立川・昭和記念公園のこもれびの里と日本庭園──飛行場の跡に、狛江の名主の家が建っている

日本庭園と歓楓亭、数寄屋の手仕事

日本庭園については、別の一編で紅葉の美しさに触れた。平成9年(1997)4月に誕生した約6ヘクタールの池泉回遊式庭園で、首都圏では戦後最大の規模になる。ここでは、その庭の中に置かれた建物と仕掛けのほうを見ていきたい。

秋の昭和記念公園日本庭園。紅葉した木々が池の水面に映っている
秋の昭和記念公園日本庭園。紅葉した木々が池の水面に映っている
写真: Kakidai / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

公式サイトによれば、園内の北側には「野面積み」と呼ばれる石組があり、木橋のたもとには「つくばい」がある。冬にはマツの雪吊りが施される。竹垣、露地、飛石、延べ段。日本庭園の伝統的な技術が、ひとつの庭の中で見本帳のように並んでいる。

池の西側の岸に建つのが歓楓亭だ。銅板葺きの木造平屋建ての数寄屋建築で、床の間を備えた11畳の広間、8畳の次の間、6畳の控えの間、4畳半の小間、立礼席、水屋などからなる。公式サイトは、建物の材料をひとつひとつ挙げている。北山の杉丸太、吉野の錆丸太、木曽の檜板。屋根には檜皮を葺き、柱と桁の仕口や継手には、日本でも数少なくなった数寄屋大工などの職人が受け継いでいる技術を取り入れたという。

細部を読むと、さらに楽しい。次の間には、モミジの葉の襖と、透かし彫りの桐の欄間がある。控えの間の欄間には、すす竹の節で、北の森から望む山並みが描かれている。小間は「萌春」という名の茶室で、椿の皮付きの床柱や、栗の皮付きの床框、蒲の葉の天井が使われている。水屋の欄間には、歓楓亭という名にちなんで、モミジの葉と、その翼のついた種の透かし彫りがあしらわれている。

そして立礼席の名は「紅彩」。本瓦張りの土間で、靴を履いたまま点前を楽しめる。正座に自信のない私のような者にとって、これほどありがたい一文はない。数寄屋の粋を尽くした建物が、最後に足のしびれにまで気を配っている。

歓楓亭の南には、池に突き出した休息棟「清池軒」がある。対岸から見ると、池に浮かんでいるように見えるという。四阿の「昌陽」からは、北の山の景色が池に映り、額縁に収まった絵を見るようだと公式サイトは書く。滝見の四阿「涼暮亭」の脇では、北の森から湧き出した水が、落差7メートルの岩組を落ちて渓流になり、池に注いでいる。

庭の花の暦も、公式サイトに載っている。早春はウメ、ニホンズイセン、サンシュユ。春はサクラ、ボタン、ツツジ、イチハツ、シャガ。初夏はアジサイとハナショウブ。夏はスイレン、キキョウ、カンゾウ。秋はホトトギス、コムラサキの実、ツワブキ、そして紅葉。冬はマンリョウの実、カンツバキ、サザンカ。どの季節に来ても、何かが咲いているか、実をつけているか、色を変えている。

歓楓亭では、抹茶と季節の上生菓子の呈茶のほかに、毎月第3日曜日に「はじめてのお茶室」という催しが開かれている。自分でお茶を点てて庭の景色とともに味わう「お盆点て体験」もある。茶道の作法を知らなくても、入口は用意されている。

関東地方整備局の平成29年度の事業評価の資料には、日本庭園の木橋と八つ橋を架け替えたことが記されている。事故を防ぎ、景観を保つためだという。庭は、できあがった日から古びはじめる。だから橋を架け替え、松を吊り、石を据え直す。里の田んぼと同じく、庭もまた、手を入れ続けることで庭であり続けている。

旅人の寄り道クイズ

盆栽苑の解説によれば、盆栽をつくるときには、ある「決まり事」がある。横から見たとき、木の頭はどうなっているのが決まりか。

  • A 少しお辞儀をしている
  • B まっすぐ真上を向いている
  • C 少し後ろへ反っている

答えは、この記事の終わり近くで。

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盆栽苑の五葉松は、完成しない

日本庭園の中に、もうひとつ庭がある。平成16年(2004)11月3日、文化の日に開かれた盆栽苑だ。公式サイトによれば、わが国で初の国営の盆栽展示施設である。

日本庭園の中の盆栽苑。屋外の棚に盆栽の鉢が並んでいる
日本庭園の中の盆栽苑。屋外の棚に盆栽の鉢が並んでいる
写真: Guilhem Vellut from Annecy, France / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons

