坂道を歩くと消費はどう変わるか 同じきつさで増える酸素と、速さが左右する膝の力

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膝の力は、速さと荷重に連動していた

坂は膝に悪いのか。膝の中の力を直接測った研究がある。測定器を組み込んだ特注の人工関節を入れた人が、下半身に空気圧をかけて体重を軽くできるトレッドミルを歩いた[14]。速さは時速1.5〜4.5マイル、傾斜は−10度から+10度、足にかかる荷重は体重の100%から25%までを試している[14]。

力の幅は大きく、時速4.5マイル(秒速2.01m)で荷重100%のときは膝の最大の力が体重の5.1倍、時速1.5マイル(秒速0.67m)で荷重25%のときは0.8倍だった[14]。力と強く結びついていたのは、歩く速さとベルトから受ける力である[14]。

傾斜が膝の力をどれだけ変えたかの数字は、要約には載っていない。したがって「坂は膝に悪い」とも「良い」とも、この研究からは言えない。言えるのは、膝の力を動かす大きな要因として速さと荷重が確かめられた、というところまでである。手術の後のリハビリの道具を調べた研究で、対象も人工関節を入れた人に限られる[14]。

膝の変形性関節症の人30人の無作為化試験では、両群が理学療法を10回受け、片方の群だけが毎回、傾斜8度のトレッドミルを秒速1.1mで30分歩いた[12]。歩幅と歩く速さが改善したのは歩いた群だけで、20日後の追跡でも保たれていた[12]。膝の動く範囲も、追跡の時点では歩いた群だけが改善した[12]。著者らは、傾斜のトレッドミルの歩きを、曲がったまま伸びにくくなった膝を歩きながら伸ばす運動として位置づけている[12]。

痛みも測られているが、要約には痛みの結果が書かれていない。そして、これは理学療法の一部として管理された試験である。膝の痛みがある人が、同じ傾斜と速さを自己流でなぞる根拠にはならない。膝の痛みと減量そのものの話は「膝が痛い人の減量はどれだけ効くか 変形性膝関節症の痛みと動く力を分けて考える」の記事に譲る。

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足首の押し出しで、坂の話はつながるか

ここまでの論文を読み比べると、足首が何度も顔を出す。これから書くのは各論文の結論ではなく、並べて読んだときの私の見立てである。消費を言い当てた式の主役の1つは、足首を動かすヒラメ筋だった[1]。

膝の側でも同じ名が出てくる。高齢の女性12人が14週間、ふくらはぎと太ももの筋肉と腱を鍛えた試験では、訓練の後に筋力と腱の硬さが増し、足首の蹴り出しの力も高くなった[20]。坂を歩くときの膝の内転モーメント(変形性膝関節症で注目される力学の指標)は下がり、その変化は足首の押し出しの改善と相関していた[20]。

一方で、軟骨に関わる血液の指標は、30分の坂の歩きで上がり、その上がり幅は14週間の前後で変わらなかった[20]。著者らは、筋力の改善が膝の軟骨に利益をもたらすかはさらに調べる必要があるとしている[20]。力学の数字が動いても、軟骨が守られたとまでは言えない。

足首の働きを機械で補った試験もある。動力のある義足の人の消費は、平地では切断していない人と同等だと報告されていたが、坂でどうなるかは分かっていなかった[4]。そこで膝下を切断した男性6人、女性4人が、ふだんのばね式の義足と、足首に動力のある義足で、秒速1.25mの坂を歩いた[4]。動力つきでは、+3度と+6度の上りで消費が5%低く、+6度と+9度の上りで左右の脚の仕事の釣り合いが改善した[4]。

義足の人の試験を、両足で歩く人の歩き方の話に読み替えることはできない。上りの歩きで足首の押し出しが大きな役を持つのではないか、という筋は、対象の違う3本を並べて初めて見えてくる仮説で、どれか1本が確かめた結論ではない。消費を言い当てた研究の著者らが書いているのは、歩き方が変わったときや補助の機器を使うときの消費を予測する研究へ道が開ける、というところまでである[1]。

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ポールは、燃やす量より、きつさの感じ方を変える

坂にポールを持ち込むと消費は増えるのか。20〜48歳の男性20人が15kgのリュックを背負い、時速1.5マイルで傾斜10〜25%を上る試験がある[2]。ポールの有無で比べると、心拍は毎分144.8拍と144.0拍、消費は毎分10.6kcalと10.8kcalで(順にポールあり、なし)、有意な差は無かった[2]。

