立川の文化施設をめぐる──「国立」音大は立川にあり、美術館は信用金庫の1階にある

たましんRISURUホール──市民会館は、リスの名前で呼ばれている

立川駅の南へ下り、錦町へ歩く。立川市の資料によれば、JR立川駅から歩いて13分、多摩モノレールの立川南駅から12分、JR南武線の西国立駅からなら7分。鉄骨鉄筋コンクリート造の地下1階、地上5階の建物が、立川市市民会館である。

立川市錦町の立川市市民会館(たましんRISURUホール)の外観
立川市錦町の立川市市民会館(たましんRISURUホール)の外観
写真: Abasaa / Public domain / Wikimedia Commons

開館は昭和49年、1974年の1月11日。信用金庫が本店の9階に画廊を開いたのと同じ年である。昭和49年の立川は、同じ年に、ホールと画廊の扉を開けた。片方は駅の南の錦町に、片方は本店ビルの9階に。街が、聴く場所と見る場所を一度に手に入れた年である。

大規模な改修工事を経て、2014年、平成26年の1月9日にリニューアルオープンした。そのとき、愛称が「アミューたちかわ」から「たましんRISURUホール」に変わった。このホールを「アミュー」の名で覚えている世代と、リスの名でしか知らない世代が、いまこの街では同じホールの客席に座っている。

立川市によれば、これは市が初めて導入したネーミングライツ、つまり施設の命名権の事例である。スポンサーは多摩信用金庫。RISURUは、その金庫のオリジナルキャラクターの名前だ。市は2024年3月28日に、引き続き多摩信用金庫と協定を結んだ。期間は2024年4月から2029年3月までの5年間、金額は年額1千万円である。

ここで、さきほどの美術館の話とつながる。立川で生まれた信用組合が、多摩の信用金庫になり、美術館をつくり、市民会館に自分のリスの名前を貸している。協定を結んだ式の写真には、立川市のキャラクター「くるりん」と市長、金庫の理事長、そしてRISURUが並んだと市は記している。二体の着ぐるみが、行政と金融のあいだで、ちょっとした国交を結んでいる。

大ホールの客席は1,201席。1階に771席、2階に416席、車椅子のスペースが14席ある。舞台の間口は18メートル。ほかに小ホール、展示室、サブホール、ギャラリー、七つの会議室がある。

このホールの中には、あまり知られていない絵がある。立川市が所蔵する絵画の一覧によれば、市民会館には野見山暁治の油絵「玄海」がある。150号の大作だ。市民会館の保管庫には、同じ作家のデッサンや、佐藤多持の「水芭蕉曼陀羅」、伊藤彬の「火」といった日本画も収められている。同じ頁は、宮城音蔵の「人ーこの不思議な生物」も市民会館の作品として写真で紹介している。開演を待つ人たちのすぐそばで、市の美術品が静かに働いている。

このホールを拠点のひとつにするのが、公益財団法人立川市地域文化振興財団である。財団の頁を開くと、事業の名前が並ぶ。水曜コンサート、どこでもステージ、キッズ・ワークショップ、鑑賞ツアー、たちかわアートギャラリー展、たちかわ演劇祭、立川市民オペラ、多摩フレッシュ音楽コンサート。市民がオペラを上演する街は、そう多くはない。

ところで、ここでも水曜日が出てくる。楽器学資料館の展示室が開くのは水曜日、財団の看板の演奏会も水曜コンサート。立川の文化は、どうも週の真ん中に音を鳴らすのが好きらしい。偶然だろう。偶然にしては、律儀すぎるが。

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

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古い家と、5坪の三階建て──歴史民俗資料館と古民家園

舞台の街から、少し時間をさかのぼる。

立川市歴史民俗資料館は、富士見町3丁目にある。市によれば、昭和60年、1985年の12月1日に開館した。JR青梅線の西立川駅から歩いて20分、立川駅の南口からバスなら「団地西」か「農業試験場前」で降りて5分。入館は無料だ。

