チーズと体重の意外な関係 脂の多い食品が肥満と結びつかない研究を読む

一部のチーズを多く食べる人ほど過体重が少ないという観察研究は、増やせば痩せるという意味なのか。全脂肪と低脂肪、バターと比べた試験から、体重・腹囲とコレステロールを分けて考える。発酵菌入りチーズの小規模試験も確かめ、研究の摂取量を推奨量にせず、日々の食事で何と置き換えるかを整理する。

139人が最後まで参加した食事の比較試験で、通常の脂肪量のチーズ、低脂肪のチーズ、パンとジャムに分けても、腹囲に有意な差はつかなかった。[9] チーズの脂を見て「お腹につきそう」と感じる人には、少し拍子抜けする結果である。

ただし、参加者は普段の食事の一部を指定された食品に置き換えていた。[9] 好きな食事をそのまま続け、その上にチーズを積み増した試験とは条件が違う。「太るか」を考える入り口は、チーズの有無より、この置き換えにある。

乳製品全体の話と分け、ここではチーズ一品を見ていく。体重を調べた研究と、血液中の脂質を調べた研究では、同じ「よかった」という言葉でも中身が変わる。[1][8][9]

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チーズ好きに肥満が少なくても、増やせば痩せるとは決まらない

バスク地方の成人を対象にした横断研究では、チーズの種類によって、食べる量の多い人ほど過体重や肥満の割合が低いという関連が見つかった。対象は1,081人、男性530人、女性551人で、年齢は17〜96歳だった。食事頻度を尋ねる質問票で摂取を調べ、フレッシュチーズと加工チーズの摂取が少ない群や中程度の群では、多い群に比べて過剰な体重の人の割合が高かった。[1]

この研究の摂取量は、食事のエネルギー1,000kcal当たりのチーズ量として扱っている。[1] 食事全体に対してチーズが占める量をそろえて見る方法だ。摂取量の多い群と少ない群の比較にも、こうした分母がある。食卓でのグラム数だけを並べる場合とは、比較の軸が異なる。

さらに、これはある時点の食べ方と体格を並べた研究だ。分析では男女とも職業上の状況と年齢、男性では居住地も交絡要因として選ばれた。[1] 交絡とは、調べたい食品以外の違いが結果に重なっていることを指す。分析で考慮していても、チーズを食べ始めた後に体重が下がった順序まで確認したわけではない。

論文の結論は、この集団で一部の種類のチーズ摂取と過体重・肥満に負の関連があった、という範囲である。[1] 負の関連とは、片方が多いほどもう片方が少ないという並びのことだ。食べ始める前後の変化を追う試験に対し、ここでは集団の中での食べ方と体格の対応を捉えている。

この調査では、過体重・肥満の割合自体にも男女差があり、男性55.1%、女性35.4%だった。[1] 参加者をひとまとめにした「チーズ好き」という印象だけでは、この違いは見えない。食べ方と体格の関係を調べる際に、性別や年齢などを考えるのは、その集団の背景を食品の働きと取り違えないためでもある。

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全脂肪と低脂肪の比較は、食事の一部を替えて行われた

通常の脂肪量と低脂肪を直接比べたランダム化比較試験には、メタボリックシンドロームの危険因子を2つ以上持つ164人が割り付けられた。ランダム化とは、参加者の希望で食事を選ばず、無作為に群を決める方法である。準備期間の後に12週間の介入が行われ、139人が完了した。[9]

通常の脂肪量のチーズ群と低脂肪チーズ群では、普段の食事の一部を、食事エネルギー10MJ当たり80gのチーズに置き換えた。MJはエネルギーの単位である。対照群は同じエネルギーになるパンとジャムに置き換えた。[9] この条件は、体格や食事と関係なく全員に同じ量を勧めるためのものではなく、比べる食事をそろえるための設定だ。