動いたのはきつさの評価だけで、ポールを使うと13.28、使わないと14.56と低く、最後の7分のうち5分でこの差が見られた[2]。ポールの重さを持って歩いても消費は増えず、本人の感じるきつさだけが軽くなった形である。ここに出た毎分10.8kcalは集めた論文の中では珍しい実数だが、15kgを背負って急な坂を上る男性の値で、手ぶらで歩く人の目安にはならない。男性20人の試験である点も割り引いて読む。全身運動としてのポール歩きの話は「ノルディックウォーキングとダイエット 普通の歩行との違いを体脂肪と続け方から知る」の記事が扱っている。

最大酸素摂取量が高い人ほど、歩きに要る酸素は少なかった

もう1つ、減量を考える人に近い試験を見る。BMI(身長と体重から求める体格の指標)が27〜30の閉経前の女性124人を、食事のみ、食事と有酸素運動、食事と筋トレの3群に分け、ごく低いカロリーの食事でBMIが25未満になるまで減量した[13]。その前後で、平地と傾斜2.5%を時速4.8kmで歩くときの酸素の量と、最大酸素摂取量を測っている[13]。

観察できた関係は単純である。減量の前も後も、最大酸素摂取量が高い人ほど、平地でも緩い坂でも歩きに要る酸素が少なかった(相関係数は減量の前に−0.28〜−0.35、後に−0.22〜−0.28)[13]。減量の前後の変化でも、除脂肪体重で調整した最大酸素摂取量が伸びた人ほど、歩きに要る酸素が減る関係があった(同−0.37〜−0.41)[13]。

関係の強さは弱いほうから中くらいまでで、どれも相関である。測ったのは減量の前後の2時点で、傾斜も2.5%の緩い面だった。坂を歩き続けた試験ではないので、坂に慣れると消費が減るとも、体力をつければ歩きの消費が減るとも、この結果からは言えない。著者らが読み取ったのは、最大の有酸素能力が伸びると運動に要る酸素が減る、という形で連動するらしい、というところまでである[13]。同じ傾斜、同じ速さでも、歩きに要る酸素には人による差があった。他人の消費の数字を自分に当てはめるときの注意として読んでおけばよい。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

よくある誤解

「きつく感じた分だけ消費している」。感覚と消費は別の物差しになることがある。先の多発性硬化症の人の研究では、上りの酸素の消費は健康な人より低かったのに、きつさの評価は健康な人より高かった[11]。病気のある人の観察研究で、そのまま一般の人に当てはめることはできないが、著者らは感じるきつさがエネルギーの値と一致しないと結論している[11]。

「下りは休憩で、体には何も起きていない」。酸素の面では上りより軽い[11]。しかし腹囲の大きい女性の試験では、下りの歩きでも炭水化物の多い食事へのインスリンの反応に利点が見られ、炎症の指標は8時間後に上がっていた[16]。消費の数字が小さいことと、体に何も起きていないことは同じではない。

「傾斜10は、どの機械でも同じ急さ」。試験の傾斜には、%で書かれたものと度で書かれたものが混ざっている。傾斜10%と書く研究があり[1]、8度と書く研究がある[12]。%は水平に100m進んで何m上るかの値で、度は角度である。10%より8度のほうが急で、数字の大小と急さの大小が逆になることもある。機械の表示がどちらかは確かめておきたい。

今日からできること

  • 平地と坂で、同じ「ややきつい」の心拍を比べる。例えば平地と坂を6分ずつ歩き、終わりの心拍を並べる(6分は読者の例)。試験では、同じきつさで傾斜の側が毎分14〜16拍高かった。この差を自分の体で測ると、感覚だけで強さを決めてよいかが見えてくる[7]。
  • 炭水化物の多い食事の前に、上り坂を含む道を歩く。例えば帰り道に上り坂を1本入れてから食事にする(1本は読者の例で、試験の歩きの長さは読み取れない)。18〜39歳の女性の1回の試験で、食事の30分前の上りの歩きの後に血糖の反応が低かった[16]。
  • 荷物を背負って長い上りを歩く日は、ポールを試す。例えば傾斜10%を超える上りで一度使ってみる(試験の傾斜は10〜25%で、15kgを背負っていた)。燃やす量は変わらず、きつさの評価が下がった試験がある[2]。
  • 山を歩く日は、消費を稼ごうとして食事を削らず、歩く長さに見合う食べ物と上着を先に用意する。例えば60代の2日の山歩きでは、1日の活動の消費がふだんの歩く練習の7倍だった[18]。十分に食べないことと体温調節の乱れの関わりも指摘されている[8]。
  • 膝が気になる日は、歩く速さを落とす。例えば試験の速さの幅は秒速0.67mから2.01mだったので、自分の歩きがこの幅のどこにあるかを測ってから一段落とす。膝の力は速さと荷重に連動していたが、人工関節を入れた人の測定で、速さを落とす行動を試した試験ではない[14]。膝の痛みがある人は主治医に確かめる。

