腕の毛を剃ると濃くなるのでは、と袖をまくる夜に。剃るは毛幹を除く一時的な方法だという整理と、多毛症の顎でレーザー前に剃ったかはさみで短くしたかを比べた試験を分ける。下腿を剃った5日間の長さ測定と、光のあとに毛が戻る割合も並べ、見た目の濃さと生える速さを同じ話にしない。
袖をまくった腕をなでて、昨日より毛が目立つと感じる。「剃ったせいで濃くなったのか」。この問いには、見た目、本数、伸びる速さという別々の問題が重なっている。ざらつきの感想だけで、生え方の変化まで決める前に、研究が何を測ったのかを確かめたい。
剃ることは、皮膚から出た毛の部分である毛幹を除く一時的な方法に分類される。[11] この分類だけで、剃ると太くなるとも、ならないとも結論できない。以下で扱うのは、剃ったあとの長さの測定と、レーザー治療前の剃毛を比べた試験である。両者を分けると、腕を剃った翌朝の印象から言えることの境界が見える。
速さと本数は、同じ棚に置かない。女性6人の下腿では、剃って毛幹を除いたあとの5日間に、伸びる毛の長さを測る方法が比べられた。問いの中心は測定器の信頼である。[16] いっぽう、剃った側で毛の数が多く残った比較は、多毛症の閉経前女性の顎を、レーザーの前に短くするやり方として剃るか、はさみで切るかに分けた試験にある。[17] 18〜39歳の女性の腕の自己処理に、そのまま当てはめることはできない。 汗をかいた腕の毛が冷え方を変えるか、という問いは既存記事『汗をかく腕の毛は冷え方を変える?肌に残る水と脱毛研究の違いを読み解く』に譲る。毛を抜いたときに周囲まで生えるか、という切り口も、ここでは扱わない。

剃るは毛幹を切る方法で、抜く方法とは別枠である
2021年のレビューでは、剃ることと化学的な除毛剤は毛幹を除く方法、抜く、糸、ワックス、シュガリング、レーザー、インテンス・パルス・ライト(以後、光装置)、電気分解、光線力学療法は、毛幹に加えて毛包と毛球を除く方法に分けられる。[11] 毛包は毛を作る皮膚側の構造、毛球はその奥の部分である。日常語ではどちらも「毛をなくす」だが、処理が及ぶ場所を分けるのがこの分類の役割だ。
このレビューは、電気分解以外の方法を一時的とする。また、顔の発毛を遅らせる外用薬と剃毛を別に扱い、処理法の有効性を調べる多くの試験が濃い毛と薄い肌色に偏るとも指摘している。[11] 処理する部位だけでなく、毛と肌の色も結果を読む条件になる。
2019年の家族医向けレビューは、多毛を、女性に男性型の終毛が過剰に生えることとし、しばしばアンドロゲン(男性ホルモン作用をもつホルモン)の過剰の徴候だとした。剃る、ワックス、抜くは有効でも一時的である。光による処理と電気分解は、長期の除去にある程度有効だが、費用がかかる。[14] 終毛は、このレビューが男性型のパターンで問題にする毛である。一時的、という評価は「太くはならない」と証明した文ではない。効き目が長く残らない、という整理である。
対照試験を集めた2006年のエビデンスレビューは、レーザーと光が、剃る、ワックス、電気分解といった従来の処理より優れた有効性を示す、と結論した。同時に、完全で持続する除去を示す証拠はない、とも書いた。[3] 優れているのは減らし方の比較であって、剃ると毛が太くなる、という仮説の検証ではない。剃ることは、このレビューでは比較の対照側に置かれている。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
剃ったあとの5日は、長さを測る話である
伸びの速さについて、腕そのものではなく下腿で、剃ったあとを日単位で見た試験がある。2012年の研究は、女性6人の下腿で、剃る装置を使って毛幹を除いた。その後5日間、毛包の漏斗(毛の出口のくぼみ)と、伸びていく毛の長さを、三つの非侵襲の測定で比べた。トリコスキャン、反射型共焦点顕微鏡、光干渉断層計である。三つとも、除毛のあとの測定として信頼できる、と著者らは述べ、長さと成長の測定にはトリコスキャン、毛包の観察には反射型共焦点顕微鏡、補助として光干渉断層計、と役割を分けた。[16]
