多摩モノレール延伸はいつ? 箱根ケ崎まで7駅、町田へ16km──立川が多摩の背骨の真ん中になる日

多摩モノレールの延伸はいつか。上北台から箱根ケ崎まで7.0km・7駅、事業費約1,290億円、2030年代半ばの開業を目指す計画の中身と手続きの歩みを、国と都と会社の資料でたどる。都内で唯一鉄道駅のない市、町田への16kmのB案、八王子方面の課題、立川が多摩の南北の軸の真ん中になる未来まで。

多摩モノレールの線路は、北の終点で、空中でぷつりと切れている。

上北台駅の北のはずれで、灰色の軌道桁は途切れる。その先には新青梅街道の空があるだけだ。行き止まりというより、言いかけてやめた言葉のように見える。

あの空中の切れ端の先に、いま7つの駅が描かれている。国土交通大臣は2025年5月9日、上北台から箱根ケ崎駅付近までの延伸を特許した。延長7.0km、7駅、事業費は約1,290億円、開業は2030年代半ばを目指す。延びる先には、東京都の26の市のなかでただ一つ、鉄道の駅を持たない市がある。

調べはじめて、私は一つの問いを抱えた。多摩を南北に結ぶ線を一本引くのに、なぜこれほど長い時間がかかるのか。そして、その線が伸びたとき、空の道の真ん中にいる立川は、何になるのか。

多摩モノレールの延伸はいつか──上北台の先、新青梅街道の空へ

答えを先に書いておく。多摩モノレールの延伸は、上北台から箱根ケ崎までの区間が、2030年代半ばの開業を目指して動き出している。国土交通省が2025年5月9日に発表した資料には、整備駅数7駅、建設キロ複線7.0km、開業時期2030年代半ば、事業費約1,290億円(税込)と並ぶ。町田方面と八王子方面は、まだ「構想」の段階にある。

いまの北の終点、上北台駅。軌道桁はこの先で途切れる
いまの北の終点、上北台駅。軌道桁はこの先で途切れる
写真: LERK / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

もう少し細かい数字は、東京都の発表にある。都は2025年11月27日、国土交通省から都市計画事業の認可を取り、事業に着手した。施行箇所は東大和市上北台一丁目から西多摩郡瑞穂町大字箱根ケ崎字狭山まで。延長7,055メートル。事業期間は令和7年度から令和16年度、つまり2025年度から2034年度まで。町田市の説明は、箱根ケ崎方面の延伸を「2034年度の開業を目指して整備が進められています」と書いている。都が受け持つ事業費は904億円で、残りは会社の受け持ちになる。

この「受け持ち」が、モノレールという乗り物の不思議なところだ。国の資料によれば、支柱、桁、駅舎といった骨格の構造物は「インフラ部」として東京都がつくり、車両、電車線、券売機など運行と経営に要る部分は「インフラ外部」として多摩都市モノレール株式会社がつくる。町田市の説明はもっと率直で、軌道桁や支柱や駅は道路の一部として扱われるので、その建設は道路を管理する者が行う、と書く。モノレールの桁は、法律の上では道路の仲間なのだ。空に浮いた灰色の梁を見上げて「あれは道だ」と言われても、すぐには飲みこめない。

道路の仲間であることは、名前にも出ている。都市計画の上で、延伸区間の専用道は「立川都市計画道路9・6・1号多摩南北線」と「福生都市計画道路9・6・1号多摩南北線」という。多摩南北線。身も蓋もない名前だが、これほど正直な名前もない。多摩を南と北に結ぶための道、それ以外の意味を持たせていない。

線路は、新青梅街道の真ん中を行く。都の説明資料は、モノレールが新青梅街道の中央部分を通り、図面の脇に仮称No.2駅、No.3駅と駅が並んでいく様子を一枚ずつ示している。都の資料によれば、途中の6駅(仮称No.1〜No.6)のホームは長さ約66メートル、幅約8.5メートル。終点の仮称No.7駅は、JR八高線の箱根ケ崎駅のそばに置かれる。車両は今と同じ跨座型、4両編成の定員は約400人とある。

国の資料には、小さな注がひとつ付いている。導入空間となる新青梅街道の拡幅は着手済み。空の道を架けるには、まず地上の道を広げなければならない。延伸の工事は、桁を架けるより先に、街道を太らせるところから始まっている。

