立川の緑と環境のこれから CO2を6割減らす街の足湯と、消えては現れる緑

緑は減っているのか──みどり率36.5%の読み方

立川市の緑の羅針盤は、2025年度から2034年度までの「立川市緑の基本計画」だ。計画は、10年後の緑の将来像を「緑と人がつながり、ともに生きるまち 立川」と定めた。

まず、市全体の緑の量を示す「みどり率」から見る。2023年度は36.5%。2018年度の35.9%から0.6ポイント増えた。ところが、計画はすぐに注釈を付ける。2018年度の調査で緑と判別できなかった場所を、航空写真などで改めて確かめ、緑と判断できる場所を加えて調整すると、2018年度は37.4%になる。つまり、実際には0.9ポイント減ったことになる。

注釈を読み進めると、さらに面白い。砂川町4丁目のまとまった緑は、2003年度、2008年度、2013年度の数字には含まれていたのに、2018年度には除外され、2023年度にまた含まれている。緑は動いていない。数え方が動いたのだ。統計の上では、立川の森はときどき消えて、また現れる。こうした事情を隠さずに書く計画は、信用できる。

数え直した結果、5年間で公園と緑地は約1ヘクタール増え、樹林や原野、草地は約8ヘクタール、農地は約16ヘクタール減った。計画は、公共施設や中央部の大型商業施設の整備で緑の創出が進んだ一方、市の北部を中心に農地や樹林地が減り、武蔵野の面影を伝える郷土の風景が変わりつつあると書く。駅前に新しい緑が生まれ、北の畑が静かに減っていく。差し引きは、少しの赤字だ。

だから計画の目標は、みどり率の「現状維持」になっている。増やす、とは書いていない。そのかわり、項目ごとの目標には前向きな数字も並ぶ。市が設置して管理する都市公園などの面積を64.5ヘクタールから67.0ヘクタールへ。公園の利用圏に入らない地域の面積を969ヘクタールから944ヘクタールへ。そして、保存樹木を445本から483本へ。前の計画をつくったときから、指定を受けた大きな木は19本減った。それを、これから38本増やす計画だ。

あのころ/いま──赤っ風と屋敷林

緑の基本計画には、昭和30年ごろの五日市街道の写真が載っている。江戸時代、玉川上水の開削をきっかけに、砂川の集落は五日市街道に沿って東西に延びた。街道沿いにはいまも、短冊のように細長い区画の農地と、農家の屋敷林が残る。屋敷林は、北風や砂ぼこりを含む「赤っ風」から家を守る防風林の役目を果たしてきたと計画は書く。

赤っ風。北風が畑の赤土を砂ぼこりにして巻き上げる、その色からの名だろうかと私は想像した。土を空へ運ぶ風を、ケヤキが受け止めていた。そのケヤキの一部が、いまは保存樹木として番号を持ち、市から1本ごとに補助を受けている。風よけの木が、街の財産として数えられる時代になったのだ。

街道沿いの景色は、都市計画でも守られている。都市の中の自然の景観を保つための風致地区が、立川には二つある。玉川上水風致地区の11.7ヘクタールと、五日市道風致地区の12.0ヘクタールだ。水の道と人の道、江戸の二本の道筋が、そのまま緑の帯として指定されている。昭和30年ごろの写真と、いまの街道を見比べると、変わったものの多さと、変わらずに残ったものの確かさが、同じくらい胸に来る。

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農地は守れるか──生産緑地「170ヘクタール以上」という正直な目標

立川の土地のおよそ半分は宅地で、農地は市全域の約10%だと、環境基本計画は書く。北部の五日市街道沿いに広がる畑では、植木や野菜、果実、花、畜産と、さまざまなものがつくられている。ただ、相続の発生や農業者の高齢化、後継者不足などを背景に、農地は減る傾向にある。

緑の基本計画は、農地の目標を率直に書いた。前の計画では、都市農地、つまり生産緑地の面積を190ヘクタール以上に保つ目標を立てていた。2018年度に199.92ヘクタールあった生産緑地は、計画の改定時に186.21ヘクタールになり、目標には届かなかった。新しい計画の目標は、2029年度に170ヘクタール以上だ。

