朝の昭和記念公園──スイレンは午後に閉じる
公園の開園時間は、4月から9月までは午前9時30分から午後5時まで。土日祝日だけは午後6時まで開いている。真夏に歩くなら、開園と同時に入るのがいい。理由は暑さだけではない。

写真: Kirin7739 / CC0 / Wikimedia Commons
公式サイトの花の暦は、夏の花をこう紹介する。スイレンは5月上旬から7月中旬、花木園の菖蒲田で咲く。ハスと混同されやすいが、スイレンの葉には切れ込みがある。そして、どちらも午後には花を閉じてしまうので、午前中の観賞がすすめられている。花のほうが、先に暑さから引き上げる。昼過ぎにのんびり来た人間に、スイレンは会ってくれない。
ハスは6月中旬から7月中旬。こもれびの里の池のほか、さざなみ広場に鉢が並ぶ。公式の説明によれば、さざなみ広場で見頃の時期に展示する鉢は、東京大学大学院が保有していた品種を、分けて保存しているものだという。大学院が持っていた品種を、国営公園が分けて守り、夏の広場で咲かせている。花を見に来た人の多くは、その来歴を知らずに通り過ぎるだろう。知っていても、花の見え方は変わらないかもしれない。だが私は、こういう話を知ってから見る花のほうが好きだ。
7月上旬から下旬には、西立川ゲートの左手のぶらぶら坂で、大輪のユリが咲く。カサブランカ、コルコバード、シルクロードといった園芸品種だ。7月下旬から9月下旬は、カナールの北側の斜面などでサルスベリ。漢字で百日紅と書くのは、花の期間が長いからだという。そして8月には、花木園展示棟の前の花壇で、ボランティアが育てたサギソウが「サギソウ涼み」の期間だけお披露目される。花の形が、飛んでいるサギに似ているという。涼むために、白い鳥の形の花を見る。昔の人の暑気払いは、なかなか風流だった。
水辺の生きものも夏が盛りだ。公園のトンボの湿地は、武蔵野の自然を残すために作られた人工の湿地で、ヤゴやアメンボ、ミズスマシ、オタマジャクシがすんでいる。季節になると、ここや日本庭園の池などの水辺で、ギンヤンマやアキアカネ、チョウトンボが見られると公式サイトは書く。
西立川ゲートから歩いて3分の水鳥の池は、水面が約5ヘクタールある。ローボートは3人乗りで60分800円、足でこぐサイクルボートは2人乗りで30分800円。9歳以下の子どもは、16歳以上の大人がいっしょでなければ乗れない。水の上は、陸よりいくらか風が通る。足でこぐボートは、こいでいる本人だけが少しも涼しくない、という欠点を抱えているが。
公園の入口に近いカナールには、全長200メートルの水路に大小5つの噴水がある。両側には、基地の時代に植えられ、公園に移されたイチョウが106本、左右対称に並ぶ。一番奥の大きな噴水の上には、峯田義郎の彫刻「明日の空へ」が立つ。公園のテーマ「緑の回復と人間性の向上」に沿って、みどり、人間、文化をイメージした作品だという。噴水の水音は、それだけで気温を何度か下げてくれる気がする。温度計は、たぶん同意しない。
数字で読む立川の夏
- 1985 — レインボープールが開いた年。6月28日、梅雨のさなかの開業だった。
- 30万 — レインボープールの最盛期の年間利用者数。立川市の人口より10万人以上多い。
- 15 — 分。霧の森に霧がたちこめる時間。毎時00分と30分から。メルヘンにも時刻表がある。
- 231 — か所。2026年度の立川ひと涼みスポットの数。暑さから逃げこめる場所は、思ったより多い。
- 96 — 人。立川市が指定したクーリングシェルター、立川防災館の受け入れ可能人数。防災の館が、暑さからも人を守る。
- 0 — 件。2025年のレインボープール跡地の再整備事業の公募に出た参加表明の数。夏の目玉の作り直しは、そう簡単ではない。
旅人の寄り道クイズ
昭和記念公園のこどもの森にある「霧の森」は、12月から2月まで霧を出すのを休む。その理由は何だろう。(A)冬は見に来る人が少ないから(B)凍結を防ぐため(C)霧の機械を夏に向けて整備するため。答えは最後に明かす。
公園の外にも、夏の水辺はある。立川の南、多摩川の近くへ下りてみたい。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
根川緑道の「水の広場」と、カニのいないガニガラ広場