では、その太った街道の先で、モノレールを誰よりも待っているのは誰なのか。

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都内でただ一つ、駅のない市へ

武蔵村山市には、鉄道の駅がない。

市の公共交通計画は、現在、市内には鉄道駅がありません、と一行で書く。市立の学校が出した研究発表の冊子には、もう少し感情のこもった文がある。「都内の区市で唯一鉄道駅が存在しない市」としても知られる本市。多摩都市モノレールの延伸は、多くの市民の悲願とも言うべき施策であった、と。同じ冊子は、令和7年3月に駅ができるという都市計画が決まったことを「多摩都市モノレール延伸元年の幕開け」と呼び、市内に5つの駅が整備される予定だと書いている。7駅のうち5駅が、この一つの市に集まる。

悲願という言葉は、大げさではないらしい。交通の専門媒体である乗りものニュースは、この地域にはかつて何度も鉄道の計画が持ち上がっては消えたと伝える。記事によれば、1915年に箱根ケ崎から村山、東村山を経て吉祥寺へ至る「村山軽便鉄道」が鉄道敷設の免許を受け、その免許はのちに川越鉄道へ渡り、高田馬場と東村山を結ぶ村山線、いまの西武新宿線の骨格になった。1930年には東村山から村山貯水池前まで延びたが、そこから先の箱根ケ崎までは開業しなかった。武蔵村山へ向かうはずだった線は、手前で別の線の一部になってしまったのである。記事はこれを「鉄道100年お預け」と呼んでいる。100年待たされた人に、あと10年待ってくれと言うのは、言う側にも勇気がいる。

もうひとつ、終点の側にも小さな発見があった。多摩都市モノレールの会社概要に載る株主の一覧に、瑞穂町の名前がある。持ち分は0.65%で、立川市と同じだ。まだ一本の線路も通っていない町が、会社の株を持っている。開業した日には、株主として最寄り駅を迎えることになる。気の長い投資だが、この線に関わる人々は、みな気が長い。

市の公共交通計画は、楽観だけを書いているわけではない。路線バスの利用は新型コロナの流行で落ち込み、いまも元の水準に戻っていないこと、運転手不足や燃料の高騰で「公共交通が運行されていることが当たり前」ではなくなるおそれがあることも、隣に並べている。だからこそ、モノレールを都市間の幹線にして、駅へつなぐバスや小さな交通の網を組み直す。駅ができることは、ゴールではなく、街の交通を一から編み直すきっかけとして書かれている。いま市内を走るのは、路線バスのほか、市内循環バスの「MMシャトル」と、登録した人が使える乗合タクシーの「むらタク」だ。駅のない街は、バスと乗合のタクシーで、なんとか鉄道の代わりを務めてきた。

では、7つめの駅、終点の箱根ケ崎はどうか。地図の上では素直な終着駅に見えるが、そこには意外な事情が隠れていた。

終点の駅は、基地の空の下に置かれる

都が都市計画案の説明会で使ったスライドの原稿は、ていねいに読むと面白い。延伸の線路は、新青梅街道の中央を通って西へ進み、途中、瑞穂町役場入口の交差点のあたりに、上り線と下り線を入れ替える分岐器を置く。箱根ケ崎のアンダーパスの手前までは街道の真ん中を行くが、その先は構造物を避けて北側へ寄り、福生3・4・10号線の東側を通って箱根ケ崎駅のそばへ向かう。

延伸の終点が計画されるJR八高線箱根ケ崎駅の東口(2019年)
延伸の終点が計画されるJR八高線箱根ケ崎駅の東口(2019年)
写真: Suikotei / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

終点の仮称No.7駅について、原稿は四つの悩みを並べている。JR箱根ケ崎駅前の道路は幅が20メートルしかなく、モノレールの駅舎を置くには足りない。駅前広場の入口には交差点が二つ続いている。いまの駅前広場の働きも残さなければならない。そしてもう一つ、横田基地の航空制限がかかっている。

空の道の終点は、別の空の都合に縛られているのだ。立川はかつて飛行場の街だった。その立川から北へ延びるモノレールが、終点でまた飛行場の空とぶつかる。多摩の空は、昔もいまも、ゆったりしているようで案外せまい。結局、都は駅前の東側に道を広げて、そこに駅を置く計画にした。福生3・4・10号線は、計画の幅20メートルから35.5メートルへ広げられる。

