立川・昭和記念公園の見どころを歩く イチョウ並木が四角いのは、空のせいだった

立川・国営昭和記念公園の見どころと一周の時間(パークトレインで約50〜60分、自転車道は約14km)を、立川飛行場の跡地という来歴から歩いてたどる。みんなの原っぱの大ケヤキ、ドッグラン、日本一の大きさのハンモック、四季の花、そしてカナールのイチョウ並木が四角い理由まで。

立川のイチョウは、四角い。

比喩ではない。国営昭和記念公園の立川ゲートを入ってすぐ、水路の両側に並ぶ106本のイチョウは、頭の高さがきっちりと切りそろえられ、側面まで平らに刈り込まれて、巨大な緑の箱のような姿で立っている。秋になると、その箱がそのまま黄色くなる。初めて見た人は、たいてい一度、首をかしげる。私もかしげた。

立川という街は、損をしている、と私はときどき思う。中央線で東京から西へ向かう人の多くは、ここを乗り換えの駅としてしか知らない。駅前にはビルが並び、何でもそろう。それで「何でもある、だから何もない」と片づけられる。だが駅の北口から10分も歩けば、総面積180haという、駅前の続きとは思えない空白が広がっている。その空白には、四角いイチョウの理由も含めて、この街が誰にも自慢してこなかった百年分の来歴が埋まっている。

なぜイチョウを四角く刈るのか。答えは、この記事のいちばん最後まで取っておく。そこへたどり着くには、この公園が何の跡地なのかを、先に知っておく必要がある。

昭和記念公園の見どころと、一周にかかる時間

先に、実用のことを片づけておく。国営昭和記念公園は東京都の立川市と昭島市にまたがる国営公園で、計画面積は180ha。そのうち169.4haが開園している。東京ドームに換算する癖は私には無いので、別の物差しを使う。公園の中には、車や歩行者を気にせずに走れる自転車専用のコースが約14kmある。園内をめぐる汽車の形の乗り物、パークトレインは、公園を約50〜60分で一周する。歩いて回るなら、公式の案内に出ている数字がいちばん正直だ。立川ゲートから、園の反対側にあるこもれびの里までは、徒歩で約38分。カナールから砂川ゲートまでは42分とされている。片道で、である。

昭和記念公園を一周するのにどれくらいかかるか、という問いには、だから「乗り物で1時間、歩けば半日、全部見るなら一日では足りない」と答えるのが正確だと思う。

見どころを一息に挙げると、こうなる。立川ゲートの正面にのびる水路「カナール」と、その両側の四角いイチョウ並木。公園の真ん中にある約11haの「みんなの原っぱ」と、その中央の大ケヤキ。首都圏で戦後最大規模とされる約6haの日本庭園。日本一の大きさだという虹のハンモックがある「こどもの森」。昭和30年代の武蔵野の農村を再現した「こもれびの里」。春のポピーと秋のコスモスが咲く、公園でいちばん大きな花畑「花の丘」。そして立川ゲートの脇には、リードを外して犬を遊ばせられるドッグランがある。

公式サイトによれば、園内では年間で800種を超える花や植物が見られる。季節ごとに主役が入れ替わるので、いつ行っても「いちばんの見頃」はどこかにある。公園の側の言い分ではあるが、年間の花の予定表を眺めると、嘘ではない。

ただ、私が先に知りたかったのは、花の名前ではなく、この広さの理由だった。都心から西へ約35km、武蔵野台地の一角に、なぜこれほどの空白が残ったのか。その問いを抱えたまま、駅にいちばん近い入口へ向かう。

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あけぼの口から、国営昭和記念公園へ入る

駅からいちばん近い入口は、あけぼの口だ。公式の案内では、JR立川駅の北口から約10分、多摩都市モノレールの立川北駅からは約8分。名前に「立川」と付く立川ゲートは、同じ北口から約18分かかる。地名に義理立てして8分余計に歩く必要は、たぶんない。入ってすぐの一帯は「みどりの文化ゾーン」と呼ばれ、ここは無料区域になっている。

最初に目に入るのは、花みどり文化センターという建物である。いや、正確には、建物だと気づくのに少し時間がかかる。屋上も壁面も緑で覆われ、屋上は「浮游の庭」と名づけられている。大地の表層がそのまま浮き上がったかのような空間、と公園は説明する。その面積は5,278㎡。屋根を支えるシリンダーの上に、公園の中から移した大木まで植えてある。建物の上を歩いているはずなのに、足の裏はそれを知らない。その丘に立つと、背後のビル群と目の前の芝生が、同じ高さでつながって見える。立川の街と公園の境目は、ここでは屋根一枚ぶんしかない。

センターの中には昭和天皇記念館がある。緑を愛した昭和天皇の生物学の研究や、ゆかりの資料を展示する館だ。この公園が昭和天皇の在位50年を記念する事業として生まれたことを思えば、ここが入口に置かれているのは筋が通っている。ただし記念館は2026年6月1日から11月27日まで、大規模な改修のため休館していると公式に案内されている。

