クンダリーニ(クンダリニー、kuṇḍalinī)とは、サンスクリット語で「とぐろを巻いたもの」を意味し、インドのタントラとハタヨガの文献で、背骨の根もとに蛇のように眠り、目覚めると体の中心の管を上って頭頂に至るとされる女神の力(シャクティ)のことです。6〜8世紀ごろのシヴァ派のタントラに現れ、15世紀の『ハタヨーガ・プラディーピカー』の影響で、ハタヨガの技法全体がこの力を目覚めさせる手段と見られるようになりました。いま「クンダリーニヨガ」と呼ばれるのは、これとは別に、ヨギ・バジャンが1968年に北米に渡って広めた、呼吸法・クリヤ・マントラ・瞑想を組み合わせた新しい様式です。
クンダリーニとは何か?語の意味と「眠る蛇」の像
クンダリーニとは、インドのタントラの伝統で、神の創造の力であると同時に、人の体の中に眠っている霊的な力のことです。宗教学者シャーマン・ハトリーは、百科事典の項目で、これを「とぐろを巻いた力」と定義しています [1]。語そのものが「とぐろを巻いたもの」を表し、クンダリー(kuṇḍalī)、クンダリカーなどの形でも呼ばれます [1]。日本語では「クンダリーニ」とも「クンダリニー」とも書かれますが、指しているものは同じです。原語の発音に近いのは、語末を伸ばす「クンダリニー」のほうです。
ハトリーによれば、シヴァ派のタントラとその流れをくむ伝統では、クンダリーニは2つの顔を持っています。1つは宇宙を生み出す力としての顔で、世界は音の連なりとして流れ出すと考えられました。もう1つは、一人ひとりの体の中で眠る力としての顔です。人の中のその力は、とぐろを巻いて眠る雌の蛇にたとえられ、ヨガによって目覚めると体の中を上り、神秘的な体験や超常の力(シッディ、siddhi)をもたらし、ついには生まれ変わりの輪からの解脱に至るとされます [1]。宇宙が生まれる下りの動きと、ヨガで上る動きが、鏡のように対応している。これがクンダリーニという考え方の骨組みです [1]。
体の中のどこで眠っているのかについても、伝統は細かく語ります。9〜10世紀ごろまでには、胴の根もと、肛門の近くにある根のチャクラ(ムーラーダーラ、mūlādhāra)に眠るという見方が一般的になりました。それより古い文献では、心臓やへそのチャクラ、あるいはその下の「球根(カンダ、kanda)」に置かれることもありました [1]。クンダリーニは、シヴァを表す点(ビンドゥ)のまわりに3回半とぐろを巻いて眠り、頭で中央の管の入口をふさいでいます。目覚めると、へそ、心臓、喉、頭のチャクラを上り、いくつもの結び目(グランティ)と頭頂の「ブラフマンの門」を貫いて、頭上12指の高さにある最高神の座に至るとされます [1]。
体の中心を何かが上っていくという発想自体は、もっと古くからあります。ハトリーは、『カタ・ウパニシャッド』が心臓から出る101本の管のうち1本が頭頂へ通じ、「それを上って不死に至る」と語ることを挙げています。ただし、何が上るのかは伝統によって違い、魂、生命の息、精の滴、マントラの響き、そしてクンダリーニなど、さまざまに考えられてきました [1]。クンダリーニは、その中の1つの答えです。
クンダリーニはどの文献に、いつ現れたのか?
クンダリーニは、パタンジャリの『ヨーガ・スートラ』には出てきません。ハトリーによれば、この語が文献に現れるのは、6〜8世紀ごろのシヴァ派のタントラ(タントラ、アーガマと呼ばれる聖典)からです [1]。非常に早い例かもしれないものとして、『サールダトリシャティカーローッタラ・タントラ』が、心臓にあるつぼみの形の「原初のとぐろ」を語る箇所があります。そして8世紀ごろの『タントラサッドバーヴァ』は、この力を蛇のようなものとして描いた早い文献の1つです [1]。
10〜11世紀には、シヴァ派の不二論の哲学者アビナヴァグプタ(975〜1025年ごろに活躍)らが、クンダリーニを宇宙論と言語の理論の中で論じました。彼らは、宇宙を生む力、生き物の生命の力、言葉にならない至高の力という、3つのクンダリーニを区別しています [1]。同じころ、10世紀ごろの『クブジカーマタ』は、女神クブジカーをクンダリーニと同一視し、ムーラーダーラから始まる6つのチャクラの体系を説きました。ハトリーは、この体系が広く伝わり、後のシュリーヴィディヤー派のヨガと、宗派を超えたハタヨガのクンダリーニのヨガの土台になったと述べています [1]。
12世紀以降のハタヨガの文献は、この流れの上に立っています。ハトリーの言い方では、ハタヨガはカウラ派のタントラに深く負いながら、その宗派の枠組みや教義、手の込んだ儀礼から切り離された技法の体系でした [1]。息を力で上へ押し上げるハタヨガの技法には、仏教の金剛乗(ヴァジュラヤーナ)のヨガに先例があることも指摘されています [1]。
| 時代(推定) | 文献・人物 | クンダリーニの扱い |
|---|---|---|
| 6〜8世紀ごろ | シヴァ派のタントラ | 文献に初めて現れる |
| 8世紀ごろ | 『タントラサッドバーヴァ』 | 蛇のような力として描いた早い例 |