盆栽苑には約80鉢の盆栽があり、そのうち常時約50鉢を、四季に合わせて並べている。常駐するスタッフは盆栽の専門家で、手入れをしながら、管理作業の説明や鑑賞のポイントを解説している。苑内の「讃樹亭」では、床の間飾りなどの室内展示も見られる。関東地方整備局の事業評価の資料は、ここを国風盆栽展級の盆栽を展示する施設と紹介している。

公式サイトが「おすすめの盆栽」に挙げているのは、五葉松の一鉢だ。推定樹齢は150年以上。樹形は模様木で、樹高は約62センチ。盆栽の鑑賞では、根の張り、幹の素直な立ち上がり、枝の配り、の三つが大事とされる。この五葉松は特に根張りが良く、樹高をあえて抑えて幹の太さを強調し、大木の感じを出しているという。

150年。この松が芽を出したころ、こもれびの里の主屋はすでに100歳ほどだった計算になる。しかも、この松は62センチしかない。150年かけて、私の膝より少し上までしか伸びていない。伸びなかったのではない。伸ばさなかったのだ。

公式サイトは、盆栽の形についても丁寧に説明している。基本は不等辺三角形。根を付ける位置は、鉢の真ん中から左右に少しずらす。必ず正面と裏があり、正面は幹の曲がりや肌、立ち上がりが美しく見えるよう、足元から樹高の3分の1ほどの空間を前に空ける。裏はにぎやかにつくる。

樹形の名前を並べた一覧も、眺めていて飽きない。根元から5本以上の幹が立ち上がる「株立ち」。まっすぐな幹の「直幹」。複数の木を一緒に植えて森や林を表す「寄せ植え」。幹と枝が曲がりながら釣り合う「模様木」。崖から乗り出す木の姿を写した「懸崖」。石に木を付けて自然の景色をつくる「石付き」。そして、変化に富んだ細い幹の「文人木」。鉢も大事で、釉薬のかかっていないものと、青や白の釉薬がかかったものがあり、鉢を変えただけで盆栽の印象はがらりと変わるという。人も服で印象が変わるのだから、木が鉢で変わっても文句は言えない。

そして、こうある。盆栽は植物の成長とともに楽しむ、完成のない「生きた芸術」と呼ばれている。

完成がない。その言葉を読んで、里の農事暦を思い出した。

飛行場の跡に、なぜ昭和30年代なのか

最初の問いに戻ろう。なぜ、昭和30年代なのか。

公式サイトは、その理由を短く書いている。昭和30年代、高度成長期の少し前は、過去と現代を直接つなぐ年代で、古き良きものがたくさん残っていた。そして、今であれば、自分の体験としてそれを知っている人から、直接伝えてもらうことができる。

なるほど、と思う。江戸の暮らしを再現しても、それを体験した人はもういない。だが昭和30年代の田植えなら、その腰の痛みを覚えている人が、まだ鍬を持てる。こもれびの里は、資料ではなく人から人へ知恵を渡すために、渡せる時代のぎりぎりを選んだのだ。だからこそ、ここは計画の段階から市民が開墾した。渡す人と受け取る人が、同じ畑に立つ必要があったからだ。

公式サイトは、テーマの残りの二つにも短い説明を添えている。武蔵野とは「武蔵の国」のことで、台地の村、丘陵の谷戸の村、山あいの村と、多様な姿があった。農業という仕事は、自然そのものではない。自然に生かされ、自然を活かし、人と人が力を合わせて生きてきた暮らしの知恵が、そこにはある。だから里は、風景だけでなく、作業の手順ごと残そうとしているのだろう。

では、なぜ飛行場の跡に、狛江の名主の家なのか。答えの半分は、記者発表に書かれている。寄贈を受け、4年をかけて移した。昭和30年代の武蔵野の農村を再現するという里には、その中心となる本物の農家が必要だった。家は、残る場所を必要としていた。二つの必要が、この北の一角で出会った。

立川は地味な街だと、ときどき言われる。私自身、そう思っていた節がある。だが、わが国で初めての国営の盆栽展示施設は、この街の公園の中にある。国営公園で初めて、市民が計画の段階から加わってつくった里も、この街にある。250年前の名主の家が丸ごと引っ越してきて、その周りで市民が毎年、麦を踏み、田を植えている街は、そう多くないはずだ。

