30代女性の香水選びで、試香紙では好きなのに肌につけると違うと感じたら。香水単体と体臭が混ざった香りを比べた実験から、自分の好みが役立つ場面と、他人の評価との違いを読む。年齢別のおすすめに急がず、本人が選ぶ場合、姉妹が選ぶ場合、香りから受ける印象を分けて考える。
試香紙を並べたときの一番好きな香りが、手首につけると候補から外れる。紙では好きだったのに、自分につけると少し違う。そんなとき、「私の肌には合わない年齢になったのか」と結論を急ぐ必要はない。香水と体臭を組み合わせた実験は、香水の評価が、誰の体臭と混ざるかによって変わることを示している。[1]
答えの芯は、香水が体臭を上から消すだけではない、という点にある。同じ本人の体臭でも、自分の好みの香水と混ぜた場合は、無作為に割り当てた香水との混合より快く評価された。しかも香水だけを評価したときの快さには差がなかった。[1] 瓶の中での順位と、人がまとったときの順位は、別に確かめる価値がある。
ただし、自分で選べば必ず正解とも言えない。他人が選んだ香水との比較では、男性本人より姉妹の選択が有利だった結果もある。[2] ここでは年齢別の商品探しからいったん離れ、「何を嗅いで選んだのか」「誰が何を評価したのか」をたどる。汗と蒸発の話は既存記事『汗をかくと香水の匂いは強まる?皮膚の温度と香り成分の蒸発を読み解く』に譲り、こちらは混ざった香りの好みを扱う。

香水そのものが好きでも、混ざった香りは別の評価になる
香水で体臭を隠す、と考えると、体臭は消したい背景で、香水が主役になる。ところが、香水使用の心理を調べた実験では、その図式だけでは説明しにくい結果が出た。香水が体臭の知覚を好ましくする効果は確認された一方、その効果には体臭の提供者による有意な違いがあった。[1] ある香水に共通の点数を付けておけば、誰が使っても同じだけ評価が上がる、とは考えにくいのである。
研究者が行った最初の2つの実験では、香水の効果と体臭を提供した個人との「交互作用」が示された。[1] 交互作用とは、ここでは香水の働きが相手となる人によって違うことだ。香水の好ましさと体臭の好ましさを別々に知るだけでは、出来上がった混合の評価を言い当てられない。この結果を、単純な覆い隠しを超えた、個人に固有の混ざり方として著者らは解釈している。[1]
続く3つ目の実験は、選び方を考えるうえでさらに面白い。同じ人の体臭に、その本人が好む香水か、無作為に割り当てた香水を組み合わせた。混合した香りは前者のほうが快く感じられたが、香水単体の快さには差がなかった。[1] 好みの香水が、そもそも誰からも好かれる優等生だっただけではない、という比較である。
この区別を店頭に持ち込むなら、紙で嗅いで好きかどうかと、自分がまとった香りを好きかどうかを、別の質問として残しておくとよい。これは研究を選び方に置き換えた提案であり、試香紙と肌の優劣を直接判定した結果ではない。実験が示したのは、香水だけの評価を混合した香りの評価の代わりにはできない、という点である。[1]
「友人には似合うのに、自分だと違う」という感想も、どちらかの鼻が間違ったと考えずに済む。人によって香水との組み合わせが変わるなら、感想が一致しないこと自体は不思議ではない。[1] ただし、この実験で確かめたのは感じられた香りの評価である。皮膚の上で特定の成分がどう変化したかという化学反応の説明まで、そこから決めつけないほうがよい。
香りの違いを感じたあと、すぐに「元の体臭が悪いからだ」と自分を採点する必要もない。実験が比較したのは、提供者ごとに異なる組み合わせへの反応であり、体臭を人間の良し悪しに置き換える試験ではない。[1] 合わないと感じた組み合わせを候補から外すことと、自分の体を嫌うことを結び付けずに済む。選ぶ対象は香水であって、自分自身の合否ではない。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
自分で選ぶ力は役立つが、本人だけが選べるわけではない
本人の好みが混合した香りの快さにつながった研究を読むと、「自分の鼻を信じればよい」で終えたくなる。[1] しかし、別の研究を並べると、選ぶ人の範囲はもう少し広がる。男性を対象に、本人の選択と、恋人または姉妹の選択を比較した2つの研究では、本人以外の選択にも有利な結果があった。[2] 男性が着用した香りの比較であり、18〜39歳の女性にも同じ選び方が有利かは、この結果だけでは判断できない。