立川市によれば、立川公園は柴崎町と錦町にまたがる総合公園で、延長約1.3キロメートルの根川緑道を軸にしている。緑道は平成4年度から8年度にかけて整備され、全体を四つのゾーンに分けて、それぞれのテーマで水と緑の景色がつくられた。緑道沿いには、親水階段のある池や水辺に張り出した四阿と並んで、市の言葉で「子供たちが安心して遊べる水の広場」がある。根川そのものの来歴は、根川と多摩川の記事で書いたので、ここでは夏の話だけにする。
緑道のそばには、もう一つ気になる広場がある。平成29年4月、柴崎市民体育館の北に開園した「ガニガラ広場」だ。立川崖線の緑や湧き水、柴崎用水路を生かしながら、遊具や健康遊具を置いた。市の説明によれば、昔はこのあたりに蟹がたくさんいたので「がにがら」と呼ばれていて、それが広場の愛称になった。そして、市は律儀に書き添えている。今はカニはいませんが、多種多様な動植物を見つけることができます。
カニにちなんだ名前の広場に、カニはいない。市役所がそれを自分で認めている。私はこの一文がたまらなく好きだ。名前だけが、昔の水辺の記憶を運んでいる。夏の夕方、用水の水音を聞きながら、もしかしたら一匹くらいと、つい足もとを見てしまう人は多いはずだ。
根川緑道へは、立川駅南口から歩いて約15分、多摩モノレールの柴崎体育館駅からなら約1分。駅を降りてすぐ水辺に立てる。暑い日に歩く距離が短いのは、それだけで美点である。
さて、ここまで水辺を歩いてきた。だが、立川の夏で本当に気をつけたいのは、水辺ではなく、水辺と水辺のあいだの、日なたの道のほうだ。
暑さの中の歩き方──231か所のひと涼みと、ごみ収集車の呼びかけ
立川市は、平成27年度から「立川市ひと涼み声かけプロジェクト」を続けている。暑さや疲れを感じたら立ち寄ってひと涼みしてよい場所を、市の施設や市内の事業者の協力で開く。期間は6月1日から9月30日まで。2026年度は、市内231か所にひと涼みスポットを開いている。目印はポスターで、場所は市が配る「立川ひと涼みスポットマップ」とデジタルマップで探せる。
市の注意の呼びかけ方も、なかなか本気だ。2026年度の取り組みの一覧には、防災無線、見守りメール、市の公式X、そして「ごみ収集車での注意喚起放送」が並ぶ。子育て支援・保健センターの公用車3台も、注意を呼びかけて走る。ごみを集めに来た車が、ついでに命も気づかってくれる。夏の立川では、収集車の音楽にも耳を澄ませたほうがいい。
もっと危険な暑さの日のために、国は令和6年4月から「熱中症特別警戒アラート」の運用を始めた。立川市の頁によれば、都内11か所のすべての観測地点で、翌日の最高の暑さ指数が35に達すると予測されたときに、前日の午後2時ごろに出される。その一段下の「熱中症警戒アラート」は、都内11か所のどこか一つでも、当日か翌日の暑さ指数が33に達すると予測されたときに、前日の午後5時と当日の午前5時ごろに出る。2026年の特別警戒アラートの運用期間は、4月22日から10月21日まで。半年近く、東京は暑さを見張っている。このアラートが出たときに休める場所として、立川市はクーリングシェルターを指定している。立川市泉町の東京都民防災教育センター、つまり立川防災館である。受け入れられる人数は96人。地震や火事の備えを学ぶ館が、夏は暑さからの避難所も兼ねる。防災館そのものの話は、防災の記事に書いた。
東京都も、令和7年度から独自の暑さ情報を出しはじめた。都内の区市町村の庁舎62か所のいずれかで、当日か翌日の最高の暑さ指数が35以上になりそうなときに、区市町村ごとに知らせる。前日の午後4時と当日の午前10時に出る。立川の暑さを、立川の名前で教えてくれる仕組みである。
アラートは、街の暮らしにも具体的に効いてくる。立川市は、特別警戒アラートが出たら、原則としてその翌日、市立の小・中学校を臨時休業にすると決めている。子どもの登下校の安全を最優先に考えた、と市は書く。立川公園の陸上競技場や野球場など屋外のスポーツ施設では、熱中症を防ぐために予約を取り消した場合、使用料を還付する仕組みがある。市が熱中症対策の頁に載せる「たちむにぃひろば」には足湯があり、熱中症警戒アラートが出ると、その足湯は臨時停止になる。暑すぎる日は、温かいお湯にも休んでもらう。当たり前のことなのに、表にして書かれると少し可笑しい。