主に調べたLDLコレステロールには、通常脂肪と低脂肪の間、通常脂肪とパン・ジャムの間で有意差がなかった。腹囲に加え、血圧、インスリン、血糖、中性脂肪にも群間の有意差は見られなかった。[9] LDLは血液中でコレステロールを運ぶ粒子に関わる検査値であり、腹囲とは別の結果である。

この試験では準備期間が2週間あり、その後に食事の介入が始まった。[9] 対照群に使ったパンは10MJ当たり90g、ジャムは25gで、チーズを組み込む群とエネルギーをそろえていた。チーズ同士の比較に加え、炭水化物を多く含む食品への置き換えとの比較も同じ試験に含まれている。

HDLコレステロールも通常脂肪と低脂肪のチーズ群の間では有意差がなかった。通常脂肪とパン・ジャム群の比較では、通常脂肪群が0.06mmol/L高い傾向だったが、統計的には有意でなかった。[9] 主に調べたLDLと、ほかの検査項目の結果を区別すると、どこまで一致したのかが明確になる。有意差のない結果には、対象と12週間という観察範囲が付いている。

バターより低いLDLは、チーズの減量効果を意味しない

チーズとバターを比べると、食品の形が持つ違いも見えてくる。腹部肥満があり、HDLコレステロールが比較的低い男女92人を対象にした試験では、エネルギーをそろえた複数の食事を順番に食べてもらった。各食事は4週間で、チーズとバター由来の飽和脂肪酸を多く含む食事のほか、脂肪酸の種類や炭水化物の割合を変えた食事が比較された。[8]

飽和脂肪酸は脂肪を構成する脂肪酸の一種だ。この試験でチーズ食の後のLDLは、バター食の後より3.3%低かった。[8] 脂肪の種類と量に注目しても、どの食品からとるかで検査値の反応が同じにならない例である。食品に含まれる成分と構造の組み合わせを考える、食品マトリックスという見方につながる。[3]

ただし、比較相手を替えると表情が変わる。チーズ食のLDLは、炭水化物を多くした食事より2.6%、一価不飽和脂肪酸を多くした食事より5.3%、多価不飽和脂肪酸を多くした食事より12.3%高かった。[8] 一価・多価不飽和脂肪酸は、ここで比較された別の種類の脂肪酸である。バターに勝ったから全員優勝、とはいかない。

この試験では、炎症の指標、血圧、インスリンと血糖の調節には、食事間で有意差がなかった。開始時のLDLによって反応も異なり、バターによる上昇がチーズより大きいという違いは、もともとのLDLが高い人で認められた。[8] 食品名だけで結果が決まるのではなく、比較相手と参加者の状態まで含めて読む研究である。

そして、これらの百分率はLDLの差だ。体重がその割合だけ減った、体脂肪がその割合だけ落ちたという数字には置き換えられない。[8] チーズを食べると太るのかという問いに、血液検査だけで返事をするのは、違う欄の成績を読んでいるようなものだ。食事を替える目的が腹囲なのか、脂質の管理なのかを、ここで分けておきたい。

HDLにも目を向けると、チーズ食とバター食の後の値は同程度で、炭水化物を多くした食事の後よりそれぞれ3.8%、4.7%有意に高かった。[8] HDLはコレステロールを運ぶ別の粒子に関わる指標である。LDLの比較ではチーズとバターに差があり、HDLの比較では両者が似ていた。食事の影響は、検査表の項目ごとに異なる形で表れている。

数字で読むチーズの比較研究

1,081人:一部のチーズ摂取と過体重・肥満に逆の関連が見られた横断研究の人数。[1]

12週間:通常脂肪、低脂肪、炭水化物の食事への置き換えを比較した期間。腹囲の群間差は有意ではなかった。[9]

3.3%:チーズ食後のLDLがバター食後より低かった差。比較したのは血液中のコレステロールの指標。[8]

22人:減量プログラムに発酵チーズを組み合わせた小規模試験の女性参加者数。[2]

50gで175kcal:肥満と高血圧の人の試験に使われたチーズのエネルギー。製品一般の値や推奨量とは分ける。[4]

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宮川涼 Founder

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