格闘技の計量前の減量は体に何を残すか 水抜き後の筋力と腎機能の研究

格闘技の計量前に行う急速減量は、体重が戻れば体も回復したと言えるのか。柔道・レスリング・ボクシングの研究から、筋力、筋肉の燃料、腎機能、気分や食行動への影響を確かめる。回復後に成績が落ちなかった試験も取り上げ、水抜きを一般のダイエットに持ち込まないための境界を考える。

計量を通過したあとに体重を戻せるなら、その前に落とした分は体に何も残さないのだろうか。試合を観る側には短い準備の一幕でも、選手の体では減らす過程と戻す過程が続いている。判定を待つ相手は、対戦選手だけではない。

格闘技の急速減量は、普段より軽い階級の計量を通り、その後に体重を戻して試合に臨むことを狙う行為である。自発的な脱水を伴う点が重要だ。運動成績をまとめたメタ分析では、回復後の成績全体に明確な差が出ない一方、減量直後には低下する項目があった。測る時点によって見えるものが変わる。[1]

日常のダイエットにこの成功談を移す前に、計量の数字、動く能力、体の状態を分けておきたい。ここで扱うのは、試合前の短期間に体重を動かす研究だ。健康目的で時間をかける体重管理とは、目的を区別している。計量を通ることと、その方法を日常に勧められることの間には、研究で確かめるべき距離がある。[1][6]

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軽くしてから戻す、競技特有の体重管理

計量時に軽いことを目指し、試合時には重さを取り戻す。この順序を知らずに「選手が短期間で減量した」とだけ聞くと、落ちた体重を長く維持した成果のように感じてしまう。ところが、格闘技の研究が追っているのは、急速な体重減少と、その後の急速な増加を含む一連の変動なのである。[1][14]

2019年の系統的レビューは、ボクシング、柔道、総合格闘技、テコンドー、レスリングの16研究、計4,432人を扱った。計量後に体重を戻すために許された時間は3〜32時間と幅があり、増加の大きさは競技や大会の構造、回復時間に影響されると整理された。同じ「格闘技の減量」でも、計量から試合までの条件には違いがある。[14]

このレビューで減量を報告したのは3研究、増量を報告したのは14研究だった。両方を扱う研究があるため、数字は単純には足せない。著者らは、計量後に増えた量を、その前に減らした量の代わりとして扱う根拠が不足していると指摘した。戻った体重を見て、逆算で減量の全容が分かったつもりにならないことが大切だ。[14]

対象の内訳にも偏りがある。女性156人に対して男性は4,276人で、女性の情報は乏しいとされた。選手全体の平均を、そのまま女性の一般読者に重ねることはできない。競技の体重調整を扱う論文は、生活の中で体脂肪を減らしたい人にとって、速さをまねる見本よりも、体重という指標の限界を知る材料になる。[14]

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減量直後の筋力と、回復後の成績を分ける

2022年のメタ分析は、急速減量の前、直後、さらに回復と急速な体重増加を経た後を比べた。回復後の測定は減量から3〜36時間後である。前と回復後の運動成績全体の差は、効果量0.22、95%信頼区間は−0.18〜0.62だった。差を共通の尺度で表した効果量の幅にゼロを含み、明確な変化は認められなかった。[1]

一方、減量前と直後の比較では、最大筋力の効果量は−0.29、反復する高強度運動の成績は−0.37で、小さな低下が認められた。信頼区間はそれぞれ−0.54〜−0.03、−0.59〜−0.16である。著者らは、選択した成績の一部が低下する証拠があり、体重を戻すことでそれが回復するかはなお不明確だとした。[1]

研究を読む際は、測定の時点と対象をそろえる。回復後の運動成績に明確な差がないことは、筋肉の燃料、筋損傷、腎機能、食行動まで元に戻った証拠にはならない。グリコーゲン濃度の低下率を筋肉量の減少率に読み替えたり、心臓の血液指標の変化を機能障害と同一視したりするのも避けたい。それぞれの研究が実際に測った結果を並べることが出発点になる。[1][2][5][6][10][16]

ボクサーを調べた小規模な実験は、その違いを具体的に見せる。競技選手9人が、急速減量を行う条件と対照条件を、順序を無作為に入れ替えて経験した。約3%の体重減少後には、膝を伸ばす最大の力が対照より12%低く、一定の力を保てる時間も69±20秒で、対照の86±34秒より短かった。[19]