坂のない夜の、脚の使い道

坂で働いていたのはふくらはぎと太ももの筋肉で、脚を動かす手段は歩くことの外にも広がり、ピラティス、ボクササイズ、HIIT、女性専用のキックボクササイズと種目を替えられるほか、ヨガのレッスンも25種類以上を数える。医師から運動を止められている方は利用できない。妊娠中の方は溶岩ホットヨガには参加できない。常温のマタニティヨガがある。

オンザショア立川店は、溶岩プレートを敷いたスタジオのホットヨガと常温のヨガ、パーソナルトレーニングを扱う店で、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fにある。JR立川駅北口からは徒歩1分で、坂を探して遠回りしなくても着く近さだ。営業は8:00〜23:30で、年中無休である。歩く以外の運動を一度試すなら、ヨガの体験は60分で税込1,980円で、バスタオル2枚とフェイスタオル1枚、ヨガマットの貸し出しもその中に入る。料金と体験の予約はそれぞれのページで見られる。雨で坂道に出られない夜の代わりを、ここに挙げた種目から1つ探しておく。

参考文献

[1] Predicting the metabolic cost of incline walking from muscle activity and walking mechanics. — Silder et al., 2012, Journal of biomechanics. DOI: 10.1016/j.jbiomech.2012.03.032

[2] Load carriage energy expenditure with and without hiking poles during inclined walking. — Jacobson et al., 2000, International journal of sports medicine. DOI: 10.1055/s-2000-3775

[4] Use of a powered ankle-foot prosthesis reduces the metabolic cost of uphill walking and improves leg work symmetry in people with transtibial amputations. — Montgomery et al., 2018, Journal of the Royal Society, Interface. DOI: 10.1098/rsif.2018.0442

[7] Physiological responses at 0% and 10% treadmill incline using the RPE estimation-production paradigm. — Green et al., 2002, The Journal of sports medicine and physical fitness.

[8] Physiological and metabolic aspects of very prolonged exercise with particular reference to hill walking. — Ainslie et al., 2005, Sports medicine (Auckland, N.Z.). DOI: 10.2165/00007256-200535070-00006

[11] Energy expenditure and perceived effort during uphill and downhill walking in people with multiple sclerosis. — Har-Nir et al., 2023, European journal of physical and rehabilitation medicine. DOI: 10.23736/S1973-9087.22.07682-1

[12] Uphill treadmill walking plus physical therapy versus physical therapy alone in the management of individuals with knee osteoarthritis: a randomized clinical trial. — Sedaghatnezhad et al., 2021, Disability and rehabilitation. DOI: 10.1080/09638288.2019.1703146

[13] Inverse relationship between changes of maximal aerobic capacity and changes in walking economy after weight loss. — Borges et al., 2018, European journal of applied physiology. DOI: 10.1007/s00421-018-3888-x

[14] Anti-gravity treadmills are effective in reducing knee forces. — Patil et al., 2013, Journal of orthopaedic research : official publication of the Orthopaedic Research Society. DOI: 10.1002/jor.22272

[16] Concentric and eccentric exercise, glycemic responses to a postexercise meal, and inflammation in women with high versus low waist circumference. — Miles et al., 2016, Applied physiology, nutrition, and metabolism = Physiologie appliquee, nutrition et metabolisme. DOI: 10.1139/apnm-2016-0281

[18] Energy expenditure during 2-day trail walking in the mountains (2,857 m) and the effects of amino acid supplementation in older men and women. — Shimizu et al., 2012, European journal of applied physiology. DOI: 10.1007/s00421-011-2057-2

[20] Effect of exercise-induced enhancement of the leg-extensor muscle-tendon unit capacities on ambulatory mechanics and knee osteoarthritis markers in the elderly. — Karamanidis et al., 2014, PloS one. DOI: 10.1371/journal.pone.0099330

冒頭の写真: 岐阜県各務原市、日本ラインうぬまの森から平和観音へ向かう登山道の階段(写真: KKPCW / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)

この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。

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