色と食欲の関係は論文でどこまで?白い皿より赤と黒の皿で昼食が増えた54人の試験を読む

色と食欲の関係は論文でどこまで確かめられたのか。18〜30歳の女性54人が白・赤・黒の皿で昼食を食べた試験、水の青や木々の緑と味の感じ方の総説、色分けの表示で選ぶ品が変わった2,013人の実験を読み、食べた量と満腹感と選び方を分けて確かめる。

皿の色を変えただけで、昼食が150kcalほど増えた試験がある。18〜30歳の女性54人が、同じ大きさの白、赤、黒の皿でトマトソースのパスタを好きなだけ食べたところ、赤と黒の皿の日は、白の皿の日より多く食べていた[15]。

ここまでは、よく聞く「赤は食欲をそそる色」という話に合いそうに見える。ところが黒の皿でも同じように増え、赤と黒の間に差はなかった[15]。満腹の感じ方には、皿による有意な差は出なかった[15]。食べた量は動いたのに、本人の満ち足りた感じには差が見えない。

色と食欲の関係で論文が言える範囲は、思ったより狭い。この試験の著者ら自身が、皿の色の効果は一般化できないとする研究があると前置きしている[15]。ほかに読めるのは、水の青や木々の緑が味の感じ方に触れるという総説[8]や、色分けの表示で選ぶ品が変わった実験[4]で、こちらは「食べたさ」より「選び方」の話である。

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白、赤、黒の皿で、同じパスタを食べた日

2018年に載ったこの試験は、クロスオーバー試験(同じ人が全部の条件を順に試す形)である[15]。参加したのは、体格指数が標準の範囲にある18〜30歳の女性54人[15]。試験の日は決まった朝食をとり、昼に白、赤、黒のいずれかの皿を無作為に割り当てられ、ビュッフェ形式でトマトソースのパスタと清涼飲料を好きなだけ食べた[15]。皿の大きさはそろえてあり、昼食のエネルギーと栄養素の摂取を記録し、満腹の感じ方は線の上に印をつける尺度で毎食測った[15]。

結果として、皿の色は摂取量に有意な影響を与えた(p=0.021)[15]。平均のエネルギー摂取は、白の皿で945.72kcal、赤の皿で1102.16kcal、黒の皿で1113.19kcalだった[15]。赤(p=0.05)も黒(p=0.034)も白より有意に多く、赤と黒の差はなかった(p=0.985)[15]。

引き算をすると、白に比べて赤で156kcal、黒で167kcalほど多い。白の皿の日の昼食の、およそ6分の1にあたる量である。

著者らの結論は、皿の色はエネルギー摂取を決める重要な要因かもしれない、というものだ[15]。結論の文に「かもしれない」が付いている点は、写し落とさないでおきたい。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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赤が食欲の色なら、黒の結果が説明できない

「赤は食欲をそそる」という話で、この結果を読もうとすると困る。黒の皿でも白より多く食べ、赤との差はなかったからだ[15]。試験が示したのは「赤だから増えた」ではなく、「白の皿の日だけ少なかった」に近い形である。これは私の読みで、なぜ白の日が少なかったのかに、この試験の結論は踏み込まない。

献立にも目を向けておく。盛られたのはトマトソースのパスタだった[15]。赤い皿の上では赤いソースが溶け込み、黒い皿の上では逆に浮かび上がるはずだ。見え方はほぼ正反対なのに、食べた量はほぼ同じだった。「料理が目立つから食べる」という一本の筋でも、説明しきれない。これも私の読みである。

もう一つ見落としやすいのが、満腹の感じ方である。満腹の尺度の平均は、皿の間で有意な差を示さなかった[15]。150kcal前後多く食べた日も、本人の満腹の数字に、ほかの日との有意な差は出なかったことになる。皿の色で動いたのは食べた量のほうで、お腹の感じのほうではない。

この食い違いは、生活の場面に下ろすと少し怖い。夜11時、黒いどんぶりで食べたラーメンを「いつもと同じくらい食べた」と感じていても、量のほうは別に動いていたかもしれない。もっとも、この試験は昼食1回のパスタの話で、夜のラーメンを測ったわけではない。

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皿の色の効果は一般化できないという研究もある、と著者らが先に書いていた

この試験の背景の説明は、正直である。皿の色が食べる量を変えることは以前に示されていたが、皿の色の効果は一般化できないとする研究もある、と著者らは書く[15]。そのうえで、同じ大きさの3色の皿で、ビュッフェの昼食の量が変わるかを確かめることを目的にした[15]。

だから、この1本の結果を「皿の色で食欲が決まる」と広げることはできない。対象は体格指数が標準の範囲の若い女性54人で、場面は朝食のあとのビュッフェの昼食、献立はパスタと清涼飲料だけである[15]。男性も、年配の人も、家での夕食も、ほかの料理も、この数字の外にいる。

