代謝が悪いかは数値で分かる?予測式との差を体質の判定にする前に読む研究

代謝が悪いか確認したくても、計算式より低い数値だけで体質は決められない。安静時の消費を予測する式と実測の違い、平均誤差と個人のずれ、対象者によって変わる式の成績を論文から読む。数字を食事制限や運動の成績表にせず、測定結果を相談するときに確かめたい点を整理する。

同じ身長と体重を入れたのに、計算する式が違うと代謝の数字も違う。どちらが自分の答えなのだろう。そのあと測定を受けて計算より低い値が出たら、「私は代謝が悪い」と受け取りたくなる。しかし、その差には体の側だけでなく、予測する式の側の問題も含まれる。競技者を対象にした系統的レビューでも、どの式を使うかで実測との一致は大きく違っていた。競技者の成績を、競技生活を送っていない18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには対象が異なる。[2]

答えの芯は、予測値との差を、そのまま体質の判定にしないことである。重度の肥満がある成人を調べた検証研究では、平均では実測と大きく違わない式にも、消費量が両端にある人で系統的なずれが見つかった。集団をうまく表す式と、自分にぴったり合う式は同じ意味ではない。重度の肥満がある成人の結果から、18〜39歳の女性全体の予測精度は決められない。[15]

既存記事「基礎代謝の計算式はどれだけ当たるのか 平均の正しさと自分の誤差を論文で読む」には式の精度そのものを、「代謝は年齢で落ちるのか 筋肉だけでは説明できない消費エネルギーの変わり方」には年齢変化を譲る。ここでは、表示された低めの数字を自分の評価に変える前に、何を確認するかに問いを絞る。

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予測値は、体を直接測った答えではない

研究で扱われる安静時代謝量は、安静時に消費するエネルギーの値である。競技者のレビューでは、間接熱量測定という方法で測った安静時代謝量と、予測式で求めた値を比較している。計算と測定は別の経路で得られた数字であり、その一致を調べるのが予測式の検証である。[2]

たとえばテヘランの成人を対象にした研究では、年齢、性別、身長、体重などを使って予測式を作り、間接熱量測定の値と比べた。入力欄を埋めれば表示される数字は、こうした変数から推定された値に当たる。自分の情報を使っているからといって、その場で自分の安静時消費を測ったことにはならない。[16]

ここで区別したいのは、予測値が低いことと、実測値が予測値より低いことである。前者は式に入れた条件から低めの推定が出たという話であり、後者は測定と推定の差の話になる。研究はその差を使って式の性能を調べている。読者が同じ差を見てすぐ自分の体の良し悪しを決めると、評価する対象が式から体へすり替わる。[2,16]

立川駅北口の夕方、電車を待ちながら開いた画面では、数字の出どころまで見えないことがある。最初に探したいのは大小の印象より、「予測」「推定」「測定」のどれなのかという説明である。数値だけをメモするより、どんな情報から出した値なのかを一緒に残すと、後で相談するときの問いが具体的になる。これは予測式と実測を分けて検証する研究の読み方を、日常の画面に持ち込む工夫である。[2,16]

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平均のずれが小さくても、個人の判定は別になる

テヘランの研究は、成人の横断研究のデータを使った検証である。対象は18〜60歳の284人で、女性は158人だった。新しく作った式と既存の複数の式では、集団としての平均誤差が−2.2〜2.4%の範囲だった。一方、個人について成績のよかった式でも、研究での正確な予測の割合は50〜53%だった。男女と幅広い年齢を含む集団の成績であり、18〜39歳の女性だけの成績としては使えない。[16]

平均の誤差が小さい、という説明だけを聞くと、自分の結果もほぼ合うと感じやすい。しかし、この研究では集団での良好な成績と個人での成績を分けている。平均を見る評価と、各人について当たったかを見る評価は、違う問いに答えている。前者の結果だけでは、後者まで保証できない。[16]

別の集団でも似た問題がある。重度の肥満がある女性632人、男性148人を対象に、既存の11種類の式を比べた検証研究では、全ての下位集団で平均に有意な偏りがないとされたのは、体重を使うLazzer A式とHorie-Waitzberg式だった。それでも実測の両端では系統的なずれが見られ、実測の10%以内に収まる人の割合は、どの式でも67.8%を超えなかった。18〜39歳の女性へ当てはめる際には、性別だけでなく重度の肥満という対象条件も照合する必要がある。[15]

