立川の夜景と朝の富士山──冬至の夕日は富士の方角へ沈む、デッキとモノレールの空の時刻表

富士山は、冬至の夕日の通り道にある

立川駅のおおよその座標と富士山頂の座標から、方角と距離を計算してみた。結果は、方位およそ239度、直線でおよそ72.6キロ。真西から南へ30度ほど寄った、南西の方角である。

国土交通省関東地方整備局の「関東の富士見百景」は、立川の多摩川緑地から見る富士山を、南西の方向、丹沢山塊と秩父山塊がぶつかり合うあたりの背後にそびえる、と紹介している。計算の結果は、この記述とも合う。

ここで、天文台の数字と並べる。冬至の日の入りの方角は241.4度。富士山の方角は239度。差は2度あまりしかない。立川から見ると、富士山は、冬至のころの夕日が沈む場所の、ほんの少しだけ手前にあるのだ。

夕日の沈む場所は、夏至のころの北寄りの300度から、秋にかけて南へ移り、冬至で241.4度の端までたどり着くと、引き返して北へ戻っていく。その往路と復路の途中で、239度の富士山の上を一度ずつ通る。富士山は地平線より高く盛り上がっているので、実際に頂へ太陽が触れる位置と時刻は、地形と見る場所によって少しずつずれる。それでも、通過が冬至の前と後の二度になるという理屈は変わらない。

これが、冒頭の謎の答えだ。多摩モノレールの会社が2019年に出した案内によれば、立川南駅の隣の柴崎体育館駅のホームでは、ダイヤモンド富士が12月6日から12日ごろの16時9分から12分ごろと、12月31日から1月6日ごろに見られる。冬至の22日をはさんで、前に一度、後に一度。夕日は、冬至の日を避けるように富士の頂へ落ちるのではない。冬至に向かう途中と、冬至から戻る途中で、二度通り過ぎるのだ。モノレールの車窓と駅から狙えるダイヤモンド富士のことは、特集の多摩モノレールの一編に詳しく書いた。ただし、ホームから見るには入場券が要る。沿線全体で見れば、2023年の会社の案内は、多摩センター駅から立川南駅までの区間で11月14日から翌年1月29日までを眺望の期間としていた。南の駅ほど早く、北の駅ほど冬至に近い時期に重なる。夕日は、モノレールの線路に沿って、駅から駅へ富士の頂を受け渡していく。

立川という地名の中にも、富士は残っている。昭和17年(1942)に生まれた町名のひとつ、富士見町だ。段丘の端に立つと西の方に富士山がよく見えることから付いた名だと、特集の地名の一編で紹介した。町名を付けた人たちは、冬の夕方、段丘の上から、夕日が富士の近くへ落ちていくのを見ていたのかもしれない。

富士の見える場所は、富士見百景の多摩川緑地だけではない。地元の夜の散歩を5,000回以上も記録し続けているブログには、2026年2月、西武立川駅の連絡通路から見た夕焼けの富士の一文がある。前日に降った雪の影響か、寒くて空気が澄んでいた、と書き、少しでも高い所からと駅の連絡通路から眺めると、山脈が横に広がり、その上に富士山が頭を出していた、と記している。駅の連絡通路も、立派な展望台になる。高い場所が少ない平らな街では、駅こそが見晴らし台なのだ。

同じ書き手は、夜の散歩の心得として「心の余裕、頭の整理ために歩くべし」という一条を掲げている。夜の散歩には、もちろん弱点もある。2022年の夏の記録には、立川崖線を下ってほぼ直角に曲がる残堀川を訪ね、崖線の高低差をダムのように落ちる水を眺めたあと、下の曲がりは近づけず、しかも暗くてよく見えなかった、と正直に書いている。夜景を探しに出て、暗くて見えない。夜の散歩の真実は、たぶんそこにある。だからこそ、見えたときの富士はうれしいのだろう。