| 10〜11世紀 | アビナヴァグプタ | 宇宙論・言語論の中で3つのクンダリーニを区別 |
| 10世紀ごろ | 『クブジカーマタ』 | 女神クブジカーと同一視。6つのチャクラの体系 |
| 12世紀以降 | ハタヨガの文献 | 身体の技法でクンダリーニを目覚めさせる |
| 15世紀 | 『ハタヨーガ・プラディーピカー』 | その影響で、すべての技法がクンダリーニを目覚めさせる手段と見られるように |
| 16世紀 | プールナーナンダ『シャットチャクラニルーパナ』 | 6つのチャクラとクンダリーニを詳しく描く |
| 1919年 | アーサー・アヴァロン『蛇の力』(英訳) | 西洋と近代のチャクラ像の土台になる |
年代と内容は、ハトリーの項目による整理です(『蛇の力』の年は図書館の目録による) [1] [17]。こうして並べると、クンダリーニは「古代から変わらない1つの教え」ではなく、千年以上かけて形を変えてきた考え方だと分かります。
クンダリーニとチャクラの関係は?チャクラは本当に7つなのか
クンダリーニは、チャクラと切り離せない考え方です。チャクラ(cakra、「輪」)は、ヨガの体の縦の軸に並ぶとされた中心点で、蓮の花にもたとえられます。体の中には管(ナーディー)が通り、呼吸の息はふだん背骨の左右の2本、月と結びつくイダーと太陽と結びつくピンガラーを流れます。行者は、火と結びつく中央の細い管スシュムナーを開こうとし、息がそこへ引き込まれたとき、クンダリーニが上ると考えられました [1]。その様子は、棒で打たれたコブラがしゅっと音を立てて身を伸ばすさまにたとえられます [1]。
では、チャクラはいくつあるのか。SOASの研究者ルース・ウェストビーは、チャクラの数は伝える文献によって違うと書いています。12世紀以降は6つとされるのが一般的で、7つ目を立てる体系では、頭頂の千の花びらの蓮(サハスラーラ)をそれに当てます [2]。
いま広く知られているクンダリーニの像に、ほかのどの文献よりも強い影響を与えたのは、16世紀のプールナーナンダが書いた『タットヴァチンターマニ』の第6章、『シャットチャクラニルーパナ(6つの中心の描写)』です。その描写では、クンダリーニは肛門と生殖器のあいだにある4枚の赤い花びらの蓮(ムーラーダーラ)に眠り、そこから生殖器の根もとのスヴァーディシュターナ、へそのマニプーラ、心臓のアナーハタ、喉のヴィシュッダ、眉間のアージュニャーと蓮が続き、その上に千の花びらのサハスラーラがあります [1]。
| 名前 | 場所(『シャットチャクラニルーパナ』による) |
|---|---|
| ムーラーダーラ(mūlādhāra) | 肛門と生殖器のあいだ。クンダリーニが眠る |
| スヴァーディシュターナ(svādhiṣṭhāna) | 生殖器の根もと |
| マニプーラ(maṇipūra) | へそ |
| アナーハタ(anāhata) | 心臓 |
| ヴィシュッダ(viśuddha) | 喉 |
| アージュニャー(ājñā) | 眉間 |
| サハスラーラ(sahasrāra) | 頭頂の上。千の花びらの蓮で、最高神シヴァの座 |
この本を英訳して1919年にロンドンで出版したのが [17]、「アーサー・アヴァロン」の筆名を使った、英領インドの判事ジョン・ウッドロフと、ベンガルの協力者アタル・ビハーリー・ゴーシュの『蛇の力(The Serpent Power)』です(ハトリーの項目は初版を1918年としています)。ハトリーは、クンダリーニと、ヒンドゥー教のタントラのヨガ全般についての近代の理解が、この本にきわめて大きく負っていると書いています。研究者キャスリーン・テイラーも、この本は長く英語で読めるこの主題の主要な書物だったため、近代のヨガの本でチャクラの数と位置を標準化する助けになったのだろうと述べています [1]。
「チャクラは7つ」は、普遍の真理というより、16世紀の1冊の本と、1919年の1冊の英訳が広めた1つの体系です。ウェストビーは、近代のヨガの体の理解が、神智学、精神分析、ニューエイジの思想などと深く織り合わされ、西洋の心理学を通したチャクラ像では、チャクラが「詰まる」ことが心の不調と結びつけて語られるようになったことも指摘しています [2]。「第◯チャクラが詰まっている」といった言い方は、この近代の層に属するものと見てよいでしょう。
ハタヨガの中のクンダリーニ ―『ハタヨーガ・プラディーピカー』は何と書いたか
15世紀にスヴァートマーラーマがまとめた『ハタヨーガ・プラディーピカー』は、クンダリーニをハタヨガの中心に据えた古典です。ムドラー(印)を説く第3章は、こう始まります。蛇の王が山や森ごと大地を支えるように、クンダリーニはすべてのヨガの支えである。そして、眠っているクンダリーニが師の恵みによって目覚めるとき、すべての蓮と結び目が貫かれる [3]。英訳者は、この蓮に「6つのチャクラ」と注を付けています。
