歯ぎしりはなぜ起きる?ストレス説が言える範囲と、眠りの中の小さな目覚めとの関係

歯ぎしりはなぜ起きるのか。眠っている間と起きている間の2種類の定義、18人ずつを一晩記録した研究、眠りの中の小さな目覚めとの関係、うつと唾液のコルチゾールの統合を読み、ストレス説が言える範囲と、噛み合わせ説の支持が少ないことを分けて確かめる。

歯ぎしりはなぜ起きるのか。眠っている間の歯ぎしりについて、2008年の総説は、最近の研究が示唆する説明として、眠りの中の小さな目覚め(マイクロアラウザル)に続いて起きる、という筋を挙げている[4]。この目覚めは心臓と呼吸の自律神経の働きの高まりで定義され、眠っている1時間に8〜14回繰り返される傾向がある[4]。同じ総説は、眠っている間の歯ぎしりの原因に噛み合わせが関わるとする説を支持する証拠は限られているとも書いている[4]。

同じ総説がストレスを挙げているのは、起きている間の食いしばりのほうである。起きている間の歯ぎしりは主に神経性のチックやストレスへの反応と関連し、ストレスと不安が危険因子と考えられている[4]。眠っている間の歯ぎしりは、遺伝、脳の仕組み、眠りの構造の変化、ストレスの感じやすさと対処の力の個人差などが重なる、多くの要因を持つ活動として整理されている[14]。

そのストレス説にも条件がつく。うつとの関連を統合した分析でも、唾液のコルチゾール(ストレスに関わるホルモン)を統合した分析でも、眠っている間の歯ぎしりを機械で測った研究に限ると、有意な差は出なかった[7][11]。眠っている人は、自分の歯の音を自分で数えられない。歯ぎしりの研究は、この単純な事情にずっと付き合わされている。

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歯ぎしりには、眠っている間と起きている間の2つがある

まず言葉をそろえておく。2013年に国際的な専門家の合意が得られた定義では、歯ぎしりは、歯を食いしばる、すり合わせる、あるいは下あごを固める・突き出すことを特徴とする、咀嚼筋(噛むための筋肉)の繰り返す活動である。そのうえで、眠っている間の歯ぎしりと起きている間の歯ぎしりに分けられた[1]。

つまり、ギリギリと音のするものだけが歯ぎしりではない。音のしない食いしばりも、同じ定義の中に入っている[1]。

2018年の合意の報告は、2つをさらに細かく書き分けた。眠っている間の歯ぎしりは、リズムのある、またはリズムのない咀嚼筋の活動である。起きている間の歯ぎしりは、歯の接触が繰り返される、または続く活動、あるいは下あごを固める・突き出す活動である[1]。

面白いのは、扱いの変化だ。2008年の総説は、眠っている間の歯ぎしりは最近「睡眠に関連する運動障害」に分類された行動だと書いていた[4]。ところが2018年の合意は、ほかに病気のない人の歯ぎしりは障害とみなすべきでなく、ある種の臨床的な結果の危険因子(または保護因子)になりうる行動として扱うべきだと結論した[1]。2026年の総説の定義には、運動障害でも睡眠障害でもない、と書き込まれている[14]。病名に近い扱いだった言葉が、この18年で行動の側へ寄せられてきた。

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何人がしているのか。数え方で数字が動く

2008年の総説によると、起きている間の歯ぎしり(顎の食いしばりの自覚)は成人の20%に報告されている。眠っている間に歯をすり合わせている自覚は、寝ている相手や家族に指摘された形で、8%に報告されている[4]。

成人の有病率を集めた2013年の系統的レビュー(決まった手順で研究を集めて評価する方法)は、35の論文を検討した。ところが方法の問題が多く、有病率の数字を取り出せたのは7本だけだった[5]。その7本でも、内側の妥当性はすべて低かった。歯ぎしりの判定が、主に質問紙の1〜2問による自己申告だけだったからである[5]。

そのうえで出た数字は、種類を分けない「歯ぎしり」が8〜31.4%、起きている間の歯ぎしりが22.1〜31%、眠っている間の「頻繁な」歯ぎしりが12.8%(±3.1%)だった[5]。眠っている間の数字は、3つの研究の間で比較的そろっていた[5]。

「歯ぎしり 女性」と検索する人もいるだろう。このレビューでは歯ぎしりと性別の関係は見られず、高齢者では減ると報告されていた[5]。著者らは、文献の方法の質が低く、自己申告に頼ることによる診断の偏りがありうるので、数字は慎重に解釈すべきだと結論している[5]。

自分の眠っている間の音を聞ける人はいない。数字が8%にも31.4%にもなるのは、この事情と無関係ではないと私は読む。

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歯ぎしりの自覚がない人も、一晩に顎を動かしていた

では、機械で一晩記録するとどうなるか。1996年の研究は、歯ぎしりのある18人と症状のない18人を、睡眠ポリグラフ(眠っている間の体の働きを一晩まとめて記録する検査)で調べた[3]。

