立川シネマシティの極上爆音上映──映画館が消えた街に、東京初のシネコンが立つまで

電気の流れまで磨く映画館

公式ニュースによれば、2025年12月12日の公開作品から、極上音響上映と極上爆音上映は「02」と名を改めた。より精密な調整ができる独自開発の音響装置を入れ、音響調整の主任者には、チーフ・プロジェクショニストの雨宮宏治を据えた。十数年にわたって数多くの音響監督や専門家と仕事を重ねてきた、映写技師としては異例の経歴の持ち主だと劇場は紹介している。料金は据え置きで、「どうぞより多くの映画を観てください」と添えてある。

2026年5月29日からは、シネマ・ツーの各スタジオに順に「安定化クリーン電源」を入れていった。告知の見出しは「【オカルトか?】」で始まる。音質を突き詰めると、最後は電気そのものに行き着く。電圧を測ったグラフを導入の前後で並べ、劇場は、この汚れなく力強い電気が清流のような音を生み出すのだ、と書き、最後に「(たぶん)」と括弧で付け足している。自分で自分に疑いを差し挟みながら、それでも金と手間をかける。手間とコストをかけ続けることこそ、見ることのできない「愛」を証すことだと、同じ告知は言い切る。

2026年の夏には、bスタジオがMeyer Soundの最新のスピーカー「ASTRYA」とドルビーアトモスで生まれ変わった。公式ニュースは、aとbの両スタジオのスクリーンを、一般的なものの20倍もの価格の超高級スクリーンと紹介している。値段を誇るのは少々野暮だが、20倍と書かれると、一度は見ておきたくなるのが人情だ。

そのbスタジオの再出発の記念に開かれた『ボヘミアン・ラプソディ』のライブスタイル上映のルールが、また振るっている。拍手、歓声、一緒に歌うことはよい。笛やタンバリンなどの鳴り物は禁止で、理由は「演奏はクィーンにまかせましょう」。そして最後に、「ヒゲを生やすこと、ヒゲをつけることは推奨します」とある。

音へのこだわりは、作り手の側にも届いている。AV Watchの記事で増が語るところによれば、Meyer Soundの首脳陣が視察に訪れて、シネマシティの環境を絶賛し、その後、イタリアの映画館が同じラインアレイスピーカーを導入したという。立川の駅前の音響が、海の向こうの映画館の参考になった。

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

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若い客の多い映画館と、100円の会員

この映画館について調べていて、もう一つ意外だったのは、客の若さだった。

劇場の企画担当者は、映画ニュースサイトのリアルサウンドに「娯楽の設計」という連載を持っている。2019年9月の回で、彼は「若者の映画館離れ」は本当か、という問いを立て、シネマシティの客の年齢の割合を示した。大学生が25%、20代が23%、30代が15%、40代が13%、50代が10%、60代が7%、70代以上が3%。足しても100にならないことは本人が断っている。それでも、学生と20代を合わせると半分近くになる。映画館は年配の客に支えられている、という思いこみは、少なくとも立川の駅前では当てはまらない。もっとも、筆者自身も、ここは広い範囲から客が集まり上映の質を売りにする特殊な映画館だと、慎重に断りを入れている。

その数字の背景には、劇場の値付けの考え方がある。同じ回によれば、2019年4月、シネマシティは料金の仕組みを変えた。シニア割引の年齢を70歳に引き上げ、カップル向けの割引をやめ、24歳以下の会員の半年分の会費を100円にした。名づけて「次世代映画ファン育成計画」。当時の仕組みでは、会員は平日1,000円、土日祝1,300円で映画が見られた。缶ジュース1本ほどの半年分の会費で、映画好きの入口を若い人に開いておく。未来の常連を、今のうちに育てる算段である。

館の呼び名にも、客への気配りが残っている。Wikipediaの記述によれば、2013年7月に、もとの「シネマシティ」は「シネマ・ワン」に改められ、スクリーンの名も「city 1」から「city 6」までの呼び方から、fからkまでのスタジオ名に変わった。来場者の取り違えを防ぐためだという。二つの館にまたがって、aからkまでのアルファベットが一続きに振られている。チケットのアルファベットを見れば、どちらの館に向かえばいいかがわかる。方向音痴の私には、何よりの親切である。