同じ章の後半には、クンダリーニの別名が並びます。曲がった体のもの(クティラーンギー)、雌の蛇(ブジャンギー)、シャクティ、女主(イーシュヴァリー)などです。鍵で扉を開けるように、行者はクンダリーニを開くことで解脱の扉を開く。クンダリーニは、ブラフマンへ通じる道の穴をふさいで眠っている。球根の上で眠るその力は、行者には解脱を、無知な者には束縛をもたらす。そして、眠っている雌の蛇は尾をつかんで目覚めさせよ、と書かれています [3]。この一連の記述は、シャクティチャーラナ(力を動かす)と呼ばれるムドラーを説く箇所にあり、これは本書が挙げる10のムドラーの1つです [3]。
ハタ(haṭha)という語の意味を調べたジェイソン・バーチは、ハタヨガの文献で「力ずくで」という副詞が使われる数少ない場面の多くが、クンダリーニや下向きの息(アパーナ)、精の滴を上へ動かす場面だと指摘しています。クンダリーニは力ずくでつかまれ、眠りから起こされ、シャクティチャーラナによって力ずくで上ってゆくのです [4]。原初の『ゴーラクシャシャタカ』は、かかとで肛門を押さえる根の締め(ムーラバンダ)で下向きの息(アパーナ)を上へ押し上げ、火と息を合わせると、とぐろを巻いて眠るクンダリーニが熱せられてスシュムナーの口に入ると描いています [1]。
ハトリーは、『ハタヨーガ・プラディーピカー』の影響によって、浄化法、アーサナ、ムドラー、バンダ、瞑想、呼吸法のすべてが、クンダリーニを目覚めさせる手段として見られるようになったと整理しています [1]。いまのヨガのクラスで習うポーズの多くの源流にあたるハタヨガは、少なくとも15世紀以降、この力を目覚めさせるための技法の体系として読まれてきました。
近代のクンダリーニと、ヨギ・バジャンの「クンダリーニヨガ」
植民地時代のインドでは、ハタヨガと、ナート派の行者をはじめとするその担い手は、タントラに関わるものとともに評判を落としました。そうした中で、タントラのヨガに国際的な関心と新しい評価をもたらしたのが、ウッドロフの著作でした [1]。心理学者カール・ユングは1932年にクンダリーニ・ヨガについてのセミナーを開きましたが、ハトリーによれば、ユングのクンダリーニはタントラのシャクティとはぼんやり似ているだけで、彼はそれを自分の心理学の概念に重ね、ヨガの実際の技法にはほとんど関心を示しませんでした [1]。カシミールの公務員ゴーピ・クリシュナ(1903〜1984年)は、自らが体験した苛烈な神秘体験をクンダリーニのせいだとする自伝を書き、それを生物学的な仕組みとして理解しようとしました [1]。
1960年代からは、タントラやハタヨガに着想を得たクンダリーニのヨガを教えるインドの師たちが、国際的な支持者を集めます。ハトリーがその最初に名を挙げるのが、ハルバジャン・シン・ヨギ、つまりヨギ・バジャンです [1]。
ヨギ・バジャンと3HO
ヨギ・バジャンは、1929年8月26日、いまのパキスタンにあたる地域で、ハルバジャン・シン・プリとして生まれたシク教徒です。1968年9月にインドからカナダ(トロント)に渡り、1969〜70年にロサンゼルスに落ち着いて、YMCAなどでヨガを教え始めました。弟子たちとともに「ヘルシー・ハッピー・ホーリー・オーガニゼーション(3HO)」を設立し、1972年にはヨガの効果の研究と指導書の出版のためにクンダリーニ研究所(KRI)をつくっています。2004年に心不全で亡くなりました [5]。
このヨガは、どこから来たのか。宗教史の研究者フィリップ・デスリップは、2012年の論文で、ヨギ・バジャンのクンダリーニヨガは、少なくとも初期には独立した練習法ではなかったと論じています。ヨガの師スワーミー・ディーレーンドラ・ブラフマチャーリーから学んだヨガの技法に、宗教指導者マハーラージ・ヴィルサー・シンから得た「イク・オンカール」「サット・ナーム」「シュリー・ワーヘグル」といったシク教由来のマントラと詠唱を組み合わせたもの、というのがデスリップの見立てです [6]。クンダリーニヨガで唱えられるマントラには、サンスクリット語ではなく、シク教の言葉に由来するものが含まれています。
ですから、「クンダリーニヨガ」という言葉には、少なくとも2つの意味があります。1つは、タントラとハタヨガの文献に書かれた、クンダリーニを目覚めさせるための技法の体系。もう1つは、1969年以降に米国で始まった、ヨギ・バジャンの教えにもとづく特定の様式です。ヨギ・バジャンは、欧米にクンダリーニヨガを持ち込んだ人物として最もよく知られており [8]、いま「クンダリーニヨガ」と書かれたクラスの多くは、後者の流れにあります。
クンダリーニヨガのクラスでは何をするのか?呼吸法・クリヤ・マントラ
ヨギ・バジャンの教えを伝える団体3HOは、クンダリーニヨガを「気づきのヨガ」と呼び、ポーズ、呼吸、瞑想、マントラ、音楽を含む総合的な練習だと説明しています [7]。同団体の説明によれば、1回のクラスはおおよそ次のように進みます。