ところで、その書き手が見た冬の富士がくっきりしていたのは、偶然ではない。立川の冬は、晴れている。

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

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1月が、いちばん晴れている

立川市内には気象庁の観測点がない。いちばん近いのは、東へ6キロほどの府中のアメダスだ。1991年から2020年までの平年値によれば、府中の1年の日照時間は1,986.2時間。都心の大手町にある「東京」の観測点の1,926.7時間より、60時間ほど長い。多摩の空は、都心の空より、少しだけよく晴れている。

月ごとに見ると、さらに意外な数字が出てくる。府中で日照時間がいちばん長いのは、真夏ではない。1月で、201.3時間だ。12月の182.0時間がそれに続く。真夏の7月は148.1時間、8月は178.0時間。いちばん短いのは梅雨の6月で、123.6時間。夏の青空の印象は強いが、太陽が顔を出している時間で数えれば、冬のほうがずっと長い。

降る雨の量も、冬は少ない。府中の1月の降水量は56.9ミリで、いちばん多い9月の246.7ミリの4分の1にも届かない。乾いた空気と、雲の少ない空。冬の立川から富士がよく見えるのは、山が近いからではなく、空の条件がそろうからだ。富士見百景の紹介文が、富士は特に天気のよい冬場によく見られる、と書くのは、気象の数字の側からも裏づけられる。

その代わり、冬の朝は冷える。府中の1月の最低気温の平年値はマイナス0.7度で、都心の「東京」の1.2度より2度近く低い。都心では1月の朝でも平均すれば0度を下回らないが、立川の辺りでは、平年の1月の朝は氷点下になる。富士が澄んで見える朝は、たいてい、手袋の要る朝でもある。冬の朝の富士は、寒さと引き換えに見せてもらう景色なのだ。

旅人の寄り道クイズ

立川にいちばん近い気象庁の観測点、府中で、1年のうち日照時間がいちばん長い月はどれだろう。(A)8月(B)5月(C)1月。答えは最後に明かす。

冷えこんだ冬の朝、多摩川へ下りていくと、川面が白く煙っていることがある。あれは霧なのだろうか。

多摩川の朝靄は、霧か、もやか

気象庁の予報用語の定義は、思いのほか厳密だ。霧とは、微小な浮遊水滴により、視程が1キロ未満の状態をいう。もやとは、微小な浮遊水滴や湿った微粒子により、視程が1キロ以上、10キロ未満となっている状態をいう。違いは、どこまで見通せるか、ただそれだけである。

朝の川の白さを、私たちはふだん「朝靄」と呼ぶ。だが気象庁の言い方に従えば、1キロ先の対岸が見えているうちは、それは霧ではなく、もやだ。都心の「東京」の観測点で霧が観測される日は、平年で1年にわずか1.3日しかない。都市の真ん中で、1キロ先が見えなくなる朝は、それほど珍しい。

多摩川のほとりでは、事情が少し違うのかもしれない。冷えこんだ朝の川の上に白いものが漂うのは、川の水が冷えた空気より温かいからだと、一般には説明される。府中の1月の朝の最低気温は、さっき見たように平年で氷点下になる。都心より冷える多摩の朝は、川面を白くする条件がそろいやすいはずだ。ただし、立川の多摩川で霧やもやが何日観測されているかという数字は、私の調べた範囲では見つからなかった。だからここでは、朝の多摩川の白さに名前をつけるのは、見る人の目に任せたい。対岸の木が見えていれば、もや。見えなければ、霧。そして、その違いを気にしながら朝の土手を歩く人間は、たぶん少し変わり者だ。

朝靄の多摩川を見るなら、立川の南、柴崎体育館駅の近くから根川緑道を抜けて、多摩川の河原へ出る道がいい。富士見百景の多摩川緑地は、その先にある。冬の晴れた朝なら、白い川面の向こう、南西の方角に、まだ朝日を浴びたばかりの富士が見えるかもしれない。立日橋の上を、始発からまもないモノレールが渡っていく。根川緑道と多摩川の河原のことは、特集の根川と多摩川の一編で歩いた。

