介護者の睡眠と運動 世話をする側の眠りの中断と心の健康を測った研究

家族の介護で動き回っているのに、自分の健康には手が回らない。介護者を対象にした研究から、睡眠の乱れ、疲労、運動による心の健康の変化を確かめる。介護者の眠りと運動の研究で何が測られたかを、対象者や評価方法、得られた結果からたどり、世話をする側の暮らしに重ねて考える。

夜間の睡眠は平均6.56時間。医療機器に頼って暮らす子どもの家族介護者を調べると、健康な子どもの家族の7.21時間より短かった。日中の疲労や眠気、心の状態まで、世話をする大人自身の健康として尋ねた研究である。[6]

家族の受診予定は覚えていても、自分が昨夜どう眠ったかを人に説明する機会は少ないかもしれない。研究では、医療的なケアを担う家族の睡眠時間と睡眠の質に、健康な子どもの家族との差が見られた。世話をしている人も、測定と支援の対象に含まれていた。[6]

ダイエットを考えると、介護で体重が増えたのか、忙しく動けば減るのかに答えが欲しくなる。ただ、介護者への運動研究が示す成果には、体重とは異なる心の健康や動きやすさがある。体重の増減へ急いで翻訳せず、自分の暮らしに関係する結果を取り出したい。[8]

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介護者の健康を、減った体重だけで評価しない

成人の介護者に対する身体活動の介入をまとめた2022年のメタ分析は、比較する群を設けた25研究を対象にした。無作為化試験だけでなく、無作為化されていない対照試験も含んでいる。介護を受ける人の病気は、慢性的な身体の病気と心の病気にまたがっていた。[8]

心の健康への効果量は0.37、95%信頼区間は0.18〜0.56で、小〜中程度と評価された。効果量とは、異なる尺度の結果を共通の物差しに直して示した値である。尺度の単位をそろえることで、質問票が違う研究同士も比較の対象にできる。複数の測り方を束ねて、運動する群と比較群の違いを見ている。[8]

身体の健康全体への効果はごく小さいと評価され、その中で動きやすさに関する結果には、小さいながら有意な効果があった。心身の指標を同じ「健康」という箱に入れてしまうと、どこに変化が見え、どこでは小さかったかが隠れる。[8]

この研究を体重管理に引き寄せるなら、運動の成果を体重計だけで判定しない、という読み方になる。たとえば、運動に参加した後に気持ちや生活の質を振り返ることと、体重の推移を見ることは別々の問いだ。統合結果で心の健康に変化が見えたことは、参加者本人の健康を評価する成果になる。[8]

一方で、忙しく介護をしていることだけから、本人の健康は十分守られているとも言い切れない。運動介入を評価した研究では、介護という役割を続ける人自身に対して、改めて身体活動を提供している。世話をする働きと、自分のために取り組む運動は、研究の中でも区別して扱われている。[8]

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同居していなくても、睡眠の困り事は見逃せない

韓国の全国調査を使った横断研究は、認知症の人と同居する介護者2,537人、別居する介護者8,864人、介護をしていない190,278人を比較した。睡眠の評価には、眠りの質を質問で調べるピッツバーグ睡眠質問票を使った。体の動きから睡眠を推測する方法とは異なり、本人の回答を基にする評価である。[16]

年齢などの影響を統計的に考慮した後も、睡眠の質が悪いことのオッズ比は、非介護者に比べて同居介護者で1.26、別居介護者で1.15だった。それぞれの95%信頼区間は1.15〜1.38、1.10〜1.21である。オッズ比は、該当する人としない人の比を群間で比較した指標で、睡眠時間がその倍率だけ短いという意味ではない。[16]

同居のほうが数字は大きかったが、離れて暮らす介護者にも関連が見られた。家族と同じ屋根の下で寝ていないから、睡眠の問題を話すほどでもない、と自分で線を引く必要はない。この結果は、介護者を生活の住所だけで支援から外さないための材料になる。[16]

介護の分担を話す場面を思い浮かべたい。夜に付き添う人の話だけで会話を終えず、通って世話をする人にも「自分の眠りはどうか」と聞く。離れて暮らす人の回答も含めることで、同居家族の夜間対応とは異なる困り事も話題にできる。[16]