まず、「オング・ナモー・グル・デーヴ・ナモー」というマントラを唱えて始めます(チューニング・イン)。次に、体を温める動きを含む呼吸法(プラーナーヤーマ)を行います。中心になるのはクリヤ(kriya)で、3HOはこれを「意識的な呼吸とともに行う、決まった順序のエクササイズと姿勢」と定義しています。その後、仰向けになって休むリラクゼーションがあり、マントラ、手の印(ムドラー)、目の焦点を使って心を静める瞑想に移ります。最後に「May the Long Time Sun」という歌でクラスを閉じます [7]。
呼吸法の中でよく知られているのが、「火の呼吸(ブレス・オブ・ファイア)」と呼ばれる力強い呼吸です。3HOはこれが神経系と内分泌系を強くすると説明していますが、これは団体の説明であり、この記事で確かめた医学の資料には、それを裏づける記述は見当たりません [7]。服装について3HOは、自然素材や明るい色を好む実践者が多いとしつつ、いちばん大切なのは楽でいられることだと答えています [7]。
古典との違いもはっきりしています。『ハタヨーガ・プラディーピカー』は、保息(息を止める技法)と10のムドラー、浄化法を中心に、師から弟子へ秘密に伝える前提で書かれていました [3]。現代のクンダリーニヨガは、グループで決まった順序の動きを行い、マントラを声に出して唱え、音楽を使います。同じ「クンダリーニ」の名を持っていても、練習の形は別のものと考えたほうが正確です。
創始者をめぐる2020年の調査報告
ヨギ・バジャンの元秘書パメラ・サハラ・ダイソンは、2019年に回想録『Premka: White Bird in a Golden Cage』を出し、彼が自分やほかのスタッフに性的な関係を強要したと訴えました。これをきっかけに、元会員らの告発が相次ぎます。3HOを含む関連団体を束ねるシリ・シン・サーヒブ・コーポレーションは、2020年3月、宗教団体の倫理上の問題への対応を専門とする米国のコンサルタント、アン・オリーブ・ブランチに、第三者としての調査を依頼しました。報告書は2020年8月10日付でまとめられ、同月に公表されています [5] [8] [18]。
報告書は、民事の裁判で使われる「証拠の優越」(すべての証拠からみて50%を超える見込みがあるか)という基準で検討し、ヨギ・バジャンが性的暴行(sexual battery)やその他の性的虐待(未成年にポルノを見せたことを含む)、セクシュアル・ハラスメント、倫理に反する行為をはたらいた可能性のほうが高い(more likely than not)と判断しました [18]。2020年3〜5月に調査とやり取りをしたのは299人で、うち96人が聞き取りに応じ、129人が書面を寄せました。被害を申し出たのは36人で、調査はヨギ・バジャンを擁護する人たちの話も聞いています [18]。一方で、調査の対象は性的な不正とそれに関わる行為に限られ、財産の搾取やインドの寄宿学校での虐待の訴えなどは含まれていません [8]。加害を訴える人の中には、自分たちが加害者とみなす組織が依頼した調査には加わらないことを選んだ人も多かったと報じられています [8]。本人が2004年に亡くなった後の調査であり、これは裁判の判決ではなく、第三者による調査の判断です。
クンダリーニヨガの効果について、研究で分かっていることは?
クンダリーニヨガの効果を、確立した治療と直接比べた臨床試験に、2020年に米国の医学誌『JAMA Psychiatry』に発表されたものがあります(掲載号は2021年)。全般性不安症(全般性不安障害)の成人226人を、クンダリーニヨガ、認知行動療法、ストレスについての学習(比較のための対照)の3つのグループに無作為に分け、それぞれ2時間の少人数のセッションを12回行いました [9] [10]。クンダリーニヨガのセッションには、ポーズ、呼吸法、リラクゼーション、瞑想が含まれていました [10]。
12週の時点で治療に反応した人の割合は、クンダリーニヨガが54%、認知行動療法が71%、対照が33%でした。6か月後は、それぞれ63%、77%、48%で、この時点ではヨガと対照の差は統計的に意味のあるものではありませんでした [10]。研究者は、クンダリーニヨガは全般性不安症に効果があったが、第一に選ぶ治療は引き続き認知行動療法である、と結論しています [9]。厚生労働省の「統合医療」情報発信サイト(eJIM)も、この研究を「クンダリーニヨガは症状を改善しましたが、…認知行動療法よりも有用性が低いことがわかりました」と紹介しています [11]。なお、著者の1人は、ヨギ・バジャンの系統のクンダリーニヨガの実践者で認定指導者であり、クンダリーニ研究所から研究費などを受けていたことを、利益相反として開示しています [9]。
この結果から言えるのは、「クンダリーニヨガで不安が消える」ではありません。「役に立つが、確立した治療ほどではない」です。研究の数そのものも、まだ多くはありません。
クンダリーニヨガに危険性はある?「クンダリーニ症候群」は医学的にどう扱われているか
「クンダリーニ覚醒」や「クンダリーニ症候群」という言葉は、インターネットでよく見かけます。医学の文献で確かめられる範囲を、順に見てみます。
