脳に電気を流すと食欲は抑えられるか 渇望は減る向き、期待を管理すると電流の差は見えなかった

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刺激する場所が違えば、空腹は増えた

脳への刺激が、いつも食欲を下げる方向に働くとは限らない。Marronらは、肥満の段階が比較的軽い12人(平均BMI32.9)に、前頭前野の働きを高めながら小脳の働きを下げるように電極を置いたtDCSを行った。同じ人が本物と偽の両方を受ける交差の試験で、参加者には、どちらを受けているかを知らせなかった。結果は予想と逆で、本物の刺激のあと、食べ物の手がかりを見たときの空腹感と食べたい気持ちが増えた。食べ物を使った記憶の課題でも間違いが多くなる傾向があり、基本的な運動の成績には変化がなかった。[17]

12人を対象にした探索的な試験だが、電極の置き方によっては、食欲を強める方向にも働きうることを示した。この結果が軽く扱えないのは、家庭で使う機器の話とつながるからである。電極を置く位置、流す向き、時間を、研究と同じ精度で自分の頭にそろえることは難しい。研究の場でさえ、置き方を変えると空腹が増えたのだから、ねらいどおりの方向に働く保証は、家庭ではさらに薄くなる。[17]

反対に、強い食欲そのものを和らげる方向の結果もある。プラダー・ウィリー症候群は、知的障害と、満たされることのない強い食欲を特徴とする遺伝性の病気である。Bravoらの小さな試験には、この症候群の成人10人、肥満の成人11人、標準体重の成人11人が参加した。症候群の人と肥満の人は、右の背外側前頭前野に本物か偽のtDCSを5日続けて受け、30日にわたって本人の回答と介護する人の評価で、渇望や過食に関わる質問票の点を追った。[6]

症候群の人では、本物の刺激のあと、食行動の質問票で抑えが外れやすい傾向を表す点と合計点が、30日後の時点で開始時から有意に変わった。過食の重さを測る別の質問票では、5日後の変化がp値0.06未満と境目の値で、合計点は15日後に有意だった。肥満の人の群でどうだったかは、要約には書かれていない。10人の予備試験であり、研究者の述べる負担の少なさや費用の安さは、大きな試験で確かめる段階にある。症候群の食欲と体重の管理全体については、「プラダー・ウィリー症候群の食欲と体重管理 小児試験と成人の減量維持の違い」の記事に譲る。[6]

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拒食症では、体重を増やす側の治療として試されている

体重を減らしたい人の話から少し離れて、反対側の研究を見る。摂食障害の一つである神経性やせ症(拒食症)では、BMIの回復が治療の成績として測られる。Bahadoriらの系統的レビューは、TMSを拒食症の人に行った17研究を集め、そのうち9研究でメタ分析を行った。主な刺激の部位は、ここでも背外側前頭前野だった。TMSのあとにはBMIの増加が見られ、統計的に有意だった(P=0.045)が、BMIの差を表す標準化平均差は大きさで0.025(論文の表記は−0.025)と、ごく小さい値である。摂食障害の症状を測る質問票(EDE-Q)の点は、6研究をまとめて標準化平均差0.634で下がり、1回の刺激が20分を超える試験では改善がより大きかった。副作用は軽く、一時的だったと報告されている。[10]

同じ部位への刺激が、肥満の人では渇望を減らす方向で、拒食症の人では体重を戻す方向で研究されている。刺激は食欲を下げる装置というより、食べることに関わる脳の働きに手を入れる方法として調べられている、と読むほうが論文の扱いに近い。どちらの研究でも、測る指標は体重だけでなく、症状の点や渇望の点に広がっている。[10][2]

人と動物の60研究を集めたMcClellandらの系統的レビューでは、rTMSと脳深部刺激で、拒食症と過食症の症状が減ったという証拠があった。他の病気や動物の研究からは、脳深部刺激で食べる量と体重を増やせること、迷走神経刺激に食べる量を抑えて体重を減らす可能性があることも示された。方法によって、体重を増やす方向にも減らす方向にも働いた例がある。研究者は、長い目で見た経過を良くできるかを確かめる研究がさらに必要だと結論している。この幅の広さは、使い方を誤れば望まない方向に動きうることの裏返しでもあり、摂食障害の治療を受けている人が刺激の治療を受けるかどうかは、主治医が判断することだ。[19]

