銭湯の健康効果はどこまで?湯船にほぼ毎日つかる人を約20年追った調査と、家の風呂の血圧

銭湯の健康効果はどこまで言えるのか。中年3万人を約20年追い、湯船にほぼ毎日つかる人の循環器病を比べた調査、高齢者約1万4千人の要介護の調査、女性約1万6千人の乳がんの調査、湯の中の血圧の測定を読み、関連で分かったことと、温泉の研究が湯の効果を旅やほかの事情と分けにくい理由を確かめる。

銭湯の健康効果は、どこまで言えるのか。湯船につかる回数と病気の関係を日本で長く追った研究では、ほぼ毎日つかる40〜59歳の人は、週2回以下の人と比べた循環器病(心臓と脳の血管の病気)のハザード比が0.72と低かった[1]。自立して暮らす高齢者でも、週7回以上つかる人は、介護が必要と認定されるリスクが低かった(夏0.72、冬0.71)[15]。

ただし、どちらも湯船につかる回数を割り付けた試験ではない。毎日つかる人とそうでない人を比べた追跡調査で、湯船が病気を防いだとまでは言えない。女性1万5,927人を追った調査では、湯船につかる回数と乳がんのリスクに関連が見られなかった[7]。

もう1つ、湯船の中では、体が温まるほど血圧と脈が上がる。高齢者1,479人の家の入浴を測った研究では、おなかの皮膚の温度が1℃上がるごとに、上の血圧が2.41mmHg、脈が毎分2.99回上がっていた[10]。銭湯の話は、湯につかることそのものと、湯に出かけることとを分けて読むと見通しがよくなる。

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3万人を約20年。ほぼ毎日つかる人は循環器病が少なかった

いちばん大きな数字から見る。2020年の研究は、循環器病とがんの既往のない40〜59歳の3万76人を、1990年から2009年まで追った[1]。湯船につかる回数で、週0〜2回、週3〜4回、ほぼ毎日の3群に分けている[1]。

追跡の合計は53万8,373人年で、その間に2,097人が循環器病を発症した。内訳は冠動脈の病気が328人(心筋梗塞275人、心臓の突然死53人)、脳卒中が1,769人だった[1]。

従来の循環器病の危険因子と一部の食事の要因で調整したうえで、ほぼ毎日の群を週0〜2回の群と比べたハザード比(その期間に病気になる速さの比)は、循環器病全体で0.72(95%信頼区間0.62〜0.84)だった[1]。脳卒中全体は0.74、脳梗塞は0.77、脳出血は0.54(0.40〜0.73)である[1]。冠動脈の病気も0.65(0.45〜0.94)だったが、回数が増えるほど下がる傾向の検定はp=0.065で、はっきりしなかった。脳梗塞の傾向の検定もp=0.467だった[1]。

一方で、心臓の突然死とくも膜下出血には、湯船の回数との関連が見られなかった[1]。著者らの結論は、中年の日本人で湯船につかる頻度が循環器病のリスクと逆の関連を示した、というものだ[1]。

ここで読み違えやすいのは、「毎日つかると脳出血が半分になる」という言い方である。比べられたのは、ほぼ毎日つかる習慣のある人と、週2回以下の人だ。毎日湯船を沸かせる暮らしの人が、ほかの面でも違っていた可能性は、調整した要因の外に残る。これは私の読みで、著者らが示したのは関連である[1]。

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高齢者1万3,786人。要介護の認定まで3年追った

高齢者の側の調査もある。2019年の研究は、日常の動作が自立している地域の高齢者1万3,786人(男性6,482人、女性7,304人)を、2010〜2012年の調査から3年間追った[15]。結果として数えたのは、介護保険で新たに介護が必要と認定されたことである[15]。

3年の間に1,203人(8.7%)が認定を受けた[15]。湯船につかる回数は夏と冬それぞれで、週0〜2回、週3〜6回、週7回以上に分けられた[15]。14の要因で調整して週0〜2回の群と比べると、週7回以上の群のハザード比は夏0.72(95%信頼区間0.60〜0.85)、冬0.71(0.60〜0.84)だった[15]。

週3〜6回の群は夏0.91、冬0.90で、信頼区間が1をまたいでいた[15]。差が見えたのは、ほぼ毎日の群だけだったことになる。著者らは、湯船につかる頻度の高さは要介護の発生の少なさと関連し、湯船につかることは高齢者の健康に有益かもしれないと結論している[15]。

