
混んだ仮想の車内では、乗る時間が長く感じられた
混雑が時間の感じ方まで変えることを、仮想現実で確かめた2023年の実験がある[14]。41人が、1〜2分の没入型の仮想の地下鉄に、混み具合を変えて乗った。混むほど乗車の快さは下がり、不快さは増した。そして混むほど、乗っていた時間が長く感じられた[14]。
1平方メートルあたりの乗客が1人増えるごとに、感じる乗車時間は平均1.8秒延びた[14]。混んだ乗車が長く感じた理由は、快と不快の度合いが媒介していた。混雑や感情とは別に、心拍の変化も感じた時間と関係していた[14]。
1.8秒は小さく見える。ただし試験の乗車は1〜2分だった[14]。朝の長い乗車にそのまま掛け算する根拠は、この実験にはない。それでも、混んだ電車がいつもより長く感じる、あの感じに、実験が1つの形を与えたことにはなる。
混み具合の感じ方は、立つ場所でも変わる。2026年の調査は、セルビアのノヴィサドで、混む2本の路線バスの乗客1,318人に車内で尋ねた[4]。混み具合の見積もりを左右したのは、時間帯(ラッシュかどうか)、座席や空間の空き、立っているか座っているか、快適さ、年齢、騒音、混みすぎの感覚、時間の無駄、けがの危険、職業上の立場だった[4]。乗っている時間、におい、安心感、利用の頻度、移動の目的は、統計的に有意な影響を示さなかった[4]。
後ろに立っていた乗客は、前に立っていた乗客より、有意に混んでいると見積もった[4]。快適さの点が低い人ほど、混んでいると見積もる傾向もあった[4]。著者らは、感じる混雑は実際の乗車人数だけでなく、車内の位置と個人の快適さにもよると書く[4]。バスの調査で、電車の車両の中で同じかは分からない。
こちらはバスの調査で、測ったのも混み具合の感じ方であり、ストレスではない[4]。それでも、乗っている時間が見積もりに効かなかった点は、乗る時間の長さより移動の条件を重く見た1976年の結論[1]と向きが似ている。人の数と、立つ場所と、そのときの居心地。私の読みでは、混雑のつらさは時計よりもそちらに引っぱられている。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
車内で試せることを、試験で確かめた
満員電車そのものは、ひとりではほとんど変えられない。変えられるのは、車内で何を見て、何を聞くかくらいである。そこを無作為化試験で試したのが2009年の研究だ[15]。
対象は、20〜25歳の大学生の通勤者120人。4つの群に無作為に分けた。毎日の電車の移動中に携帯電話で物語仕立ての映像を体験する群、映像だけを見る群、音声だけをMP3プレーヤーで聞く群、何もしない対照の群である[15]。物語の群では、不安の点が有意に下がり(p<0.05)、リラックスの度合いが上がった(p<0.001)。ほかの条件では有意な差は見られなかった[15]。
映像だけ、音声だけでは差が出ず、物語として組み立てたものに差が出た。論文の題名は『緑の谷』である。ただ、120人の大学生での1本の試験で、ここから「動画を見れば満員電車が平気になる」とは言えない。
駅の側から試した実験もある。2026年の研究は、地下鉄の通勤者の大人360人を2つに無作為に分けた[13]。一方にはふつうの駅の場面の画像を見せ、もう一方には、自然を思わせる控えめな画像と彩度の低い緑や青緑を表示や壁の面に足した場面の画像を見せた[13]。空間の配置、乗客の数と並び、照明、案内表示、視点、設備はそろえてある[13]。
自然の場面を見た群は、感じる混雑が低く、環境の快適さが高く、その場の気分の良さも高かった[13]。感じる混雑が下がり、それが快適さにつながり、気分の良さにつながる、という順の道筋も有意で、この2つを入れると、画像の条件の直接の効果は有意でなくなった[13]。乗客の数は同じなのに、混んでいる感じが下がったことになる。
著者らは、これは試した視覚の工夫についての証拠で、駅のデザインの改善全般の証拠として読むべきではないと書く[13]。画像を見て答えた実験で、実際のホームに立ったわけでもない。

よくある誤解
「満員電車は戦場よりストレスが大きいと、研究で分かっている」。通勤と兵士や戦闘を直接比べた査読論文は、索引を引いても見当たらなかった。研究が比べてきたのは、混んだ朝と空いた朝[1]、長い通勤と短い通勤[2][7]である。論文が通勤を引き合いに出す相手も、戦場ではなく仕事だった[2]。
「毎日乗っていれば、そのうち慣れる」。東京の8,296人では、混雑への不満が満足度に直接響くのは使い始めの一部の群だけだった。けれど、ストレスと健康を通した道は1年を過ぎても残った[3]。慣れの可能性が示されたのは、一部の道だけだった。
「座れれば平気」。1976年の研究では2回ともほぼ全員に座席があり、それでも混んだ朝はアドレナリンの排出が多かった[1]。座席は、混雑のすべてを打ち消してはくれない。
今日からできること
- 空いた便を選べる日は、週に1日だけでも選ぶ。座れる列車でも、混んだ朝のほうがアドレナリンの排出が多かった[1]
- 始発の駅から乗れる路線なら、その乗り方も候補に入れる。1976年の研究では、始発から乗った群は2回ともアドレナリンとノルアドレナリンの排出が少なかった[1]
- 立つ場所を選べるなら、居心地のよい位置を探す。1,318人のバスの調査では、後ろに立つ人ほど混んでいると見積もった[4]。電車で同じかは分かっていない
- 車内用に、物語のある動画を1本用意しておく。120人の試験で不安が下がったのは物語の群で、映像だけ、音声だけの群では差がなかった[15]
- 通勤が長い人は、睡眠と運動を先に予定に入れる。東京の先生146人では、通勤が長いほど睡眠が短く運動が少なかった[9]
- 「もう慣れた」と感じても、疲れの手当てを後回しにしない。混雑への不満は、1年を過ぎてもストレスと健康を通して満足度を下げていた[3]

混む電車を降りたあとの1時間を、オンザショアで
電車の混み具合は、ひとりでは変えられない。研究で動いたのは、どこに立ち、何を見て、どう過ごすかのほうだった[4][13][15]。変えられるのは、降りたあとの時間の置き方である。
オンザショア立川店は、JR立川駅北口から徒歩1分、東京都立川市曙町2-14-10 エトロワビル3Fにある。試すなら体験レッスン(ヨガ)が税込1,980円で、60分のレッスンにバスタオル2枚、フェイスタオル1枚、ヨガマットのレンタルが入っている(体験の予約)。
レッスンは、溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガのほか、常温のヨガ、ピラティス、女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、パーソナルトレーニングがあり、ヨガだけで25種類以上ある。店は8:00〜23:30で年中無休、夜の遅い回は水曜と金曜の21時開始である。混雑が減るわけではないし、ストレスが消えるとも書かない。週のどこかに、電車の外の1時間を決めておく場所として使ってほしい。