いまより少ない数字を目標にする。初めて読んだとき、私は少し驚いた。だが考えてみれば、農地の持ち主には相続があり、暮らしがある。市が畑を買い取れるわけでもない。守りきれない分を認めたうえで、減り方を食い止める。その線を170ヘクタールに引いたのだと読める。願望ではなく、防衛線である。

防衛のための道具も、計画には並んでいる。農地パトロール、都市農地の貸し借りを進める法律にもとづく借り手と貸し手の引き合わせ、生産緑地の新しい制度への移行、農地が持つ防災の機能を高める施設整備の支援。立川の畑の仕組みや直売所については特集の農業の記事に譲るが、ここで一つだけ「これから」を書き添えておく。環境基本計画は、気候の変化で野菜や果樹に日焼けや枯れが起き、高温を好む害虫が増えるおそれを挙げ、高温に対応した栽培方法や品種の情報を集めて農家に伝えるとしている。東京一のうどとブロッコリーの産地も、暑さへの備えを迫られている。

旅人の寄り道クイズ

立川市の第3次環境基本計画が家庭向けに挙げる「今日からすぐにできる環境行動」のうち、1年あたりの二酸化炭素の削減量がいちばん大きいとされているのはどれか。

  • (A)ご飯を残さず食べる
  • (B)普段より1時間早く消灯する
  • (C)お風呂に間を空けずに続けて入り、湯船の蓋を閉める

答えは、記事の終わり近くで明かす。

畑と林のつぎは、水だ。立川の南の端には、多摩川が流れている。

多摩川と湧水を守る──崖線を8市でつなぐ

緑の基本計画は、立川の発祥の地である旧柴崎村の、川沿いや崖からの眺めについて、富士の眺望や舟遊び、鮎料理、旧甲州路の名所として浮世絵や江戸名所図会に記されてきたと書いている。その頁には、葛飾北斎の「冨嶽三十六景 武州玉川」が添えられている。多摩川と富士山の取り合わせは、海の向こうでも知られた北斎の画題だ。2021年の元日の朝に国営昭和記念公園で撮られた一枚にも、雑木林と街並みの向こう、青い山並みの上に白い富士山が写っている。旅で来た人には、北斎の構図の答え合わせをする楽しみがある。

立川崖線の下を流れる根川緑道の親水エリア。水辺の草と若葉のあいだを、木の遊歩道が続く。
立川崖線の下を流れる根川緑道の親水エリア。水辺の草と若葉のあいだを、木の遊歩道が続く。
写真: 根川孝太郎 / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons

その多摩川の水辺は、いま、野球場や陸上競技場、テニスコートが並ぶ運動の場になっていて、春の催しの日には数千人が集まると緑の基本計画は書く。計画づくりのための市民アンケートで、次の世代に引き継ぎたい緑を尋ねると、昭和記念公園や身近な公園の緑が7割を超えていちばん多く、玉川上水と分水が約5割、多摩川の水辺環境が約4割5分で続いた。

崖線は、市の境を越えて続く

多摩川がつくった段丘の崖、立川崖線は、立川の緑の背骨だ。崖に沿って斜面林が続き、崖の下には湧水があり、根川と矢川が流れる。大正天皇の即位を記念して、旧柴崎村の人びとが根川の両岸1.3キロメートルに、10メートルおきに桜を植えた。その桜並木が、いまの根川緑道につながっていると計画は書く。

崖は、市の境で終わらない。緑の基本計画は、「多摩川由来の崖線の緑を保全する協議会」を通じて、青梅市、羽村市、福生市、昭島市、立川市、国立市、府中市、調布市の8市がつながる崖線を一体のものとして捉え、共同で保全のあり方を考えていくとしている。立川市内では、整備されていない都市計画公園の中の樹林地を保護樹林地に指定して市が管理し、国や東京都の制度を使って樹林地を公有地にする取り組みも進めるという。