常設展示室には、立川の原始から近現代までの歴史、民俗、自然の資料が並ぶ。勝坂式土器、立川氏文書、柴崎村絵図、多摩川の漁撈具。国宝の六面石幢の複製もある。市が用意している展示の手引きの題を順に読むと、それだけで立川の通史になる。「立川市内の遺跡」「縄文時代の暮らし」「板碑と六面石幢」「中世立川氏と立川氏文書」「江戸時代の立川」「甲武鉄道の開通」「立川飛行場のあゆみ」「養蚕と機織り」「砂川の桑苗」「多摩川の漁法と漁具」。土器から飛行機まで、10枚の紙で立川の通史を歩ける。

資料館の入口は、多摩川に向かって歌碑や句碑が続く「詩歌の道」の起点でもある。その道は、この特集の根川の回で歩いた。

もうひとつの古い時間は、北の幸町にある。川越道緑地古民家園だ。

園の中心は、市の有形文化財の小林家住宅である。市によれば、主屋は砂川には数少ない「六間型」、土間を除いて六つの部屋でできた家で、高い技術とよい材料が使われている。いちばんの見どころは北西の「オク」の間で、床の間、違い棚、書院といった座敷の飾りは、当時の武家の住宅に匹敵する格式を持つという。村の家の奥に、武家に負けない座敷がある。私はそこに、砂川の村の人のささやかな見栄と誇りを見る。

この家は、もとは幸町4丁目の別の場所に建っていた。平成元年、1989年に市の文化財になり、解体して調べたところ、「嘉永五(1852)年」と書かれた部材が見つかって、建てられた年がわかった。ペリーが浦賀に来る前の年である。屋根は入母屋造の茅葺きで、床面積は約198平方メートル、60坪。復元は「できる限り元の材料を使って創建当初の姿に戻す方針」で進められ、古民家園は1993年10月17日に開園した。

その隣に、もうひとつ、変わった建物がある。須﨑家の内蔵だ。

市の説明によれば、江戸の末から明治の初めごろに建てられたと推定される、木造3階建ての土蔵である。類例が少ないという。床面積は約16.2平方メートル、5坪。それで棟の高さは約8.5メートルある。隣の小林家の母屋の棟高が約8.7メートルだから、床が12分の1ほどの蔵が、母屋とほぼ同じ高さまで伸びていることになる。土地は増やせないが、空は増やせる。江戸の終わりの質屋は、今の都心のペンシルビルと同じことを考えていた。

須﨑家は江戸時代、砂川村八番組の組頭を務めた旧家で、質屋を営み、この蔵は質蔵だった。内部の梁や板壁には高価なケヤキがふんだんに使われ、帳面をしまう引き出しのついた箱階段がある。市は、桑苗の特産地だった砂川村の盛んな商いを象徴する建物として、2016年3月に復元を終え、4月21日から公開している。

質蔵の三階建てと、信用金庫の美術館。時代は150年ほど離れているが、立川ではどちらも、お金を預かる人たちが文化を守っている。

ただし、ひとつ大事な知らせがある。市によれば、古民家園は管理施設などの改修工事のため、2026年6月1日から2027年3月31日まで休園している。この記事を読んで行こうと思った人は、春を待ってほしい。

学校が工場になり、街が宣言を結ぶ

立川の文化の、もうひとつの顔は、建物の外にある。

2015年10月、多摩川の近くに「たちかわ創造舎」が開いた。2004年に閉校した市立多摩川小学校の校舎と体育館を、そのまま残して使っている。市はこれを「カルチャー・ファクトリー」と呼ぶ。文化団体の活動を支える場であり、校舎の2階は撮影専用のスペースとして、映像の撮影に貸し出されている。運営は、提案競技で選ばれたNPO法人アートネットワーク・ジャパンが担う。教室だった部屋が、稽古場になり、撮影の場所になる。富士山の見える多摩川沿い、と市は書く。

