ホルモン療法で体脂肪の付き方が変わる 性別適合の治療で測った脂肪と筋肉

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同じ比較でも、相手と指標によって答えは変わる

治療前の自分と治療後の自分を比べる研究と、治療を受けている人を別の集団と比べる研究は、答える問いが異なる。前者は経過を、後者は比較時点での集団差を見ている。Mendes Sieczkowskaらの系統的レビューは、その両方の研究を採用しており、結果を読む際も区別が欠かせない。[1]

2021年のHarperらの系統的レビューは24研究を採用し、トランスジェンダー女性では治療後に筋力、除脂肪量、筋面積が低下すると整理した。一方で、治療後36か月でも、これらの値はシスジェンダー女性より高いと報告している。さらに長い治療による低下についてはデータの乏しさがあり、時間がたてば同じ経過を続けると単純には描けない。[2]

2026年のメタ分析では、トランスジェンダー女性の相対的な脂肪量、相対的な除脂肪量、上半身や下半身の筋力、最大酸素摂取量は、シスジェンダー女性と同程度と整理された。ただし、多くの結果の確実性は低い、または非常に低い。研究全体の結論でも、絶対的な除脂肪量はより多いとしつつ、体力は同程度としている。[1]

先のレビューと後のレビューを、単に正反対の答えとして並べるのは粗い読み方になる。体の中にある量そのものを見るのか、体に占める割合を見るのか、運動で発揮できる力を見るのかで、比較する対象が変わる。両レビューは体組成と機能を取り上げながら、採用した研究と比較する指標が異なっている。[1][2]

2026年の解析では、トランスジェンダー男性はシスジェンダー男性と比べ、相対的脂肪量が高く、相対的除脂肪量と上半身の筋力が低いという結果も示された。治療後に自分の除脂肪量や筋力が増えることと、比較集団と同じ値になることは別の話である。自分の経過の評価と、他人との差の評価を切り分けると、治療の変化を過度に期待したり否定したりせずに受け取れる。[1]

栄養評価のレビューでは、体組成と機能の反応が一致しない点に加え、既存の評価法が主にシスジェンダーの基準に依存している点を挙げている。治療中の動的な変化を捉えるため、個人の経過に沿って身体機能、血液の指標、食事摂取も含める評価が提案されている。[1][10]

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成人の治療と思春期の治療をひと続きにしない

思春期の研究では、成長の途中で始まる治療の段階を追っている。Boogersらの研究は、思春期抑制療法を先に受けたトランスジェンダーの少年380人、少女168人の診療データを後ろ向きに調べた。思春期抑制中の変化と、その後の性ホルモンによる治療の変化を分けて追っている。[8]

この研究で用いたのは、出生時に割り当てられた性別を基準にした除脂肪量と脂肪量の標準化スコアである。これはkgの増減量そのものとは違い、同年代の基準との位置関係を表す。研究は、思春期抑制を始めてからの経過と、その後に性ホルモンを始めてからの経過をこの指標で示した。[8]

少年では、思春期抑制の最初の年に除脂肪量のスコアが下がり、脂肪量のスコアが上がった後、安定していた。その後テストステロンを始めると、大きな除脂肪量スコアの上昇は最初の年に生じた。少女では思春期抑制中に除脂肪量と脂肪量のスコアが徐々に変化し、その後のホルモン療法中の体組成の変化は小さかった。[8]

治療開始という言葉だけでは、何を始めた時点なのかが抜けてしまう。思春期の進行を抑える治療から数えた期間か、その後のホルモン療法から数えた期間かを確かめると、変化が生じた時期を読み違えにくい。この研究も、治療の段階ごとに期待される変化を説明するための情報として位置づけている。[8]

Muellerらは、トランスジェンダー女性84人について、治療開始前と12か月後、24か月後の体組成と骨密度を比較した。内因性の性ホルモン分泌を抑える薬と、筋肉内に投与するエストロゲンを用いた研究である。期間中にはBMIと脂肪量が有意に増え、除脂肪量は有意に減少していた。骨密度は腰椎で有意に増加した一方、大腿骨では変化が認められなかった。[12]

同じ治療の経過でも、体組成と骨密度、さらに骨の部位によって結果が違った。血液検査では、12か月後と24か月後にHDLコレステロールの有意な上昇も報告された。テストステロン治療の研究とは薬の組み合わせも対象も異なり、この研究はエストロゲンを用いた治療中の複数の指標を追った結果を示している。体重の推移に加え、骨と血液も測った研究である。[12]

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よくある誤解

「脂肪が減ったなら、検査の結果も全部よくなる」という読み方には飛躍がある。Korkmazらの研究は、卵巣摘出を受けていないトランスジェンダー男性15人をテストステロン開始後に追った後ろ向きの観察研究である。体脂肪率が下がり、除脂肪量が増えても、血液検査の変化は別の方向を含んでいた。[9]

この研究ではHDLコレステロールが59.7mg/dLから52.3mg/dLへ低下した。血圧の変化は有意ではなく、中性脂肪の上昇傾向も有意ではなかった。小さな観察研究なので、これだけで将来の病気の発生を予測することはできないが、体組成の結果だけで代謝の評価を済ませない理由にはなる。[9]

「ホルモン療法による身体の変化は、健康への害だけを意味する」という見方も一面的である。D’hooreらのレビューは、治療を必要と感じる人で心理的な困難が少なくなり、生活満足度が上がるという研究を整理している。一方、特定のエストロゲンの使用と心筋梗塞や脳卒中のリスク増加を示唆する疫学的データにも言及する。体重の増減だけで治療の利益とリスクの全体を語れない。[17]

