握力と体重 50万人の追跡と、体重で割った握力が低い人に多かった心臓病の死亡

デジタル式の握力計で体力の水準を測っている場面米陸軍フォートブリスの健康施設 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

区切りのkgは、集団ごとに違う

握力が何kgより下なら危ないのか。そんな1本の線を探したくなる。だが論文の中の線は、集団と目的ごとに違う。英国の研究は、筋力の弱さの区切りとして男性26 kg未満、女性16 kg未満を置き、関連を調べた。この区切りより弱い人は、女性の結腸がんと男女の前立腺がん、肺がんを除く、調べたすべての健康の結果でハザードが高かった[1]。中国のがん患者8,257人(年齢の中央値58歳)の研究では、死亡までの時間を最もよく分ける値を統計の手法で探し、女性16.1 kg未満、男性22 kg未満という区切りが出た。この区切りより低い人のがん全体の死亡のハザード比は、区切り以上の人に対して、女性1.339、男性1.346だった[18]。女性の区切りは16 kgと16.1 kgで近いが、同じ線とは読めない。片方は約50万人の住民の解析で筋力の弱さの定義として使われた値で、もう片方はがん患者の死亡までの時間を分けるために探した値である。出どころも使い道も違う。

対象を広げると、線は幅になる。健康な成人を追った48研究、3,135,473人(49.6%が女性、35〜85歳)の用量反応メタ分析では、全死因死亡のリスクの低下が握力26〜50 kgの範囲で、ほぼ直線的に見られた。心血管の死亡は24〜40 kgの範囲でほぼ直線的に下がり、がんの死亡は16〜33 kgの範囲で下がる一方、U字に近い傾向を示した。研究の間のばらつきを示すI2は、全死因で45.7%、がんで77.4%、心血管で79.7%と、死因によって開きがある。著者らも、用量反応の形は死因によって大きく違うと書いている[2]。強ければ強いほどよいと、どの死因にも言えるわけではない。

ここに並んだkgは、どれも研究の中の区切りである。診断の基準として定められた値ではないし、男女や年齢、持病の有無を外して使える数字でもない。自分の握力を当てはめて合否を決める使い方は、論文の組み立てから外れている。数字が気になるなら、判断は医師に任せる。

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握力の高い人は、ほかの条件もそろっている

関連の中身を分解した研究がある。英国の高齢者5,240人(平均65.9歳、53.8%が女性)を平均9.7年追い、650人が亡くなった。女性では、年齢と資産だけを調整した握力と死亡の関連のハザード比が0.85(95%信頼区間0.74〜0.98)だった。そこに臨床と行動の危険因子を足すと0.92(0.79〜1.07)、炎症の指標まで足すと0.95(0.82〜1.11)へ弱まり、信頼区間は1をまたいだ。握力と炎症の指標の変化の逆向きの関連も、女性でしか見られなかった[3]。握力の数字の一部は、持病や喫煙、運動、炎症と重なっている。握力計が測っているのは手の力だけではなく、その人の暮らしの総体でもある、と読むほうが安全だ。

もう1つの見方は、日常の動作を間に置く。米国の高齢者17,747人を8年追った研究では、握力が5 kg下がるごとに、動作に制限が出るオッズが高まり、その幅は食べる動作の20%が最も大きかった。そして入浴の障害があると死亡のハザードは47%、歩行の障害があると43%高かった。例外は移乗(ベッドから椅子へ移るような動作)で、その障害と死亡に有意な関連はなかった[13]。手の力が落ちる、暮らしの動作が難しくなる、死亡に近づく。この順番の研究は、握力を健康の入口ではなく途中の目印として見せている。親の世代の話として読む人も多いだろう。だが、測りやすい目印が早くから手の中にある点は、どの世代にも変わらない。

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動かないことの関連は、握力が低い人ほど大きい

体重を気にする読者にとって、いちばん手がかりになるのはこの研究かもしれない。UK Biobankの498,135人(54.7%が女性)を中央値4.9年追い、8,591人が亡くなった。身体活動の少なさに伴う死亡のハザード比は、握力が最も低い3分の1で1.11(95%信頼区間1.09〜1.14)、最も高い3分の1で1.04(1.01〜1.08)だった。この差は統計的な交互作用として有意である。全身持久力でも形は似ており、最も低い3分の1で1.13(1.02〜1.26)、最も高い3分の1で1.03(0.91〜1.16)だったが、こちらの交互作用は有意に届かなかった。心血管の出来事でも、同じ形が見られた[4]。

著者らは、測りやすい筋力の低さを手がかりに、身体活動を増やす取り組みの益が最も大きい人たちを見つけられるかもしれない、と書く[4]。これは握力の低い人を責める数字ではない。動き始める理由が、いちばんはっきりしている人の数字である。ただし観察研究であり、動いた結果として死亡が減ったと確かめた試験ではない。

よくある誤解

「握力を鍛えれば寿命が延びる」。ここまでの研究はどれも、ある時点の握力とその後の死亡や病気の関連を見たものだ。握力が低いから病気が増えるのか、体に起きている変化が握力を下げているのか、追跡の研究だけでは分けきれない。心代謝の病気の研究も、握力は予測の材料だと書いているのであって、握力を上げた結果を測ったわけではない[7]。握力だけを鍛えて死亡を見た試験は、集めた論文の中には無かった。

「握力は年を取ってからの話だ」。英国の研究では、いくつかの関連は若い年齢層のほうでハザード比が高かった[1]。広島の研究でも、握力の上位の男性の相対リスクが最も低かったのは、3つの年齢層のうち35〜54歳だった[19]。30〜50代にとっても、この数字は自分の話に含まれる。