制度の面でも、立川は早かった。2004年12月、立川市は「立川市文化芸術のまちづくり条例」を議会に提案し、全会一致で可決した。そこに至るまでには、1998年度から5年間、市民と企業と学校と行政が組んで「たちかわ夏の音楽祭」「立川国際芸術祭」「立川舞台芸術フェスティバル」を開いた時期があった。

この条例の説明を読んで、私はようやく冒頭の問いの手がかりをつかんだ気がした。条例の名前は、「振興」という言葉より自主性を大切にしたいという理由で、「文化芸術のまちづくり」になった。そして条例は、文化芸術の担い手は市民だとしたうえで、その「市民」を、市内に住む人だけでなく、学校や企業など、市域で活動するすべてのものと捉えている。

国立という名の音楽大学も、多摩という名の信用金庫も、この条例の言葉でいえば、立川の市民なのだ。

2026年9月14日、国立音楽大学、株式会社立飛ホールディングス、立川市の三者は、「音楽・文化を通じたまちづくりに関する共同宣言」を結んだ。市によれば、三者がそれぞれの専門性や施設、人材を生かし、子どもたちをはじめとする市民が音楽と文化芸術に親しみ、学ぶ機会を増やしていくことを確かめ合ったものだ。飛行機の会社だった立飛と、国立から来た音楽大学と、市。この組み合わせほど、立川らしいものはない。

駅の北口のバスターミナルには、歌人の若山牧水の歌碑が立っている。市の「詩歌の道」の一覧によれば、刻まれているのは「立川の驛の古茶屋さくら樹のもみぢのかげに見送りし子よ」。駅の茶屋で、桜の紅葉の下で、誰かを見送った歌である。あのころの駅前には、桜の木と古い茶屋があった。いまの北口には、バスの列と、急ぎ足の人の流れがある。それでも、人を迎え、人を見送る場所であることだけは、牧水の時代から変わっていない。

立川の文化は、なぜ「立川」と名乗らないのか

冒頭の問いに戻ろう。

答えの半分は、来歴にある。信用金庫の名前から「立川」が消えたのは、立川の組合が多摩全体に育ったからだった。音楽大学の名前に「国立」が残っているのは、国立で生まれた学校が、そのままの名前で立川へ来たからだった。市民会館がリスの名前で呼ばれるのは、市が文化の器を守るために、地元の金庫と手を組んだからだった。どれも、立川が小さいからではない。人と組織が、この街を通り抜け、この街に集まってきた結果である。

もう半分は、私にはこう見える。乗り換えの街は、よそから来たものを、よその名前のまま受け入れる。国立の名の大学も、多摩の名の金庫も、南極を調べる研究所も、立川は名前を書き換えずに迎え、条例で「市民」と呼んだ。看板に「立川」と書かないことが、この街の器の大きさなのだと思う。自分の名前を大声で言わない街は、だいたい、懐が深い。旅人の勝手な読みである。残りの半分は、水曜日に楽器の音を聞きながら、それぞれが考えればいい。

新宿から中央線で30分ほど。週末の立川で、駅前の買い物袋を一つ減らして、信用金庫の1階の扉を押してみるといい。立川の文化は、名乗らないだけで、ちゃんとそこにいる。

寄り道クイズの答え

答えはA、南極である。楽器学資料館が示す所蔵資料の地域分けは、東アジアから太平洋諸島まで並んだあと、最後に「南極(Antarctic)」を置いている。どんな楽器がそこに入るのか、あるいは入る日を待っているのかは、資料館で尋ねてみてほしい。立川の緑町には、南極の氷に触れられる科学館もある。楽器と氷で、立川の中に南極が二つある。