湧水については、市は立川崖線の湧水と市内の地下水の調査を続ける。矢川緑地の湧き水の量は特集の矢川の記事で詳しく書いたので繰り返さないが、湧水を守る手立ての一つは、意外なほど身近にある。雨水を地面にしみ込ませる「雨水浸透ます」や「雨水浸透管」を既存の戸建て住宅に付けると、市が補助を出す。上限は20万円。屋根に降った雨が地下へしみ込めば、湧水や地下水が豊かになり、下水管の負担も軽くなると市は説明する。崖の下の湧き水は、街じゅうの屋根とつながっているのだ。

地下の水については、もう一つ、公平に書いておかなければならない論点がある。水や油をはじく性質から消火剤などに使われてきた有機フッ素化合物、いわゆるPFASだ。市によれば、環境省は2025年6月、PFOSとPFOAの合計で1リットルあたり50ナノグラムを、地下水などの指針値とし、水道水では2026年4月1日から同じ値が水質基準になった。立川市は、市が持つ9か所の井戸と、市内の事業所や市民が持つ19か所の井戸で調査を行い、結果を公表している。2024年10月に、横田基地の消火訓練エリアから泡消火薬剤の残りを含む水があふれて施設の外へ出た可能性が高いという情報が国から届いたときには、東京都が周辺の川の水を調べ、残堀川などの地点は当時の暫定指針値を下回っていたと市は伝えている。湧き水の街に住むということは、見えない地下の水にも目を配りつづけるということだ。

水には、気候の変化の影も差している。環境基本計画は、気候変動の影響として、多摩川や残堀川、矢川などの水温の上昇や水質の変化、水に溶けた酸素の減少、藻類の増加を挙げている。ニホンジカなどの野生動物が生息域を広げ、市街地に出てくるおそれにも触れている。立川の駅前にシカ。いまは想像しにくいが、計画はその可能性を、表の一行として淡々と記している。

暑さとつきあう街──市民が挙げた三番目の課題

緑の基本計画をつくるために市が行ったアンケートで、今後の立川市にとって重要な社会課題を尋ねると、「子育て」と「災害に強い都市の形成」がともに約5割で上位に並び、その次が「暑熱対策・ヒートアイランド現象への対策」で43.3%だった。緑の計画のアンケートで、三番目に暑さが来る。市民は、緑を眺めるものとしてだけでなく、日陰をつくる道具としても見ている。

環境基本計画は、気候変動への「適応」を一つの柱に置き、都市化によるヒートアイランド現象と気候変動の相乗効果を、立川が受ける影響として挙げた。熱中症を防ぐため、市の施設や市内の協力事業所に「ひと涼みスポット」を開く取り組みも、計画の行動に書き込まれている。緑の基本計画も、10年後の緑の役割として、暑熱環境の緩和をはっきり挙げた。駅前のまちづくりの検討でも、市は脱炭素や暑熱対策といった気候変動への対応を、これからの都市に求められることとして書いている。

暑さ対策は、華やかな事業ではない。木を1本残す。屋根に降った雨を地面に返す。窓に断熱材を入れる。風呂に続けて入る。どれも地味だ。だが、その地味な積み重ねのほかに、32万トンへの道は無いのだろう。

謎の答え──足湯の街は、山に登れるか

60%の山に、立川は登れるのか。正直に言えば、計画の数字だけを見る限り、道は険しい。8年で2割を減らした街が、9年で残りの半分を減らさなければならない。計画も宣言も、それを隠していない。生産緑地は170ヘクタール以上を守る、みどり率は現状を維持する。どの目標も、減ることを知ったうえで、減り方と闘う目標だ。

それでも、この街の環境の計画を読み終えて残るのは、悲観ではなかった。ごみの熱で足湯を沸かし、ゴーヤの種を翌年へ回し、競輪場の屋根で発電し、崖の緑を8つの市でつなごうとしている。立川の環境のこれからは、大きな発明ではなく、小さな循環の数でできている。市民でも知らない人の多い、この街のひそかな誇りだ。