睡眠時間、眠りの実感、疲労は別々に測られている

冒頭の前向きコホート研究では、医療機器に依存する子どもの家族介護者42人と、健康な子どもの家族43人を対象に、6日間・7夜の活動測定と睡眠日誌を集めた。介護者の夜間睡眠は平均6.56時間、比較群は7.21時間だった。睡眠の質の評価でも介護者のほうが悪かった。[6]

この研究では、日中の強い眠気に該当した人も介護者側に多く、疲労の評価にも差があった。睡眠だけを単独で切り出さず、昼間どう過ごせているかまで調べている。夜に何時間横になったかという質問に答えられても、日中の状態を伝える余地は残る。[6]

別の研究は、放射線治療を始める前のがん患者の家族介護者103人に質問票への回答と、48時間の手首の活動測定を依頼した。睡眠の問題に該当する割合は、質問票と機器のどちらの判定基準を使うかによって、およそ40〜60%だった。測り方が変わると、同じ集団の輪郭にも幅が生じる。[20]

ここで興味深いのは、疲労が本人の感じる睡眠の問題と関連した一方、機器で測った睡眠の指標とは有意な関連が確認されなかった点である。本人の回答と機器の値の間でも、有意な相関は限られていた。疲労を説明するうえで、本人が感じる眠りの質にも役割があった。[20]

がん患者の家族の研究では、日々の活動リズムの振幅も調べていた。活動の強弱の幅を表すこの値は、機器で測った睡眠のどの指標とも関連しなかったが、本人が答えた寝つくまでの時間の長さとは関連した。夜の睡眠だけでなく、昼夜にわたる活動の測定を加えても、本人の回答から得られる情報が残っていた。[20]

眠りの実感と活動測定の違いは、別の病気を支える家族でも調べられている。前頭側頭型認知症の患者と家族介護者22組を調べた観察研究では、機器による睡眠効率や夜間睡眠の時刻は正常な範囲だった一方、認知症の病型によって介護者が報告する眠りの質に違いがあった。[9]

その研究では、行動の変化が目立つ病型の患者の夜間行動が、介護者の苦痛と強く関連していた。機器は夜の活動を測り、本人は眠りをどう経験したかを答える。それぞれが別の情報を含むと考えるほうが、どちらか一方を正解にしてしまうよりも結果に忠実である。[9]

睡眠を伝えるときには、寝た長さ、途中で起きた様子、起きている間の眠気や疲労を、同じ言葉に丸めないほうがよい。これは診断を自分で下すためではなく、研究でも分けて評価されていた情報を、受診や支援の場へ持っていくための整理である。[6][20]

医療的ケアを担う家族の研究では、抑うつ症状が強い範囲に入った人も比較群より多かった。測ったのは眠りの長さだけでなく、本人が日中の役割を続けられるかに関係する心身の状態だった。家族が必要とするケアの説明と同じように、介護者の眠気や疲労にも、具体的な言葉を割り当てる余地がある。[6]

たとえば「忙しい」で終えていた話を、「夜に目を覚ます」「日中に眠くなる」「疲れを感じる」に分けると、何を伝えたいかが変わる。研究で尋ねた項目は、こうした日中の経験にも及んでいた。必要なケアの話に本人の状態の話を加えるために、まず何を測っていたのかを知っておきたい。[6]

がん患者の家族の研究では、睡眠と覚醒の問題の中でも、眠りを保つことの障害が主に見られた。寝つくまでのことと、眠り始めてからのことを同じ「寝不足」として扱うと、この特徴は消えてしまう。放射線治療開始を控えた時期という、家族にも生活の変化が生じる場面で集められた情報だった。[20]

数字で読む介護者の健康

0.37:成人の介護者への身体活動介入で示された、心の健康の効果量である。[8]

1.15:別居する認知症家族介護者の、睡眠の質が悪いことに関する調整後オッズ比だ。[16]

6.56時間対7.21時間:医療機器に依存する子どもの家族介護者と、健康な子どもの家族の平均夜間睡眠時間である。[6]

40〜60%:がん患者の家族介護者で睡眠の問題に該当した割合。質問票と機器の判定基準によって幅があった。[20]

0.28:身体活動介入の統合結果で、動きやすさに見られた効果量だ。[8]

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宮川涼 Founder

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