「身体的クンダリーニ症候群(physio-kundalini syndrome)」という言葉を使った研究に、米国の精神科医ブルース・グレイソンの仕事があります。グレイソンは1993年の研究で、臨死体験をした人たちが、比べる対照の人たちよりも、この症候群に当たる症状を有意に多く申告したと報告しました [12]。この「症候群」は研究のための呼び名であり、診断の基準ではありません。
精神科の現場からの報告は、主に少数の症例報告です。1995年のデンマークの報告は、統合失調症と診断されていたが、実際には東洋の伝統が「クンダリーニの上昇」と呼ぶ霊的な危機にあったと著者が考えた2人の患者を紹介し、世界保健機関の国際疾病分類(ICD-10)の分類の中での扱い方を論じています [13]。2022年のインドの症例報告は、クンダリーニの覚醒をめぐる体験が精神病として現れることがあるが、文献は症例報告に限られていると書いています。この報告の患者は、ICD-10の基準で統合失調症と診断されました [14]。どちらも1件や2件の症例から考えたもので、ヨガが精神の病気を引き起こすかどうかを示すものではありません。
もう少し広い証拠としては、瞑想全般の有害事象を調べた2020年の系統的レビューがあります。83件の研究、6,703人を分析したところ、瞑想の最中や後の有害事象は全体で8.3%に見られ、多かったのは不安、抑うつ、認知の異常でした。著者らは、こうした有害事象は珍しくなく、心の病気の経験がない人にも起こりうると結論しています [15]。研究の種類によって数字の差が大きく(実験的な研究では3.7%、観察研究では33.2%)、ヨガのポーズを除いた瞑想の研究であることにも注意が要りますが、「瞑想は誰にでも害がない」とは言えないことが分かります。
まとめると、この記事で確かめた医学の文献では、「クンダリーニ症候群」は独立した病名としてではなく、研究のための呼び名として使われるか、既存の診断の枠組みの中で扱われています。ただ、瞑想の最中や後に、強い不安や落ち込み、認知の異常といった状態が起こることは実際にありえます [15]。そうしたときは、練習を止めて、精神科や心療内科の医師に相談してください。神秘的な体験として片づけず、医療につなぐことが大切です。
はじめて試すときに
米国の国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、ヨガは正しく行えば健康な人にとって一般に安全な運動だとしています。いちばん多いけがは捻挫や筋を痛めることで、妊娠中の人、高齢の人、持病のある人は、始める前にかかりつけの医師に相談するよう勧めています [16]。eJIMの訳では、初めての人は、逆立ちや肩立ち、蓮華座と並んで、「勢いのある強い呼吸法」のような極端な実践を避けるよう書かれています [11]。クラスで火の呼吸のような速く強い呼吸が出てきても、初めのうちは無理に合わせず、気分が悪くなったり、めまいを感じたりしたら、すぐに普通の呼吸に戻しましょう。
精神科の病気で治療中の人、過去に強い不安発作や精神病の症状があった人は、長い瞑想や強い呼吸法を含むクラスを始める前に、主治医に相談してください。温めた部屋で行うホットヨガには、体温の上がりすぎと脱水のリスクがあり、妊娠中は避けるべきだとされています [16]。水分をこまめにとり、気分が悪くなったら無理をせず休んでください。病気の治療を後回しにするためにヨガを使ってはいけない、というのも公的機関の助言です [11]。
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よくある質問
クンダリーニとは何ですか?
クンダリーニとは、サンスクリット語で「とぐろを巻いたもの」を意味し、インドのタントラとハタヨガの文献で、背骨の根もとに蛇のように眠り、目覚めると体の中心の管を上って頭頂に至るとされる女神の力(シャクティ)のことです。6〜8世紀ごろのシヴァ派のタントラに現れた考え方です。
クンダリーニとクンダリニーは違うものですか?
同じものです。サンスクリット語の kuṇḍalinī をカタカナにするときの書き方の違いで、原語の発音に近いのは語末を伸ばす「クンダリニー」です。日本語では「クンダリーニ」の表記もよく使われます。
クンダリーニヨガとは何ですか?
いま一般にクンダリーニヨガと呼ばれるのは、シク教徒のヨギ・バジャンが1968年に北米に渡ってから広めた様式で、呼吸法、クリヤと呼ばれる決まった順序の動き、マントラ、瞑想を組み合わせます。タントラやハタヨガの文献にあるクンダリーニを目覚めさせる技法とは、成り立ちが別です。
クンダリーニとチャクラはどう関係していますか?
クンダリーニは、根のチャクラ(ムーラーダーラ)に眠り、目覚めると体の中心の管を通ってチャクラを順に貫き、頭頂のサハスラーラに至るとされます。チャクラの数は文献によって違い、12世紀以降は6つとされるのが一般的で、頭頂を加えて7つとする体系が近代に広まりました。
クンダリーニ覚醒とは何ですか?
