立川のロケ地と作品の舞台を歩く──神様も防衛隊員も、なぜ立川へ「休みに」来るのか

学園都市のモチーフ 「とある」シリーズと立川の長いつきあい

立川の聖地巡礼を語るなら、「とある」シリーズを外すことはできない。

多摩モノレールの立川北駅。高架の駅舎と、その下の歩道を行き交う人びと
多摩モノレールの立川北駅。高架の駅舎と、その下の歩道を行き交う人びと
写真: Vantey / Public domain / Wikimedia Commons

協会の「立川×アニメ」の頁によれば、協会の前身である立川観光協会は、立川市に似た風景が登場するテレビアニメ「とある魔術の禁書目録(インデックス)」と、初めてのコラボイベントを開いた。その後、立川×アニメの事業が立ち上がり、「とある魔術の禁書目録」やその派生作品を中心に、立川市が登場するテレビアニメや漫画作品とのコラボを続けている。事業の名前は「とある自治体の地域振興」。作品名にかけて、自治体が自分のことを「とある自治体」と名乗っている。役所がここまで照れずに洒落を言える街を、私はあまり知らない。

物語の舞台は「学園都市」という架空の都市だ。協会は、立川が学園都市のモチーフになっているとして、一般社団法人アニメツーリズム協会の「訪れてみたいアニメ聖地88」の2025年版に、「とある魔術の禁書目録」「とある科学の超電磁砲」の2作品で認定されたと伝えている。立川市が「とある科学の超電磁砲」で認定されるのは2018年から8年連続8度目、「とある魔術の禁書目録」では2019年から7年連続7度目。国内外のアニメファンの投票をもとに選ばれる88の聖地に、立川は毎年選ばれ続けている。

駅前の街並みと、頭上を走るモノレール。整然と区画された北口の街区と、その先に広がる研究所や大学校の敷地。架空の学園都市と立川の風景がどこで重なるのかは、作品を見て、街を歩いて、自分で確かめるのがいちばん楽しいだろう。

コラボは一度きりの催しではなく、街の風物詩になった。協会によれば、2026年は「とある自治体の地域振興2026」として、11月14日と15日に、国営昭和記念公園の花みどり文化センターをメイン会場に開かれる。多摩モノレールの高松駅では、10月10日から11月15日まで、作中の登場人物を演じる声優による構内限定の放送が流れ、駅のギャラリーではこれまでの取り組みも紹介されている。2026年2月22日には、シリーズ初のフィルムコンサートがTACHIKAWA STAGE GARDENで開かれ、協会は、立川を訪れるファンへの「おもてなし企画」を用意した。

街なかには、作品の絵をまとった自動販売機が21か所ある。売られているのは、ヒロインの御坂美琴が愛飲する「ヤシの実サイダー」をイメージして作られた、立川限定の「ヤシの実&パインサイダー」。ほかにも、協会の頁にはコラボグッズが並び、その中には「うどいなり」という一品まである。立川の白い特産品と学園都市が、一つのいなり寿司の中で出会っている。

16年。アニメとのつきあいとしては、ずいぶん長い。立川が「とある」シリーズの聖地であり続けているのは、作品の人気だけでなく、街の側がこの関係を手放さずに、毎年手を入れてきたからだ。自動販売機に絵を巻き、駅に声優の放送を流し、いなり寿司にまで学園都市を詰める。その手間を16年続けた人たちが、この街にはいる。

画面の中の立川を支えているのは、作品のファンだけではない。カメラの外側にも、たくさんの人がいる。

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

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画面の外で働く人たち ロケーションサービスとエキストラ400人

立川には、撮影を手伝う窓口がある。立川ロケーションサービスという。

国営昭和記念公園のカナール。黄葉したイチョウ並木が水面に映る
国営昭和記念公園のカナール。黄葉したイチョウ並木が水面に映る
写真: Kakidai / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

公式の頁によれば、立川ロケーションサービスは、立川の自然や施設、街並みを紹介し、映画、テレビ番組、テレビCMなどの制作と撮影を支援している。頁は立川を、緑が多く自然に恵まれた環境を持つ一方で、駅前や商業地域では近代化が進み、都心からのアクセスもよく利便性もよいため、ドラマや番組のロケ地としてしばしば利用されている、と説明する。窓口は二つに分かれていて、制作の相談とロケ地の登録は映像制作を支える民間の会社が、エキストラやロケ弁の登録は立川観光コンベンション協会が受け持つ。サンサンロード、ファーレ立川アート、立川市が管理する物件で撮影するには、ここからの申請が必要だという。立川市も、市内の公園で商業目的の撮影をする場合は、立川ロケーションサービスに相談するよう案内している。

2026年2月の時点で、登録しているエキストラは400人。登録は住所、性別、年齢による制限がなく、連絡はメールだけで行う。撮影の予定が入ると、登録者の中から制作側の希望に合う人に連絡が来る。日曜劇場の通行人の一人が、昨日、駅前の喫茶店で隣に座っていた人かもしれない。立川は、そういう街だ。

