ナルトレキソンとブプロピオンの併用薬 食べたい気持ちに働く減量薬の試験と副作用

ナルトレキソンとブプロピオンの併用薬は、食べたい気持ちと体重にどう働くのか。比較試験での減量幅、吐き気と効果の関係、治療の中断、脂肪と除脂肪量の変化を確かめる。海外の研究結果を日本での使用可否と分け、自己判断で薬を始めず、医師と治療を考えるための読み物。

減量薬の試験で吐き気が多く、体重も減った。この結果だけを見ると、気分が悪くて食べられなかったのだろう、と考えたくなる。ナルトレキソンとブプロピオンを組み合わせた大規模試験では、実際に偽薬より吐き気が多かった。[4] ところが、別の統合解析では、吐き気のあった人となかった人の体重変化に有意な違いがなかった。[8]

同じ薬の研究でも、不調の頻度と減量の理由は別々に調べると見え方が変わる。食欲が変わること、不快感が出ること、治療を続けられること。その区別が、この併用薬の数字を読む出発点になる。[3][8][16]

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食べたい気持ちに働くという説明は、どこまで確かか

ナルトレキソンとブプロピオンの併用は、脳が体重や食行動を調節する仕組みに着目して開発された。作用機序を扱ったレビューは、食物への強い欲求や気分に関わる報酬系と、視床下部の調節系を取り上げている。報酬系とは、食べ物などを求める気持ちに関わる脳内の仕組みを指す。ただし、このレビューが書かれた時点でも、組み合わせの作用は完全には解明されていなかった。[10]

ここでいう食物への渇望は、「あの食べ物を食べたい」という強い欲求として読むと分かりやすい。薬の研究では、空腹に関わる仕組みと、食べ物を求める仕組みの両方が検討されている。[10] お腹がすいたという感覚と、特定のものに手が伸びる感覚を、同じ言葉で片づけないところに、この研究の関心がある。

人での結果としては、過体重または肥満の参加者を対象とした無作為化比較試験で、本人が報告する「食べ方のコントロール」の改善が偽薬より大きかった。無作為化とは、どちらの群になるかを偶然に任せて、出発点の違いを小さくする割り付け方である。試験では体重に関わる生活の質にも改善が見られた。[3]

この食行動の評価は、参加者自身による報告だった。[3] 脳内の説明図に加え、治療中に本人が食べ方をどう感じたかを調べた点に、この試験の特徴がある。

併用に意味があるかも、単剤と比べて調べられている。合併症のない肥満の患者419人を対象とした用量探索の二重盲検試験では、偽薬、各単剤、併用の群が設けられ、最小限の食事・運動の要素も含まれていた。二重盲検とは、参加者と評価する側に割り付けを伏せる方法である。併用は概して単剤より減量が大きかったが、すべての組み合わせで一様に差が出たわけではなかった。[15]

この試験の24週時点では、ある併用群の偽薬との差は体重変化率で−4.65ポイント、95%信頼区間は−6.20〜−3.09ポイントだった。信頼区間は、推定値の不確かさを幅として示すものだ。より多いナルトレキソンを用いた群で、減量が最大になったわけでもなかった。脱落の少なさが成績に関係したと著者らは述べている。[15] 薬を増やせば数字がよくなる、という直線的な話にはならない。

作用機序のレビューは、試験管内の実験、動物を含む生体での実験、臨床研究を合わせて検討している。ナルトレキソンとブプロピオンのそれぞれが視床下部と報酬系に及ぼす作用を調べ、食物摂取や渇望、体重に関わる行動とのつながりを論じたものだ。[10] 人で得た体重の結果と、その背景を探る実験を行き来しながら開発が進められた。

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平均の減量と、減った人の割合を並べる

主要な試験の一つが、米国の施設で行われた成人1,742人の比較試験である。対象は18〜65歳で、体格指数が一定範囲にある肥満の人、または脂質異常症や高血圧を伴う過体重の人だった。全員に軽度のエネルギー制限食と運動が処方され、薬を組み合わせる群と偽薬の群を比べた。[4]

主解析での56週の平均体重変化は、ナルトレキソン32mgとブプロピオン360mgを組み合わせた群で−6.1%、偽薬で−1.3%だった。同じ時点で体重を5%以上減らした割合は、併用群48%、偽薬群16%であった。[4]