クンダリーニ覚醒とは、伝統的な教えで、眠っていたクンダリーニが目覚めて体の中を上り、神秘的な体験や解脱をもたらすとされる出来事のことです。医学的に確かめられた現象ではなく、この記事で確かめた医学の文献は、少数の症例報告や、症状の申告を比べた調査です。
クンダリーニヨガに危険性はありますか?
ヨガ全般は、正しく行えば健康な人にとって一般に安全な運動とされていますが、瞑想を調べた系統的レビューでは、不安や抑うつなどの有害事象が全体で約8%に報告されています(研究の種類により約4〜33%)。初めての人は強く速い呼吸法を避け、精神科の病気で治療中の人は事前に主治医に相談してください。
クンダリーニヨガのやり方は?
クラスは一般に、マントラを唱えて始め、呼吸法、クリヤ、休息、瞑想の順に進みます。火の呼吸のような強い呼吸法を含むことがあるため、本や動画で独学するより、指導者のいるクラスで少しずつ始めるほうが安全です。
出典
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- Jason Birch “The Meaning of haṭha in Early Haṭhayoga”, Journal of the American Oriental Society 131(4), pp. 527–554(2011) https://www.themathesontrust.org/papers/hinduism/Birch-Meaning_of_hatha_in_Early_Hathayoga.pdf
- Constance Elsberg “Healthy, Happy, Holy (3HO)”, World Religions and Spirituality Project(2021) https://wrldrels.org/?p=19043
- Wikipedia “Kundalini yoga”(Philip Deslippe “From Maharaj to Mahan Tantric: The Construction of Yogi Bhajan’s Kundalini Yoga”, Sikh Formations 8(3), 2012 を引く) https://en.wikipedia.org/wiki/Kundalini_yoga
- 3HO Foundation “What is Kundalini Yoga?” https://www.3ho.org/what-is-kundalini-yoga/
- Religion News Service “Yogi Bhajan, yoga guru and founder of 3HO, ‘more likely than not’ sexually abused followers, says report”(2020年8月18日) https://religionnews.com/2020/08/18/yogi-bhajan-yoga-guru-and-founder-of-3ho-more-likely-than-not-sexually-abused-followers-says-report/
- Simon NM ほか “Efficacy of Yoga vs Cognitive Behavioral Therapy vs Stress Education for the Treatment of Generalized Anxiety Disorder: A Randomized Clinical Trial”, JAMA Psychiatry 78(1), pp. 13–20(2021) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32805013/
- 米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)”Kundalini Yoga Is Helpful for Adults With Generalized Anxiety Disorder, but Not as Effective as Cognitive Behavioral Therapy”(2020年8月12日) https://www.nccih.nih.gov/research/research-results/kundalini-yoga-is-helpful-for-adults-with-generalized-anxiety-disorder-but-not-as-effective-as-cognitive-behavioral-therapy
- 厚生労働省「統合医療」情報発信サイト(eJIM)「ヨガ(Yoga)」(NCCIH の資料の翻訳・2025年3月更新) https://www.ejim.mhlw.go.jp/public/overseas/c02/13.html
- Greyson B. “Near-death experiences and the physio-kundalini syndrome”, Journal of Religion and Health 32(4), pp. 277–290(1993) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24271550/
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- Sharma M, Dhankar M, Kumar D. “Awakening of Kundalini Chakras Presenting as Psychosis—A Case Report”, Indian Journal of Psychological Medicine 44(5), pp. 526–528(2022) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9460011/
- Farias M ほか “Adverse events in meditation practices and meditation-based therapies: a systematic review”, Acta Psychiatrica Scandinavica 142(5), pp. 374–393(2020) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32820538/