訪ねる前に

  • 来やすさ: 新宿からJR中央線で約30分(東京都環境局のリーフレットによる)、東京駅からは特別快速で40分(立川市による)。神奈川からは、JR南武線が川崎駅と立川駅を結んでいて、川崎から乗り換えなしで着く。南武線なら、市民会館は一つ手前の西国立駅が近い。時刻はその日の時刻表で確かめてほしい
  • たましん美術館: 東京都立川市緑町3-4 多摩信用金庫本店1階(2階は地域貢献スペース)。JR立川駅から徒歩約6分(財団の案内による)。専用の駐車場はない。開館時間、休館日、入館料、展示替えの休館は公式で確かめてほしい。https://www.tamashinmuseum.org/
  • 国立音楽大学 楽器学資料館: 東京都立川市柏町5-5-1 国立音楽大学4号館1階。西武拝島線・多摩モノレールの玉川上水駅から徒歩7分。展示室の一般公開は原則として大学の授業期間中の水曜日で、入館は無料、予約は要らない(団体は事前予約が必要)。公開日は開館日カレンダーで確かめてほしい。展示室内は撮影禁止。https://www.gs.kunitachi.ac.jp/ja/
  • たましんRISURUホール(立川市市民会館): 東京都立川市錦町3-3-20。JR立川駅から徒歩13分、多摩モノレール立川南駅から12分、JR西国立駅から7分(市の資料による)。催しの予定は公式で。https://risuru.hall-info.jp/ / 立川市地域文化振興財団 https://www.tachikawa-chiikibunka.or.jp/
  • 立川市歴史民俗資料館: 東京都立川市富士見町3-12-34。JR青梅線西立川駅から徒歩20分、立川駅南口からバスで「団地西」または「農業試験場前」下車徒歩5分。入館無料。開館時間と休館日は市の頁で。https://www.city.tachikawa.lg.jp/kanko/bunka/1004244/1004849/1004905.html
  • 川越道緑地古民家園: 東京都立川市幸町4-65。2026年6月1日から2027年3月31日まで改修工事のため休園中(市の案内による)。再開の案内は市の頁で。https://www.city.tachikawa.lg.jp/shisetsu/1008065/1008100.html
  • たちかわ創造舎(旧多摩川小学校): 催しのある日に。http://tachikawa-sozosha.jp/
  • 組み合わせて歩くなら: たましん美術館はサンサンロードの沿道にあり、GREEN SPRINGSやファーレ立川アートと半日で回れる。楽器学資料館の水曜日は、モノレールで玉川上水駅へ出て、玉川上水の緑道を歩く日にするとよい。歴史民俗資料館は、根川緑道と多摩川の散歩の起点になる。所要時間の目安は公式に示されていないので、展示の数と自分の足に合わせてほしい。

美術と楽器を見たあとは、立川駅北口で

美術館の展示室も、楽器の展示室も、立ったまま、ゆっくり歩き、ときどき身をかがめて見る場所だ。見終わったあとは、思いのほか腰と背中がこわばっている。その体をほぐしておきたいなら、立川駅北口から歩いて1分の場所にオンザショア立川店がある。東京都立川市曙町2-14-10、エトロワビルの3階だ。

ここは溶岩ホットヨガのスタジオで、溶岩のプレートを敷いたスタジオでヨガをする。ほかに常温のヨガ、ピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングもある。ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。

営業時間は8時から23時30分まで、年中無休で、どの曜日も同じ時間に開いている。水曜日の昼に楽器の10分講座を聞き、夕方に体を動かして帰ることもできる。

初めての人には、税込1,980円のヨガの体験レッスンがある。60分のレッスンに、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれている。

妊娠中の人は溶岩ホットヨガには参加できないが、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている人は利用できない。

  • オンザショア: https://ontheshore.jp/
  • 料金: https://ontheshore.jp/price/
  • 体験の予約: https://site.locaop.jp/C0aVK?_src=hp

駅へ戻る道の上を、モノレールが北へ走っていく。その先の柏町では、2,558の雑多な物体が、次の水曜日を待っている。

冒頭の写真: 多摩信用金庫の本店・本部棟。1階の「たましん美術館」の文字が見える(立川市緑町)(写真: Suikotei / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)

この記事の情報は2026年10月時点のものです。

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