
「左利きは短命」と論じた1991年の総説を読む
左利きは長生きしない、という話と同じことを論じた研究に、1991年の総説がある[2]。総説は、生涯にわたる研究で、人口に占める左利きの割合は年齢とともに着実に減り、最も年齢の高い層では極端に少ないとする[2]。そして、この傾向は左利きの寿命の短さによると示すデータを検討している[2]。
総説の説明は具体的だ。左利きのリスクの高さの一部は、事故にあいやすくする環境の要因によるらしい[2]。さらに、左利きは出生時のストレスに関わる神経の障害、発達の遅れや不規則さ、子宮内のホルモン環境による免疫の弱さの目印かもしれない、という証拠も挙げる[2]。左利きが早い死と選んで結びつく原因になりうる、統計と体の要因も示している[2]。
ここで、2020年のメタ分析をもう一度見たい。左利きの割合は発表の年と測り方によって変わり、著者らは左手を使うことへの圧力のような文化の要因が割合の大きさを左右すると論じた[20]。男女差の統合でも、差の大きさは研究の発表の年で変わっていた[1]。
年長の層に左利きが少ないのは、左利きが早く亡くなったからなのか。それとも、左手を使わないよう求められる時代に育った人が多いからなのか。この2本の研究だけでは、どちらかに決めることはできない。私の読みでは、ここで読める研究からは、どちらの説明が正しいかを決められない。ただし総説が挙げた事故のリスクという論点は、別に確かめる価値がある。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
心の病気との関わりは、病名によって違う
左利きと心の病気の関係も、よく話題になる。2025年の研究は、これまでに出たメタ分析を見直し、更新し、解析し直したうえで、病名をまたいでもう一段上の統合を行った[4]。含まれたのは402のデータセット、合計202,434人である[4]。
平均すると、病気のある人では、右利きでない、左利き、両手利きのいずれも、対照より有意に多かった[4]。オッズ比は右利きでないが1.46、左利きが1.34、両手利きが1.63である[4]。ただし差は病名によって変わった。統合失調症では右利きでないが1.50、左利きが1.37、両手利きが1.70と高かった[4]。右利きでない利き手の割合が高かったのは、神経発達の病気、発症の早い病気、言葉に関わる症状を含む病気だった[4]。著者らは、利き手と病気の関係は、病名を越え、発達と症状に注目する見方でいちばんよく理解できるとしている[4]。遺伝子の側からも、約177万人の解析が、左利きと統合失調症や双極性障害とのあいだに示唆的な遺伝の相関を報告し、左利きになりやすくする変異が一部の精神疾患との関連の一部の下にあるかもしれないと述べている[12]。
一方で、うつ病では差がなかった。87本の研究、合計35,501人を統合した2021年のメタ分析で、うつ病の人と健康な人のあいだに、左利き(オッズ比1.04)、両手利き(1.64、p=.060)、右利きでない人(1.05)のいずれも差は見られず、著者らは関係を見つけられなかったと結んでいる[18]。
心的外傷後ストレス障害では、14本の研究、合計2,939人の統合で、右利きでない人(オッズ比1.81)と両手利き(2.42)が多かったが、左利きには差がなかった[9]。読字障害(ディスレクシア)の68本の統合でも、目立って高かったのは両手利きで(オッズ比1.57)、ただしこの分類の定義はあいまいだった。確かな結論が言えるのは両手利きとの関係だけだった[14]。
目を引くのは、差の出方の多くが「左利き」より「両手利き」の側にあることだ。そして、これらはどれも関連の数字である。左利きであることが病気を生むという結果ではないし、オッズ比1.34は、左利きの人の大半が病気になるという意味でもない。

左利きにとっては、左が「良い」側だった
もう少し楽しい特徴もある。上は良く下は悪い、右は良く左は悪い。人は空間の位置と良し悪しを結びつけるという研究がある[3]。2025年のメタ分析は、91本の論文、199の実験、21,951人を統合し、上下の結びつき(効果の大きさ r=.440)と左右の結びつき(r=.310)の頑健な証拠を見つけた[3]。
左右の結びつきには、利き手の頑健な影響があった。人は、良いものを利き手の側に結びつけた[3]。左利きの人では効果が逆になり、左が良い側だった[3]。文化の影響を示す証拠もいくらかあった[3]。
指の長さの比にも左利きとの関係を探した研究がある。人差し指と薬指の長さの比は、生まれる前の男性ホルモンの目印と考えられてきた。2021年のメタ分析では、左利きはこの比とわずかに関係したが、効果は極めて小さかった[17]。結果は生まれる前のホルモンと利き手を結ぶどの理論も裏づけず、著者らは、ペンを握って書く動作が指の筋肉や脂肪の付き方をわずかに変えているのではないかと推測している[17]。
よくある誤解
「左利きは頭がいい」。36本・66,108人の研究の系統的レビューで、利き手の群の知能の差は無視できるほど小さかった。わずかに高かったのは右利きで、いちばん大きな研究を除くと有意差は消えた[13]。
「左利きは長生きしない」。同じ筋の主張をした1991年の総説は、年齢の高い層ほど左利きが少ないことを寿命の短さで説明した[2]。一方で、左利きの割合は発表の年や文化の圧力で変わるとする統合があり[20]、私の読みでは、少なさの理由を寿命だけで決めることはできない。ただし、誤りだと言い切れる段階でもない。
「左利きは心の病気になりやすい」。平均すると、病気のある人には左利きがやや多かった(オッズ比1.34)が、これは関連の数字で、差は病名によって違う[4]。うつ病では差がなかった[18]。差が目立ったのは、統合失調症や神経発達の病気、発症の早い病気、言葉の症状を含む病気で[4]、心的外傷後ストレス障害や読字障害では、差は左利きより両手利きの側に出ていた[9][14]。

今日からできること
- 自分の利き手を、字を書く手だけで決めない。左利きの割合は定義しだいで9.3%から18.1%まで動いた[20]
- 握力などを左右で測ったら、利き手の側が約1割強いのを前提に見る。利き腕は反対の腕より11.6%強く、差は動きによって2.1%から19.5%まで幅があった[7]
- 「左利きだから天才」「右利きだから凡人」と子どもに言わない。IQの差の効果量はd=−0.07で、無視できるほど小さかった[13]
- 家族の左利きを右に直したかどうかを、上の世代に聞いてみる。左利きの割合は左手を使う圧力のような文化の要因で変わると論じられている[20]
- 心の病気と利き手の話を聞いたら、病名と「左利きか両手利きか」を確かめる。うつ病の87本の統合では差がなく[18]、心的外傷後ストレス障害で多かったのは両手利きだった[9]
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参考文献
[1] Sex differences in left-handedness: a meta-analysis of 144 studies — Papadatou-Pastou M, Martin M, Munafò MR, Jones GV., 2008, Psychological bulletin. DOI: 10.1037/a0012814