似た題材を扱う記事も同じサイトにある。皿の色と食べる量の問いそのものは「食欲を抑える色は本当にある?赤い皿と青い皿を選ぶ前に読む食事量の研究」と「ダイエットの食事は皿の色でも増える?ワンプレートの色の差と量を研究で読む」が先に扱っている。青い色の眼鏡で食欲が落ちるかは「ダイエット用の青いメガネで食欲は落ちる?見え方と食べた量の違いを読む」に、照明の赤と甘さの話は「ダイエットの間食は赤い光で甘く感じる?味の評価と摂取量をつなぐ前の確認」に、色と体の話でも尿の色は「ランニング後の尿の色、ビタミン飲料のあとの濃さを脱水と決めない見方」に譲る。ここでは、この1本の試験で言える範囲と、表示と想像の色を続ける。

水の青と木々の緑は、味の感じ方に触れる

色と食べ物のもう一つの研究の流れは、自然の色である。2025年の叙述的な総説は、自然に触れることが食べ物の選び方や味の感じ方にどう影響するかを整理した[8]。著者らは冒頭で、この問いは研究者からほとんど注目されてこなかったと書いている[8]。

総説の整理では、本物でも、作り物でも、画面の中でも、仮想の空間でも、自然に関わる刺激に触れると、人はより健康的で持続可能な選択へ向かう傾向があった[8]。さらに、水の青や木々の緑、花の色や香り、鳥のさえずりで自然を思い起こさせると、味の違いを見分ける反応と、おいしさや好ましさの反応の両方に影響しうることを、いくつかの研究が示したという[8]。

セルフサービスの食堂で食べ残しが減る、自然を思わせる文脈を先に見せるだけで健康的な選択が増える、という報告もある。ただし著者らはこの点を、出始めた、まだ試みの段階の証拠と書いている[8]。

読むときの注意は2つある。1つ目。ここでの青や緑は、香りや鳥の声と並ぶ「自然」の一部として扱われていて、色だけを取り出した結論ではない。2つ目。示されているのは選び方と味の感じ方への影響で、食べる量が何kcal減るという数字ではない[8]。

色分けの表示で、選ぶ品が変わった2,013人

色が食べ物の「目印」として働くときの研究は、数字がはっきりしている。オーストラリアの成人2,013人が参加したオンラインの選択の実験では、全粒穀物の量を色分けで示す表示がある群と、表示のない群に無作為に分けた[4]。4つの食品の分類ごとに全粒の量の違う3品を見せ、買う品を選んでもらい、健康的な順に並べてもらった[4]。

全粒がいちばん多い品を選んだ割合は、表示のない群に比べて、表示のある群で分類によって1.33倍から1.77倍だった[4]。健康的な順を正しく並べた割合も、1.37倍から2.00倍に高かった[4]。著者らは、オンラインの売り場で全粒の情報と解釈の手がかりになる表示を示すと、全粒の食品を選ぶことが増え、健康的だという受け止めも高まる可能性があると結論している[4]。

ここで動いたのは、画面の上での買う品の選択である。食べた量でも、空腹の感じでもない。しかも表示には色と一緒に全粒の情報も載っていたので、色だけの働きとして読むことはできない。これは私の読みである。

軍の基地の食環境を調べた系統的レビューでは、723本を選別して6本の研究が条件を満たした[9]。介入は、色分け、選び方の仕掛け、献立の変更の3つに分けられ、すべての研究で栄養素の摂取が増えたと報告された[9]。一方で著者らは、研究の設計と介入がばらばらで、確かな結論を出すのは難しいとも書いている[9]。

色分けで知識がそろうとも限らない。フェニルケトン尿症(フェニルアラニンというたんぱく質の成分を制限する食事が必要な病気)の子どもの親など60人と10代の21人で、食品の適否を色分けで示すアプリを12週間試した試験では、表示を読む知識と自信に群の差はなかった[14]。たんぱく質の計算の正確さは、アプリの群で35%から48%へ上向く傾向にとどまり、比べた群は39%から35%だった[14]。

数字で読む色と食欲

  • 54人:白・赤・黒の皿を順に試した18〜30歳の女性。体格指数は標準の範囲[15]
  • 945.72kcal:白の皿の日の昼食の平均。赤は1102.16kcal、黒は1113.19kcal[15]
  • p=0.985:赤と黒の皿の差。見た目は正反対の2色で、食べた量の差はなかった[15]
  • p=0.021:皿の色が昼食の摂取量に与えた影響の有意確率。満腹の感じ方には有意な差がなかった[15]
  • 1.33〜1.77倍:色分けの全粒の表示で、全粒がいちばん多い品を選んだ割合の比。2,013人のオンラインの実験[4]
  • 6本:軍の食環境の介入の系統的レビューで、723本を選別して条件を満たした研究の数[9]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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