協会の記録には、エキストラの姿がたびたび出てくる。2020年3月11日、TBSの日曜劇場「半沢直樹」の第1話の撮影が曙町の酒場で行われ、多くのエキストラも参加して夜までさまざまな場面が撮られた。2016年の「シン・ゴジラ」でも、多くのエキストラが基地の内外の撮影に加わった。「笑うマトリョーシカ」の選挙カーの場面にも、市民のエキストラがいた。

撮影の弁当、いわゆるロケ弁を用意できる店も募集されている。撮影の時間によって朝食、昼食、夕食とさまざまな献立が要る、と頁は書く。画面には一秒も映らない弁当が、撮影の現場を支えている。協会は毎年2月に、市内で撮影されたドラマや映画を紹介する展示会も開いている。

画面の中の立川で、いちばん美しい場面の一つは、2025年に生まれた。協会によれば、NHKの連続テレビ小説「あんぱん」の最終回のラストシーンに、国営昭和記念公園のカナールのイチョウ並木が登場した。放送のときは緑のカナールだったが、協会は、これからの季節は黄金の世界が広がる、と書き添えている。朝ドラの最後の場面を、秋には金色で見に行ける。昭和記念公園の並木そのものの話は、公園の記事に譲ることにする。

画面の中の場所を訪ねたくなったとき、気をつけたいことがある。立川の聖地の多くは、観光地ではなく、人の暮らしのすぐそばにあるからだ。

聖地巡礼の作法 住宅地と私有地で気をつけたいこと

アニメの聖地を訪ねる作法については、一般社団法人アニメツーリズム協会が「アニメ聖地訪問マナーに関するお願い」を公開している。協会は、自分たちや作品、自治体から公式に提供される聖地の情報は、作品と地域の確認のもとで、ファンの訪問を歓迎するスポットを届けているものだと説明する。そのうえで、SNSなどでファンどうしがやりとりしている情報や非公式な情報は、必ずしも訪問を想定していない場合があるので、そうした情報を使うときは訪問のマナーを改めて守ってほしい、と呼びかけている。

これは、立川を歩くときにもそのまま当てはまる。まず、公式の情報から歩き始めること。協会のロケ地特集や「とある」の頁は、地域の側が「来てください」と言っている場所の一覧でもある。

次に、作品の中の住まいを探さないこと。「凪のお暇」の主人公も、「聖☆おにいさん」の二人も、立川のアパートで暮らしている。だが、物語の中のアパートを、実在の誰かの家に重ねて探し歩くのは、そこに住む人にとって迷惑でしかない。立川の住宅地は、物語の舞台である前に、人の暮らしの場所である。

私有地にも気を配りたい。たとえば羽衣町の矢川弁財天は、協会の記録によれば、2013年にテレビ朝日の情報番組「東京サイト」で紹介され、2023年にはドラマ「忍者に結婚は難しい」にも登場した。だが協会の案内によれば、この弁財天は代々個人で守り継がれている境内で、参拝できる時間も決まっている。ロケ地である前に、祈りの場であり、誰かの土地なのだ。

公園にも、守るべきことがある。立川市は、公園の利用について特に苦情が多い事柄として、夜遅くまで大声で騒ぐなど周りに住む人の迷惑になる行為や、ごみを持ち帰らないことなどを挙げている。ドラマに出た公園の多くは、ふだんは近所の子どもたちの遊び場だ。名場面を思い出して盛り上がるのは、昼間の、ほどほどの声で。

写真を撮るときは、通りがかりの人や子どもの顔が大きく入らないように気をつけたい。店や施設の中で撮るなら、まず断りを入れる。商業目的の撮影なら、先に書いたとおり、立川ロケーションサービスへの相談が必要になる。

作法といっても、難しいことではない。画面の中の主人公が、その街の人にしてほしかったことを、自分もする。それだけで、たいていのことは足りる。

謎を回収する 立川は、なぜ「来る」場所なのか

最初の問いに戻ろう。立川は、なぜこれほど撮られ、物語の中の人物たちは、なぜ立川へ来るのか。

答えの半分は、立川ロケーションサービスの説明の中にある。緑が多く、自然に恵まれ、駅前は近代化が進み、都心からのアクセスがよく、利便性が高い。撮影班にとって、立川は、都会と自然と郊外を一日で撮り分けられる街だ。駅前の数百メートルでも「画変わり」ができ、競輪場は何にでも化けてくれる。

もう半分は、意外な資料に書いてあった。内閣府は、国の災害対策本部の予備施設を立川に置いた理由として、立地の利点をいくつか挙げている。都心から約30キロメートルで、都心と同時に被災することが考えにくい、適度な距離であること。比較的地盤のよい台地であること。余裕のある空間があること。

都心から近すぎず、遠すぎない。足もとが固く、広い。国が「いざというときに、いったん引いて立て直す場所」として選んだ理由は、そのまま、物語の作り手が主人公に「いったん休む場所」として立川を選ぶ理由にも重なって見える。都心で疲れた人が、電車で行ける距離にあって、空が広く、公園があり、暮らしが回っている街。お暇をとるにも、バカンスを過ごすにも、首都を立て直すにも、ちょうどいい。