では、歩く人は何に気をつければいいのか。立川市の熱中症の頁が挙げる心得は、驚くほど地味で、だからこそ役に立つ。水分をこまめにとり、飲み物を持ち歩く。なるべく日陰を歩いて直射日光を避ける。通気性がよく、汗を吸って早く乾く服を着て、帽子や日傘を使う。睡眠と栄養を十分にとり、体調の悪いときは無理をしない。気温がそれほど高くない日でも、急に暑くなった日や湿度の高い日、風の弱い日、体が暑さに慣れていない時期は注意がいる、とも書く。具合の悪くなった人を見かけたときの手当ても載っている。涼しい場所へ移し、衣服をゆるめて体を冷やし、水分をとらせる。水1リットルに食塩1〜2グラムの食塩水も役に立つ。自分で水を飲めないときは無理に飲ませず医療機関へ、意識がないときはすぐに救急車を。迷ったら、東京消防庁の救急相談センター、#7119に電話できる。覚えておくだけで、夏の散歩の安心が一つ増える。
この心得を、立川の地図に重ねてみる。昭和記念公園は開園と同時に入り、スイレンが閉じるころには木陰か屋内へ。霧の森は00分と30分を目安に、日なたで待たずに近くの木陰で待つ。根川緑道はモノレールの駅から1分の場所で降りる。暑い日の立川は、移動の距離を削った分だけ、楽しめる時間が増える。
体の話を一つだけ。汗をかいた体は、冷房の効いた電車や建物に入ったとたんに急に冷える。外の暑さと中の寒さを行き来するのが、街の夏の疲れの正体なのかもしれない。上着を一枚、鞄に入れておくと、帰りの電車でありがたみがわかる。
日が傾くと、公園は門を閉める。では、夏の夜の立川には何があるのか。
夏の夜の立川──公園が閉まったあとに
昭和記念公園は、夏でも夜は開いていない。4月から9月の平日は午後5時、土日祝日でも午後6時に閉園する。ただ、駅に近い無料のみどりの文化ゾーンは、4月から9月は午前8時30分から午後6時まで開いている。
夏の夜の立川でいちばん人が集まるのは、昭和記念公園の花火大会だろう。昭和29年(1954年)に多摩川の河原で始まった納涼花火の流れをくむ大会で、その来歴は祭りと花火の記事に書いた。夏の夜を一晩だけ、公園は開けて待っている。
公園が閉まったあとの街には、夜に開いている広場もある。立川駅北口から歩いて約8分のGREEN SPRINGSの広場は、24時間開放されている。昼の熱が少し抜けた時間に、2階の広場を流れるカスケードの水音を聞きに行くのもいい。8月には諏訪神社の例大祭があり、獅子舞と大太鼓が出る。夏の夜は、祭りと水音と、少しの夜風でできている。
夏の立川には、果物の季節もある。立川市によれば、市内では毎年6月下旬に夏野菜の品評会が、8月下旬には市内で育ったナシやブドウなどの果実の品評会が開かれる。市の農産物ガイドマップは、ナシを市内でもっとも生産量の多い果実と書き、豊水、幸水、稲城などの品種を挙げている。駅から少し北へ行けば、畑の夏がある。市の農産物ガイドマップでは、ブルーベリーの生産面積が443アールあり、名前の挙がる果樹の中では栗、柿に次ぐ広さを持つ。6月下旬には、農業の後継者の団体である立川市農研会が育てたトウモロコシやジャガイモを、市内の小学生と保護者が収穫する親子収穫体験もある。プールがなくても、夏の立川の子どもは、畑で土にまみれることができる。その話は、立川の畑の記事で詳しく書いた。
跡地の夏、次の夏
立川の夏はどこへ行ったのか、と冒頭で私は問うた。
調べてわかったのは、立川の夏が消えたのではなく、形を変えて散らばったということだ。かつては一か所に30万人を集めた夏が、いまは00分と30分に湧く霧に、朝のスイレンに、カニのいない広場の水音に、231か所のひと涼みに、分けて置かれている。一つずつは小さい。だが、全部を拾い集めると、立川の夏はちゃんと一日分ある。
もう一つ、わかったことがある。プールの跡地は、まだ終わっていない。国は、一年を通じて水と触れ合える場所にすると言い、一度目の募集で誰も手を挙げなくても、条件を見直して二度目に向けて準備をしている。40年あまり前、飛行場の跡に虹の名前のプールをつくった公園である。次の水辺が、どんな名前になるのかは、誰にもまだわからない。
ただ一つ確かなのは、立川という街が、跡地の扱いに慣れているということだ。飛行場の跡は公園になり、基地の跡は街になった。滑走路の上に原っぱを敷き、そこに虹のプールまで掘った街である。跡地を嘆くより、次の使い道を考えるほうが性に合っている。プールの跡も、いつかまた夏の何かになるだろう。
新宿から中央線で一本、川崎からなら南武線で一本。霧の時刻表に合わせて、週末の朝、少し早めに家を出ればいい。
それまでのあいだ、霧の森では、今日も00分になると、森が白くなる。
寄り道クイズの答え
答えは(B)凍結を防ぐため。公式サイトによれば、霧の森の霧は12月から2月まで、凍結を防ぐために休止する。冬の霧は凍ってしまう。霧の森は、夏のための森である。
