代謝適応で食べていないのに痩せない?身体の省エネと停滞の理由を論文で読む

体重計の上に両足を載せて立ち足元の計器で体重を測っている様子 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

減量後に残る研究と弱まる研究をどう読むか

体重を落とした後にも身体の省エネが続くなら、維持の難しさに直結するように思える。しかし、適応が残るかどうかと、その適応が体重の戻りを予測するかどうかは別の問いである。両方を調べた追跡研究を読むと、この区別がはっきりする。[16]

過体重の女性171人を対象にした研究では、平均年齢は35.2歳で、減量プログラムの後に2年間追跡した。安静時の代謝は、開始時、減量後、追跡時のいずれも4週間の体重安定期間を経て測定された。食事を減らした直後だけを捉えないよう、測定前の状態をそろえた点が重要である。[16]

平均の減量は12 kgで、減量直後の適応は−54 kcal/日、標準偏差105 kcal/日だった。平均値より標準偏差が大きく、全員が同じ程度の省エネになったわけではない。ここで示した「平均±標準偏差」は値のばらつきを示す表現で、平均の推定精度を表す信頼区間とは異なる。[16]

この研究では、減った体重のうち平均52%が1年後に、89%が2年後に戻っていた。ただし、代謝適応は集団全体では体重の戻りと関連しなかった。すべての時点のデータがある46人を調べると、減量直後の適応は認められたものの、1年後と2年後には統計的に有意ではなかった。体重が戻った事実を、持続する代謝適応の証拠に置き換えることはできない。[16]

一方、元エリート選手を対象にした無作為化比較試験では、違う結果が出た。無作為化比較試験とは、対象者を偶然の割り当てで介入群と対照群に分けて比べる研究である。対象は平均BMI(体格指数)31.1の元選手94人で、平均年齢は43歳、女性は34%だった。元エリート選手という経歴だけで、現在も痩せた体格の集団だと考えてはいけない。介入は4か月の減量と8か月の維持から成る生活習慣プログラムである。[4]

介入群の体重は平均4.8%減り、減量後の安静時の適応は−85 kcal/日だった。開始から1年後にも−72 kcal/日の適応が認められ、統計的に有意だった。体重維持後にも差が残った研究として位置付ける。[4]

この試験では、摂取制限が大きい参加者ほどエネルギーの節約が大きい関連も示された。ここで示されたのは、参加者ごとの制限の程度と適応の関連である。無作為化されたのは生活習慣プログラムへの参加であり、個々人の適応の強さや制限の程度そのものではない。試験の中の相関にも、因果を決める限界がある。[4]

女性の追跡研究では適応が弱まり、元選手の試験では残った。対象者、減量の方法、身体組成の評価、測定条件が異なる結果として並べるのが適切だ。[16][4] 系統的レビューも、研究間の大きな違いと、体重安定後に適応が弱まる傾向を同時に報告している。[2]

元選手の試験では、食事の遵守度と適応の関連は認められなかった。エネルギーの節約が大きい介入群の参加者では、減量と脂肪の減少が小さく、開始時の摂取エネルギーが多かった。食事の計画を守れるかどうかと、身体がどれだけ消費を節約するかは、この試験では同じ指標ではなかった。[4]

さらに、身体の反応を整理したレビューは、減量後の維持では非安静時の適応が安静時の適応を上回ると説明している。安静時の値が小さくなったことを、日常生活を含むすべての消費の適応が消えた証明にしてはいけない。反対に、24時間全体で測った数字を、安静時だけの数字と同じ欄で順位付けするのも不適切である。[3]

この違いは、食事を調整した人の相談にも関わる。「以前より食べていない」という感覚には、以前と比べた摂取側の変化が含まれる。しかし、以前と今で身体の条件が同じかは別の話だ。研究の考え方を日常に下ろすなら、過去の自分との比較だけでなく、現在の食事、活動、減量の段階を一緒に見ることになる。[1][2]

女性の追跡研究では、身体組成を体重だけでなく複数の成分に分ける方法で評価し、安静時の消費は呼吸のガス交換から測った。予測値には、この集団の開始時のデータから作った式を使っている。減量直後と追跡時の比較は、こうした測定方法と体重安定の条件を組み合わせて行われた。[16]

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よくある誤解

「代謝適応があるなら、少ししか食べなくても脂肪は減らない」という理解は、影響を大きくしすぎている。身体組成を詳しく調べた男性の研究は、適応を認めながらも、それが減量を阻止するほどの大きさではないと結論した。系統的レビューでも、質の高い方法の研究では小さいか、有意でない値が報告されている。[2][6]

ここで必要なのは、身体の抵抗を気合で押し切ることでもない。小さな作用であっても、予定との差を考える要素にはなる。初期の適応とその後の減量の関係を示した入院研究は、この可能性を支える。この入院研究では、ホルモンの濃度と減量量の相関は認められなかった。予定と違ったとき、計画を点検する理由として受け止める程度が妥当である。[17]

