
直売所で買う──みのーれ立川の200万人目と、20分で消えたいちご
立川の畑の恵みを買うなら、まず直売所だ。いちばん大きいのは、昭和記念公園の北側、立川市砂川町2-1-5にあるファーマーズセンターみのーれ立川である。立川市によれば、市内で生産された農畜産物や観光協会推奨の特産品を売り、立川の情報を発信し、市民が交流する場をつくる、「農・商・工・観」の連携の拠点として平成25年に開いた。営業は午前10時から午後5時まで、休みは12月31日から1月4日まで。駐車場は約80台ある。ガイドマップは直売コーナーの品ぞろえを、立川特産の東京うどをはじめとした旬の野菜、ナシやブルーベリーなどの果実、烏骨鶏の卵など、と紹介している。
令和8年3月25日、みのーれ立川は来客200万人を達成した。市の頁によれば、200万人目は立川市内に住む人で、JA東京みどりの組合長から新鮮野菜の詰め合わせを、市の農業振興課長から花束を贈られた。直売所の記念品が、野菜の詰め合わせ。これ以上ふさわしい贈り物はない。13年で200万人。野菜を買いに来た人の数としては、なかなかのものである。
みのーれ立川には、地元の食材を使ったメニューのある「みの〜れCafe」が平成27年4月24日に開いている。JA東京みどり本店に隣り合う幸町1-14-1には、午前9時30分から午後4時まで開く「みのーれ立川幸町店」もある。
市街地にも直売所がある。コトリンクの1階にある「のーかるバザール」だ。立川市の頁によれば、立川産の農産物がそろい、立川市の姉妹都市である長野県大町市の地酒や名産品も並ぶ。2026年4月からの営業時間は、月曜から土曜が午前10時30分から午後7時30分まで、日曜が午後5時まで。勤め帰りに立川の野菜を買える。
市役所でも野菜は買える。立川市役所1階の多目的プラザでは、直売会が開かれている。2026年度の残りの予定は、10月27日、11月19日、12月10日、12月17日で、時間は午前11時から午後1時30分まで(予定)。野菜や果実、地場の野菜を使ったお弁当、大町市の特産品が並ぶ。
この直売会の記録に、思わず二度読みした一行がある。2026年3月に市が載せた報告で、市内のいちご農家が完熟いちごを対面で売った直売会の報告だ。時間は午前11時00分から午前11時20分まで、と書かれ、そのあとに括弧で「完売しました」とある。開店から20分。市役所の1階で、真っ赤ないちごが20分で消えた。立川のいちごを買いたい人は、市役所の開庁時間ではなく、いちごの時間に合わせて動くべきなのだ。
直売所の場所や季節の販売カレンダーは、市が2025年11月に作り直した「たちかわ農産物ガイドマップ」にまとまっている。市役所や観光案内コーナー、中央図書館、子ども未来センター、みのーれ立川、のーかるバザールで配られ、市の頁からも読める。カレンダーを見ると、ブロッコリーは秋から冬と初夏の二度、トマトやナスやキュウリは夏、ナシは夏の終わりから秋。季節で並ぶ野菜が入れ替わる。
買うだけでは物足りなくなったら、次は畑に入る番である。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
畑に入る──援農ボランティア、市民農園、収穫体験
立川市の援農ボランティアは、後継者不足や高齢化で人手の足りない農家を、無報酬で手伝う仕組みだ。市のガイドマップによれば、平成15年に5軒の農家が受け入れたのが始まりで、受け入れを望む農家は増えてきた。令和8年3月の時点で84人が活動していて、この年、市長は継続20年の2人、15年の6人、10年の4人、5年の1人に感謝状を贈った。20年、同じ畑に通い続けた人がいる。
参加の条件は、農業に関心があり、週2回から3回ほどの活動を長く続けられる健康な人。市外に住んでいても活動できる。交通費や作業着は自分持ちだ。市に登録すると、条件や希望に合う農家を紹介してもらい、現地で顔合わせをしてから活動が始まる。同じ農家のところで長く続ける人が多いという。
週に2、3回は難しいという人には、別の入口もある。東京都農林水産振興財団が運営する「とうきょう援農ボランティア」は、半日から気軽に参加できる農業ボランティアを募集していて、立川市の頁もそれを案内している。この財団の本部は、先に書いたとおり立川市富士見町にある。東京じゅうの援農ボランティアを取りまとめる財団の本部が、立川に置かれていることになる。
市の頁に載る受け入れ農家の一覧は、読むだけで畑の一年が見える。西砂町の養鶏農家では、もみじ卵や烏骨鶏の卵を集めて洗い、鶏舎を掃除する。鳥インフルエンザ対策のため、鶏を飼っている場所や海外に頻繁に行かない人が望ましく、マニュアル車を運転できる人だとなお良いという。上砂町の農家はうどとブロッコリーで、特に秋が忙しく、ウドの作業に興味のある人を求めている。若葉町には、鉢花や花苗、野菜苗の苗を運んで植える仕事もある。マニュアル車の運転技術が、都会で役に立つ数少ない場所である。