- 米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)”Yoga: What You Need To Know”(2026年10月現在は “Yoga: Effectiveness and Safety”(2023年8月更新)の頁へ転送) https://www.nccih.nih.gov/health/yoga-what-you-need-to-know
- Open Library(図書館目録の書誌)”The serpent power”(Arthur Avalon, London: Luzac & Co., 1919) https://openlibrary.org/books/OL18552948M
- An Olive Branch Associates “An Investigation into Allegations of Yogi Bhajan’s Sexual Misconduct”(2020年8月10日・Siri Singh Sahib Corporation の前書きつき) https://wrldrels.org/wp-content/uploads/2025/10/Olive-Branch-Yogi-Bhajan-Investigation.pdf
この記事の情報は2026年10月時点のものです。
以前の解説(旧版・根拠を確かめていない記述を含みます。いまの説明は上の本文です)
クンダリーニヨガ (Kundalini Yoga) について
1. クンダリーニヨガの概要
クンダリーニヨガは、サンスクリット語で「クンダリーニ(Kundalini)」と呼ばれる潜在的な霊的エネルギーを覚醒・活性化させることを目的としたヨガの流派です。現代的なクンダリーニヨガは、主にヨギ・バジャン(Yogi Bhajan, 1929-2004)によって西洋に紹介・普及されました。彼は1968年頃にアメリカに渡り、従来は秘伝とされていたクンダリーニ覚醒の技術を一般の人々にも開放し、健康や精神性の向上に役立てるための実践法を体系化したといわれています。
他のヨガの流派と比較しても、クンダリーニヨガは「マントラ(真言)の唱和」「プラーナーヤーマ(呼吸法)」「クリヤ(Kriya)と呼ばれる動的なエクササイズ」「瞑想」などを組み合わせる点が特徴的です。さらに白いターバンや白い衣服を身につけた指導者・実践者のイメージがあり、精神的・スピリチュアルな側面を強く打ち出していることで広く知られています。
2. クンダリーニとは何か
「クンダリーニ」とは、サンスクリット語で「とぐろを巻いたもの」を意味します。インドの伝統的なタントラ哲学やヨガ哲学では、人体には主要な7つのエネルギーセンター(チャクラ)が存在すると考えられ、クンダリーニは第一チャクラ(ムーラダーラチャクラ)付近、つまり尾骨のあたりに眠っている潜在的なエネルギーであると説明されます。
このクンダリーニが覚醒し、脊柱を通って頭頂部(サハスラーラチャクラ)に至るまでのプロセスにより、人は深い悟りや宇宙意識との合一感、霊的な覚醒などを得られると伝えられてきました。伝統的には非常に高度な修行者だけがクンダリーニの覚醒を目指せるとされていましたが、ヨギ・バジャンは一般の人々にもクンダリーニの恩恵を得られる道を示した、とされています。
3. クンダリーニヨガの特徴
3-1. マントラ(音の振動)を重視する
クンダリーニヨガでは、さまざまなマントラを唱えたり、音楽やチャンティングを行う場面が多くあります。マントラはサンスクリット語の神聖な音の組み合わせとされ、その振動や響きが身体や意識に直接的な影響を及ぼすと考えられています。代表的なマントラとしてはクラスの開始時に唱える「オング・ナモー・グル・デヴ・ナモー」や、瞑想に用いられる「サット・ナーム」などが有名です。
「オング・ナモー・グル・デヴ・ナモー」
クンダリーニヨガのセッション冒頭で唱えられることが多いマントラ。宇宙的叡智への帰依と導きを求める意図が込められています。「サット・ナーム」
「真理(サット)が私のアイデンティティ(ナーム)」という意味を持ち、クンダリーニヨガの練習全般を通じて頻繁に使われる基本のマントラです。
マントラを使うことで呼吸のリズムをコントロールしやすくなったり、意識が内側に集中しやすくなったりする効果が期待されます。
3-2. クリヤ(Kriya)と呼ばれる動的エクササイズ
クンダリーニヨガのクラスでは「クリヤ(Kriya)」と呼ばれる一連の動作を組み合わせたプログラムが行われます。クリヤという言葉自体は「行為」や「浄化法」を意味し、複数のポーズや動き、呼吸法、マントラが特定の目的のためにセットになったものを指します。
たとえば、「消化を助けるクリヤ」や「心を落ち着かせるクリヤ」「エネルギーを高めるクリヤ」といった具合に、さまざまなテーマをもつクリヤが体系化されており、インストラクターはその日の目的や参加者の状態に合わせて適切なクリヤを選択しリードしていきます。クリヤは比較的ダイナミックな動きが多く、他の伝統的なヨガのアーサナ(ポーズ)とはかなり異なる印象を受ける場合があります。
3-3. 独特の呼吸法(プラーナーヤーマ)の重要性
クンダリーニヨガで多用される呼吸法としては、「火の呼吸(Breath of Fire)」や「片鼻呼吸(Nadi Shodhanaのバリエーション)」、「セグメントブレス(Segmented Breathing)」などが挙げられます。中でも火の呼吸は非常に特徴的で、短い呼吸を高速で繰り返すことによって横隔膜をリズミカルに動かし、体内のエネルギーを活性化する技法です。
火の呼吸(Breath of Fire)
鼻から一定のリズムで吸ったり吐いたりを繰り返すことで、腹部を素早く膨らませたりへこませたりしながら呼吸を行います。慣れないうちは頭がクラクラしたり、呼吸が苦しく感じたりする場合がありますが、徐々に慣れると身体が温まり、体幹の筋力が高まるとともに集中力が増すとされています。
クンダリーニヨガにおいて呼吸法は非常に重要な要素であり、呼吸を通じて内的エネルギーをコントロールし、クンダリーニの覚醒に近づくことが狙いとなっています。