同じ論文は、日本人の多くはシャワーやサウナより湯船を好むと書いている[15]。日本の暮らしに根づいた習慣だから、日本で調べる意味があった研究である。

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乳がんでは、関連が見られなかった

都合のいい数字だけを並べないために、関連が出なかった結果も読む。2025年の研究は、乳がんの既往のない40〜59歳の女性1万5,927人を、1990年から2015年まで追った[7]。追跡の合計は36万7,950人年で、乳がんは370人だった[7]。

ほぼ毎日つかる群と比べると、週3〜4日の群のハザード比は1.23(95%信頼区間0.93〜1.62)、週2日以下の群は0.72(0.40〜1.31)で、傾向の検定はp=0.90だった[7]。閉経の前後で分けても、ぬるい、温かい、熱いという本人の感じる湯の温度で分けても、関連はなかった[7]。

著者らは、頻繁に湯船につかる女性で乳がんのリスクが下がるという結果は得られなかったと結論し、回数と時間と湯の温度を客観的に測る研究が必要だと書いている[7]。湯船が体にいいという話を聞くと、何にでも効く気がしてくる。循環器病で関連が出た同じ型の調査が、乳がんでは何も示さなかった。この差は覚えておきたい。

血管の硬さを測った研究は、どこまで言えるか

病気になる前の段階を測った研究もある。2018年の研究は、中高年から高齢の873人に湯船の回数と湯の温度を尋ね、首の動脈の壁の厚さ、腕と足首の間の脈波伝播速度(動脈の硬さの目安)、心臓の負担の目安になる血液中の物質などを測った[2]。1回の入浴の平均は12.4分(±9.9分)だった[2]。

週5回以上つかる人は、交絡しうる要因を補正しても、脈波伝播速度、心臓に近い血管の脈圧、心臓の負担の目安がいずれも低かった[2]。湯の温度が高いほど脈波伝播速度は低く、回数が多いほど脈圧と心臓の負担の目安は低かった[2]。164人を追った分析では、週5回以上つかる人は心臓の負担の目安が時間とともに増える幅が小さかった[2]。著者らは、湯船につかることが動脈硬化と心臓に近い血管の指標に好ましい影響を示したと結論している[2]。ただ、これも回数を割り付けた研究ではなく、尋ねた習慣と測った値の関連である。

若い人の研究はまだ小さい。平均21〜22歳の25人(男性9人、女性16人)を調べた2025年の予備研究では、湯船につかる習慣のある人のほうが炎症の目安のインターロイキン6が低かった[8]。ほかの炎症の目安や脈波伝播速度には差がなかった[8]。著者らは、湯船につかる習慣が若い人の炎症を減らす生活習慣になりうると示唆するが[8]、25人の予備研究の示唆として読むのがちょうどいい。

湯船の中で、体が温まるほど血圧と脈は上がる

湯の中の体は、休んでいるようで働いている。2024年の研究は、地域の高齢者1,479人(年齢の中央値68歳、40〜90歳)の家で、入浴中のおなかの皮膚の温度を1分ごとに測り、血圧と脈を15分ごとに24時間記録した[10]。

年齢、性別、体格、降圧薬の使用、居間と屋外の気温などで調整すると、皮膚の温度が1℃上がるごとに上の血圧は2.41mmHg(95%信頼区間2.03〜2.79)、脈は毎分2.99回(2.66〜3.32)上がっていた[10]。この関係に男女の差は見られなかった[10]。

入る前の部屋の寒さも関わる。入浴前の居間の温度が1標準偏差低いと、入浴中の皮膚の最高温度は0.41℃高かった[10]。著者らは、入浴前に寒さにさらされると湯の中で皮膚の温度が上がりやすく、血圧や脈の変化が大きくなりすぎる可能性があると読む[10]。同じ論文は、日本では家で湯船につかることが高齢者の溺水による死亡を大きく増やしていると書き、入浴に関わる死亡を防ぐための入浴前の温度の工夫に道を開くとしている[10]。

銭湯の大きな湯船は気持ちがいい。けれども、熱い湯で皮膚の温度が上がれば血圧と脈も上がる、という数字は銭湯でも変わらないはずだ。これは私の読みで、測られたのは家の入浴である[10]。

数字で読む湯船の研究

  • 0.72: ほぼ毎日つかる中年の人の循環器病のハザード比。週0〜2回の人と比べた関連[1]。
  • 0.71: 冬に週7回以上つかる高齢者の、要介護の認定のハザード比[15]。
  • p=0.90: 湯船の回数と乳がんの傾向の検定。関連は見られなかった[7]。
  • 12.4分: 873人の1回の入浴の平均の時間[2]。
  • 2.41mmHg: 湯の中で皮膚の温度が1℃上がるごとの、上の血圧の上がり幅[10]。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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