立川は、目立とうとして目立っている街ではない。むしろ、誰かがひと息つく場所として、物語の中に呼ばれている。画面の中でたいてい名前を名乗らないのも、たぶん同じ理由だ。主役のそばで、黙って背景を支える。立川は、そういう役がうまい。

ただ、次に雪のニュースで立川の駅前が映ったら、私は少しだけ、画面の中の街に向かって、お疲れさま、と言いたくなる。

週末に一度、画面の外から立川へ入ってみるといい。新宿からは中央線で30分ほど、川崎からは南武線に乗ったまま着く。北口のデッキに立てば、どこかで見た歩道が、たぶん目の前に延びている。

寄り道クイズの答え

答えは(B)2010年。協会によれば、前身の立川観光協会が2010年に、立川市に似た風景が登場するテレビアニメ「とある魔術の禁書目録」と初めてのコラボイベントを開いた。そこから数えて、立川と「とある」のつきあいは16年になる。

訪ねる前に

  • 立川ロケ地特集(立川観光コンベンション協会): 作品ごとに撮影場所と年が載っている。作品名や場所名で絞り込める。最新の掲載は公式で確かめてほしい: https://tokyo-tachikawa.org/location/
  • 立川×アニメ(とある自治体の地域振興): コラボの催し、ラッピング自動販売機の場所、グッズの情報: https://tokyo-tachikawa.org/anime/ ・ https://tokyo-tachikawa.org/toaru/
  • 「とある自治体の地域振興2026」は2026年11月14日(土)・15日(日)、10時〜16時、メイン会場は国営昭和記念公園の花みどり文化センター(小雨決行・荒天中止)。多摩モノレール高松駅の構内放送は2026年10月10日〜11月15日、10時〜20時に30分ごと。日程と内容は変わることがあるので、協会の頁で確かめてほしい: https://tokyo-tachikawa.org/toaru_event/
  • 都心と神奈川から: 新宿からJR中央線で立川駅まで約30分(東京都環境局の雑木林のみちのリーフレットによる)。JR南武線は川崎駅と立川駅を結ぶので、川崎方面からは乗り換えなしで着く。時刻はその日の時刻表で確かめてほしい。
  • サンサンロードとファーレ立川は、JR立川駅の北口を出てすぐ。歩いて回るなら、北口のデッキからサンサンロードを北へ歩き、ファーレ立川の街区とGREEN SPRINGSをめぐって駅へ戻るだけでも、ロケ地の多くを通ることになる。
  • 立川競輪場を訪ねるなら、開催日や入場の案内を公式で確かめておきたい。競輪場の歴史は特集の別の記事に詳しい。
  • 国営昭和記念公園のカナールのイチョウ並木は、例年秋に色づく。開園時間や入園料は公式で: https://www.showakinen-koen.jp/
  • エキストラ登録やロケ弁、撮影の相談は立川ロケーションサービスへ。商業目的の撮影は、サンサンロード、ファーレ立川アート、市の管理物件、市内の公園とも、先に相談や申請が必要: https://tachicon.tokyo-tachikawa.org/location-service/
  • 作品の中の住まいや私有地を探し歩かないこと。参拝の時間が決まっている場所(矢川弁財天など)では、その時間を守ること。夜の公園で騒がないこと。
  • 組み合わせるなら、駅の南口の立川まんがぱーくとオニ公園、北口のシネマシティ、緑町の立川防災館と立川広域防災基地。どれも、画面の中の立川とつながっている。

ロケ地めぐりのあとは、駅の北口で

ロケ地をめぐっていると、思った以上に歩く。サンサンロードを往復し、ファーレの街角を曲がり、公園まで足を延ばせば、ふくらはぎに一日の距離がたまってくる。

立川駅の北口から徒歩1分、立川市曙町2-14-10のエトロワビル3階に、オンザショア立川店がある。溶岩プレートを敷いたスタジオで行うホットヨガのスタジオだ。常温のヨガやピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングもあり、ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。

営業は8時から23時30分まで、年中無休で、曜日による違いはない。朝からロケ地をめぐっても、夜の駅前の灯りを見てからでも、寄る時間はある。

ヨガの体験レッスンは税込1,980円。60分のレッスンに、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。身ひとつで寄れる。

妊娠中の人は溶岩ホットヨガには参加できないが、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている人は利用できない。

料金は https://ontheshore.jp/price/ 、店の案内は https://ontheshore.jp/ 、体験の予約は https://site.locaop.jp/C0aVK?_src=hp で確かめられる。

物語の主人公たちは、立川へ休みに来る。画面の外の人間が同じことをしても、この街はたぶん、黙って背景を引き受けてくれる。

冒頭の写真: 立川駅北口のペデストリアンデッキ。赤いアーチの向こうに駅前のビルが並ぶ(写真: KΛNΛTΛ / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons)

この記事の情報は2026年10月時点のものです。

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