この実験で測ったのは、短い最大収縮と、持続する収縮である。実際の試合の勝敗とは測定対象が違う。選手の技術や相手の動きを含む勝負と、検査室での力を区別して読む必要がある。それでも、「少し減らしただけなら、力には関係しない」という受け取り方に、この実験は待ったをかける。[19]

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成績が落ちなかった柔道試験も省かない

急速減量への注意を促すときも、悪い結果だけを選んでは全体像を失う。柔道選手を調べた2010年の研究では、減量経験のある7人を減量群、体重を繰り返し増減させない7人を対照群とした。減量群は自分で選んだ方法で体重を5%減らし、計量後に4時間、食事と水分を補給する機会を得た。[7]

評価は柔道に関わる運動課題、模擬の対戦、自転車を用いた高強度の検査だった。両群の成績は測定後に改善し、群によって変化が違うという結果は認められなかった。著者らは、減量経験者が回復時間を取ったこの条件では、柔道に関わる成績への影響がなかったと結論した。[7]

食事の記録では、減量群のエネルギーと主要な栄養素の摂取量は対照群より有意に少なかった。回復の4時間には食事と糖質を多く摂取していた。乳酸濃度には変化がなく、減量群の安静時の血糖は有意に低下した。運動課題の成績が保たれたのと同時に、食事や血液にはこうした変化が記録されていた。[7]

ただし、この試験では、経験者と未経験者を同じ条件で無作為に割り付ける設計は採っていない。減量群はもともと体重の増減を経験していた選手であり、著者ら自身が、未経験者に結果を広げるべきでないと記している。「慣れれば安全」という証明に変えてしまうと、研究の対象の説明を、安全性の保証へすり替えることになる。[7]

2023年の系統的レビューも、結果の不一致を残している。減量経験のある格闘技選手184人を含む16研究のうち、6研究は成績への影響を報告せず、10研究は成績や心理・生理の項目で悪影響を報告した。研究の本数を賛成票と反対票にするより、何を測ったか、どんな条件だったかを確かめる読み方が必要になる。[15]

このレビューは、数週間をかけた段階的な体重管理を勧めている。一方、許容できる運動成績について論じた減量幅や回復時間は、一般読者が水抜きを試してよい境界には置き換えられない。力が出るかを論じる条件と、健康上の害を避けられる条件は分けて考えたい。[15]

筋肉の燃料と筋損傷は別々に調べる

筋肉には、運動時に使う糖の貯蔵形態であるグリコーゲンがある。よく鍛えられた男性レスラー12人を無作為に分けた試験では、体重を5%落とす条件の群で、その筋肉内濃度が54%低下した。食事のエネルギー制限に運動、水分制限、脱水の方法を組み合わせた減量だった。[5]

同じ試験では、減量後に17時間の補給を経て模擬大会を行う群も設けた。著者らは、減量による筋グリコーゲンの大きな減少は、補給期間に大部分が回復したと整理した。体重が減る局面と補給後の局面は、筋肉の燃料から見ても同じ状態ではない。[5]

この実験で採取したのは上腕二頭筋の試料だった。参加者はいずれも、参加を妨げる病気がなく、年に少なくとも3回の急速減量を医学的な合併症なく経験していた。減量の経験がある、よく鍛えられた男性を対象に、筋肉内の燃料の変化を直接調べた試験である。[5]

別のクロスオーバー研究では、柔道選手18人が運動だけの期間と急速減量の期間を経験した。急性の筋損傷の指標として測ったミオグロビン、クレアチンキナーゼ、アルドラーゼは、減量の期間にのみ有意に増加した。燃料の蓄えとは違う側面から、筋肉への負担を捉えた結果である。[2]

柔道選手の研究では、運動のみの期間は4日、急速減量の期間は3日で、7日連続して検査した。筋損傷の指標は研究の6日目に最大となり、血液中のヘモグロビンと、血液に占める赤血球の割合を示すヘマトクリットは7日目に最大となった。同じ採血の中でも、指標の種類によって変化の頂点がずれていた。[2]

数字で読む計量前後の研究

4,432人:競技別の急速な減量と増量をまとめた系統的レビューの対象者数。女性のデータは少なかった。[14]

−0.29:メタ分析における減量直後の最大筋力の効果量。共通尺度で示した小さな低下。[1]

12%:ボクサーの実験で対照条件より低かった、減量後の膝を伸ばす最大の力。[19]

54%:レスラーの減量条件で低下した、上腕二頭筋のグリコーゲン濃度。[5]

18人:運動だけの期間と急速減量の期間を比較し、筋損傷の指標を測った柔道選手の人数である。[2]

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宮川涼 Founder

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