みどりの文化ゾーンの先には、さらに広い有料区域が続く。その前に、私はいったん芝生から目を離し、紙の上の年表に降りていく。

立川飛行場の跡地に、180haの公園ができるまで

国営昭和記念公園事務所が公開している経緯の年表は、大正10年の一行から始まる。「陸軍飛行場設置を決定」。

立川市の散歩コースの案内によれば、第一次世界大戦のあと飛行機の重要性が叫ばれるようになり、立川が飛行場の用地に選ばれた。理由は、首都に近いこと、広大で平坦な土地があること、鉄道が通っていることだった。飛行場が完成した大正11年(1922)、岐阜県の各務ヶ原から陸軍の飛行第五聯隊がやって来る。立川が「空の都」と呼ばれたのは、このためだった。

平らで、広くて、鉄道がある。飛行場の条件として挙げられたこの三つは、そのまま今の公園の条件でもある。人が集まる理由と、飛行機が降りる理由が、百年を隔てて同じである。滑走路にも原っぱにも、坂は要らない。

年表は続く。昭和20年9月、米軍が旧陸軍の施設を接収。昭和44年12月、米軍飛行場の機能が停止。昭和51年11月、昭和記念公園(仮称)の建設が閣議了承され、昭和52年11月30日、立川基地は全面返還された。昭和54年11月30日、国営昭和記念公園の設置が閣議決定される。そして昭和58年10月26日、第一期の70haが開園した。みんなの原っぱ、花木園、ふれあい広場。開園式典は昭和天皇の臨席のもとで行われた、と年表は記す。

ここで、もうひとつの年表の行に目が留まる。昭和54年11月19日、「国有財産中央審議会、立川基地跡地利用計画の大綱を答申」。内閣府の防災担当が公開している資料によれば、この答申は跡地の使い方について「大規模公園及び広域防災基地を二本の柱」とし、周りに街の健全な形成に必要な土地を配する、というものだった。

つまり、返ってきた飛行場の跡地は、最初から二つに分けられていたのだ。ひとつが公園。もうひとつが、立川広域防災基地である。

この防災基地が、なかなかのものだ。内閣府の説明では、首都直下地震などが起きたとき、政府の緊急災害対策本部を置く場所は、閣議了解で首相官邸、内閣府、防衛省の順と決められている。そのすべてが大きな被害を受けて使えないとき、本部は立川広域防災基地の中にある災害対策本部予備施設に置かれる。都心から約30km離れた、地盤の比較的良い台地の上にあり、都心と同時に被災しにくい。しかも東京の恒常風の向き(夏は南か南南西、冬は北か北北西)から見て、都心で大火事が起きても、航空機の離着陸が煙の影響を受けにくいという。

いざというとき、この国の司令塔の4番目の席は、立川にある。乗り換えの駅としか思われていない街が、実は国家の非常口を預かっている。市民がこれを知らないのは、少しもったいない。そして、防災基地の隣に広い公園があることにも、ちゃんと意味がある。資料は、物資の一時的な集積や被災者への対応に、公園も活用した広い敷地を使えることを利点に挙げている。花畑は、非常時には別の顔を持つ。

公園の年表に戻る。そこから先は、ほとんど「オープン」という言葉の連続である。国営公園の公式な年表が、商店街の新装開店の貼り紙のように見えてくる。昭和60年に南口、昭和61年に水鳥の池と渓流広場、平成4年にこどもの森の全面と玉川上水口、平成9年に日本庭園、平成13年に砂川口、平成17年にみどりの文化ゾーン、平成19年にこもれびの里、平成23年に花の丘。平成26年4月1日に高松口が開いて、開園面積は169.4haになった。計画の約94%にあたる。

人の数も年表になる。公園事務所の記者発表によれば、開園した昭和58年度は10月から3月までの半年で18.4万人、翌年度は31.6万人。それが平成26年度には年間454.3万人に増えた。もともとの計画では年間300万人を見込んでいたというから、その1.5倍である。平成28年のゴールデンウィークには、累計の入園者数が8,000万人を超えた。全国に17ある国営公園のうち、入園料のかかる12か所の中では、8,000万人に届いたのはここが初めてだったという。

年表を眺めていると、ひとつのことに気づく。この公園は一度にできたのではない。30年をかけて、少しずつ、ほどかれるように開いてきたのだ。基地の柵が一本ずつ外され、そのたびに人が奥へ入っていけるようになった。いま歩いている芝生のどこかは、私が生まれたころ、まだ金網の向こう側だった。

公園の基本理念は「緑の回復と人間性の向上」。回復、という言葉の選び方に、私は少し立ち止まる。新しく緑をつくるのではなく、取り戻す。ここには、取り戻すべき何かがあったという認識が、最初から書き込まれている。では、その取り戻された緑の真ん中には、いったい何が立っているのか。