つまり、「平均ではよく合う」と「どんな消費量の人にも同じように合う」も別である。研究者は平均差だけでなく、実測が低い側や高い側で誤差がどう動くかも調べていた。低めの実測値を受け取った人にとっては、自分がどの位置にいるかで予測のずれ方が変わりうる点が大切になる。[15]

ここから「計算式は役に立たない」と飛躍する必要はない。研究が示すのは、平均の成績がよいという紹介文だけでは、個人の差を説明し切れないということである。自分の実測値が予測を下回った場面では、まずその式の個人単位での成績を聞く余地がある。体への評価を急ぐ前に、道具への質問が残っている。[15,16]

よく当たる式にも、個人のずれは残る

成人競技者の系統的レビューとメタ分析には、29研究、計1430人が含まれ、女性822人、男性608人だった。研究で使われた安静時代謝の予測式は100種類に及ぶ。複数の競技や競技水準を含む比較であり、競技生活を送る集団での比較である。18〜39歳の女性でも、日常の運動習慣が異なれば、この成績をそのまま自分の精度とみなせない。[2]

このレビューは、平均予測値が実測値にどれほど近いかという評価と、実測の±10%以内に入る人がどれほどいるかという評価を分けた。後者のメタ分析で最もよい成績だったTen-Haaf式は80.2%で、ほかの式は40.7〜63.7%だった。優秀な式を選ぶ意味はあるが、最もよい式にも範囲外の人がいた。[2]

平均予測値と実測値に有意差がなかった式も複数あった。ただし研究間のばらつきや、性別、競技者としての状態、測定前の絶食状態、測定方法などによる違いも検討されている。レビューの結論は、特定の式があらゆる場面で必ず優れるというものではなく、特徴が似た集団を基にした式を選ぶのが望ましいという内容だった。[2]

ここで「±10%」は、レビューが式の性能を比較するために使った幅である。それを、幅の外なら不健康、内なら問題なしという個人の健康基準に読み替えないことが肝心だ。式の当たり方を分類する線を、自分の体に合否を付ける線として使うと、研究の目的から離れてしまう。[2]

また、このレビューは、実測を予測で割った比率を、エネルギー利用可能性の代わりとして単回の測定から解釈することにも注意を求めている。ここでは、運動する人のエネルギーの状態を捉える指標として検討されている。少なくともこの結果は、比率だけで日々の食事や体調の判断を完結させる読み方を支えていない。[2]

画面の小数点は、迷いなく並ぶ。しかし、表示が細かいことと、個人への予測が細かく当たることは別である。競技者の研究でさえ式の成績が違う以上、一般の読者が競技者向けの最良の式を見つけたからといって、それだけで自分に最も合うと決めることはできない。[2]

実測と予測の比率を見るとき、分母に置く予測値も式によって変わる。同じ測定結果であっても、比較する式を変更すれば比率の意味を見直す必要がある。競技者のレビューで式ごとの過大評価や過小評価が見つかったことは、比率を読む前に式の選択を確認する理由になる。低い比率という表示だけを切り取ると、その背景にある予測の違いが見えなくなる。[2]

さらに、成人の検証研究で、全員の結果をまとめた成績だけでなく、性別や肥満度の下位集団まで比較した点にも注目したい。全体に適する式を探す問いと、条件の近い人に適する式を探す問いは、重なりながらも同じではない。重度の肥満がある成人の研究で、下位集団の全てに最良の式がなかったという結果は、この違いを示している。[15]

たとえば相談時に「この式は大勢の人で使われている」と説明されたら、それで話を閉じず、自分に近い条件での確認について聞いてよい。広く使われていることと、その場の対象に合うことを分ける姿勢である。研究の人数をただ安心材料にするより、どの集団で、何をもって一致としたかまで聞くほうが、受け取った数値の位置づけを理解しやすい。[2,15]

数字で読む予測式と個人のずれ

29研究・1430人:成人競技者の予測式を比較した系統的レビューの規模である。[2]

80.2%:同レビューで、Ten-Haaf式の予測が実測の±10%以内だった人の割合である。[2]

50〜53%:テヘランの成人研究で、個人単位で成績がよかった式の正確な予測の割合である。[16]

67.8%:重度の肥満がある成人の研究で、実測の10%以内に収まる割合はこの値を超えなかった。[15]

59.0%:肥満がある高齢成人の研究で、最も成績がよかったWHO式の正確な予測の割合である。[14]

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