「一度下がった代謝は永久に戻らない」という理解にも根拠が足りない。女性の追跡研究では、すべての時点を追えた集団の適応は、減量直後には有意だったが、追跡時には有意ではなかった。一方で、元選手の試験では維持期にも残った。期間を経た変化は対象と条件で違う。[4][16]

代謝適応を「代謝が壊れた」と言い換えると、回復できない故障の印象が生まれる。だが、レビューが扱うのは、エネルギー収支や体重の変化への反応である。故障と決めつけるより、変化する条件の中で消費を調整する現象と理解した方が、研究の内容に近い。身体に悪者役を割り当てても、測定条件はそろわない。[1][2]

「腸内細菌に働きかければ省エネを解除できる」という期待も、そのまま結論にはできない。肥満の成人男性49人を無作為に割り付けた二重盲検の比較試験では、継続的な摂取制限にプロバイオティクスを加える群と、偽薬を加える群を12週間比べた。二重盲検とは、参加者と研究側に割り付けを伏せる方法である。[20]

適応の平均値はプロバイオティクス群で−129 kcal、偽薬群で−127 kcalと報告され、群間差はなかった。安静時の消費、適応、脂肪量、除脂肪量への追加の効果も認められなかった。この製剤と対象条件で、適応を弱める根拠は得られなかったのである。摂取制限は、推定した1日の総消費より30%少なく設定されていた。両群とも体重、脂肪量、安静時の消費が減っており、比較されたのは、その共通の制限に製剤を加える意味だった。[20]

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今日からできること

  • 減量を始めるなら、元選手の試験の「4か月の減量」を計画例に、医師と決めた食事量で食べ、停滞のたびに追加で削らない。この試験では制限が大きいほど消費の節約も大きい関連があり、入院研究の50%制限は管理下の条件なので自分の食卓には持ち込まない。[4][17]
  • 減量後には、同じ試験の「8か月の維持」を計画例に、体重を保つために決めた量の食事を続ける。減量中の少ない量をそのまま続けるのではなく、維持の食事へ切り替える。4か月と8か月は試験の構成であり、全員に適した期間と決まったわけではない。[4]
  • 体重の数字だけで運動を取りやめず、生活の中ですでに続けている身体活動に取り組む。食事を控える予定と、身体を動かす予定を別々に持つ。
  • 予定表には減量期と維持期を分けて書き、食事と活動で続けられたこと、難しかったことを残す。受診時にはその記録を持ち、今の段階に合う計画を相談する。

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参考文献

  1. Changes in Energy Expenditure with Weight Gain and Weight Loss in Humans — M. Müller et al., 2016, Current Obesity Reports. DOI: 10.1007/s13679-016-0237-4
  2. Does adaptive thermogenesis occur after weight loss in adults? A systematic review — Catarina L. Nunes et al., 2021, British Journal of Nutrition. DOI: 10.1017/s0007114521001094
  3. Changes in body composition and homeostatic control of resting energy expenditure during dietary weight loss — M. Müller et al., 2023, Obesity. DOI: 10.1002/oby.23703
  4. Effects of a 4-month active weight loss phase followed by weight loss maintenance on adaptive thermogenesis in resting energy expenditure in former elite athletes — Catarina L. Nunes et al., 2022, European Journal of Nutrition. DOI: 10.1007/s00394-022-02951-7
  5. Are metabolic adaptations to weight changes an artefact? — M. Müller et al., 2021, The American journal of clinical nutrition. DOI: 10.1093/ajcn/nqab184
  6. Adaptive thermogenesis with weight loss in humans — M. Müller et al., 2013, Obesity. DOI: 10.1002/oby.20027
  7. Metabolic adaptation is not a major barrier to weight-loss maintenance — C. Martins et al., 2020, The American Journal of Clinical Nutrition. DOI: 10.1093/ajcn/nqaa086
  8. Early Adaptive Thermogenesis Is a Determinant of Weight Loss after Six Weeks of Caloric Restriction in Overweight Subjects — S. Heinitz et al., 2020, Metabolism: clinical and experimental. DOI: 10.1016/j.metabol.2020.154303
  9. Adaptive thermogenesis during energy deficits: a different explanation — K. Westerterp, 2022, European Journal of Clinical Nutrition. DOI: 10.1038/s41430-022-01107-4
  10. Can probiotics influence adaptive thermogenesis induced by continuous energy restriction following a 12-week intervention in adult men living with obesity? A secondary analysis of a randomized clinical trial (ECOMI-SP). — C. Ferracini et al., 2025, The Journal of nutrition. DOI: 10.1016/j.tjnut.2025.08.026

冒頭の写真: 体重計の上に両足を載せて立ち、足元の計器で体重を測っている様子。(写真: Bill Branson, National Cancer Institute / Public domain / Wikimedia Commons)

この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。

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