血液型に合わせて食べ物を選ぶ食事法を、血液型と肥満や病気を調べた論文から確かめる。デンマークの702人では肥満との関連は再現されず、B型と2型糖尿病を結んだメタ分析も勧めたのは釣り合いのとれた食事と運動だった。腸内細菌や肉のアレルギーとの意外なつながりまで読む。
1.30。2型糖尿病の人と糖尿病でない人の血液型を26本の研究から集めたメタ分析で、B型の人がほかの型の人に比べて2型糖尿病とどれだけ強く結びついていたかを表すオッズ比である。95%信頼区間は1.20〜1.41で、関連なしを意味する1を含まない。[4]
血液型で食べる物を選ぶ食事法を試したことのある人なら、ここで膝を打つかもしれない。やはりB型には合う食べ物と合わない食べ物があり、それを守れば血糖も体重も整う、という読み方である。ところが同じ論文の著者が結論で勧めたのは、B型の人がこまめに2型糖尿病の検査を受けることと、釣り合いのとれた食事と定期的な運動の大切さを知ることだった。B型のための献立は、どこにも出てこない。[4]
血液型ダイエットは、血液型ごとに向く食べ物と向かない食べ物がある、という考えに立つ食事法だ。この記事のために集めた15本の論文には、その食事法を人に試した試験は1本も含まれていなかった。あったのは、血液型と肥満、糖尿病、がん、血栓、腸内細菌、肉のアレルギーとの関係を調べた研究である。試した試験が見当たらないこと自体が、題に掲げた問いへの一つ目の答えになる。

血液型とは、赤血球の表面に並ぶ目印の違い
血液型は、赤血球の膜の表面にある抗原という目印の違いで分けた型である。ABO式の目印は赤血球だけでなく、血小板や血管の内側の細胞、体の表面を覆う上皮の細胞にも出ている。輸血や臓器移植で相性を決める欠かせない検査であり、病院で最も手軽に調べられる検査の一つでもある。[8]
親から子へ受け継がれる性質なので、生まれた後に型を変えることはできない[9]。血液型と病気の関係は、抗体と抗原が遺伝することが分かった1900年代の初めから調べられてきた。2021年のレビューは、がん、心臓と血管の病気、感染症、血液の病気、認知の障害、代謝の病気、マラリアなど、関連が報告された病気を幅広く並べ、AB型の人で認知の障害の危険が高いという報告も紹介している。肥満の名前が出てくるのはその文脈で、認知の障害がある人には高血圧や肥満、脂質の異常なども多かった、という書き方だ。そのうえでレビューは、関連には議論の分かれる点があり、分子のレベルでの研究がさらに要るとも書いている。[7]
つまり血液型は、体に何の意味も持たない記号とは言えない。かといって、関連が報告されたことと、型ごとに食べ方を変えれば体が変わることの間には、まだ長い距離がある。遺伝子の検査の結果で食事を選ぶ試験は「遺伝子検査で食事を選ぶと痩せやすいのか 体質別ダイエットを比べた試験の結果」の記事が扱っているので、ここでは血液型という一つの目印に絞る。扱うのは主にABO式の4つの型である。
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
肥満と血液型の関連は、デンマークの702人で再現されなかった
血液型と体重の関係を確かめようとした研究の一つが、デンマークの横断研究から選んだ702人を調べたEnevoldらの解析だ。血液型にはABO式のほかに、別の目印で分けるルイス式などもあり、ルイス式は心臓の病気や肥満との関連が報告されてきた。この解析のもともとの問いは歯周病で、ABO式とルイス式の表現型が歯周病と関わるかを見たうえで、以前に報告されていた血圧の高さ、虚血性心疾患(心臓の血管が狭くなったり詰まったりする病気)、脳卒中、肥満との関連も改めて確かめようとした。結果は、歯周病との関連が見つからず、肥満を含むほかの病気との関連も再現されなかった。著者らは食い違いの理由の一部として、研究の型、病気の定め方、集めた人数、集団ごとの事情の違いを挙げている。[2]