「握力が強ければ、体重は気にしなくていい」。韓国の研究は、メタボリック症候群の発症との関連は、絶対握力よりBMIのほうが強いと結論している[15]。握力は体重の代わりにならない。2つの物差しは、一方がもう一方を消すものではなく、並べて見るものである。

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今日からできること

  • 握力を測り、kgのままの値と体重で割った値を、前回の自分と比べる。 測定は数分で済むので、例えば半年に1回と間隔を先に決める(半年は読者の例)。相対握力は研究で使われた指標で、ここに合格点はない。研究が比べたのは測った時点で握力の違う人どうしで、個人の変化を追う行動を調べた論文ではない[14]。
  • 週の身体活動の分数を、今より増やす。 例えば1日10分足すところから始める(10分は読者の例で、分数の目安を調べた論文ではない)。活動の少なさに伴う死亡のハザード比は、握力が最も低い3分の1で1.11、最も高い3分の1で1.04だった。活動を増やした結果を確かめた試験ではない[4]。
  • 入浴、歩行、食事のうち、前よりつらくなった動作がないかを確かめる。 親の世代と一緒に見てもいい。例えば握力が5 kg下がるごとのオッズの高まりは、食べる動作で20%、歩く動作と入浴で14%だった。動作を確かめること自体の効果を調べた研究ではない[13]。
  • がんの治療中の人は、握力を測る意味を主治医に尋ねる。 中国のがん患者の研究は、日常の診療で測る有用性を挙げている。例えば女性16.1 kg未満、男性22 kg未満という研究の区切りが自分に関係するかを聞く。その区切りを自分で当てはめず、判断は主治医に任せる[18]。

握力計を置いて、全身を使う日へ

握力は全身の筋力の代わりに測られてきた数字で、手だけを鍛える話に縮めずに体全体を動かす種目として、ヨガだけで25種類以上のレッスンに、ピラティスやボクササイズ、HIITまでが同じ店にそろう。オンザショア立川店は溶岩プレートを敷いたスタジオのホットヨガを軸に、常温のヨガ、女性専用のキックボクササイズ、パーソナルトレーニングも扱っている。

握力を高める店だと言うつもりはない。研究が見たのは活動の少なさと死亡の関連で、店に用意できるのは、週の活動の回数を積み増すための手がかりまでである。東京都立川市曙町2-14-10のエトロワビル3Fにあり、JR立川駅北口から徒歩1分、8:00〜23:30の間は年中無休で開いている。ヨガの体験は60分で税込1,980円、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが付く。金額の一覧は料金に、申し込みの入口は体験の予約に置いてある。

医師から運動を止められている方は利用できない。妊娠中の方は溶岩ホットヨガには参加できない。常温のマタニティヨガがある。握力計の数字を控えたら、その週のヨガの体験の空きを予約の画面でのぞく。

参考文献

[1] Associations of grip strength with cardiovascular, respiratory, and cancer outcomes and all cause mortality: prospective cohort study of half a million UK Biobank participants. — Celis-Morales et al., 2018, BMJ (Clinical research ed.). DOI: 10.1136/bmj.k1651

[2] Thresholds of handgrip strength for all-cause, cancer, and cardiovascular mortality: A systematic review with dose-response meta-analysis. — López-Bueno et al., 2022, Ageing research reviews. DOI: 10.1016/j.arr.2022.101778

[3] Handgrip strength, inflammatory markers, and mortality. — Smith et al., 2019, Scandinavian journal of medicine & science in sports. DOI: 10.1111/sms.13433

[4] The association between physical activity and risk of mortality is modulated by grip strength and cardiorespiratory fitness: evidence from 498 135 UK-Biobank participants. — Celis-Morales et al., 2017, European heart journal. DOI: 10.1093/eurheartj/ehw249

[5] Association between low handgrip strength and obesity with mortality in peritoneal dialysis patients. — Do et al., 2023, Scientific reports. DOI: 10.1038/s41598-023-28708-8

[7] Associations of handgrip strength with morbidity and all-cause mortality of cardiometabolic multimorbidity. — Lu et al., 2022, BMC medicine. DOI: 10.1186/s12916-022-02389-y

[10] Observational study: handgrip strength, body composition and diabetes mellitus. — Suda et al., 2021, BMC research notes. DOI: 10.1186/s13104-021-05731-4

[13] Handgrip Strength, Function, and Mortality in Older Adults: A Time-varying Approach. — McGrath et al., 2018, Medicine and science in sports and exercise. DOI: 10.1249/MSS.0000000000001683

[14] Handgrip strength is inversely associated with fatal cardiovascular and all-cause mortality events. — Laukkanen et al., 2020, Annals of medicine. DOI: 10.1080/07853890.2020.1748220

[15] Comparison of Absolute and Relative Grip Strength to Predict Incidence of Metabolic Syndrome: Eight-Year Follow-Up Study in Korea. — Park et al., 2024, Metabolic syndrome and related disorders. DOI: 10.1089/met.2023.0206

[18] Associations of low handgrip strength with cancer mortality: a multicentre observational study. — Zhuang et al., 2020, Journal of cachexia, sarcopenia and muscle. DOI: 10.1002/jcsm.12614

[19] Grip strength predicts cause-specific mortality in middle-aged and elderly persons. — Sasaki et al., 2007, The American journal of medicine. DOI: 10.1016/j.amjmed.2006.04.018

冒頭の写真: デジタル式の握力計で体力の水準を測っている場面(米陸軍フォートブリスの健康施設)(写真: Marcy Sanchez / Public domain / Wikimedia Commons)

この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。

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