いきなり農家へ行くのが不安な人のために、市は援農ボランティアの基礎講座も開いている。2026年度は9月12日に始まり、全6回。土づくりや堆肥の役割、立川の農業と立川印について学び、タマネギの定植や果樹の剪定を経て、最終回の2月27日には、トラクターと管理機の講習と試乗がある。半年の講座の締めくくりが、トラクターの運転。卒業試験としては、これほど晴れやかなものはない。
自分の畑を持ちたい人には、市民農園がある。立川市は平成21年3月1日に市民農園を開いた。いまは柴崎町に、柴崎第1市民農園(98区画)と柴崎第3市民農園(97区画)の2か所がある。1世帯に1区画、広さは約10平方メートル。料金は1年11か月分で8,000円。応募できるのは立川市民で、駐車場がないため自家用車を使わずに通えることが条件だ。10平方メートルは、ちょうど6畳ほど。畳の部屋一つ分の畑である。市の頁には、入口と夏野菜の育つ畑の写真が載っている。
教わりながら育てたいなら、体験型農園がある。農園主の技術指導を受けながら種まきから収穫まで行う農園で、作付けの計画や種、苗、農具は農園主が用意する。市内に5か所あり、1区画は25〜30平方メートル。ガイドマップによれば、利用料は1年間で45,000〜48,300円で、収穫物の買い取り代金を含む。
一日だけ畑に触れたい人には、収穫体験がある。2026年の秋の市の案内には、西砂町の農園の落花生掘りが1株500円、3株1,000円(3株なら1キログラムを保証)、別の果樹園の秋の収穫体験は、柿、キウイフルーツの東京ゴールド、サツマイモの紅はるかを収穫して1組6,000円、と並ぶ。そして11月21日には、みのーれ立川の北側広場で「立川印市民収穫体験」が開かれる。市内に住民票のある人が対象で、ハクサイやカブなど5品目ほどを、3部制で各回50組が収穫する。参加費は1組1,000円。市の案内の見出しは、こうだ。地元野菜を、ガシッと収穫。みずみずしさ、ケタ違い。市役所の文章とは思えない勢いがある。

畑を担う人と、畑の晴れ舞台
畑は、人がいてはじめて畑である。市のガイドマップによれば、効率的な農業経営を目指して5年間の目標を立て、市長の認定を受けた認定農業者と、就農して間もない認定新規就農者は、令和7年3月末の時点で、84経営体・112名が立川市内で活躍している。農家の団体も、植木生産組合、農業技術振興会、果樹組合、うど生産組合、畜産組合と、作物ごとに並ぶ。市内のいちご農家でつくる「立川いちご会」があり、女性の農業者が立ち合いで販売する「花果野マルシェ立川」がある。そして、意欲ある若い農業後継者でつくる「立川市農研会」が、親子の収穫体験や、小学校での食育・緑育の授業を担っている。夏の親子収穫体験で子どもたちが引き抜くトウモロコシやジャガイモは、農研会が育てたものだ。
畑には、晴れ舞台もある。ガイドマップの催しの欄には、一年の品評会が並ぶ。6月下旬はトマトやナスの夏野菜品評会、8月下旬はナシやブドウの果実品評会、11月初旬は農業祭の前日に行う農産物品評会で、野菜や果物だけでなく、植木や花の部門まで審査する。2月中旬は東京うどの品評会。審査はJAや東京都の農業部門の職員が務め、非公開だが、終わったあとには出品された農産物を買える即売会がある。審査員の目にかなった野菜を、その場で連れて帰れる。品評会は、いちばん出来のいい野菜の売り場でもある。
春には、みのーれ立川の北側広場で緑化まつりが開かれる。ガイドマップによれば4月下旬で、苗木の無料配布や、植木、山野草、盆栽の展示即売、園芸教室や相談のコーナーがある。都内1位の植木の町の、植木の祭りである。
冬には、街ぐるみの催しも始まった。立川市の頁によれば、「立川印ブロッコリー・ストロベリーWEEK2027」は、1月中旬の10日間、市内の複数の飲食店が、採れたての立川産ブロッコリーかいちごを使った料理を出す企画だ。同じ時期に、立川駅前でのPR販売や、スーパーと直売所でのパネル掲示も行い、栽培の現場の見学会も予定しているという。店が立川の野菜を仕入れる先として、のーかるバザール、みのーれ立川と並んで、駅ビルのグランデュオ立川の名が挙がっている。駅前と畑のあいだは、思ったより近い。冬のある10日間、駅前の店のメニューに、北の畑のブロッコリーがのる。
立川くらいが、一番いい
立川でいちばん広く育てられている作物は何か、と冒頭で私は問うた。答えは植木だった。8,747アール。ブロッコリーの4倍を超える面積で、立川の畑は、食べられない緑を育てている。
だが、調べ終えて思うのは、答えそのものより、その答えが意外に聞こえること自体が、この街らしいということだ。駅前の喧騒しか知らない人には、23区の畑の半分を超える畑も、都内1位が三つあることも、農地全体が災害の逃げ場になっていることも、どれも意外だろう。立川の人でさえ、全部は知らないかもしれない。
東京の畑の未来を考える研究所と、都内の援農ボランティアを取りまとめる財団が、この街にある。百年前に村へ試験場がやって来て、戦後に砂川と一つになり、昭和の後半に畑の町の名前が生まれた。立川の農業は、百年あまりの時間をかけて、この形になった。