訪ねる前に
- レインボープール: 2019年度の営業を最後に休止しており、解体・撤去と再整備の準備が進んでいる(国土交通省による)。泳ぐことはできない。再整備の進み具合は、国営昭和記念公園事務所の発表で確かめたい: https://www.ktr.mlit.go.jp/showa/
- こどもの森と霧の森: 昭和記念公園の北側。立川ゲートから徒歩約35分、西立川ゲートから約25分、砂川ゲートから約23分。霧は10時から15時、毎時00分と30分から15分間(高湿度時は5分間)、12月から2月は休止(公式サイトによる)。虹のハンモックは点検で使えない日がある。
- 公園への行き方: 西立川ゲートはJR青梅線の西立川駅公園口から約2分。立川ゲートはJR立川駅北口から約18分、多摩モノレール立川北駅から約16分。砂川ゲートへは、JR立川駅北口の2番バス乗り場から「昭和記念公園砂川口」まで乗車約13分、降りて徒歩約2分。
- 遠くから: 新宿からはJR中央線快速で立川まで乗り換えなし(30分台)。神奈川からは、川崎からJR南武線で乗り換えなし(立川まで約1時間)。西立川駅へは、立川でJR青梅線に乗り継ぐ。時刻と所要時間はJR東日本の公式で確かめたい。
- 開園時間・入園料・休園日・花の見頃は変わることがある。最新は公式サイトで: https://www.showakinen-koen.jp/
- 根川緑道(立川公園): JR立川駅南口から徒歩約15分、多摩モノレール柴崎体育館駅から徒歩約1分。立川市の案内: https://www.city.tachikawa.lg.jp/kanko/sports/1002924/1003007.html
- 暑さへの備え: 立川ひと涼みスポットは6月1日から9月30日まで。場所は市の案内とマップで: https://www.city.tachikawa.lg.jp/kenko/kenkozukuri/1003171/1025258/1003270.html
- 組み合わせるなら: 午前は西立川ゲートから水鳥の池と花木園の朝の花、昼前にこどもの森の霧の森、午後の暑い時間は屋内で休み、夕方に根川緑道の水辺へ。花火大会の年は、その日のために体力を残しておく。
夏の汗は、駅の北口で
真夏の立川を一日歩けば、シャツは何度も汗で重くなり、冷房の効いた電車でそのたびに冷やされる。暑さと冷えの行き来で、体は思っている以上に疲れている。
立川駅の北口から歩いて1分、立川市曙町2-14-10のエトロワビル3階に、オンザショア立川店がある。溶岩プレートを敷いたスタジオで行うホットヨガのスタジオだ。常温のヨガやピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングもあり、ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。
営業は8時から23時30分まで、年中無休で、曜日による違いはない。公園が閉まる時間を過ぎても、まだ間に合う。
ヨガの体験レッスンは税込1,980円。60分のレッスンに、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。汗だくの日でも、身ひとつで寄れる。
妊娠中の人は溶岩ホットヨガには参加できないが、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている人は利用できない。
料金は https://ontheshore.jp/price/ 、店の案内は https://ontheshore.jp/ 、体験の予約は https://site.locaop.jp/C0aVK?_src=hp で確かめられる。
外の暑さから逃げるのではなく、自分で選んだ温かさの中で、もう一度ゆっくり汗をかく。立川の夏の終わりかたとしては、それも悪くない。
冒頭の写真: 昭和記念公園のカナール。花壇の向こうに、四角く刈られたイチョウ並木と水路が延びる(写真: Hotate Chan / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons)
この記事の情報は2026年10月時点のものです。
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