観葉植物の空気清浄効果は本当か、換気に並ぶには床1m²に10〜1000鉢という計算と心の試験

観葉植物の空気清浄効果は本当か。密閉した箱の実験を換気の物差しに直すと、床1平方メートルに10〜1000鉢が要るという計算がある。43研究の幅、手術後の90人や植え替えの24人などストレスの試験も読み、空気の効果と心の効果を分けて確かめる。

一人暮らしの部屋に、空気をきれいにすると聞いて小さな鉢を1つ置いた。その1鉢は、どれくらい働いているのだろうか。

答えの芯を先に書く。植物が室内の空気から揮発性有機化合物(VOC。室内の空気に混じる物質の一群で、ホルムアルデヒドやベンゼンのように発がん性のあるものも含む[3])を取り除く力は、密閉した小さな箱の実験では確かめられている[3][15]。ところが、その結果を空気清浄機と同じ物差しに直した2020年の研究によると、一般的な建物ですでに換気が担っている除去の速さに鉢植えで並ぶには、床1平方メートルあたり10〜1000鉢が要る[15]。この研究の題名は「鉢植えは室内の空気の質を良くしない」である[15]。

心の側には別の話がある。植物のある病室の写真を見た人はストレスの感じ方が低く[1]、植物を置いた病室で手術から回復した患者は収縮期血圧と痛みの評価が低かった[2]。ただし、小さな緑とストレスの19研究を集めた系統的レビューは、19研究すべてをバイアスのリスクが高いと判定している[16]。空気の効果と心の効果は、仕組みも証拠の強さも違う。だから分けて読む。

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実験の箱の中では、植物は確かに吸っていた

2014年の総説は、植物が室内の空気からVOCを取り除く力を調べた研究を見直した[3]。実験室の研究からは、植物による除去が、植物が直接取り込む道と、微生物が分解する間接の道の組み合わせだと示されている[3]。除去の速さは植物の種類、光の強さ、VOCの濃度で変わり、光を強くすると除去が増えたという研究もある[3]。総説は、植物が室内のVOCの量に影響することから、空気の質を良くしながら健康も良くしうる緑の解決策の候補だと位置づける[3]。

具体的な実験を1つ見る。2018年のパイロット研究は、テーブルヤシ(Chamaedorea elegans)の鉢を管理された箱の中に置き、ホルムアルデヒドを1立方メートルあたり0.66〜16.4mgの濃度で、それぞれ48時間ずつ流し込み続けた[4]。植物は入れた濃度に応じて65〜100%を取り除いた[4]。取り除いた分の比は、地上の部分と、鉢の土と根とで2.45対1(71%対29%)で、暗いより明るいほうがよく取り除いた[4]。16.4mgまで上げても、生育に影響が出るほどの濃度ではなかった[4]。ただし処理した植物は、対照の植物と比べて葉緑素、カロテノイド、水分がわずかに減っていた[4]。

著者らの結論ははっきりしている。鉢植えによる室内のVOCの除去は効果的な方法で、家庭や職場で経済的に使える、というものだ[4]。ここまでは植物の側の言い分である。問題は、その箱が部屋ではないことだ。

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1鉢の働きを、空気清浄機の物差しに直す

2020年のCummingsらの研究は、この問題に正面から取り組んだ。鉢植えのVOCの除去は、小さな密閉した箱の中で、何時間から何日もかけて示されてきた[15]。その結果は研究ごとにばらばらの指標で報告され、室内の汚れにどれほど効くかを考えるには、そのまま使えないことが多かった[15]。

そこで著者らは箱の実験の12研究を見直し、196の実験結果を清浄空気供給率(CADR)に直した[15]。CADRは空気清浄機の性能を表す物差しで、1時間あたりの立方メートルで表す。部屋の容積で割れば、室内での減り方の速さとして扱える[15]。

1鉢のCADRは、桁がいくつも違うほどばらついた。中央値は1時間あたり0.023立方メートルだった[15]。リットルに直せば約23リットルになる(単位の換算)。一般的な建物では、外の空気との入れ替わりが1時間に約1回起きていて、それがすでに汚れを外へ運んでいる[15]。鉢植えを合わせてその除去の速さに並ぶには、床1平方メートルあたり10〜1000鉢が要る、というのが計算の結論である[15]。