音の部屋の改良も、途切れたことがない。2019年2月の公式ニュースによれば、極上爆音上映はそれまでaスタジオだけで行っていたが、サブウーファー4台をbスタジオに移して、bスタジオでも行うようになった。そのbスタジオは303席。多摩の情報サイト「いまたま」によれば、2020年12月4日からは、aスタジオに「ヘルムホルツ共鳴器」という吸音の装置を入れ、不要な音を吸わせて重低音をより正確に鳴らすようにしたという。音を足すだけでなく、要らない音を引くことにも、手間をかける。

客の側の声も、ネットには残っている。2016年に爆音のガルパンを見た個人のブログは、最初の音で「なんかもう笑いがこみ上げてくる」と書き、空気が衝撃波のように震えるのに「うるさくない」のが凄い、と続けていた。ブルーレイが発売された後でさえ連日満席だった、というのも、その書き手の見た光景だ。そして文章は、立川までわざわざ足を運ぶ価値は十分にある、と結ばれている。家で同じ映画が見られるようになってなお、人は立川へ来た。

2026年の春には、こんなこともあった。公式ニュースによれば、6月12日公開の映画『Michael/マイケル』の上映館の一覧に、当初シネマシティの名はなかった。劇場は交渉を重ね、極上音響上映で上映できることになった。2009年に『THIS IS IT』から極上音響上映を生んだ劇場にとって、マイケル・ジャクソンの映画を外すわけにはいかなかったのだろう。告知には、その喜びを曲の名前にかけた言葉遊びがいくつも並んでいる。劇場が、客より先にはしゃいでいる。

なぜ立川の駅前に、地元の映画館が残ったのか

冒頭の問いに戻ろう。大手のチェーンに囲まれ、配信の時代を迎えて、なぜ立川の駅前に、地元の映画館が残ったのか。

資料をたどって見えてきた答えの半分は、この映画館の根の深さだ。弁士が開いた映画館があり、町の商店主や市民が出資して建てた劇場があり、その劇場を借りる「大家と店子」の関係が、いまも続いている。区画整理のときも、三つの映画館は町を出ず、同じ場所で一つのビルにまとまった。シネマシティは、外からやって来たシネコンではない。立川の北口で70年以上、町と一緒に暮らしてきた映画館なのだ。映画館が1館もなくなった短い冬を越えて、いま立川の市内には4館23スクリーンがある。このまちアーカイブスは、立川は「映画の街」として復活したといえよう、と書いている。その復活の最初の灯をともしたのが、町の金で建った劇場の跡に立つ、この館だった。

もう半分は、勝負のしかたにある。周りを大手に囲まれたとき、この劇場は同じ土俵で数を競うのをやめ、「映画が好きな人」に向けて音を磨くことを選んだ。1本の映画のために音を整える極上音響上映は2009年に、建物を揺らす極上爆音上映は2014年に、この町で生まれた。作り手が自ら調整に来て、毎回、音に名前をつける。そういう映画館は、どこにでもあるものではない。だから人は、同じ映画を見るために、わざわざ立川まで来る。配信で映画が見られる時代だからこそ、家では決して鳴らせない音に、人は電車賃を払う。

立川は、乗り換えで通り過ぎる街だと思っていた。だが、この街には、東京で最初のシネコンがあり、日本人の手による最初のTHX劇場があり、映画の作り手が音を磨きに通ってくる映画館がある。2024年7月、テレビ東京の「アド街ック天国」は立川を取り上げ、シネマシティを、音響設備に1億円を投じた多摩地区の名物映画館として紹介した。「『ガルパン』といえば、シネマシティ」という一行は、そのまま、「爆音といえば、立川」と言い換えてもいいはずだ。地味な街だと思っていたのは、私の耳が届いていなかっただけだ。