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試験の大きさと「まだ実験の段階」という評価

試験の大きさを数えた系統的レビューがある。Jáuregui-Loberaらは、拒食症、過食症、むちゃ食い障害、過体重、肥満の人を対象に、脳深部刺激、tDCS、TMSを行った臨床試験を集めた。参加者は全体で562人で、内訳は脳深部刺激25人、tDCS138人、TMS399人だった。1試験の参加者は3人から90人までで、中央値は23.5人。半数の試験は14〜38人の規模だった。[18]

研究者の評価ははっきりしている。神経刺激は摂食障害の治療としてある程度の見込みがあるものの、現時点では実験の段階にあり、根拠に基づく治療とは言えない。TMSや直流刺激は第一の選択肢になっていない。今後の研究では、小さな人数と、試験ごとにばらばらな方法を避けるべきだとしている。前の節までに見た試験の人数、12人、22人、29人も、この評価が指す規模の中にある。[18]

減量手術を受けた人を対象にした予備試験も、同じ課題を映している。Röschらは、手術から18か月以内の19人を、本物か偽のtDCSに分けた。どちらの群も、6回の刺激に合わせて、食べ物への衝動を抑える個別の訓練と、心理・社会面を支える集団での面談を受けた。最後まで続けた人の割合は67〜80%、満足度は5点満点で平均4.38を超え、副作用は5点満点で平均1.46と、ほとんど気にならない程度の評価だった。[8]

ところが、衝動性、空腹感、生活の質、BMI、内分泌の指標の改善は、本物と偽の両方の群に中くらいの程度で見られた。訓練と面談を受けた人は、刺激が本物でも偽でも同じように良くなった、という形である。研究者は、参加者が少なく意欲の高い人に偏っていたこと、手術直後で体が大きく変わる時期だったことで、刺激の違いが見えにくくなった可能性を挙げた。刺激、訓練、面談のどれが効いたのかを切り分ける試験の組み方を、次の課題にしている。[8]

よくある誤解

「電気で脳を刺激すれば、食欲を止めるスイッチが入る」という思い込みがある。研究者自身の設計を見ると、そうは考えられていない。ブラジルの病院で計画された試験は、20〜50歳の過体重・肥満の人を本物か偽のtDCSに分け、どちらの群にも減量の食事を組み合わせた。平日5日続けて4週間で20回、主な成績は体重の減少で、食べた量は3日分の食事を量って記録する。刺激を単独の治療ではなく、食事療法を助ける補助として位置づけた設計である。結果はこの計画書には含まれていない。[7]

「偽の刺激と比べた試験なら、期待の影響は取り除かれている」という読み方も、そのままでは危うい。Rayらは、tDCSを食べることに関わる状態の治療として確かめるには、期待の強い働きを抑えることが前提になるとしたうえで、同意書にどんな情報を書くか、参加者が本物と偽を見分けられるかを管理する必要を挙げた。偽の刺激を置いたことは、期待を管理する手段の一つにすぎない。説明の紙一枚が結果を動かしうるという指摘である。[1]

「脳の反応が変われば、体重も変わる」という期待もある。64人の過体重・肥満の成人を対象に計画された試験は、tDCSを1回だけ行い、主な成績を、食べ物の画像を見たときの腹側線条体という部位の反応としてMRIで比べる。食べたい気持ちは質問票で測る副次的な成績で、体重は成績に入っていない。脳の画像で何かが動いたという結果と、体重が減って保たれるという結果の間には、まだ確かめられていない距離がある。[4]

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今日からできること

  • 家庭用の機器で、自分の頭に電流を流さない。研究の場で電極の置き方を変えたtDCSでは、食べ物を見たあとの空腹感と食べたい気持ちがかえって増えた。[17]
  • 脳への刺激をうたう記事や広告を見たら、偽の刺激と比べた試験か、参加者が何人か、何回の刺激の結果かの3つを確かめる。例えば神経刺激の試験の参加者は中央値23.5人で、半数は14〜38人だった[18]。tDCSのメタ分析では、1回より繰り返した刺激のほうで渇望の差が大きかった[2]。
  • 食べたい衝動を抑える練習と、人と話して支えを得る場を、刺激とは別に持つ。減量手術から18か月以内の19人の予備試験では、衝動を抑える個別の訓練と集団での面談を受けた人が、刺激が本物でも偽でも、衝動性、空腹感、BMIなどで中くらいの改善を示した。どれが効いたかは切り分けられておらず、最後まで続けた人も67〜80%だったので、回数は続けられる数から選ぶ。[8]
  • 自分の食べたい気持ちを0〜10などの点で、時刻と場面と一緒に書き留める。プラダー・ウィリー症候群の試験は渇望を質問票の点で測り、5日後、15日後、30日後に変化を見ていた。点の付け方と見直す区切りを借りる話で、点を付けること自体の効果を調べた研究ではない。見返す区切りは自分で決める。[6]