3-4. 白い衣服・ターバンの着用
クンダリーニヨガの指導者や実践者が白い服やターバンを着用している場面を目にすることがあるかもしれません。これはヨギ・バジャンの思想とシーク教(Sikhism)の文化的背景によるものであり、「白という色が精神と身体を最も落ち着かせ、オーラを拡張するのに有効である」という考え方に基づくとされています。ターバンに関しては、頭部を覆うことで精神を集中させ、エネルギーを保持・安定させるという意味合いがありますが、必ずしもすべてのクンダリーニヨガのクラスで厳守されるわけではなく、選択的に取り入れる人も多いです。
4. クンダリーニヨガの効果
クンダリーニヨガの実践によって得られるとされる効果は多岐にわたります。一般的によく言及されるものをいくつか挙げてみましょう。
ストレス軽減と精神的安定
マントラやクリヤ、呼吸法を組み合わせて練習することで、交感神経と副交感神経のバランスが整いやすくなり、深いリラクゼーションやストレス解消が期待できます。瞑想状態に入りやすいと報告する人も多く、日常生活の中での心の落ち着きや集中力アップに繋がります。エネルギーレベルの活性化・解放
火の呼吸をはじめとするダイナミックな呼吸法やクリヤを続けることで、身体が温まり、エネルギーレベルが高まる感覚を得やすくなります。一部の実践者は「体が軽くなる」「心がすっきりと目覚める」といった変化を感じるとされています。脊柱や神経系の活性化
クンダリーニが脊柱を上昇するというイメージは、神経系の活性化と関連づけられます。クンダリーニヨガの練習では背骨周りの柔軟性を高める動作も多く、結果的に姿勢改善や血行促進につながる場合があります。感情の浄化・自己探求
マントラの振動や瞑想的要素が強いことから、内面的な気づきや感情の解放が促されることがあります。涙が出たり、過去のトラウマが意識に上がってきたりすることもあり、適切に受け止めながら自己理解を深めるプロセスを経ることが多いといわれます。スピリチュアルな成長
クンダリーニヨガの最終的な目的は、クンダリーニエネルギーの覚醒による高次の意識状態への到達です。日々の生活を営むうえで、そこまで深遠な目的を目指すかは人それぞれですが、継続的な実践を通じて人生観や価値観にポジティブな変化を感じる人も少なくありません。
5. クンダリーニヨガの注意点
クンダリーニヨガは非常にパワフルなエネルギーワークを含んでいるため、他のヨガスタイル以上に下記の点に注意が必要です。
初心者は無理をしないこと
火の呼吸や特定のクリヤは、慣れないうちは身体的にも精神的にも大きな負担になることがあります。頭痛やめまいなどの症状が出ることもあるため、徐々にペースを上げることが大切です。特に呼吸を速く行う際は過換気にならないよう注意しましょう。信頼できるインストラクターの指導を受ける
クンダリーニヨガのクラスを探す際には、正式なトレーニングを修了した認定指導者(KRI認定など)のもとで練習するのが望ましいです。安全面や練習方法の正確さだけでなく、哲学的背景や瞑想法のサポートも適切に提供してもらえます。過度な神秘主義への傾倒に注意
クンダリーニヨガは、スピリチュアルな要素が強い分、指導者やコミュニティによっては極端に神秘主義的な解釈や宗教色の強いアプローチが行われる場合もあります。自分の価値観や心地よさを大切にしながら、バランスの取れた視点で学ぶことが重要です。既往症がある場合の注意
心臓疾患や高血圧、重度の精神疾患などがある場合は、事前に医療従事者やヨガの指導者に相談する必要があります。パワフルな呼吸法や激しい動作がコンディションに与える影響を考慮し、必要に応じてアレンジや制限を設けることが求められます。
6. クンダリーニヨガの現代的意義
クンダリーニヨガは、ヨギ・バジャンによって西洋に紹介されて以来、アメリカを中心に多くの信奉者を獲得し、現在では世界中に広まっています。特にストレス社会とも言われる現代において、マインドフルネスやスピリチュアルな成長を求める人が増えていることから、精神面と身体面を包括的に刺激するクンダリーニヨガは大きな魅力を持って受け入れられているのです。
また、芸能人や著名人の中にもクンダリーニヨガの実践者が多く、SNSなどを通じてアピールされるケースも目立ちます。マントラやクリヤの独特な世界観が「他のヨガとは違う」と感じさせ、そこに新鮮味や興味を覚える人が少なくありません。一方で、瞑想や呼吸法を取り入れた総合的なアプローチは、現代医療や心理療法の分野でも一定の注目を集めており、研究が進められている例も見受けられます。
7. まとめ
クンダリーニヨガは、人間の潜在的な霊的エネルギーである「クンダリーニ」の覚醒を目指し、マントラ・呼吸法・クリヤ・瞑想といった多彩な要素を組み合わせるヨガの流派です。ヨギ・バジャンが西洋へ持ち込み、多くの実践者に恩恵をもたらしたことで、現在では世界的に広く知られるようになりました。
ダイナミックな動きや速い呼吸法を特徴とし、スピリチュアルな色彩が強いことから、他のヨガと比べるとやや独特に感じられるかもしれません。しかし、そのパワフルなアプローチゆえに、短期間で心身の大きな変化を体感する人も少なくないのがクンダリーニヨガの魅力です。ストレス軽減やエネルギー向上、さらには深い自己探求を望む人にとって、大きな可能性を秘めたプラクティスと言えるでしょう。
一方で、高いエネルギーを扱う分だけ注意点もあります。過度な無理をせず、信頼できるインストラクターのもとで徐々に慣れていくことが安全かつ効果的です。また、スピリチュアルな世界観に対する抵抗がある場合は、身体面のメリットやリラクゼーション効果を中心に取り入れるなど、自分のニーズに合わせて柔軟に向き合うことが大切です。
クンダリーニヨガは、単なるフィットネスではなく、深い内面の変容や精神的な目覚めへの道をも示唆する総合的な修行システムでもあります。日常生活の中で自分自身とつながる時間を持ちたい人や、身体だけでなく心のレベルでも真の調和を求める人にとって、有力な選択肢の一つとして検討する価値のあるヨガスタイルだと言えるでしょう。
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| 【監修者】 | 宮川涼 |
| プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |






