DPP-4阻害薬の体重変化 SU薬との2年、GLP-1薬との26週の比較

DPP-4阻害薬は体重に中立とされる一方、シタグリプチンで小幅な減量を認めた研究もある。糖尿病のある成人を対象にしたメタ分析と比較試験から、血糖と体重、肝臓の脂肪、低血糖を分けて確かめる。GLP-1薬との比較や開始時の体格による違いも、対象と期間を添えて読み解く。

体重にほとんど影響しない薬なのか、それとも少し減る薬なのか。DPP-4阻害薬を扱う研究には、臨床では体重に中立であることが多いとするレビューと、シタグリプチンによる小幅な減量を認めたメタ分析がある。同じ薬の仲間についての説明でも、受け取る印象は違う。[6][9]

この食い違いは、体重が減らないから薬が働いていない、と考えるときに大きくなる。血糖を評価する数字と、体重計の数字は別の結果である。比較試験では、血糖への効果が近くても、体重や低血糖の現れ方が異なる組み合わせがある。[20]

処方は医師が判断するものであり、減量を目的に自分で薬を始めたり、中止・変更したりしない。ここで大切なのは、薬の名前に「太る」「痩せる」の札を貼ることより、誰の、どの治療条件で、何が動いたのかを受け取ることだ。

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DPP-4を抑えることと、大きく痩せることは別の話

DPP-4は酵素の名前である。GLP-1など、インクレチンと呼ばれるホルモンを不活性化する働きで知られる。DPP-4阻害薬は、この酵素を標的とする薬だ。腸内細菌との関係を扱ったレビューは、炎症やインスリンの働きとのつながりを論じながら、臨床では体重への影響が中立であることが多いとも述べている。[6]

このレビューは、腸内細菌の構成や多様性、機能にDPP-4が関わるという実験研究と臨床研究を整理している。DPP-4阻害薬について挙げるのは、腸内細菌の偏りの改善、短鎖脂肪酸の産生、腸のバリア機能、胆汁酸代謝との関係だ。短鎖脂肪酸は、ここで腸内細菌が生む代謝産物として取り上げられている。炎症やインスリン感受性に関わる複数の経路をまとめた、仕組みを考えるためのレビューである。[6]

シタグリプチン、ビルダグリプチン、リナグリプチンを対象にした研究では、薬の種類だけでなく、併用する薬や治療開始時の状態も異なる。たとえばメトホルミンに追加した試験、インスリンを使用中の人で比べた試験、治療前の血糖との関係を調べた解析がある。「DPP-4阻害薬の体重」とひとまとめにする前に、これらの背景を揃えておきたい。[2][10][20]

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メタ分析の小幅な減量を、どう受け取るか

過体重または肥満がある成人の2型糖尿病を対象とした系統的レビュー・メタ分析は、18件の無作為化比較試験、計2,009人を集めた。シタグリプチンの単独療法や、メトホルミンへの追加療法による体重変化を検討している。統合した平均差は、単独療法で−0.99、95%信頼区間は−1.87〜−0.12、追加療法で−1.09、同−1.69〜−0.49と報告された。著者らは、6か月を超える使用では体重や体格指数が低下する可能性を結論に挙げた。[9] 公表された抄録の平均差には体重の単位が明記されていないため、ここではkgを付けない。対象は糖尿病のある過体重・肥満の成人である。[9]

このメタ分析では、単独療法とメトホルミンへの追加療法を分けて統合している。平均差の点推定だけでなく、推定の幅を示す95%信頼区間も報告した。体重の結果では、どちらの治療条件でもその区間がゼロをまたがず、減る方向だった。著者らの結論には使用期間も含まれ、6か月を超える場合の可能性という表現になっている。[9]

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SU薬と比べると、増加を避けるという価値が見える

メトホルミンだけでは血糖管理が十分でない2型糖尿病患者3,118人を、ビルダグリプチン追加群とグリメピリド追加群に無作為に分けた二重盲検試験がある。グリメピリドは、スルホニル尿素薬、略してSU薬の比較相手だ。2年間のHbA1cの調整後平均変化は両群とも−0.1ポイントで、ビルダグリプチンが比較相手に劣らないという試験の目的を満たした。HbA1cは、この試験で血糖管理の評価に使われた指標である。[20]