途中の駅のまわりでも、道は太る。仮称No.6駅のあたりでは、駅への連絡通路を設けるため、計画幅員30メートルの新青梅街道を37メートルに広げる。工事は、用地がまとまって確保できた区間から、水道管や下水道管を移し、車の流れを外側へ振り分け、道の中央に作業の場所をつくってモノレールを建てる、という順で進む。モノレールができたあとは、車の流れを中央寄りに戻し、電線共同溝を整えて電柱をなくす、とある。空に一本の道を通すついでに、地上の電線が地中へ消える。延伸の効用は、乗客の数だけでは測れない。

では、この悲願は、どんな手順を踏んでここまで来たのか。年表を並べると、気の長さがよく分かる。

答申から認可まで、手続きの年表は長い

延伸の歩みは、国の審議会の答申から始まる。2016年4月、交通政策審議会の答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」が、多摩都市モノレールの延伸を、上北台〜箱根ケ崎、多摩センター〜八王子、多摩センター〜町田の三方面で位置づけた。意義はどれも同じ言葉で書かれている。多摩地域の主要地区間のアクセス利便性の向上。違うのは課題の欄だ。箱根ケ崎方面には、導入空間となりうる道路整備が進んでおり、事業化に向けて具体的な調整を進めるべき、とある。この一文が、箱根ケ崎を先頭に押し出した。

そこからの年表を、都と会社と国の資料から拾っていく。

2020年1月、東京都が事業化に向けた予算を計上した。2022年10月、都市計画の素案の説明会が開かれ、環境影響評価の調査計画書が出された。2023年11月に環境影響評価書案、2024年5月にその見解書。2024年7月23日、会社が軌道法にもとづく特許を申請した。2025年2月6日、都は環境影響評価書を知事に提出した。評価の項目は、騒音・振動、土壌汚染、日影、電波障害、景観、史跡・文化財、自然との触れ合い活動の場、廃棄物の8つ。2025年3月に都市計画が決まり、5月9日に国が特許を出し、11月27日に都が事業に着手した。

そして2026年5月22日、会社は国土交通大臣から「軌道第一次分割工事施行認可」を受けた。対象は支柱、軌道桁、駅舎など、土木を主とする部分で、電気を主とする「第二次」はこれから別に申請する、と報道は伝えている。

会社のお知らせには、この手続きの根拠になる軌道法の条文が、そのまま引かれていた。第五条 軌道経営者ハ国土交通大臣ノ指定スル期間内ニ工事施行ノ認可ヲ申請スヘシ。2026年の空を走る乗り物の手続きが、カタカナまじりの文語の条文で進んでいく。未来の乗り物は、ずいぶん古い言葉で動いている。

答申から工事の認可まで、ちょうど10年。いや、武蔵村山の側から数えれば、免許の年から111年である。どちらの物差しで測るかで、この延伸は「ようやく」にも「もう」にもなる。

数字で読む多摩モノレールの延伸

  • 7,055メートル──都が事業認可を受けた延伸区間の延長。国の資料の「7.0km」より55メートル長い。端数にも、ちゃんと根拠がある。
  • 約1,290億円──インフラ部とインフラ外部の合計の事業費。うち都の分が904億円。7.0kmで割ると、1kmあたりおよそ184億円になる(私の計算)。
  • 7駅──延伸で新しくできる駅の数。うち5駅が、いま駅のない武蔵村山市に置かれる予定だ。
  • 約66メートル──新駅のホームの長さ。4両編成、定員約400人の列車がちょうど収まる。
  • 5,303万3千人──2025年度の延べ輸送人員。前の年度より4.8%増えて、過去最高。延伸の前から、空の道は混みはじめている。
  • 0.65%──瑞穂町が持つ会社の株の割合。終点の町は、線路より先に株主になった。

旅人の寄り道クイズ

延伸区間のモノレール専用道には、都市計画の上で正式な名前が付いている。それは次のどれか。

(A)多摩南北線 (B)新青梅モノレール通り (C)狭山空中街道

答えは、記事の終わり近くで明かす。

延伸の先の街は、駅を待っている。では、空の道のもう一方の端、南の多摩センターから先では、何が起きているのか。そこには、まだ線の引かれていない16kmがある。

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