どうしの優劣は決められないと書いている[1]。握力が手軽だからといって、CTの代わりが完全に務まるとまでは言えない。

移植の前後でも、筋肉の少なさは重く見られている。Markakisらのメタ分析は、肝移植を受けた肝硬変の人を調べた30のコホート研究、計5,875人を統合した[3]。移植前のサルコペニアの割合は研究によって14.7〜88.3%と大きく開いていた。移植前にサルコペニアがあった人は、なかった人に比べて移植後の死亡の相対リスクが1.84、95%信頼区間は1.41〜2.39だった[3]。移植後の感染症、手術の合併症、新鮮凍結血漿の輸血、集中治療室の滞在の長さとも関連していたが、研究間のばらつきは大きかった[3]。

門脈圧亢進症という、肝臓へ向かう血管の圧が高くなった状態の肝硬変の人97人を調べた研究では、サルコペニアと、体の弱り方を測る虚弱の両方が評価された[10]。サルコペニアは26%、虚弱は40%の人に見られた。移植を受けずに生きた期間の中央値は、どちらも無い人で10.3か月、サルコペニアのある人で3.6か月、虚弱のある人で4.5か月、両方が重なった人で1.8か月だった[10]。虚弱を考慮しても、サルコペニアは独立した予測因子として残った[10]。

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合併症が出る前の時期には、結果がそろわなかった

肝硬変には、肝臓がまだ持ちこたえている段階と、腹水などの合併症が表に出た段階がある。前者を代償性、後者を非代償性と呼ぶ。Goyalらのレビューは、サルコペニアと虚弱はどちらも非代償化や入院、死亡を独立して予測すると書く[9]。

しかし、合併症の出ていない代償性の肝硬変に絞ると、話は単純でなくなる。Becchettiらの系統的レビューは、サルコペニアを調べた8研究、計829人と、虚弱を調べた4研究、計552人を集めた[5]。サルコペニアの割合は研究によって8〜63%と幅があった。研究に入った時点で代償性だった人では、サルコペニアが非代償化の危険の高さと関連した研究もあれば、関連しなかった研究もあった[5]。

さらに、これまで一度も非代償化を経験していない人に絞ると、12〜61か月の追跡の中で、初めての非代償化の危険が高まらないとする研究が多かった[5]。虚弱については4研究のうち2研究が、非代償化と死亡の危険の高さを報告していた[5]。著者らは、代償性の肝硬変でサルコペニアはよく見られるものの、多くの研究では初めての非代償化や死亡の独立した危険にはつながらなかったと結論し、よく設計された多施設の前向き研究が必要だとしている[5]。

この食い違いは、どちらかが誤りだという話とは限らない。合併症をすでに経験した人も混ぜた集団と、未経験の人だけの集団では、問いそのものが違う。筋肉の少なさが危ないという話は、病気の段階を言い添えないと、少し言い過ぎになる。早い段階の人ほど、この区別は自分ごとになる。

門脈の圧と筋肉は、物差しで向きが変わった

肝硬変の重さを示す数字の一つに、肝静脈圧較差がある。肝臓の血管の圧の高さを表す値で、門脈の圧の目安として使われる。筋肉や脂肪の量とこの圧が関係するなら、体組成から病気の進み具合が読めるかもしれない。Yangらは9研究、計1,569人をまとめ、CTで測った体組成と肝静脈圧較差の関係を調べた[13]。

結果は、筋肉の指標でも脂肪の指標でも、圧との明確な相関は見つからないというものだった[13]。面白いのは、サルコペニアの有無で圧を比べた解析である。アジアのサルコペニアの定義を使うと、サルコペニアのある人のほうが圧は高い方向で、標準化平均差は0.628、信頼区間は−0.350〜1.606だった。欧米の基準値を使うと逆に、サルコペニアの無い人のほうが圧は高く、標準化平均差は−0.201、信頼区間は−0.366〜−0.037だった[13]。

同じ問いに、物差しの出どころで答えが裏返る。研究者も、圧の差はサルコペニアの線引きの値に左右されるらしいと結んでいる[13]。筋肉の量だけを見て、肝臓の中の圧まで推し量るのは、いまの時点では無理がある。

97人の研究は、筋肉と代謝の別の側面も見せた。サルコペニアだけがある人と虚弱だけがある人を比べると、多くの点で似ていたが、サルコペニアだけの人はBMIの中央値が23と、虚弱だけの人の28より低かった[10]。安静にしているときのエネルギー消費を間接熱量測定という方法で測ると、サルコペニアだけの人の60%が消費の多い側に分類され、虚弱だけの人では0%だった[10]。筋肉が少ない人が、休んでいる間にも多くのエネルギーを使っている場合がある。食べる量を削る話を、この結果と切り離して進めるのは危うい。

数字で読む肝硬変と筋肉

  • 2.06:CTで判定したサルコペニアのある肝硬変の人の、ない人に対する死亡のハザード比。15研究のメタ分析[1]
  • 1.84:移植前にサルコペニアがあった人の、なかった人に対する移植後の死亡の相対リスク。30研究・5,875人の統合[3]
  • 74.9%:急な悪化で入院した男性の肝硬変の人のうち、CTで内臓脂肪が多いと判定された人の割合[7]
  • 1.8か月と10.3か月:門脈圧亢進症のある97人で、順にサルコペニアと虚弱が重なった人、どちらも無い人の、移植を受けずに生きた期間の中央値[10]
  • 8〜63%:代償性の肝硬変を調べた研究で報告されたサルコペニアの割合の幅[5]

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宮川涼 Founder

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