「体組成の数字が変われば、すぐ食事を減らすべきだ」という判断も急がない。栄養評価のレビューは、食事摂取、身体機能、血液の指標、治療の文脈を合わせ、個人の経過として評価する枠組みを提案している。これは食事量を一律に減らす方法を試験で確立したという報告とは異なる。体重を戻すことがそのまま治療の目的に合うのか、まず医療者と共有したい。[10]

今日からできること

  • 体重と腹囲を同じ日に測る日を設け、次に測るまでの間隔を生活に合わせて決める。体重はkg、腹囲はcmで別々に残す。BMIが上昇しても腹囲には有意な変化がなかったメタ分析にならい、体重と腰回りの両方を追う。[13]
  • すでに体組成計を使っている人は、体重だけの表示で終わらず、脂肪量と除脂肪量も同じ日に測る。使う曜日と測定を続ける期間を決め、同じ機器の同じ項目を揃える。治療前後の脂肪量と除脂肪量が逆方向に動いた研究では、この組み合わせが変化の内訳を示した。[11]
  • 日常の歩行で無理なく歩ける区間を決め、その区間にかかった時間を測る日と間隔を決める。体組成の測定日と揃えれば、量と動作の経過を並べられる。12か月の縦断研究は握力と歩行速度も測り、除脂肪量の低下に対して歩行速度は安定していた。[14]
  • 次の診察では、体重・腹囲・体組成の経過と、普段の食事や歩行で変わったことをまとめて伝える。すでに受けた血液検査も含めて相談し、身体の変化と治療で望むことを医療者と共有する。栄養評価のレビューは食事摂取、機能、血液の指標、治療の文脈を統合する枠組みを提案している。[10]
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ホルモン療法中の運動を常温のヨガで検討する

ホルモン療法中にヨガの参加先を探す人は、オンザショア立川店で常温のヨガと溶岩ホットヨガの内容を検討できる。JR立川駅北口を出て徒歩1分の場所にあり、所在地は東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fである。ホルモン療法の処方医には、治療の段階に応じた運動の条件と、暑いスタジオへの参加について尋ねる。医師から運動を止められている方は利用できない。妊娠中の方は溶岩ホットヨガには参加できない。常温のマタニティヨガがある。

ヨガは常温のクラスを含め25種類以上から選べる。溶岩ホットヨガは溶岩プレートを敷いたスタジオで行い、ピラティスやパーソナルトレーニングも実施している。ヨガ体験の税込1,980円には、60分のレッスンとヨガマット、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚のレンタルが含まれる。

年中無休で、全曜日8:00〜23:30に営業している。店の案内と料金に詳細がある。治療中の体重の変化だけで運動を決めず、参加可能なヨガの内容を候補に挙げる。

参考文献

[1] Body composition and physical fitness in transgender versus cisgender individuals: a systematic review with meta-analysis. — Mendes Sieczkowska et al., 2026, British journal of sports medicine. DOI: 10.1136/bjsports-2025-110239

[2] How does hormone transition in transgender women change body composition, muscle strength and haemoglobin? Systematic review with a focus on the implications for sport participation. — Harper et al., 2021, British journal of sports medicine. DOI: 10.1136/bjsports-2020-103106

[6] Characterising body composition and bone health in transgender individuals receiving gender-affirming hormone therapy. — Ford et al., 2022, Journal of human nutrition and dietetics : the official journal of the British Dietetic Association. DOI: 10.1111/jhn.13027

[8] Time Course of Body Composition Changes in Transgender Adolescents During Puberty Suppression and Sex Hormone Treatment. — Boogers et al., 2024, The Journal of clinical endocrinology and metabolism. DOI: 10.1210/clinem/dgad750

[9] Body composition and cardiometabolic changes during gender-affirming hormone therapy: 12-month longitudinal study. — Korkmaz et al., 2026, Endocrine research. DOI: 10.1080/07435800.2026.2692682

[10] Nutritional Monitoring During Gender-Affirming Hormone Therapy: Body Composition and Metabolic Implications. — Tosi et al., 2026, Nutrients. DOI: 10.3390/nu18121967

[11] Cross-sex hormone therapy in transgender persons affects total body weight, body fat and lean body mass: a meta-analysis. — Klaver et al., 2017, Andrologia. DOI: 10.1111/and.12660

[12] Body composition and bone mineral density in male-to-female transsexuals during cross-sex hormone therapy using gonadotrophin-releasing hormone agonist. — Mueller et al., 2011, Experimental and clinical endocrinology & diabetes. DOI: 10.1055/s-0030-1255074

[13] Body mass index and body composition changes in transgender people undergoing gender-affirming hormone therapy: a systematic review and meta-analysis. — Gois et al., 2025, Reviews in endocrine & metabolic disorders. DOI: 10.1007/s11154-025-09985-2

[14] One-year changes in body composition and phase angle during feminizing gender-affirming hormone therapy: a longitudinal and comparative study. — Avcı et al., 2026, Frontiers in endocrinology. DOI: 10.3389/fendo.2026.1694472

[17] Gender-affirming hormone therapy: An updated literature review with an eye on the future. — D’hoore et al., 2022, Journal of internal medicine. DOI: 10.1111/joim.13441

冒頭の写真: 室内に設置された体組成計と、測定時に足を載せる台や手で握る器具(写真: Longevitymedical / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons)

この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。

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