みんなの原っぱと大ケヤキ

公園の真ん中に、みんなの原っぱがある。南北約400m、東西約300m、面積は約11ha。数字では実感がわかないが、端に立って反対側を見ると、人がゴマ粒になる。その中央に、一本のケヤキが立っている。高さは20mを超える。

春のみんなの原っぱの大ケヤキ。若葉をまとった枝の下で、人びとが思い思いに腰を下ろす
春のみんなの原っぱの大ケヤキ。若葉をまとった枝の下で、人びとが思い思いに腰を下ろす
写真: sii_side / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons

この木について、公式サイトには興味深いことが書いてある。大ケヤキは公園整備のために植えられたものではなく、公園ができる前からこの場所にあった。見つかった当時の大きさは樹高17m、枝張16m、幹回り2.4mで、樹齢は70〜80年と推測された。それから40年ほどがたち、いまは樹齢100年を超えていることになる。そして、このケヤキを見つけた公園の設計担当者が「このケヤキを中心に原っぱを作ろう」と考えて整備したのが、みんなの原っぱなのだという。

つまり順序が逆なのだ。原っぱの真ん中に木を植えたのではない。木のまわりに、原っぱをひらいた。基地の時代を生き延びた一本の木が、11haの空間の重心を決めた。設計図が、一本の木に道を譲ったのである。

ついでに言えば、ケヤキは立川市の「市の木」でもある。市は昭和49年、市民に呼びかけたうえで、武蔵野に原生し、昔から防風林として暮らしと共存してきたゆかりの深い木として、ケヤキを選んだ。市の木が、市でいちばん大きな原っぱの重心に立っている。偶然にしては、出来すぎている。

原っぱには、もうひとつ秘密がある。一見きれいな芝生に見えるが、芝以外のさまざまな草でできている。開園当初は一面に芝を張ったが、その後は除草剤などの薬品を使わず、雑草と共生できるように管理してきたという。季節を通じて野の花が咲くのは、そのためだ。芝生だと思って寝転んでいた人は、雑草の上に寝ていた。公園の側は、それを誇りにしている。

さらに足の下。原っぱの南側半分には、雨水をためる巨大な貯留槽が埋められている。ためた雨水は一定の量になると水鳥の池へポンプで送られ、渓流広場の水景やトイレの洗浄水に使われる。水面積約5haの水鳥の池の水は、園内に降った雨を集めたものなのだ。寝転んで空を見上げる人の背中の下で、渓流のせせらぎと、トイレを流す水が準備されている。詩的に言えば雨の記憶、実務的に言えばトイレの水である。

夏、この原っぱは、一年でいちばん人で埋まる夜を迎える。立川まつり国営昭和記念公園花火大会のメインの観覧会場が、みんなの原っぱなのだ。主催者の案内によれば、この花火大会の始まりは、昭和29年に日野橋のほとりの多摩川の河原で開かれた第1回の立川納涼花火大会にさかのぼる。あのころの花火は、川の花火だった。いまは、基地だった原っぱの草の上に寝転んで、真上に開く火を見る。第1回から、70年余りが過ぎた。花火の詳しい話は、この特集の別の記事に譲る。

原っぱには東・西・南の三つの花畑があり、季節ごとに花が入れ替わる。周囲には、樹齢50年を超えるサクラの大木がそろう桜の園がある。座った人の目の高さまで枝が垂れるものが多い、と公式サイトは書く。桜の園の近くには、トンボの湿地がある。武蔵野の自然を残すためにつくられた人工の湿地で、ヤゴやアメンボ、ミズスマシ、オタマジャクシが暮らし、季節になるとギンヤンマやアキアカネ、チョウトンボが飛ぶ。水鳥の池の近くには、野鳥だけの住処として管理されるバードサンクチュアリーもある。飛行機のために空けられた空を、いまはギンヤンマが無許可で飛んでいる。

数字で読む昭和記念公園

  • 180ha … 計画面積。駅から10分の場所に置く空白としては、ずいぶん思い切った数字だ。
  • 106本 … カナールのイチョウの数。全員、頭の高さがそろっている。理由は最後に書く。
  • 約14km … 自転車専用コースの長さ。園内で自転車の練習をしてはいけない、と公式は念を押している。練習は家でしてから来る場所らしい。
  • 8,000万人 … 開園から33年で達した累計の入園者数。入園料のかかる国営公園で初めて。
  • 4番目 … 首都直下地震のとき、政府の災害対策本部を置く場所の順番で、立川の予備施設が控える位置。官邸、内閣府、防衛省の次である。
  • 800種超 … 年間に見られる花と植物の数。私が名前を言えるのは、たぶんその2%ほどだ。

原っぱの外れ、立川ゲートの脇では、尻尾がいくつも揺れている。そこには、人間の公園よりずっと細かい決まりがある。

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