朝の昭和記念公園は、8時30分から

朝の散歩の行き先として、もう一つ挙げておきたいのが、国営昭和記念公園だ。公園の案内によれば、有料の区域は9時30分に開く。閉まる時刻は季節で変わり、3月から10月は17時、11月から2月は16時30分、4月から9月の土日と祝日は18時まで。そして、緑の文化ゾーンの無料の区域だけは、8時30分から開いている。

元日の昭和記念公園。木々と山並みの向こうに、雪をかぶった富士山が見える。
元日の昭和記念公園。木々と山並みの向こうに、雪をかぶった富士山が見える。
写真: Nishifutsu / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

夏至のころの日の出は4時25分だから、無料区域が開くまでに4時間あまりある。早起きの散歩には、公園はまだ眠っている。その時間は、根川緑道や玉川上水沿いの道のように、時刻の決まりのない道を歩くことになる。日の出とともに歩きだせば、門が開くころには、こちらはもう一汗かいている。

朝の公園のまわりで、最初に聞こえてくる人工の音は、たぶん空からだ。公園の隣の立川飛行場は、いまは陸上自衛隊の飛行場で、立川市の案内によれば、飛行は通常、平日の午前8時から始まり、通常の離着陸は1日平均でおおむね50回。土日と祝日は、原則として訓練の飛行をしていない。平日の朝、公園の無料区域が開く少し前に、飛行場の一日も動き出す。もとは同じ一つの飛行場だった土地で、片方は朝8時に、片方は8時30分に目を覚ます。週末の朝の公園が平日より静かに感じられるとしたら、それは人出のせいだけではないのかもしれない。

冬になると、話が変わる。冬至のころの日の出は6時47分、1月初めは6時51分。無料区域が開く8時30分には、太陽はまだ低い位置にあり、原っぱの霜と木々の長い影が残っている。Wikimedia Commonsには、2021年の元日の午前10時半すぎに、公園の緑の文化ゾーンで撮られた写真がある。手前に公園の木々が広がり、その向こうの山並みの上に、白い富士山が浮かんでいる。元日の朝の空気の澄み方が、そのまま写っている。

閉園の時刻にも、季節の移ろいが映る。冬の閉園は16時30分。12月初めの日の入りは16時28分だから、一年でいちばん早い夕暮れの日には、閉園とほぼ同時に日が沈む。公園を出て、西の空に残る夕焼けを背に駅へ向かう。その西の空の先に、富士がある。

夜から朝へ、立川の一日を一周する

ここまで歩いてきた時間を、冬の一日に並べなおしてみる。

12月初めの16時28分、日が沈む。柴崎体育館駅のホームでは、運がよければ、その少し前に夕日が富士の頂へ触れる。立川駅の北口のデッキには、昼のあいだに集まった2万4千人の帰り道の人波があふれる。夕方5時、サンサンロードのケヤキに約60万球の明かりが灯る。夜8時を過ぎると、駅の北の飛行場の空は静かになり、頭上にはモノレールの灯りだけが行き来する。GREEN SPRINGSの広場は、夜中も開いたままだ。

翌朝、府中の平年で氷点下まで冷えこんだ空気の中、多摩川の川面が白く煙る。その白さが1キロ先を隠すなら霧、隠さなければもや。7時前、ようやく日が昇る。8時30分、昭和記念公園の無料区域の門が開く。晴れていれば、1年でいちばん日照時間の長い1月の空の下、南西の山並みの上に富士が見えている。

冒頭で、立川に夜景はあるか、と書いた。いまなら、こう答えられる。立川の夜景は、高いビルの窓から見下ろす光の海ではない。地面と二階と空中に光が重なる駅前と、冬至の夕日の通り道にある富士と、氷点下の朝の川の白さだ。高い建物の少ない平らな街だからこそ、空は広く、時間の移ろいがよく見える。