刺激を受けるのではなく、自分で動く60分

試験の参加者は頭に電極を付けて20分ほど刺激を受け身で待ったが、オンザショア立川店のヨガ体験は60分のレッスンを自分の体で動かす時間で、税込1,980円にバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。

電極も機器も使わないヨガのレッスンだけで25種類以上あり、溶岩プレートを敷いたスタジオのホットヨガのほか、常温で行うヨガ、ピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングもそろえている。

刺激の試験が行われた研究室や病院とは違い、通う先は駅前の建物で、所在地は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3F、JR立川駅北口から歩いて1分の距離だ。営業は毎日8:00〜23:30で、休みの日を置いていない。店の様子は店のトップで、料金は料金のページで見られ、体験は予約の画面から申し込む。

医師から運動を止められている方は利用できない。妊娠中の方は溶岩ホットヨガには参加できない。常温のマタニティヨガがある。摂食障害の治療中の人は、暑い部屋での運動を始めてよいかを主治医に確かめておく。

脳への刺激をうたう広告を閉じたら、仕事帰りに間に合う時刻の回を、予約の画面で探す。

参考文献

[1] The effect of expectation on transcranial direct current stimulation (tDCS) to suppress food craving and eating in individuals with overweight and obesity. — Ray et al., 2019, Appetite. DOI: 10.1016/j.appet.2018.12.044

[2] A Meta-Analysis of Transcranial Direct Current Stimulation on Substance and Food Craving: What Effect Do Modulators Have? — Chen et al., 2020, Frontiers in psychiatry. DOI: 10.3389/fpsyt.2020.00598

[4] Transcranial direct current stimulation to modulate brain reactivity to food cues in overweight and obese adults: study protocol for a randomized controlled trial with fMRI (NeuroStim-Obesity). — Ghobadi-Azbari et al., 2022, Trials. DOI: 10.1186/s13063-022-06234-8

[5] Deep Transcranial Magnetic Stimulation Affects Gut Microbiota Composition in Obesity: Results of Randomized Clinical Trial. — Ferrulli et al., 2021, International journal of molecular sciences. DOI: 10.3390/ijms22094692

[6] Transcranial direct current stimulation reduces food-craving and measures of hyperphagia behavior in participants with Prader-Willi syndrome. — Bravo et al., 2016, American journal of medical genetics. Part B, Neuropsychiatric genetics : the official publication of the International Society of Psychiatric Genetics. DOI: 10.1002/ajmg.b.32401

[7] Effect of transcranial direct current stimulation associated with hypocaloric diet on weight loss and metabolic profile in overweight or obesity: study protocol for a double-blind, randomized controlled clinical trial. — Araujo et al., 2018, Trials. DOI: 10.1186/s13063-018-2776-3

[8] Enhancing Postoperative Outcomes After Metabolic Bariatric Surgery: a Pilot Study of Inhibitory Control Training, Transcranial Direct Current Stimulation and Psychosocial Aftercare. — Rösch et al., 2026, Obesity surgery. DOI: 10.1007/s11695-026-08828-6

[9] Reduced plasma interleukin-6 concentration after transcranial direct current stimulation to the prefrontal cortex. — Aydin et al., 2024, Behavioural brain research. DOI: 10.1016/j.bbr.2024.115201

[10] Efficacy of transcranial magnetic stimulation in anorexia nervosa: a systematic review and meta-analysis. — Bahadori et al., 2025, Eating and weight disorders : EWD. DOI: 10.1007/s40519-025-01716-5

[17] Prefronto-cerebellar neuromodulation affects appetite in obesity. — Marron et al., 2019, International journal of obesity (2005). DOI: 10.1038/s41366-018-0278-8

[18] Neuromodulation in eating disorders and obesity: a promising way of treatment? — Jáuregui-Lobera et al., 2018, Neuropsychiatric disease and treatment. DOI: 10.2147/ndt.s180231

[19] A systematic review of the effects of neuromodulation on eating and body weight: evidence from human and animal studies. — McClelland et al., 2013, European eating disorders review : the journal of the Eating Disorders Association. DOI: 10.1002/erv.2256

冒頭の写真: 人の脳の形状を立体的に表した解剖学模型。表面の凹凸を再現している。(写真: Wikimedia Commons 投稿者 / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons)

この記事の情報は2026年11月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。

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