足湯は、きょうも焼却炉の余熱で温まっている。暑すぎる日には止まり、涼しくなればまた湯が張られる。

寄り道クイズの答え

答えは(C)。立川市第3次環境基本計画のコラムによれば、お風呂に間を空けずに続けて入り、湯船の蓋を閉めると1年に86.9キログラムの二酸化炭素を減らせる。(B)の1時間早い消灯は6.9キログラム、(A)のご飯を残さず食べるは1.1キログラムとされている。

訪ねる前に

  • たちむにぃひろばと足湯: 立川市泉町2002番地内(立川市クリーンセンターの北側)。JR東中神駅から徒歩約15分、大山団地折返場バス停から徒歩約7分、西武蔵野バス停から徒歩約8分。立川市の案内では、ひろばは9時から17時、足湯は9時30分から16時で、足湯は毎週火曜日(祝日なら翌平日)やひろばの休園日、焼却炉の停止期間は休み。熱中症警戒アラートの日は足湯が止まる。タオルは持参。最新は市の頁で: https://www.city.tachikawa.lg.jp/kurashi/gomi/1019923/1019924/1001725/1022731.html
  • 計画を読むなら: 立川市第3次環境基本計画 https://www.city.tachikawa.lg.jp/shisei/sesaku/1024458/1024463/1025321.html 、立川市緑の基本計画(子ども用の概要版もある) https://www.city.tachikawa.lg.jp/shisei/sesaku/1024458/1024464/1026933.html 、ゼロカーボンシティ宣言 https://www.city.tachikawa.lg.jp/kurashi/seikatsu/1001871/1024781.html
  • 補助を使うなら: 既存住宅の断熱改修の補助(2026年度分は受付終了)と雨水浸透施設の補助は、年度ごとに条件や予算が変わる。雨水浸透施設は設置前の相談が要る(下水道管理課): https://www.city.tachikawa.lg.jp/kurashi/seikatsu/1001871/1001888.html
  • 緑と水を歩くなら: 国営昭和記念公園、根川緑道、矢川緑地、五日市街道の屋敷林は、特集のそれぞれの記事で詳しく歩いている。崖線の緑と湧水は、根川緑道から矢川緑地へ東へ歩くとつながって見える。
  • 都心と神奈川から: 新宿からJR中央線で乗り換えなし。神奈川県の川崎からはJR南武線で乗り換えなしに立川駅へ。たちむにぃへは立川駅北口からバスか、青梅線の東中神駅から歩く。

環境の街を歩いたあとは、立川駅北口で

崖線の坂を上り下りし、畑の道を歩き、焼却場の足湯で足だけ温めると、今度は体の残りの部分が、自分も温めてくれと言いだす。

立川駅の北口から歩いて1分、立川市曙町2-14-10のエトロワビル3階に、オンザショア立川店がある。溶岩プレートを敷いたスタジオで行うホットヨガのスタジオだ。常温のヨガやピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングもあり、ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。

営業は8時から23時30分まで、年中無休で、曜日による違いはない。足湯が閉まる16時のあとでも、寄る時間はたっぷりある。

ヨガの体験レッスンは税込1,980円。60分のレッスンに、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。タオルを持たずに身ひとつで寄れるのは、足湯より気楽かもしれない。

妊娠中の人は溶岩ホットヨガには参加できないが、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている人は利用できない。

料金は https://ontheshore.jp/price/ 、店の案内は https://ontheshore.jp/ 、体験の予約は https://site.locaop.jp/C0aVK?_src=hp で確かめられる。

足から始まった温まりを、駅前のビルの3階で、体の芯まで届ける。立川の一日は、小さな熱の受け渡しでできている。

冒頭の写真: 国営昭和記念公園から西を望む元日の朝。雑木林と街並みの先、山並みの上に白い富士山がのぞく。(写真: Nishifutsu / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)

この記事の情報は2026年10月時点のものです。

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