屋外の運動は、自然の中と街なかで気分への効き方が違うのか。24の実験をまとめた分析、病気のある人の屋外運動の20研究、週に何回で気分が変わるかの試験、暑い日と大気汚染の研究を並べ、体重を主な物差しにしていない研究から、減量に持ち帰れることを確かめていく。
木立の間の小道と、車の行き交う大通りの歩道。同じ速さで同じ時間歩いても、歩き終えたときの気分は同じだろうか。成人を対象にした24の実験を集めた分析は、自然の中で体を動かしたほうが、街なかより不安と疲れが軽く、前向きな気分と活力が高かったとまとめている[13]。
この分析が比べたのは、どちらも屋外の運動である[13]。外に出るかどうかではなく、外のどこで動くかを問うている。ただし測ったのは気分で、体重ではない。ここで集めた屋外運動の研究の多くも、生活の質や体の動き、心の状態を見ていて、体重の変化はほとんど扱っていない[12][13]。
それでもダイエットの話に関わるのは、運動を続けるかどうかが、その日の気分と天気に大きく左右されるからだ。室内と屋外の比較は「屋外運動は続けやすいのか 室内との比較で見える楽しさと減量までの距離」、住まいの近くの緑は「公園とダイエットの科学 緑の近くに住むことと、そこで歩くことの意外な距離」で扱った。ここでは、外で動くときの緑の役割と、外に出られない日の扱い方に絞る。

「緑の運動」は何を指すのか
緑の運動という言葉は、自然の中で行う身体活動を指して使われる。リウマチなどの病気と運動を扱ったレビューは、移動手段としての徒歩や自転車、木や庭の植え付けまでを例に挙げている[1]。スポーツウェアを着て公園を走ることだけが緑の運動なのではない。通勤で川沿いを歩くことも、庭の土を掘り返すことも、同じ枠に入る。
このレビューの出発点は、リウマチの病気が世界で増えていることと、気候の変化が地球の健康に与える害が増していることの重なりだった[1]。同じレビューは、運動不足と大気汚染のような環境の要因が、どちらも免疫の乱れとリウマチの病気の発症に関わると指摘している[1]。そのうえで、自然の中の運動には、病気のある人の健康と地球の健康の両方を良くする力があるとした[1]。体を動かす場所の選び方を、個人の気分の問題にとどめず、環境の問題と結びつけている点に特徴がある。
あらゆる年代の屋外のスポーツと身体活動を扱った系統的レビューもある[2]。このレビューは出発点として、技術の進歩と急な都市化が、座りがちな暮らしや代謝の病気、うつ、人付き合いの問題を広げてきたと指摘する[2]。この10年で、世界の多くの都市や団体が、住民の屋外の活動を増やす方策をとり始めたという[2]。屋外の活動には社会、心理、体の面での利点がありうるとし、若い世代と高齢者で、ビタミンDの不足、多発性硬化症、骨粗しょう症、近視に対する予防的な効果が報告されているとまとめた[2]。著者らは、国や自治体が屋外の活動を広める方策を強く進めるべきだと結論している[2]。
ここで覚えておきたいのは、これらのレビューが挙げた利点の中に、体重の減少がはっきりとは並んでいないことだ[1][2]。屋外の運動の研究は、まず体と心の健康全般を対象にしてきた。減量との関係は、その外側にある。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
自然の中と街なか、24の実験の答え
冒頭の分析をもう少し詳しく見る。一般の成人を対象に、屋外の自然の中での身体活動と、屋外の街なかでの身体活動を比べた実験研究を集め、24件を文章で総合し、そのうち9件をメタ分析にかけた[13]。メタ分析は、複数の研究の結果を数字で束ね、全体の傾向を推定する方法である。
文章での総合では、不安、怒りや敵意、活力、気分、前向きな関与のいずれでも、自然の中が有利だった[13]。メタ分析では、不安、疲れ、前向きな気分、活力で大きいか中程度の効果が自然の側に出て、抑うつでは小さい効果だった[13]。著者らは、運動の長さと、誰かと一緒かどうかが、効果の大きさを左右している可能性を挙げている[13]。項目によって効果の大きさがまちまちなのは、自然の中で気分が良くなる道筋が一つではないからかもしれない、とも書いている[13]。
一方で、この結果には偏りの危険が高く、研究ごとのばらつきも大きいと明記されている[13]。しかも測られたのは運動による気分の差である。自然の中の運動が気分を上げることと、それが習慣として何か月も続くことは、別の段階の話になる。