平均値と達成割合は、異なる疑問に答えている。平均は群全体としての動き、達成割合は一定の変化に届いた人の多さを示す。この試験では併用群でも、解析対象の全員がその減量幅に届いたわけではなかった。[4] 自分も平均どおりになると受け取るより、効果が出る人とそうでない人を含む成績として見たい。

別の二重盲検比較試験では、過体重または肥満の1,496人を併用薬と偽薬に割り付けた。56週の平均体重変化は−6.4%と−1.2%、体重を5%以上減らした割合は50.5%と17.1%だった。心血管・代謝に関わる複数の指標も改善していた。[3] 別の参加者集団でも、偽薬より体重が減る方向は一致していた。

この試験が主な評価時点に置いたのは28週で、その時点の体重変化は併用薬群−6.5%、偽薬群−1.9%だった。[3] 見出しにある長期の数値だけでなく、いつの結果を主な問いとして設計したかも確認したい。28週に5%以上の減量に達した割合も測定され、併用薬群55.6%、偽薬群17.5%だった。体重変化と達成割合の双方で、併用薬群の成績が有意に上回っていた。[3]

複数の無作為化試験を扱ったレビューは、56週の併用薬群の減量を5.0〜9.3%、偽薬との差を3.2〜5.2ポイントとまとめている。[18] 別の系統的レビューも、偽薬を差し引いた減量を約4.5%と推定した。[20] 薬の群の減量全体と、比較相手を差し引いた差を混ぜると、上乗せ効果を大きく読みやすい。

また、比較相手も食事や運動の支援を受けている。食事・運動を伴う治療全体の中で、併用薬を加えた群にどんな違いが出たかを調べた結果である。

もう一つ大事なのが、試験に残った人の扱いだ。成人1,742人の試験で56週の治療を完了したのは870人、全体の50%だった。一方、主解析には1,453人が含まれ、服薬中に得られた最後の体重を後の評価に持ち越す方法が用いられた。[4] 途中で終了した人の測定値も、主解析に含まれる。

レビューには、体重以外の結果もまとめられている。腹囲、血液中の中性脂肪、インスリン抵抗性の低下と、HDLコレステロールの上昇が報告された。同じレビューで5%以上の減量を達成した治療群の割合は45〜66%、偽薬群との差は23〜34ポイントだった。[18] 体重変化率の差と、達成者の割合の差は単位も役割も異なる指標である。

吐き気は多いが、減量の証明として我慢しない

成人1,742人の比較試験では、主な併用群の吐き気は29.8%、偽薬群では5.3%だった。頭痛、便秘、めまい、嘔吐、口の乾きも併用群で多かった。[4] 体重の結果だけを抜き出すと、この負担が表から消えてしまう。

吐き気と減量のつながりを調べた統合解析は、糖尿病のない参加者を対象にした、56週の比較試験をまとめている。併用薬1,778人と偽薬1,160人を扱い、どちらの治療群でも、吐き気を報告した人としなかった人の体重変化に有意な違いはなかった。[8]

吐き気の重さは、全体の95%以上が軽度から中等度だった。併用群では発生の始まりが治療早期に多く、軽度の吐き気が続いた期間の中央値は14日だった。[8] 中央値は短い人と長い人を並べた中央の値である。「よくある」「比較的軽い」という集団の説明は、目の前の人が平気でいられるという約束にはならない。

この解析からは、吐き気が起きたから薬が効いている、起きないから効いていない、という判断は支持されない。[8] 処方を受けている人に不調が出た場合は、我慢するか、自分で量を変えるかの二択にせず、処方医に連絡する。

統合解析では、併用薬群で吐き気が始まる頻度が最も高かったのは治療開始後の第1週で、9%だった。吐き気の持続期間の中央値は、中等度で9日、重度で13日と報告されている。[8] 重さごとに持続期間を集計した結果であり、軽度の14日という数字だけでは表せない経過も調べられていた。

数字で読む併用薬の減量試験

−6.1%:食事・運動を併用した比較試験の主な薬剤群での56週の平均体重変化。[4]

50.5%:別の比較試験で、56週に体重を5%以上減らした併用薬群の割合。[3]

29.8%:主要試験の主な併用群で吐き気が起きた割合。[4]

20.7%:生活支援を伴う別の試験で、有害事象のため薬を中止した割合。[16]

82人:脂肪と除脂肪量の変化を詳しく調べた比較試験の部分集団の人数。[12]

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宮川涼 Founder

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