床が10平方メートルの部屋に当てはめると、単純な掛け算で100〜1万鉢になる(私の計算)。そこまで行くと、部屋というより温室だ。

著者らは、今後の実験は、植物が受け身で室内の空気をきれいにする力、あるいはその力のなさを調べることから焦点を移すべきだとした[15]。移す先は、VOCを取り込む仕組み、別の生物ろ過の技術、植物に囲まれることの生産性と幸福感への利益、植物から出る別の放出物の悪影響である[15]。それらは、室内の重要な過程まで考えた厳密な現場の研究で確かめる必要があると著者らは書く[15]。空気の研究者が、心の研究に話を振っているのが面白い。

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43研究を並べると、取り除く率はマイナス25%から100%

2026年の系統的レビューは、BTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)に絞った[7]。発がん性と呼吸器への悪影響で知られる室内の汚染物質である[7]。3つのデータベースで687本の論文が見つかり、選別を経て43研究が条件を満たした[7]。

取り除く率は研究によって大きく違い、−25%から100%まで広がっていた[7]。下限がマイナスということは、植物を置いても下がらなかった結果まで含む幅だと読める。主な除去の仕組みとしては、植物による除去(82.4%)と微生物による分解(17.5%)が挙げられた[7]。よく調べられた種類はベンジャミン(Ficus benjamina)、ザミオクルカス(Zamioculcas zamiifolia)、アグラオネマ(Aglaonema brevispathum)だった[7]。

著者らの評価は二面ある。室内の植物は空気の質を良くする自然で持続可能で費用対効果の高い方法だとしながら、1鉢あたりの効果の小ささが実用を縛り、意味のある低減には多くの鉢を要する場合が多いと書く[7]。費用、手入れ、規模の課題を挙げ、費用と便益の分析、汚染物質ごとの植物の選び方、1時間・1平方メートルあたりのmgのようなそろった指標を今後の優先に置いた[7]。

2014年の総説も、職場や家庭のような実際の場での研究は少なく、結果もまちまちだと書いていた[3]。箱では吸う。部屋では、換気という大きな相手と比べられる。

二酸化炭素を吸う話は、総説でもまだ数字になっていない

「観葉植物は二酸化炭素を吸ってくれる」という期待もよく聞く。2018年の総説は、室内の植物の役割を光合成、蒸散、心理の効果、浄化の4つの観点で整理し、光合成と蒸散を自然の炭素と酸素の循環を保つ基本の働きとして挙げた[19]。人は時間の80〜90%を屋内で過ごすので、室内の環境は健康にとって大事だ、と総説は書く[19]。

この総説は、室内の植物は汚染物質を減らす効果的な方法として広く研究されてきたと評価する[19]。2020年の計算の研究とは評価が割れている[15]。一方で同じ総説は、室内の植物が室内の環境と人に与える効果はまだ数量化されていない、とも書く[19]。少なくともこの総説からは、何鉢で部屋の二酸化炭素がどれだけ下がるかという数字は引き出せない。

同じ総説は、室内の植物が作業の成績、健康、ストレスの度合いに、間接的で無意識の心理の効果を持つことも示されてきたと書く[19]。空気の話で数字が出にくいぶん、話の重心は心の側へ移る。

数字で読む観葉植物と部屋の空気

  • 0.023立方メートル: 1鉢あたりの清浄空気供給率の中央値(1時間あたり)。12研究の196結果から[15]。
  • 10〜1000鉢: 一般的な建物の換気(1時間に約1回)に並ぶために要る、床1平方メートルあたりの鉢の数[15]。
  • −25%〜100%: BTEXを調べた43研究で報告された、取り除く率の幅[7]。
  • 65〜100%: テーブルヤシが管理された箱でホルムアルデヒドを取り除いた率。48時間ずつ、入れた濃度による[4]。
  • 80〜90%: 人が屋内で過ごす時間の割合として総説が挙げる数字[19]。
  • 19研究: 小さな緑とストレスの系統的レビュー。15研究がストレスの軽減を報告し、すべてバイアスのリスクが高かった[16]。

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宮川涼 Founder

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