輸送機の騒音が問題になった時代から半世紀あまり。いまの立川の空は、夕日と富士と、モノレールの灯りに明け渡されている。

新宿から中央線で一本、川崎からなら南武線で一本。12月初めの週末、夕方4時前にモノレールに乗れば、都心より23キロほど富士に近い街で、一年でいちばん早い夜の始まりに間に合う。

12月の初め、16時28分。北口のデッキの上で、一年でいちばん早い夜が始まる。

寄り道クイズの答え

答えは(C)1月。気象庁の平年値によれば、府中の1月の日照時間は201.3時間で、1年でいちばん長い。真夏の7月は148.1時間、いちばん短いのは梅雨の6月の123.6時間だ。

訪ねる前に

  • 北口のデッキ: JR立川駅の北口改札を出てすぐ。夜景は北口のデッキから立川北駅方面へ歩くと、地面・二階・モノレールの三段の光が見られる。
  • 多摩モノレールの夜景と富士: 立川北駅・立川南駅から。柴崎体育館駅を過ぎると立日橋の上で多摩川を渡る。ダイヤモンド富士の時期と駅ごとの時刻は毎年会社が案内する。ホームから見るには入場券が要る。天候で見えない日もある: https://www.tama-monorail.co.jp/
  • 多摩川緑地(関東の富士見百景): 多摩モノレール柴崎体育館駅から根川緑道沿いに南東へ。JR立川駅南口から徒歩約15分の根川緑道の先。紹介: https://www.ktr.mlit.go.jp/chiiki/fujimi0057.html
  • 国営昭和記念公園: 有料区域は9時30分から、無料の緑の文化ゾーンは8時30分から。閉園は季節で変わる。最新は公式で: https://www.showakinen-koen.jp/
  • たちかわイルミネーション: 冬のサンサンロード。期間と点灯時間は年ごとに公式で: https://tachikawaillumination.com/
  • 日の出・日の入りの時刻: 国立天文台 暦計算室(東京の値。立川はわずかに遅い): https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/
  • 遠くから: 新宿からはJR中央線快速で立川まで乗り換えなし(30分台)。神奈川からは、川崎からJR南武線で乗り換えなし(立川まで約1時間)。時刻と所要時間はJR東日本の公式で確かめてほしい。
  • 組み合わせるなら: 夜の飲み屋街と横丁の来歴は特集の夜の立川の一編、モノレールの車窓とダイヤモンド富士は多摩モノレールの一編、多摩川と根川緑道は根川と多摩川の一編、雨の日に屋根の下で過ごすなら雨の日の一編へ。

夜の始まりに、立川駅北口で

冬の夕暮れに富士を待ち、デッキで夜景を眺め、朝の川へ下りる。立川の空の時刻表に合わせて歩くと、体はすっかり冷えている。氷点下の朝の土手に立っていたなら、なおさらだ。

立川駅の北口から歩いて1分、立川市曙町2-14-10のエトロワビル3階に、オンザショア立川店がある。溶岩プレートを敷いたスタジオで行うホットヨガのスタジオだ。常温のヨガやピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングもあり、ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。

営業は8時から23時30分まで、年中無休で、どの曜日も同じ時間に開いている。朝の多摩川から戻っても、夜のデッキの散歩のあとでも、寄れる時間がある。昭和記念公園の無料区域が開く30分前には、もう開いている。

ヨガの体験レッスンは税込1,980円。60分のレッスンに、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。手袋を外して、身ひとつで寄れる。

妊娠中の人は溶岩ホットヨガには参加できないが、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている人は利用できない。

料金は https://ontheshore.jp/price/ 、店の案内は https://ontheshore.jp/ 、体験の予約は https://site.locaop.jp/C0aVK?_src=hp で確かめられる。

デッキの下を、最終に近いバスが出ていく。明日の朝もまた、南西の空に富士が見えるだろうか。

冒頭の写真: 夜の立川駅北口。歩行者デッキの先に、明かりの灯る伊勢丹立川店が建つ。(写真: Hector Martin / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons)

この記事の情報は2026年10月時点のものです。

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