残りの半分は、私の勝手な読みになる。飛行場は、遠くへ速く行くための場所だった。こもれびの里と日本庭園と盆栽苑は、その正反対だ。同じ場所で、同じ作業を、毎年くり返す。150年かけて62センチしか伸びない松を、毎日誰かが手入れする。遠くへ行くための平らな土地は、いま、どこへも行かないことを学ぶ場所になっている。そう読むのは、旅人の勝手かもしれない。答えの続きは、主屋の土間に立って、それぞれが考えればいい。

新宿から中央線で一本、川崎から南武線で一本、立川駅からはバスで13分。週末に昭和30年代へ行くのに、パスポートは要らない。

寄り道クイズの答え

答えはA、少しお辞儀をしている。盆栽苑の公式の解説によれば、日本的な控えめな心だろうか、横から見た際に頭は少しお辞儀をしているようにつくる、という決まり事がある。150年生きた松でさえ、客の前では会釈を欠かさない。

訪ねる前に

  • 場所: 国営昭和記念公園の北側。こもれびの里は砂川ゲートから徒歩約5分、日本庭園は約15分、盆栽苑は約17分(公式サイトの施設案内による)。立川ゲートから歩くと、こもれびの里まで約38分かかる
  • 行き方: 西武拝島線の武蔵砂川駅から砂川ゲートまで徒歩約20分。バスなら、JR立川駅北口バスターミナル2番乗り場から立川バスで「昭和記念公園砂川口」まで約13分、降りて徒歩約2分(公式サイトのアクセス案内による)。車なら砂川口駐車場が近い
  • 時間と休み: こもれびの里と農家エリアは開いている時間が季節で変わり、月曜日が休み(休日なら翌平日)と公式サイトにある。日本庭園と盆栽苑は9時30分から閉園30分前まで。入園料、開園時間、休園日は、公式サイトで最新を確かめてほしい
  • 所要の目安: 砂川ゲートから入って、里、日本庭園、盆栽苑を歩いてめぐるだけで、徒歩の時間が片道20分ほどになる。農家の中や茶室を見るなら、半日はみておきたい
  • 歓楓亭では有料の呈茶(抹茶と上生菓子)がある。盆栽には触れないこと、三脚での撮影はできないことが公式サイトに記されている
  • 遠くから: 新宿からはJR中央線快速で立川まで乗り換えなし(30分台)。神奈川からは、川崎からJR南武線で乗り換えなし(立川まで約1時間)。立川駅の北口からバスで砂川口へ
  • 組み合わせ: 公園の全体と来歴は、この特集の昭和記念公園の一編へ。砂川口の北は玉川上水と砂川の村の跡で、特集の玉川上水と砂川の一編とあわせて歩ける
  • 公式サイト(こもれびの里): https://www.showakinen-koen.jp/facility/facility-385/
  • 公式サイト(日本庭園): https://www.showakinen-koen.jp/facility/facility-824/
  • 公式サイト(盆栽苑): https://www.showakinen-koen.jp/facility/facility-382/
  • アクセス: https://www.showakinen-koen.jp/access/

里を歩いたあとは、立川駅北口で

こもれびの里から日本庭園、盆栽苑までをめぐると、思った以上に歩く。公園の奥のさらに奥へ入り、また戻ってくるからだ。帰りに立川駅へ出たら、駅の北口から歩いて1分のところにオンザショア立川店がある。東京都立川市曙町2-14-10、エトロワビルの3階だ。

溶岩ホットヨガのスタジオで、溶岩のプレートを敷いたスタジオでヨガをする。ほかに常温のヨガ、ピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングもある。ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。

営業時間は8時から23時30分まで。年中無休で、どの曜日も同じ時間に開いている。公園が閉まったあとでも間に合う。

初めての人には、税込1,980円のヨガの体験レッスンがある。60分のレッスンに、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。

妊娠中の人は溶岩ホットヨガには参加できないが、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている人は利用できない。

  • オンザショア: https://ontheshore.jp/
  • 料金: https://ontheshore.jp/price/
  • 体験の予約: https://site.locaop.jp/C0aVK?_src=hp

盆栽苑の五葉松は、今日もほんの少しだけ頭を下げて、次の150年のための手入れを待っている。

冒頭の写真: 昭和記念公園こもれびの里の農家エリア。茅葺の主屋と白壁の土蔵が並ぶ(写真: Guilhem Vellut from Annecy, France / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons)

この記事の情報は2026年10月時点のものです。

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