体重はビルダグリプチン群で平均−0.3kg、群間差は−1.5kgだった。低血糖を経験した人は同群2.3%、グリメピリド群18.2%である。HbA1cが7%未満に達した割合は36.9%と38.3%で近かったが、低血糖を伴わずに達成した割合は36.0%と28.8%だった。血糖の到達点だけでなく、そこに至る間の低血糖も含めて評価した結果になる。低血糖の件数も59件と838件で異なり、経験した人の割合と、起きた出来事の数をそれぞれ報告している。ここでの体重の読みどころは、ビルダグリプチンで大きく減ったことより、比較相手との差があったことだ。血糖、体重、低血糖を別の欄に置くことで、この試験での治療の特徴が見えてくる。[20]

GLP-1薬との比較は、脂肪肝のある人の試験だった

GLP-1薬と並べた結果をみよう。メトホルミンで血糖管理が十分でなく、非アルコール性脂肪肝を伴う2型糖尿病患者75人を対象にした26週間の無作為化試験である。GLP-1受容体作動薬のリラグルチド、DPP-4阻害薬のシタグリプチン、インスリングラルギンをそれぞれ追加した。主な評価項目は、MRIによる肝臓内の脂肪の割合の変化で、体重や腹部の脂肪も調べている。[11]

平均体重はリラグルチド群で86.6kgから82.9kgへ、シタグリプチン群で88.2kgから86.5kgへ低下した。肝臓内脂肪の割合もそれぞれ15.4%から12.5%、15.5%から11.7%へ低下し、両群では内臓脂肪も減った。インスリングラルギン群では、これらの有意な変化は確認されなかった。リラグルチドとシタグリプチンの変化の群間差は、体重・肝臓内脂肪・内臓脂肪について有意でなかった。[11]

この試験では、MRIで測定した皮下脂肪の面積はリラグルチド群で減少し、シタグリプチン群とインスリングラルギン群の変化は有意でなかったという結果だ。肝臓内脂肪と内臓脂肪の減少は、リラグルチド群ではインスリングラルギン群に比べて大きかった。肝臓、内臓、皮下という脂肪の場所ごとに結果が報告されている。[11]

数字で読むDPP-4阻害薬の比較

18件:過体重・肥満がある2型糖尿病患者について、シタグリプチン研究のメタ分析が集めた無作為化比較試験の数だ。[9]

−0.3kg:メトホルミンにビルダグリプチンを追加した試験での、2年間の平均体重変化である。[20]

75人:脂肪肝を伴う2型糖尿病で、リラグルチドなどの追加療法を比べた試験の人数である。[11]

−1.80kg:インスリン使用中の人の24週間の比較で、エンパグリフロジン側に大きかった体重減少の群間差だ。体脂肪量の差は有意でなかった。[2]

減った重さの中身まで比べると、話が変わる

体重がよく減った側が、脂肪も同じだけよく減ったとは限らない。混合型インスリンを使うアジアの2型糖尿病患者を対象に、リナグリプチンと、別の種類の糖尿病薬であるエンパグリフロジンを比較した研究がある。生体電気インピーダンス法という、電気を使って体組成を推定する方法で評価した。24週間ではエンパグリフロジンのほうが体重を多く減らし、その群間差は−1.80kg、95%信頼区間は−2.57〜−1.03kgだった。[2]

同時に、筋肉量と体水分量もエンパグリフロジンのほうが多く減っていた。体脂肪量の群間差は−0.31kgで、95%信頼区間は−1.51〜0.90kgとゼロをまたぎ、有意でなかった。著者らも長期的な体組成に加え、筋力や身体機能の検討を求めている。筋肉量の群間差は−1.39kg、体水分量では−1.07kgで、いずれもエンパグリフロジン側の減少が大きかった。[2]

シタグリプチンには、肝臓の脂肪と全身の脂肪を測った小規模試験もある。日本の2型糖尿病患者で、BMIが25以上または脂肪肝のある20人を、シタグリプチンかグリメピリドに無作為に分け、24週間比較した。治療内容を隠さない単施設試験で、肝臓内脂肪は磁気共鳴を使う測定、全身の脂肪は二重エネルギーX線吸収法で調べた。血糖の改善は両群で同様だったが、シタグリプチン群では肝臓内脂肪と総脂肪量が減少した。[4]

総脂肪量の中央値は22.5kgから21.6kgへ変化した。肝臓内脂肪の中央値は24.5%から20.5%へ低下した。測定は開始時だけでなく12週と24週に行われており、総脂肪量と肝臓内脂肪を別の方法で追っている。男性11人、女性9人という小規模な探索的比較で、グリメピリド群ではこれらの脂肪の有意な減少は認めなかった。[4]

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宮川涼 Founder

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