街の自慢は、いつも駅前にあるとは限らない。駅から北へ、バスで20分ほど行った先の畑で、ブロッコリーが練馬と1トンを争い、植木畑の木が、どこかの広場へ植えられる日を待っている。冬には地上でブロッコリーが、地下の室でうどが育つ。その畑を、112人の認定農業者と、84人の援農ボランティアが支えている。駅前のにぎわいの、いちばん根っこにいるのは、この人たちだ。
新宿から中央線で一本、川崎からなら南武線で一本。週末の朝、立川駅からバスに乗り換えて、20分先の畑まで野菜を買いに来てほしい。袋の重さが、そのまま、この街の畑の広さである。
立川くらいが、一番いい。畑の真ん中に立てば、その一言の意味が、たぶんわかる。
寄り道クイズの答え
答えは(A)1トン。立川市の頁によれば、平成30年産のブロッコリーの収穫量は、1位の立川市が153トン、2位の練馬区が152トン。収穫量にもとづく順位である。

訪ねる前に
- ファーマーズセンターみのーれ立川: 立川市砂川町2-1-5(昭和記念公園の北側)。営業は午前10時から午後5時、休みは12月31日から1月4日(立川市による)。JR立川駅北口の2番バス乗り場から「大山団地折返場」行きなどに乗り、砂川五差路で降りて徒歩2〜3分、バスで約20分(JA東京みどりの案内による)。最新はJA東京みどりの案内で: https://ja-tokyomidori.or.jp/minore/
- みのーれ立川幸町店: 立川市幸町1-14-1。午前9時30分から午後4時。
- のーかるバザール: コトリンク1階。月曜から土曜は午前10時30分から午後7時30分、日曜は午後5時まで(2026年4月から)。
- 直売所の一覧と季節の販売カレンダー: 「たちかわ農産物ガイドマップ」 https://www.city.tachikawa.lg.jp/sangyo/nogyo/1004077/1004155.html
- 援農ボランティア・市民農園・体験型農園・収穫体験: 立川市の農業の頁から申し込み方法を確かめられる https://www.city.tachikawa.lg.jp/sangyo/nogyo/index.html 。募集の時期や空きは年によって変わる。
- 遠くから: 新宿からはJR中央線快速で立川まで乗り換えなし(30分台)。神奈川からは、川崎からJR南武線で乗り換えなし(立川まで約1時間)。時刻と所要時間はJR東日本の公式で確かめたい。
- 旬の目安: ブロッコリーは10月中旬から2月と5月から6月中旬、東京うどは12月中旬から4月(立川市による)。
- 組み合わせるなら: みのーれ立川は昭和記念公園の北側にある。砂川口から公園に入り、昭和30年代の農村を再現したこもれびの里を歩けば、昭和の畑といまの畑を一日で見比べられる。五日市街道沿いの砂川の屋敷林は、玉川上水と砂川の記事で歩いた道筋。
畑帰りの体は、駅の北口で
援農で一日しゃがんで草を抜けば、腰も膝も、思っている以上に固くなる。収穫体験で落花生を引き抜いただけでも、翌朝、背中のどこかが自己主張をはじめる。畑仕事は、全身の運動なのだ。
立川駅の北口から歩いて1分、立川市曙町2-14-10のエトロワビル3階に、オンザショア立川店がある。溶岩プレートを敷いたスタジオで行うホットヨガのスタジオだ。常温のヨガやピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングもあり、ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。
営業は8時から23時30分まで、年中無休で、曜日による違いはない。直売所が閉まったあとでも、まだ寄れる。
ヨガの体験レッスンは税込1,980円。60分のレッスンに、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。野菜の袋を提げたままでも、身ひとつで寄れる。
妊娠中の人は溶岩ホットヨガには参加できないが、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている人は利用できない。
料金は https://ontheshore.jp/price/ 、店の案内は https://ontheshore.jp/ 、体験の予約は https://site.locaop.jp/C0aVK?_src=hp で確かめられる。
土に触れた一日の終わりに、駅前のビルの3階で、もう一度ゆっくり体を伸ばす。畑と駅前の距離は、立川では、思っているよりずっと近い。
冒頭の写真: 立川市富士見町の東京都農林総合研究センター。東京の農林業の試験研究の拠点(写真: Nyao148 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)
この記事の情報は2026年10月時点のものです。
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