この試験が並べたのは測定法である。剃る前の速度から、剃ったあとの速度を引いた表ではない。翌々日のざらつきを「速度が上がった証拠」と採点すると、試験が見ていた相手は別の機械だった、というずれが残る。[16] 前腕の一シーズンへ広げるには、6人、下腿、5日という枠が小さい。立ち仕事の帰りに袖をまくり、昼と夜の手触りを比べる習慣とは、測っているものが違う。
主観の濃さと、数えた本数が近くなる例は別の試験にある。QスイッチNd:YAGレーザーを1回使った比較では、患者が感じた毛の密度は、実測の毛数にかなり近かった。対象は12人の体と顔の毛を四区画に分けた試験で、18〜39歳の女性の前腕の自己採点にそのまま当てはめることはできない。[2]
数字で読む腕毛と再成長
- 多毛は世界の女性のおよそ10%に関わる、とするレビューと、女性の最大10%に見られるとする試験の背景がある。[7][17]
- 見た目の採点(改変フェリマン・ガルウェイ)は9部位。上腕もその一つ。カットオフは民族で異なり、多くの場合は4超から6超である。[7]
- 多毛症の閉経前女性129人を、剃る66人、はさみ63人に分け、顎の5×5cmを数えた。最終レーザーの6か月後は11.27±9.30対8.15±3.12(P=0.012)。終毛の再成長は剃る群の3人、はさみ群は0人。[17]
- ロングパルスのアレキサンドライトを36人の顔、背中、脚に用いた。毛数の減少は1か月66%、3か月27%、6か月4%。平均のエネルギーは18J/cm2。[4]
- QスイッチNd:YAGの1か月後の再成長率は、ワックスと炭素とレーザーで39.9%、ワックス後レーザーで46.7%、レーザー単独で66.1%、ワックスのみで77.9%。6か月ですべての部位が完全に再成長した。[2]
- 毛の成長周期以上に追ったランダム化比較試験は5本、患者は合計223人。長期の減少は、脚(周期1年)で大きく、顔(周期6か月)で小さかった。[12]
濃く戻った本数は、顎のレーザー試験に出た
「剃った側のほうが毛が多かった」という数字を持っているのは、2017年のランダム化比較試験である。多毛症の閉経前女性129人を、剃る群66人、はさみで短くする群63人に分けた。どちらもアレキサンドライトレーザーを、月1回、6か月続けて6回受けた。数えたのは顎の5×5cmの毛である。逆説的多毛化を、終毛が再び生えてくることとして、同じ時点で見ている。[17] 多毛症患者の顎への治療なので、18〜39歳の女性の腕の剃毛にそのまま当てはめることはできない。
3回目の前の本数は、剃る群が15.06±5.20、はさみ群が13.07±4.44で、差のPは0.022だった。どちらも開始時より意味のある減少で、そのPは0.001未満である。6回目の前は2.80±1.16対2.71±1.12、P=0.673で、群の差はここではない。直前の時点よりは、どちらも有意に少なかった。[17] 治療の途中だけを見ると、二つの短くし方は、やがて似た本数まで落ちている。
差が再び開くのは、最終回から6か月後である。剃る群11.27±9.30、はさみ群8.15±3.12、P=0.012。終毛の再成長は剃る群の3人に見られ、はさみ群にはいなかった。著者らは、短期の結果は似るが、1年の追跡では逆説的多毛化が剃る群に限られ、毛数もはさみ群のほうが少なかった、と結んでいる。[17] 結果の時点は最終回の6か月後で、治療そのものは月1回を6か月続けている。1年、というまとめは著者らの結論の言葉である。
著者らはアレキサンドライトレーザーが多毛症の治療に有効だとも結論している。[17] この試験で比べたのは、同じレーザー治療を受ける患者の前処理である。担当者と処理方法を相談するときには役立つが、レーザーを使わない腕の手入れとは条件が違う。背景にある最大10%も、多毛症の女性の割合であって、腕を剃った人の割合ではない。[17]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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