この研究では、対象の男性が本人の選んだ香水と他者の選んだ香水を脇につけ、綿のパッドを12時間着用した。その後、集めた香水と体臭の混合、および香水だけを評価者が判定した。[2] 評価しているのは売り場で選択者が述べた感想だけではない。実際に体臭と組み合わされた試料を、評価者が嗅いだ結果である。
恋人が選んだ香水との混合は、本人が選んだものより快い方向の評価だったが、ここは数値上の傾向として扱うべき結果である。一方、姉妹が選んだ香水と男性の体臭の混合は、本人が選んだ香水との混合より、有意に魅力的と評価された。香水だけでは、魅力と快さの評価に有意差はなかった。[2] 「姉妹は必ず香水選びが上手」と広げず、男性の対象者で得られた予備的な証拠と読む。
著者らは、血縁者は体臭の性質を一部共有するため、きょうだいに合う香水を選ぶことに姉妹が適している可能性を示した。[2] これは他人なら誰でも本人よりよいという結論ではない。恋人の結果と姉妹の結果を、ひとまとめに「家族や友人が選べば成功する」と言い換えるのも飛躍になる。相手との関係と、比較した評価項目を残しておく必要がある。
自分で選んだほうが快かった実験と、姉妹が選んだほうが魅力的だった実験は、片方を捨てる関係ではない。[1][2] 前者が比較したのは無作為の割り当てであり、後者は相手のために選んだ人との比較だ。さらに「快い」と「魅力的」は同じ質問ではない。買い物で相談するなら、単に「これ、いい匂い?」だけでなく、「私がつけた状態ではどう感じる?」まで分ける。この尋ね方なら、研究の違いを日常に持ち帰れる。
香水をつけても、その人らしい匂いの差は残るのか
混ざり合って新しい印象になるなら、人ごとの違いまで消えてしまうのだろうか。この問いを調べた研究は、快さの点数ではなく、匂いを区別できるかという課題を使った。男性6人と女性6人が脇の匂いを提供し、香料なし、自分の香水、割り当てられた香水の条件を比較している。[11] 男女を含む試験であり、18〜39歳の女性だけで同じ成績になるかは別に確かめる必要がある。ここでいう個人差は、名前を当てられるという意味ではない。
女性296人と男性131人の評価者は、匂い試料を3つ提示され、違う人のものを選んだ。2つは同じ提供者、残る1つは別の提供者の試料で、比べる提供者の性別はそろえてある。どの香りの条件でも、偶然に選ぶ場合を上回って区別できた。[11] 香水があると、その人に由来する違いがすべて消えるという単純な図式は、この課題の結果と合わない。
一方、区別の正確さは同じではなかった。香料なしが香水を使った条件より高く、自分の香水を使った条件は、割り当てられた香水より高かった。[11] つまり、自分の香水で「素の体臭以上に見分けやすくなった」わけではない。香水によって区別は難しくなるが、その難しくなり方が選び方で違った、と読むのが正確だ。好きな香りは個性を最大化する、という宣伝文句に変えてはいけない。
この研究では、匂いの同定能力が高い人ほど区別の成績もよく、女性評価者のほうが正答しやすいという差もあった。[11] 評価が分かれたときに、香水や着用者だけへ理由を押し付けないことにもつながる。嗅ぐ側の能力を含んだ実験だからである。「似合う」は着用者に貼られた永久のラベルではなく、ある条件である人が下した評価として読むほうが、買い物の失敗にも冷静でいられる。
また、区別できることと、好きであることは同じではない。匂いを見分ける課題では、香料なしのほうが正確でも、それだけで香水を使わないほうが快いとは言えない。[11] 反対に、本人の好みの香水との混合が快く評価された実験も、その人の名前を嗅ぎ当てられるかを調べたわけではない。[1] 「その人らしい」「いい香り」「見分けやすい」を同じ意味にすると、別々の実験が互いに矛盾して見えてしまう。
数字で読む香水と体臭の実験
3つの実験:香水による体臭の評価の変化と、本人の好みの香水との混合を調べた研究。[1]
12時間:本人または恋人・姉妹が選んだ香水をつけ、男性が採臭用パッドを着用した時間。[2]
男性6人・女性6人:香料なし、自分の香水、割り当てた香水で脇の匂いを提供した人数。[11]
女性296人・男性131人:その匂い試料から、異なる提供者のものを選んだ評価者の人数。[11]
4分間:女性同士の友情の可能性を調べた研究で、対面交流に使われた時間。[7]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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