歯ぎしりのある18人は全員、眠っている間に頻繁に歯をすり合わせると答えた。16人には歯のすり減りがあり、6人が顎の不快感を訴えた。症状のない18人には、どれも見られなかった[3]。

記録を数えると、症状のない人にも、眠っている1時間あたり平均1.7回の歯ぎしりの発作(顎を閉じる筋肉の、続く、または繰り返す活動)があった。歯ぎしりのある人は5.4回である[3]。筋肉の収縮の数で見ると、1時間あたり症状のない人が6.2回(0〜23回)、歯ぎしりのある人が36.1回(5.8〜108回)だった[3]。

音のほうが差ははっきりしている。すり合わせる音が2回以上あった人は、歯ぎしりのある側で18人中14人、症状のない側で18人中1人だった[3]。

眠りの指標は、どれも2つの群で差がなかった[3]。歯ぎしりをする人の眠りが浅い、という結果ではない。

著者らはここから、1時間に4回を超える発作などの判定の目安を提案した。記録の変数をロジスティック回帰という統計の方法で組み合わせると、症状のない人の81.3%、歯ぎしりのある人の83.3%を正しく判定できた。ただし、より大きな集団で、時間をかけて、重さの違う人で確かめる必要があるとも書いている[3]。

2018年の合意は、逆向きの注意を加えた。ほかに病気のない人では、歯ぎしりの有無を決める標準の線引きを使うべきではなく、連続した程度として評価すべきだという[1]。症状のない人でも1時間に1.7回あった[3]のだから、するかしないかより、どれくらいするかの話になる。

眠っている顎を動かすのは、小さな目覚めか

ここからが「なぜ」の芯である。2008年の総説は、最近の研究が、眠っている間の歯ぎしりは眠りに関連した小さな目覚めに続いて起きる二次的なものだと示唆している、と整理した[4]。定義に使われているのは心臓と呼吸の自律神経の働きの高まりで、それが眠っている1時間に8〜14回繰り返される傾向がある[4]。朝になって覚えている目覚めとは別の物差しだと私は読む。

同じ総説によると、眠っている間の歯ぎしりに見られるリズムのある咀嚼筋の活動は、レム睡眠(眼球がすばやく動く眠り)に入る前の数分に山がある[4]。著者らは、眠りの段階の切り替わりに関わる何らかの仕組みが、歯ぎしりの始まりを促す運動神経に影響していることを示唆すると書く[4]。遺伝の要因と、上気道(鼻からのどまでの空気の通り道)の抵抗が果たす役割も、調べられている途中だという[4]。

上気道の話は、睡眠時無呼吸とつながる。2026年のアンブレラレビュー(系統的レビューをさらに集めて評価する方法)は、1,726件の記録から8本の系統的レビューを選んだ。メタ分析(複数の研究の数字を統合する分析)を含んでいたのは1本だけである[10]。多くのレビューが、眠っている間の歯ぎしりと閉塞性睡眠時無呼吸症候群がよく同時に見られると報告し、小さな目覚めや自律神経の活性化といった共通の仕組みの可能性を挙げたが、因果は分かっていない[10]。

著者らの結論は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の成人は眠っている間の歯ぎしりを経験しやすいようで、双方向の関係の可能性がある、というものだ。ただ、方法の質はほとんどが低いか極めて低く、証拠の強さは限られると添えている[10]。

噛み合わせ説は、支持する証拠が少ない

「噛み合わせが悪いから歯ぎしりをする」という説明は、今もよく聞く。2008年の総説は、眠っている間の歯ぎしりの原因に噛み合わせの要因が関わることを支持する証拠は限られている、と書いている[4]。

噛み合わせを変える側から見た研究もある。透明なマウスピース型の矯正装置(アライナー)は、歯の接触と下あごの動きを変える。11の研究、818人(72.8%が女性)を集めた2026年の系統的レビューでは、多くの研究が、アライナーの歯ぎしりへの影響は中立だと示していた[19]。

眠っている間については、持続する収縮が減ることが多かった一方で、リズムのある活動への影響は一貫せず、眠っている間の歯ぎしりの全体の指標は変わらなかった[19]。自己申告などで見た結果は割れていて、食いしばりや顎の関節の痛みが改善した研究もあれば、矯正中に歯ぎしりの症状が増えたとする研究もあった[19]。著者らは、アライナーを保護的とも有害ともまだ分類できないと結論している[19]。

数字で読む歯ぎしり

  • 8〜14回: 眠っている1時間に小さな目覚めが繰り返される傾向の回数。歯ぎしりの回数ではない[4]。
  • 1.7回と5.4回: 症状のない人と歯ぎしりのある人の、1時間あたりの歯ぎしりの発作。ない人もゼロではない[3]。
  • 14人と1人: すり合わせる音が2回以上あった人。歯ぎしりのある18人と、症状のない18人の比較[3]。
  • 12.8%: 眠っている間の「頻繁な」歯ぎしりを尋ねた3研究の数字。自己申告である[5]。
  • 7本: 35の論文のうち、有病率の数字を取り出せた本数[5]。
  • 818人: アライナーと歯ぎしりのレビューの人数。多くの研究は中立の結果だった[19]。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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