この研究が何も見つけなかったわけでもない。自己申告の脳卒中と、ルイス式のある型との間には強い関連が出て、オッズ比は22.28だった。ところが95%信頼区間は4.72〜131.63で、下は約5倍、上は100倍を超える。これだけ幅が広いと、関連の強さの見積もりは定まらない。過去の研究で出た関連が別の集団で同じように出るとは限らず、出た関連の大きさも、数字だけを見ては測れない。まず幅を見る。[2]
もう一つ、トルコで乳がんの患者3,944人の記録を振り返った研究がある。患者の99.5%は女性で、年齢の中央値は47.9歳だった。血液型の分かる患者を集め、年齢、BMI(体重を身長の2乗で割った体格の指数)、閉経の状態、がんの性質などを血液型ごとに比べたところ、BMIには血液型の間で有意な差が無かった。乳がんの患者という限られた集団の、過去の記録を振り返った研究なので、健康な人の体重にそのまま当てはめることはできない。それでも、4,000人近い記録の中で、血液型ごとに体格がはっきり分かれる様子は出てこなかった。血液型で体重が決まるという筋書きは、この記録の数字からも立ち上がってこない。[6]
B型と2型糖尿病 オッズ比をどう読むか
冒頭の数字に戻る。Getawaらのメタ分析は、2022年3月までに発表された研究を探し、26本の研究、2型糖尿病の人6,870人と、比べる相手の11,879人の血液型を合わせて解析した。ほかの型に比べたB型の1.30に対し、O型は0.92で、こちらは少ない方向だった。A型とAB型、Rh式の陽性と陰性には、有意な関連が無かった。オッズ比は、病気がある人とない人の比を、血液型の組同士で比べた指標である。1より大きければその型に病気の人が多いことを、1より小さければ少ないことを示す。O型の0.92は95%信頼区間が0.86〜0.98で、1をわずかに下回るところにある。差はあっても大きくはなく、O型なら糖尿病の心配が要らないと読める数字とは違う。[4]
この数字を食事の話へ持ち込むときは、二つの段差を越えなければならない。一つは研究の型だ。集められたのは、血液型と病気の有無を並べて比べた研究で、B型であることが糖尿病を引き起こすと確かめたものとは違う。体重や食べ方、家族の病歴のような別の条件が、型の差に紛れ込んでいる可能性も残る。もう一つの段差は、血液型が変えられないことである。仮に関連が本物だったとしても、読者の手で動かせるのは型ではなく、食事、運動、そして検査の受け方の方にある。このメタ分析が調べたのは血液型と2型糖尿病の関連で、型ごとの食べ物の向き不向きは調べていない。B型という数字が教えてくれるのは、何を食べるかより、健診の結果票のどこに目を向けるかという手がかりの方だ。[4]
数字で読む血液型と体
702人:デンマークの横断研究から選ばれ、血液型の表現型と肥満などとの関連を確かめた人数。過去に報告された肥満との関連は再現されなかった。[2]
22.28:同じデンマークの解析で、自己申告の脳卒中とルイス式のある型との関連を表したオッズ比。95%信頼区間は4.72〜131.63と、ひどく広い。[2]
3,944人:トルコで血液型と乳がんの性質の関係を調べた患者の記録の数。BMIには血液型ごとの有意な差が無かった。[6]
1.30:ほかの血液型の人に比べた、B型の人の2型糖尿病のオッズ比。26本の研究を合わせたメタ分析で、95%信頼区間は1.20〜1.41だった。[4]
339,432人:台湾で、検査で確かめた血液型を持つ健康な人の数。血液型とがんの関係は、BMIや喫煙などをそろえたうえで解析された。[11]
1.57:遺伝子から見積もったBMIが1標準偏差高いことに対する、静脈血栓塞栓症のオッズ比。英国の大規模なデータベースを使った解析で、95%信頼区間は1.08〜1.97だった。[15]
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
1
2