[2] Left-handedness: a marker for decreased survival fitness — Coren S, Halpern DF., 1991, Psychological bulletin. DOI: 10.1037/0033-2909.109.1.90
[3] Vertical and horizontal space-valence associations: A meta-analysis — Pohl J, Miklashevsky A., 2025, Neuroscience and biobehavioral reviews. DOI: 10.1016/j.neubiorev.2025.106054
[4] Handedness in mental and neurodevelopmental disorders: A systematic review and second-order meta-analysis — Packheiser J, Borawski J, Berretz G, Merklein SA, Papadatou-Pastou M, Ocklenburg, 2025, Psychological bulletin. DOI: 10.1037/bul0000471
[7] A comprehensive scoping review and meta-analysis of upper limb strength asymmetry — Foley RCA, Callaghan DH, Forman GN, Graham JD, Holmes MWR, La Delfa NJ., 2025, Scientific reports. DOI: 10.1038/s41598-025-87413-w
[8] The effect of handedness on mental rotation of hands: a systematic review and meta-analysis — Jones HG, Braithwaite FA, Edwards LM, Causby RS, Conson M, Stanton TR., 2021, Psychological research. DOI: 10.1007/s00426-020-01444-8
[9] Handedness in post-traumatic stress disorder: A meta-analysis — Borawski J, Papadatou-Pastou M, Packheiser J, Ocklenburg S., 2023, Neuroscience and biobehavioral reviews. DOI: 10.1016/j.neubiorev.2022.105009
[11] Handedness in twins: meta-analyses — Pfeifer LS, Schmitz J, Papadatou-Pastou M, Peterburs J, Paracchini S, Ocklenburg, 2022, BMC psychology. DOI: 10.1186/s40359-021-00695-3
[12] Genome-wide association study identifies 48 common genetic variants associated with handedness — Cuellar-Partida G, Tung JY, Eriksson N, Albrecht E, Aliev F, Andreassen OA, Barr, 2021, Nature human behaviour. DOI: 10.1038/s41562-020-00956-y
[13] Right-handers have negligibly higher IQ scores than left-handers: Systematic review and meta-analyses — Ntolka E, Papadatou-Pastou M., 2018, Neuroscience and biobehavioral reviews. DOI: 10.1016/j.neubiorev.2017.08.007
[14] Elevated levels of mixed-hand preference in dyslexia: Meta-analyses of 68 studies — Packheiser J, Papadatou-Pastou M, Koufaki A, Paracchini S, Stein CC, Schmitz J, 2023, Neuroscience and biobehavioral reviews. DOI: 10.1016/j.neubiorev.2023.105420
[15] DNA methylation in peripheral tissues and left-handedness — Odintsova VV, Suderman M, Hagenbeek FA, Caramaschi D, Hottenga JJ, Pool R, BIOS, 2022, Scientific reports. DOI: 10.1038/s41598-022-08998-0
[17] Digit ratio (2D:4D) and handedness: A meta-analysis of the available literature — Richards G, Medland SE, Beaton AA., 2021, Laterality. DOI: 10.1080/1357650x.2020.1862141
[18] Handedness and depression: A meta-analysis across 87 studies — Packheiser J, Schmitz J, Stein CC, Pfeifer LS, Berretz G, Papadatou-Pastou M, Pe, 2021, Journal of affective disorders. DOI: 10.1016/j.jad.2021.07.052
[20] Human handedness: A meta-analysis — Papadatou-Pastou M, Ntolka E, Schmitz J, Martin M, Munafò MR, Ocklenburg S, Para, 2020, Psychological bulletin. DOI: 10.1037/bul0000229
この記事の情報は2026年11月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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