新宿から中央線で一本、川崎から南武線で一本。週末の夜、家のテレビでは決して鳴らせない音を浴びに行く先として、立川の北口はちょうどいい距離にある。

上映が終わり、座席のライトがゆっくりとつく。2時間、腹の底で低音を受けとめていた体は、思ったよりも固くなっている。

寄り道クイズの答え

答えはB、たちかわりゅうである。公式ニュースは「立川流」に注をつけて、「たちかわりゅう、とお読み下さい。でないと話がおかしくなってしまいます。」と書いている。どう読むと話がどうおかしくなるのかは、書かれていない。そこは、それぞれが確かめればいい。

訪ねる前に

  • シネマ・ワン: 東京都立川市曙町2-8-5。JR立川駅から徒歩5分、多摩モノレール立川北駅から徒歩3分(公式サイトによる)。駅の北口を出て、ファーレ立川の一角へ
  • シネマ・ツー: 東京都立川市曙町2-42-26。JR立川駅から徒歩6分、多摩モノレール立川北駅から徒歩2分。極上爆音上映の多くはこちらのaスタジオ、bスタジオで行われる
  • 所要時間の目安: 上映時間に加えて、予告編は5分前後(公式サイトのよくある質問による)。上映が始まってからの途中入場はできず、完全入替制なので、早めに着くとよい
  • チケット: Web予約ができる。料金・割引・会員制度「シネマシティズン」・極上爆音上映の対象作品と日程は変わるので、公式サイトで最新を確かめてほしい
  • 飲食: 上映中の劇場に持ち込めるのは、館内で買った飲食物だけ
  • 年齢: 東京都の条例により、18歳未満は終映が23時以降の回に、保護者同伴でも入場できない
  • 遠くから: 新宿からはJR中央線快速で立川まで乗り換えなし(30分台)。神奈川からは、川崎からJR南武線で乗り換えなし(立川まで約1時間)。どちらも北口へ出る
  • 公式サイト: https://cinemacity.co.jp/ / 公式ニュース(極上爆音上映・極上音響上映の予定): https://ccnews.cinemacity.co.jp/
  • 近くと組み合わせる: シネマ・ワンはファーレ立川の一角にあり、上映前後に109点の作品が置かれた街を歩ける(特集の「ファーレ立川」の回)。デッキを北へ進めばGREEN SPRINGSや国営昭和記念公園も近い。夕方に公園を歩き、夜の回で爆音を浴びる、という一日の組み方もできる
サンサンロードの歩行者道。左にシネマ・ツー、上に多摩モノレールの高架が通る
サンサンロードの歩行者道。左にシネマ・ツー、上に多摩モノレールの高架が通る
写真: 深鸣 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

爆音のあとは、立川駅北口で

極上爆音上映を見終えたあとの体は、不思議と疲れている。2時間あまり、同じ姿勢で、腹の底から揺らされ続けていたのだ。立川駅北口から歩いて1分のところに、オンザショア立川店がある。東京都立川市曙町2-14-10、エトロワビルの3階で、シネマシティと同じ曙町の中だ。

溶岩のプレートを敷いたスタジオで行うホットヨガのスタジオで、ほかに常温のヨガ、ピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングがある。ヨガだけで25種類以上のレッスンがある。

営業時間は8時から23時30分まで、年中無休で、どの曜日も同じだ。朝のレッスンのあとで昼の回に入ることも、夕方の回のあとに立ち寄ることもできる。

初めての人には、税込1,980円のヨガの体験レッスンがある。60分のレッスンに、バスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが含まれる。手ぶらで寄れる。

妊娠中の人は溶岩ホットヨガには参加できないが、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている人は利用できない。

  • オンザショア: https://ontheshore.jp/
  • 料金: https://ontheshore.jp/price/
  • 体験の予約: https://site.locaop.jp/C0aVK?_src=hp

弁士が声で映画に命を吹きこんだ町で、いまは低音が、北口の夜の空気をかすかに震わせている。

冒頭の写真: ガラス張りの正面に CINEMA TWO の文字が並ぶシネマ・ツーの外観(2016年12月撮影)(写真: B4takashi / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)

この記事の情報は2026年10月時点のものです。

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