妊娠中の方は溶岩ホットヨガには参加できないが、常温のマタニティヨガがある。医師から運動を止められている方は利用できない。料金と店のトップもあわせて見てほしい。
参考文献
[1] Urban commuting: crowdedness and catecholamine excretion — Lundberg U., 1976, Journal of human stress. DOI: 10.1080/0097840x.1976.9936067
[2] Rail commuting duration and passenger stress — Evans GW, Wener RE., 2006, Health psychology : official journal of the Division of Health Psychology, American Psychological Association. DOI: 10.1037/0278-6133.25.3.408
[3] Do commuters adapt to in-vehicle crowding on trains? — Kumagai J, Wakamatsu M, Managi S., 2021, Transportation. DOI: 10.1007/s11116-020-10133-9
[4] Passenger perception of vehicle occupancy in public transport and factors that shape crowding estimations — Kovačević T, Pitka P, Ivetić J, Dedeić J, Miličić M, Majstorović M., 2026, Scientific reports. DOI: 10.1038/s41598-026-43541-5
[5] Long commuting time, extensive overtime, and sympathodominant state assessed in terms of short-term heart rate variability among male white-collar workers in the Tokyo megalopolis — Kageyama T, Nishikido N, Kobayashi T, Kurokawa Y, Kaneko T, Kabuto M., 1998, Industrial health. DOI: 10.2486/indhealth.36.209
[7] Commuting–a further stress factor for working people: evidence from the European Community. II. An empirical study — Costa G, Pickup L, Di Martino V., 1988, International archives of occupational and environmental health. DOI: 10.1007/bf00405674
[8] The impact of public transport on the health of work commuters: a systematic review — Norgate SH, Cooper-Ryan AM, Lavin S, Stonier C, Cooper CL., 2020, Health psychology review. DOI: 10.1080/17437199.2019.1618723
[9] EFFECTS OF LONG-TIME COMMUTING AND LONG-HOUR WORKING ON LIFESTYLE AND MENTAL HEALTH AMONG SCHOOL TEACHERS IN TOKYO, JAPAN — Nomoto M, Hara A, Kikuchi K., 2015, Journal of human ergology.
[10] Relationships between insomnia, long working hours, and long commuting time among public school teachers in Japan: a nationwide cross-sectional diary study — Hori D, Sasahara S, Oi Y, Doki S, Andrea CS, Takahashi T, Shiraki N, Ikeda T, Ik, 2020, Sleep medicine. DOI: 10.1016/j.sleep.2019.09.017
[13] Nature-inspired visual interventions in metro stations and commuters’ affective well-being: the mediating roles of perceived crowding and environmental comfort — Zhu W, Yu Y., 2026, Frontiers in psychology. DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1901802
[14] Affective experience in a virtual crowd regulates perceived travel time — Sadeghi S, Daziano R, Yoon SY, Anderson AK., 2023, Virtual reality. DOI: 10.1007/s10055-022-00713-8
[15] The green valley: the use of mobile narratives for reducing stress in commuters — Grassi A, Gaggioli A, Riva G., 2009, Cyberpsychology & behavior : the impact of the Internet, multimedia and virtual reality on behavior and society. DOI: 10.1089/cpb.2008.0156
この記事の情報は2026年11月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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