駅から少し離れた川沿いの道と、駅前の商店街の歩道を思い浮かべるとよい。どちらも屋外で、歩く距離も同じにできる。違うのは、目に入るものと耳に入る音だ。
この比較の設計には意味がある。外に出ること自体の効果と、緑の中にいることの効果を分けようとしているからだ[13]。街なかを歩いても屋外ではある。そのうえで差が出たのなら、緑の多い場所には、外の空気だけでは説明できない何かがあると考えられる。

病気のある人の屋外運動、20研究1,759人のまとめ
体や心の病気を抱える人に、屋外で組み立てた運動を行った研究をまとめた系統的レビュー・メタ分析もある[12]。4098件の文献から選ばれた19件のランダム化比較試験と1件のコホート研究、合わせて1,759人が対象になった[12]。病気の種類も介入の形も研究ごとにさまざまで、生活の質、体の機能、痛み、心の状態が評価の柱だった[12]。ランダム化比較試験は参加者を偶然で群に分けて比べる方法、コホート研究は集団を一定期間追って観察する方法を指す。
介入の終わりの時点で、屋外の運動は比較の相手より有利だった[12]。標準化平均差は、健康に関わる生活の質で0.45(95%信頼区間0.19〜0.71)、体の機能で0.39(0.13〜0.64)、心の状態で−0.52(−0.82〜−0.23)である[12]。比較の相手には、何もしない群、通常の治療、屋内の身体活動、運動を伴わない屋外の介入が含まれる[12]。痛みへの効果については、結論を出せなかった[12]。著者らは、生活の質と体の機能への効果を小さい、心の状態への効果を中程度と表している[12]。
注意すべき点も書かれている。4件の研究が有害な出来事を報告し、その中には痛み、転倒、疲労といった重くないものと、入院や肺炎といった重いものがあった[12]。そして根拠の確かさは、全体として非常に低いと判定された[12]。著者らは、利点と害を確かめる質の高い比較試験が必要だとしている[12]。
屋外には、室内にない危険もある。足元の段差、天候の急変、日差し。効果の数字だけでなく、外ならではの転び方や体調の崩し方まで含めて、屋外の運動は評価されるべきだろう。
自然の中を歩く群と、自然の中で座る群
緑の効果と、体を動かす効果を分けようとした試験がある[3]。心的外傷によるストレスを抱えた医療従事者を、自然の中を歩く群と、自然の中で座って過ごす群に1対1で分け、3か月の介入を行ったランダム化比較試験である[3]。
評価には、心的外傷の症状やストレスの尺度に加え、ストレスのホルモンであるコルチゾール、炎症に関わる物質、心拍の揺らぎまでが使われた[3]。3か月後、心的外傷の後の成長を測る尺度の平均点は、歩く群で座る群より有意に高かった[3]。外傷によるストレスも、歩く群で座る群より軽くなった[3]。どちらの群も同じ自然の中にいたのだから、差を生んだのは体を動かしたことのほうだと読める。
一方で、炎症に関わる物質やストレスのホルモン、脳の働きに関わる物質の値は、両方の群で有意に変化していた[3]。この部分は、歩いたかどうかより、自然の中で過ごしたこと自体に反応した可能性もある。座って過ごした群も、何も得なかったわけではない。
この試験から読み取れるのは、自然と運動は足し算の関係にあるかもしれない、ということだ[3]。緑の中にいるだけで変わる部分と、そこで体を動かして初めて変わる部分がある。木陰のベンチで休む時間と、同じ木陰の道を歩く時間は、別の役割を担っている。
数字で読む屋外の運動
24件:自然の中と街なかの屋外運動を比べ、気分への効果を総合した実験研究の数。偏りの危険は高い[13]。
0.45、0.39、−0.52:病気のある人の屋外運動の、生活の質、体の機能、心の状態の標準化平均差。確かさは非常に低い[12]。
週2回:運動習慣のない60〜75歳の女性で、気分の改善がはっきりした運動の回数[8]。
3か月後:近所の屋外の運動器具を使う支援を受けた高齢者だけが、増えた活動量を保っていた時点[10]。
90パーセンタイル以上:暑い日と定義した暑さの指標。そうした日でも、成人の屋外の活動量は変わらなかった[14]。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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